念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　太三
雪原の沖までひろぐ遠眼鏡
山の笹肩を並べて冬眠す

　　　　川　柳　　　　　冬竜
今朝思う夢での会話妻でもなし

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　太三
冬木立かよふ娘へ路ゆづり
赤々と還暦祝い室いちご

　　　　川　柳　　　　　冬竜
改名へ按里安里と案ずるや

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　太三
大寒の宙の青みへ鳶の舞う
雪山の鬱憤ザックとショベルカー

　　　　川　柳　　　　　冬竜
ヤジ飛ばし何食わぬ顔の陣笠め

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　太三
見おぼえる雪女郎の会釈過ぐ
夕べ佇つ雪女あと残しけり

　　　　川　柳　　　　　冬竜
真白雪くろき濁世を一新す

念坊ひとり旅

　　　　一行詩　　　　　太三
暖かや氷柱つらつら細々と
わが余生冬眠のほか為さぬまで

　　　　川　柳　　　　　冬竜
口つぐむ総理ならずとも人の常