ハマナデシコがようやく咲き始めました。
6月から毎朝、南房総市の海岸を生き物の調査の為に歩いているのですが、ハマナデシコの芽を見つけてから花の咲くのを心待ちにしていたのです。
ハマナデシコは岩場や崖の上に自生する海浜植物の一つです。
南房総では7月頃から明るい紫色の花を咲かせ、別名フジナデシコとも呼ばれています。
千葉県レッドリストではD要保護生物に指定されており、生息数が減少傾向にある海浜植物です。
草丈約50cm、一つの花の大きさは約1.5cm、葉は艶のある緑色をしています。
種子から育つ植物なので崖の上で花を咲かせているのは、どのようしてにその場所に定着する事が出来たのかと不思議に思います。
強い潮風で舞い上がり、崖の上に飛ばされたのでしょうか?
植物の移動は種子を遠くへ運ぶ事で可能になります。
それを種子散布と呼ぶそうで、その方法は大きく分けて重力散布、自動散布、風靡散布、風散布、水散布、動物散布の6種類だそうです。
海浜植物の場合は海流散布と潮風散布といった感じなのかもしれません。
そんなハマナデシコの咲く海岸を歩いていると、なんと卵が落ちていました。
よく見るとそれは卵の殻でウズラの卵ほどの大きさです。
実はその直前に毎日観察しているシロチドリの巣でヒナの孵化を確認していました。
抱卵していた場所に2羽のヒナが見えます。
棒の近くにある流木の影に隠れていて、望遠鏡で観察しているとヨロヨロと動いているのが見え、孵化直後の為まだ歩くことが出来ないようでした。
この巣は7/8に海岸の砂丘下で親鳥が抱卵しているのを見つけたものです。
その日から数えて21日目にヒナが孵化しました。
その巣から近い波打ち際で見つけた卵殻は、その親鳥が捨てに来たのだと思います。
卵の殻をそのまま巣の中に放置すると他の動物に狙われやすいのかもしれません。
同じ海岸にはもう一つシロチドリの巣があります。
この巣でもヒナが孵化したようで、メスの近くに2羽のヒナがいました。
それぞれ海浜植物の影に隠れるようにしてジッとしています。
この2羽のヒナは十分歩けるようで、親鳥から離れて自由に走り回り自分で餌を食べているようでした。
二つの巣で同時に孵化したのはとても嬉しい出来事です。
繁殖期に入ってから海岸の環境の変化等たくさんの困難がありました。
更に今年は猛暑の影響で海岸の砂浜は異常な熱さで、そんな中での抱卵を約3週間耐えてきたメス達の努力が報われたように思います。
ヒナが孵化しても他の動物に捕食される等の危険があります。
飛べるようになるには約3週間かかるので、それまでは何事も起こらず、無事に成長してほしいと願っています。