念坊ひとり旅

　　季節句
深秋の緑地に色のなかりけり
野の川や氾濫跡の末の秋

　　通年句　　　　　　　　　　　　　　　　　
安住へ旅立つ君の遺す夢

　　時事句　　　　　　　　　　　　　　　　　
隣国や権力の私利私欲絶ち

世情余情口端歌

訪ね入る納骨堂にいづくより
　　　凛と鈴の音わが秋思かな

念坊ひとり旅

　　季節句
弟が危篤の電話秋思絶つ
水霜のちらちらと我がまなこ射る

　　通年句　　　　　　　　　　　　　　　　　
動けざる老いの哀しさ秋の雲

　　時事句　　　　　　　　　　　　　　　　　
汝が希望耳を遮る秋の風

世情余情口端歌

初雪や寒さ募れど心中は
　　　潔き世に出でたる気分

念坊ひとり旅

　　季節句
いのち継ぐ宿命一途渡る鳥
わが足を必死にとどむ帰り花

　　通年句　　　　　　　　　　　　　　　　　
初雪や日の反映に清輝満つ

　　時事句　　　　　　　　　　　　　　　　　
アベニューに落葉踏みしめ意思表示