記憶の中で長靴を履いていたのは小学校の頃までで中学以降、履いた記憶はない。小学生の頃は好んで雨の日に履いた訳ではなく雨の日は強制的に履かされていた。中学生になり履かなくなった
理由はただひとつ、格好悪いから、誰も履かないただそれだけのことだった。それでも小学生の頃、まだ未舗装の道が多く水溜まりにズブズブ入っていくのは楽しかった。18才で東京に出たが長靴などは一億万年彼方のモノになり全く無縁のモノと化した。二十歳前のあんちゃんが山手線に長靴を履いて乗り込んできたら他の乗客はややヒルむ。長靴を履いてセリカリフトバックを運転したらクラッチ操作が上手く出来ない。検問で足元を懐中電灯で照らされ問い詰められる。雨の日、デートでイノカシラ公園に長靴を履いて行くわけにはいかない。そんなこんなで長靴とは永きに渡り疎遠になった。
人は歳を重ねると変わるもので最近は長靴が愛おしくて仕方ない。長靴にも種類がいろいろあるが釣りに使うかっこいいやつには興味はなく心が引かれるのはやはり黒い長靴だ。黒い長靴を探し回るとそれでもピンきりで微妙に黒の違いがあり値段もさまざまである。長靴は少しくすんだ黒がいい。ピカピカに光っている黒はいかにもナイロン的で安っぽい。台風のさなか東京へ買い物に行ったが迷うことなく長靴を履いていった。ズボンのスソを長靴の外に出すとその長靴は立派な革靴にしか見えない。大発見だ。オレは革靴のフリをした長靴でバスに乗り込んだ。こうなると残りの人生、革靴が無くともカンコウソウサイ、全て長靴で済まされると気付いた。ただひとつモンダイは結婚式の二次会がそこいらの居酒屋の座敷、小上がりだった場合である。
長靴は家の中の備品としての地位は一挙に昇格した。人生地道に腐らず奢らず頑張ってみるものである。かくして清掃用具部門で長靴さんは平社員から一挙に係長クラスまで成り上がった。ここで思うのは、バケツはなぜいつもバカにされるのだろうと言う激しい疑念である。風の強い日に庭先で転げ回っていても殆ど気にならないし、割れてしまったら捨てることをなんら躊躇わない。
どこかに出かける時にバケツをカバン代わりにするバカはまずいない。バケツをぶら下げて家から出たら近所からはあの人は川に水を汲みに行くのだな、と思われるくらいだ。バケツを持って電車に乗ったら掃除のオジサン、または最悪、テロリスト関係の人とみなされただちに鉄警隊が来るだろう。しかしココロの中のもう一人の自分がバケツの中に携帯、老眼鏡、歯ブラシを入れて温泉旅行に行けと囁くものだから気持ちが揺れる。バケツは健気にも体の色は常に水色で爽やかさをウリにしている。しかしどうあがいてもそこまでだ。それ以上の地位向上は望めない。地位向上を目指すには発展途上国に転勤するしかない。水が貴重で大事にする地域に行ったらかなりその地位は向上するだろう。2011.3.11以降、50日間も断水していた時のように。
理由はただひとつ、格好悪いから、誰も履かないただそれだけのことだった。それでも小学生の頃、まだ未舗装の道が多く水溜まりにズブズブ入っていくのは楽しかった。18才で東京に出たが長靴などは一億万年彼方のモノになり全く無縁のモノと化した。二十歳前のあんちゃんが山手線に長靴を履いて乗り込んできたら他の乗客はややヒルむ。長靴を履いてセリカリフトバックを運転したらクラッチ操作が上手く出来ない。検問で足元を懐中電灯で照らされ問い詰められる。雨の日、デートでイノカシラ公園に長靴を履いて行くわけにはいかない。そんなこんなで長靴とは永きに渡り疎遠になった。
人は歳を重ねると変わるもので最近は長靴が愛おしくて仕方ない。長靴にも種類がいろいろあるが釣りに使うかっこいいやつには興味はなく心が引かれるのはやはり黒い長靴だ。黒い長靴を探し回るとそれでもピンきりで微妙に黒の違いがあり値段もさまざまである。長靴は少しくすんだ黒がいい。ピカピカに光っている黒はいかにもナイロン的で安っぽい。台風のさなか東京へ買い物に行ったが迷うことなく長靴を履いていった。ズボンのスソを長靴の外に出すとその長靴は立派な革靴にしか見えない。大発見だ。オレは革靴のフリをした長靴でバスに乗り込んだ。こうなると残りの人生、革靴が無くともカンコウソウサイ、全て長靴で済まされると気付いた。ただひとつモンダイは結婚式の二次会がそこいらの居酒屋の座敷、小上がりだった場合である。
長靴は家の中の備品としての地位は一挙に昇格した。人生地道に腐らず奢らず頑張ってみるものである。かくして清掃用具部門で長靴さんは平社員から一挙に係長クラスまで成り上がった。ここで思うのは、バケツはなぜいつもバカにされるのだろうと言う激しい疑念である。風の強い日に庭先で転げ回っていても殆ど気にならないし、割れてしまったら捨てることをなんら躊躇わない。
どこかに出かける時にバケツをカバン代わりにするバカはまずいない。バケツをぶら下げて家から出たら近所からはあの人は川に水を汲みに行くのだな、と思われるくらいだ。バケツを持って電車に乗ったら掃除のオジサン、または最悪、テロリスト関係の人とみなされただちに鉄警隊が来るだろう。しかしココロの中のもう一人の自分がバケツの中に携帯、老眼鏡、歯ブラシを入れて温泉旅行に行けと囁くものだから気持ちが揺れる。バケツは健気にも体の色は常に水色で爽やかさをウリにしている。しかしどうあがいてもそこまでだ。それ以上の地位向上は望めない。地位向上を目指すには発展途上国に転勤するしかない。水が貴重で大事にする地域に行ったらかなりその地位は向上するだろう。2011.3.11以降、50日間も断水していた時のように。