海岸でビーチコーミングしていると、たくさんの野生動物との出逢いがあります。
渚を走るシロチドリです。
磯で採餌しているコチドリです。
自分にとって、海岸で繁殖するシロチドリやコチドリは、観察する中でたくさんの事に気づくきっかけをくれます。
今年はシロチドリの繁殖期に海岸へ通い、様々な事例を見る機会がありました。
産卵の確認をして観察を続けていると、孵化する前に卵が無くなる事が頻繁に起こるのです。
他の動物に捕食されるのだと思っていましたが、ある日カラスがコチドリの卵を捕食する瞬間を目撃しました。
大切に守ってきた卵を奪われ無いように、親鳥はカラスの周りで鳴きながら走り回り抵抗していました。
しかしカラスには全く効果が無く、卵を一つ咥えて行ってしまいました。
更に近くにいたカラスの幼鳥に、卵の探し方を教えているようにも見えました。
海岸をテリトリーにしているカラスにとっては、春から夏にかけて繁殖にやって来るチドリ類の卵やヒナは貴重な餌として記憶され、代々受け継がれていくように感じました。
生き物同士の生き残りをかけた争いですが、チドリ類の方が圧倒的に不利な状況です。
天敵はカラスだけでは無く、ヘビ等にも捕食されたり、またヒトに踏み潰される可能性もあります。
抱卵中のシロチドリやコチドリは危険を感じると抱卵を中止して、その場から離れます。
観察している中で特にカラスとイヌは非常に警戒しているようでした。
カラスはヒトの生活に適応した結果数を増やした生き物ですし、イヌもヒトが海岸へ連れて来る為、いずれもヒト由来でのチドリ類への繁殖妨害のように思えてなりません。
カラスやイヌに罪はないけれど、シロチドリやコチドリにとって、それらの生き物が近くにいることは大きなストレスとなります。
イヌの場合はリードをつけヒトが制御出来ます。
しかし野生動物であるカラスの場合は行動を変える事は不可能です。
カラスなどの天敵から卵やヒナを守れるように海岸環境を整える事が必要だと感じました。
極端かもしれませんが、海岸にある高い構造物の撤去、砂丘の海浜植物群落の回復、漂着有機物を除去しない事が必要に思いました。
電柱の上から見下ろすと砂浜にいるチドリ類の動きは手に取るように分かります。
更に海浜植物の群落はヒナ達をカラスから守る避難場所になります。
流木も身を隠す為に必要ですし、海藻に集まる生き物はチドリ類の餌となります。
いつの日にかシロチドリやコチドリが安心して子育て出来る海岸になるように、現状が少しでも良くなって欲しいと願っています。
そしてビーチコーミング中には、ウミガメのストランディングに出逢う事もあります。
そしてビーチコーミング中には、ウミガメのストランディングに出逢う事もあります。
こういったウミガメを解剖し調査している方の話をネットで知る機会がありました。
その中で印象的だったのは一度も産卵経験の無い成熟したメスのアカウミガメがいた事です。
危険の多い子ガメの時代を運良く生き残り、長い年月をかけて無事に成長したウミガメが無残にも死んでしまったなんて本当に残念です。
あるアオウミガメのオスでは、食道から胃かけて海藻がびっしりで、死ぬ直前まで食べていた事が判明しているそうです。
ということは病気が死因とは考えられず、人的な要因だと思われます。
個人的には定置網による溺死だと想像しています。
せめて定置網の蓋が無ければ、この2件のウミガメの事故は起こらなかったかもしれません。
過去には引き上げた網の中にウミガメの卵があったという話を聞いたこともあります。
定置網に迷い込んだ母亀が死の直前に卵を産み落としたものかもしれません。
一度も産卵経験の無いメス、砂浜に卵を産みに行けなかったメスはいずれも絶滅危惧種のアカウミガメです。
定置網による人的な要因で死亡したという証拠はありませんが、定置網の構造を変える事は必要ではないかと思っています。
港や堤防、定置網等も無く、人が手を加えていない頃の海岸を見てみたいと思う時があります。
その頃の海岸をビーチコーミングしたら、どんな貝殻を拾えるでしょうか?
たくさんのウミガメが産卵しに来た足跡を見ることが出来るでしょうか?
波打ち際をたくさんのシロチドリのヒナが走り回る姿が見られるのでしょうか?
遠い未来の海岸もこんな風な世界になっている事を願っています。