南房総館山・なぎさの自然詩

7月の海浜植物

夏は海浜植物が花を咲かせ、海岸では砂丘を覆う葉の緑色の中に様々な花の色が混ざり合い色彩豊かです。

紫色の花を咲かせたハマゴウ。
海岸の砂丘の奥の方に群生し、その強い根は海岸の砂を固定する役割があります。
その根が生きていれば再生可能で、繁殖力がとても強い植物ゆえに厄介者扱いされてしまうのです。
海岸では草刈り機などで刈り取られた無残な様子をよく見かけます。
しかし、その種子はマンケイシ(蔓荊子)と呼ばれ、漢方薬では風邪の症状に効き、頭痛、神経痛にも効果があるそうです。
海岸にも人にも大変有用な植物だと思うのですが、一般的にはその事があまりよく知られておらず残念です。
個人的には真夏に潮風が運ぶハマゴウの香りが大好きです。


オレンジ色の大きな花のスカシユリ。
海岸の崖や岩場で花を咲かせ、オレンジ色の目立つ花はとても美しいです。
人が登れないような急斜面の崖で咲く花を見ると、スカシユリの生命力の強さを感じます。
他の海浜植物が進出出来ないような厳しい環境を選ぶという知性ある植物だと思います。


小さなヒマワリのようなネコノシタ。
別名ハマグルマとも呼ばれ、葉を触るとザラザラして猫の舌に似ているのが由来だそうです。
砂丘の手前から這うようにして全体を覆っている植物です。
波打ち際から砂丘を見た時に緑色に見えるのは、ほとんどがネコノシタの葉といってよいくらい勢いがあります。


熟したハマボウフウの種子。
花期の長いハマボウフウは夏にも白い花を咲かせていますが、春頃に咲いていたものは一足先に種がこぼれ落ちそうです。
こぼれた種は来年またこの場所で芽吹き、砂丘全体に広がっていきます。


海辺に咲くハマユウ。
近づくと潮風にのって花の香りが漂ってきます。
一説によると人によって海岸に植えられたハマユウがあるそうです。
白い花の美しさとその香りが人に好まれたのかもしれません。
南房総市の太平洋側の海岸砂丘には大きな群落があるのですが、それが人為的なものだとしたら残念です。
その他の例として別の海岸ではガサニアが植えられていたりします。
以前海岸でピンク色のガーベラのような花が一輪咲いているのを見たことがあります。
おそらく園芸種の球根が川から流れ着き、偶然にも根付いたものだと思うのですが、人為による植物の増殖はとても危険に感じます。
その場所に適応した植物を駆逐してしまうことにも成りかねません。
人が海岸の自然環境に手を加えてしまったものは、元に戻すことが難しいと思うのです。
また、それとは逆に海岸に適応した海浜植物が増えれば、ハマゴウのように排除されてしまいます。
海岸へ流れ着いた一つの種子から長い時間をかけて定着した様々な植物が、種子から種子へと引き継がれた海浜植物の歴史が現在の海岸の姿です。
もっと海浜植物が重要視されるようになれば、海岸に暮らす生き物の種も増えて来て、その先には豊かな海へと繋がっていくかもしれないと思っています。








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