南房総館山・なぎさの自然詩

シロチドリ物語


シロチドリは3月頃になると、越冬地から繁殖地である千葉県南部の海岸に移動してきます。
頭から背中にかけて淡い灰色、首から腹にかけて白色なので正面から見ると真っ白く見えるのでシロチドリと呼ばれているのかもしれません。
こちらは今年の夏に海岸で子育て中だったメスです。


オスは11月頃から換羽が始まり、頭の色が変化し、おでこ近くが黒色、その後ろから茶色くなります。
オスの体色は個体差があり、今年見た中ではメスのように頭の色が淡い灰色だったオスもいました。


4月頃から産卵し、合計3個の卵をおそらく毎日一つずつ砂浜へ直に産みます。
卵は約3週間で孵化し、その後約半日位ですぐにヒナは歩き始めます。
親鳥は給餌せずヒナ自身で採餌し、約3週間で飛べるまで成長します。
飛べるようになると、越冬地ヘ旅立ちます。

ここから今年の春から夏にかけて、千葉県南房総市の海岸で子育てしていたシロチドリの物語です。
3月に海岸へやって来たシロチドリ達は夫婦になる相手を探しています。
中には繁殖地に番でやって来るシロチドリもいるような感じがしています。
そして、この海岸でも数組が夫婦となり、子育ての準備を始めました。
5月には卵を産み、夫婦交代で抱卵しています。
抱卵中でも周辺を警戒し、トビやカラスがやって来ると、卵が天敵に見つからないよう巣から離れます。



特にカラスは賢くて、毎年やって来るシロチドリの卵やヒナを捕食しています。
シロチドリもそれを分かっているので、カラスの事は特に警戒しています。
小さな体のシロチドリではカラスに太刀打ち出来ず、全ての卵を奪われるまでその攻撃に耐えているのです。
母性本能が強いメスはヒナを守る為に捨て身の攻撃をして、その命を落とす事もありました。


6月になると海水浴場とキャンプ場開設の為に海岸整備が始まります。
小さなシロチドリの卵は重機によって幾つの命を奪われたのでしょうか。
大切にしていた卵が無くなると、再びシロチドリは繁殖を始めます。
そんな姿に野生の強さを感じます。


海岸整備する重機が大きな音を立て作業する中で、何とか産卵する事が出来たシロチドリ。
今年は猛暑の影響で気温が高く、海岸はもの凄い暑さです。
そんな中で毎日毎日ずっと抱卵していますが、何故かオスがいません。
通常ならオスが抱卵を交代している間に、水を飲んだり餌を探したりします。
猛暑の中で卵が熱さで死んでしまわないように、自分の体で日陰を作って抱卵していました。
更にカラスの攻撃から守りぬいた卵。
遂にシロチドリが無事に孵化しました。
ヒナは母鳥のお腹の下に入って隠れようとしています。

3羽いた兄弟は2日後には1羽居なくなり、5日後には更に1羽居なくなっていました。
親鳥は大切に守って来たヒナ達が捕食されるをどのように思って見ているのでしょうか。


最後に残ったヒナはたった1羽です。
酷暑の中で海岸で過ごすヒナは、少しでも日影を見つけていました。
小さな体では高温の砂浜は命に関わります。
シロチドリ保護の為に作った看板の影で一旦休憩して、安全な場所へ移動していました。

ヒナが飛べるようになるまで後数日と言う21日目に、全てのヒナが居なくなりました。
勿論母鳥も居ません。
この流木の影でヒナ達がよく休んでいたのに、もう誰も居なくなりました。

流木の隙間に手を入れると、ヒンヤリと涼しくて、ここなら暑さを凌げそうです。
この海岸で暮らしたヒナ達にとって、この場所は自分達の家のようだったのかもしれません。

この広い海岸はシロチドリ達の庭だったのかもしれません。
3羽いたヒナ達が居なくなり、母鳥はたった1羽で越冬地ヘ旅立って行きました。
















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