YEAR3210

風に転がる迷走日記

遅い人

2012-06-15 20:56:40 | 日記
世の中に遅い人がいる。遅い人が迷惑な場合がこの場合ある。何の場合かと言うとこっちが急いでいる場合だ。

その1
「コンビニの店員の遅さ」

いらっしゃいませこんばんわー、
機械的幼稚言語定形ごあいさつ。まずその言葉を聞いただけで一刻も早く買い物を済ませて立ち去りたくなる。最近はコンビニに限らずその言葉があらゆる方面で乱用されている。が、テーマは遅いレジ打ちバイトだ。時々、その極地で本気でスローモーションレジバイトがいる。これはホントにイライラしますね。これは圧倒的に若い娘に多い。わりと最近の昔、コンビニの弁当には箸がいっしょにシュリンクされていた。それが廃止され箸は申し出たら袋に入れてくれるようになった。最初のうちは省エネの観点から箸は希望者の方に差し上げています的なコトガラの貼り紙があった。しかし今では有無なく勝ってに店員がレジ袋に放り込む。お箸はナンゼン入りますかと聞かれる。弁当一個買ったにも関わらず5ゼンというとちゃんと5ゼン入れてくれるのだ。やったことないけど。世の中には見せかけの省エネがはびこっている。本末転倒なのですね。反対に当然入っていると思い込んでいた箸が入っていない場合もある。箸のない状況下でこのような場合、とてつもない落胆のあとその怒りの矛先はコンビニ店員に向けられる。箸をくださいと言わなかった自分が悪いのか、入れなかった店員が悪いのか、結論がでないまま悩む。先日、水道橋のビジネスホテルに泊まった時、その状況に陥った。
ノリ弁当、カニミソ、サバの缶詰め、箸は無し。困った時のに身を救うのは知恵、知識だ。オレはかつて本で読んで感心したことを思い出した。ビジネスホテルに備品は少ないがシングルでも歯ブラシは二本ある場合が多いということを。オレは知識に救われた。弁当、缶詰めを指で食わずにすんだのである。

その2
「遅い車」

幹線道路を流れに乗らず異常に遅く走っているクルマに頻度高く出くわす。追い越せる状況ならまだしも幅員が狭く対向車が多い場合、かなりのストレスになる。遅い分には法定違反にならないと思うが制限速度60キロのところ30キロで走る人もこれまたスピード違反ではなかろうか。

その3
「遅いウンコ」

混雑する高速道のパーキングでトイレに並ぶ、やたら遅い人がいる。急を要する場合、遅い人を許せないだろう。

その4
「遅い焼き鳥」

居酒屋に行けば確実に焼き鳥を注文する。焼き鳥は基本的に時間のかかるものだからある程度は仕方がないが異常に遅い店がある。生ビール2杯ぐらい飲んでやっとでてくる焼き鳥、ざらにありますね。
「焼き鳥頼んだよな?忘れられているな。」
「すみません、あのー焼き鳥は?」
「いまやってますー」的会話は常にある。

その5
「遅いプリンター」

グッ、ジジジ… … … ジージー、グイーーン…… ググググググ ジジジ…ガッチャン
ドッコン ジジジ ジジ…ウィーン ガガガ ドドド ドッカンボッカン
これは我が家のプリンターが印刷を開始するまでの音の流れです。
たかだかA4一枚印刷するだけで4分ぐらいこんなことやっててやっと始まる。そう思うのもつかの間
ふとパソコンの画面を見ると
インクがねーんだよ、バカめ的なことを言っている。

サッカーワールドカップ最終予選

2012-06-07 13:38:27 | サッカー日本代表
サッカーワールドカップ予選が世界中で始まっているが話題の選手をピックアップしてみた。
まず挙げなければならない選手はユーゴスラビアの最強フォワード、マーイバン ノミビッチとヒールカラー ノンジャビッチだろう。対してディフェンダーではフランスのシオーン カラーンとドイツのウースター ソッスラーが特に注目される選手だ。
アフリカ勢ではこども達に人気のゾーサン キリンダヨンやフキヤーノ ワナダッチ、アッツ ハダシンも見逃せない。イングランド、プレミアリーグの得点王、トーク ケールや左ウイングのフリーキックの名手、ケーラ セーロの活躍も期待される。イタリア代表のセンターバック、ピザーノ ウメーノアは誰が止めれるのか。挑むのは中国の黄 板だ。イエロー覚悟のドリブル突破は通用するのか。楽しみである。同じく中国代表キーパーで怖 大顔だ。ディフェンダーの強 鉄壁、その二人の威圧感は脅威である。一方、ロシアではミッドフィルダーのカラシノフ ヒハリンコが注目される。香港のユ ドーフもそのひとり
。そして我が日本である。和製メッシこと、飯 望と橋下暮男。この二人が予選突破のカギを握っている。
往年の名選手、メキシコのソージ・トーバン・メンドクセーノは優勝はフランスだと予測する。天才ドリブラーのウメード カッツオがいるからだ

勝負のタンメン

2012-06-02 21:05:58 | 銚子市
用事があって朝早くの高速バスで東京へ。朝早いバスは空いていて
いつもの左側最前列の窓際にふんぞり返る。関越の事故以来、ガードレールが
気になるがドライバーにすべてを委ねるしかない。
人間は思っている以上にいつも死と隣り合わせにいる。
朝、普通に起きて会社に行って、帰りはもうこの世にいない、ってなことが
往々にして今のこの世の中にはある。しかしそんなことを考えていても何も始まら
ないので夜明けのビールをプシュリ。うまし。
いつものように東京駅から神田まで細い路地を伝って歩く。東京の裏側の風景を
眺めながらの散歩である。飲食街の朝の風景は汚い、臭いそれしかない。
生ごみのにおいのする裏通りを歩くとニューヨークはこんな感じなのだなと
思う。神田あたり。そしていつもの中華料理店へ。昼飯である。
ここ何年かは東京に来たら必ずその店で昼飯を食べることにしている。なぜなら
、それはその店のタンメンが絶品だからですね。
アツアツ、カラカラ、ヒーハーフー。ゴクゴク。アツアツ、カラカラ、
ヒーハーフー。ゴクゴク。
アツアツ、カラカラ、ヒーハーフー。ゴクゴク。ですね。
最初は、このタンメンを食べるのに15分の時間を要していた。タンメンごときに
15分である。オレは情けなくなりその店に行くたびに10分の壁を超えることを
目標にしたのだ。人はやればできるものですっかり、通ううちに10分の壁をいとも簡単に
超えた。そしてその日ついに自己ベストの7分28秒を超え、6分59秒を達成したのであった。
これはフルマラソンを3時間を切った、若しくは自転車で佐渡一周、8時間を切ったのと
同等であるとオレは捉えエツに入った。

ラーメン屋に入ってビール、ギョーザ、ミソと註文したら、
まずビールが出てきてその6分後に焼きたてのギョーザが出てきて14分後にミソ
ラーメンが出てきてほしい。
先月、5月、川越街道で友達と入ったラーメン屋は最悪で、
最初にラーメン、ラーメンをあらかた食べ終わる頃にギョーザ、ギョーザを
あらかた食べ終わる頃にビールが出てきた。このようなことは
三回目である。そのすべては埼玉県だった。マジで。






大相撲その2

2012-05-23 16:46:39 | 旅行
前頭三枚目の振込山の決め手は引き落としである。窃盗乃花の決まり技はトッタリ。大関の墓石龍は強靭な足腰でなかなか倒れないが一旦バランスを崩すとあっけない。横綱への道はまだまだだ。国会議員を父にもつ談合坂の得意技はネコダマシ。さすがでありますね。不潔山は風呂嫌いで有名であるが子供に人気がある。不燃山と可燃川の兄弟対決も相撲ファンにはたまらない。新入幕の雨戸はどうだろう。身長145センチ、体重268キロの若達磨はどうだろう。今のところ同期の大物置に軍配が上がっていますね。
70才でいまだに現役続行を示唆している千代徘徊は行方不明になっていて懸命な捜査が続けられている。
新宿出身の夜の花は肌の手入れに余念がないらしい。
無駄のない相撲を取る北枕、魅せる相撲を取る花見桜の活躍も見逃せない。

大相撲

2012-05-21 11:45:31 | 旅行
相撲の今場所、伏兵の薄毛山の優勝に終わった。意外であった。期待されていたハリダシ大関の岩盤浴は負け越し。大関昇進はまたもや持ち越された。小結の蕁麻疹は二場所連続の勝ち越し。期待がかかる。新入幕の遅咲き、倦怠風は初日から欠場。ただならぬ精神的不調らしい。居酒部屋の期待の新人、八百町はフタケタの勝ち星。ムムムである。
中国人初の力士、固麺山は名古屋場所で初土俵を迎えるがモンゴルで鍛え上げた勝負力に期待がかかる。
体重が三百キロを超える大食来は減量が必要であろう。一番期待がかかるのは十両の酒盛と評議会は語るが、むしろ学生横綱の経歴を持つ大勉海に期待がかかるのではあるまいか。元警察官の異色の経歴をもつ大拳銃も話題をさらうだろう。躍進しているのは痛風風。痛めた指の回復が待たれる。出痔山と裏本海の対戦も期待される。それにしても横綱の大豚肉の元気のなさは気にかかるところだ。
角番の大顔竜は踏ん張り所であろう。モデル出身の写好丸は通用するのか、産廃山の活躍はどうなるのか、関脇の蛸地蔵は八手が出るのか話題が尽きなくなってきた。
個人的には大肉汁を応援したい。

老いらくの恋農場

2012-05-04 15:43:22 | 旅行



今年の老いらくの恋農場はアシタバ、キューリ、唐辛子、ブロッコリー、トマト、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、獅子唐、などがデタラメに順調に育っています。
花が咲き始めこれサイワイとモンシロ蝶やテントウ虫、メジロ、鴬などがやってきます。
リンゴやオレンジを置いておくと青い鳥、たぶん啄木鳥の仲間のコゲラかと思いますが
やってきます。
嵐。秋の収穫までそれらをなぎ倒す嵐さえ来なければ唐辛子なんかは売れば大金になるぐらい採れるはずです。純国産、完全無農薬の野菜の子供達が五月の空に笑っています。
アラシが来て農場が壊滅的になったら折角投資した農機具が無駄になってしまいます。
資金調達して購入した新たな農機具は、全てヒャッキンで、スコップ、ジョーロ、バケツ、
ヒモ、などです。
嵐が来て壊滅的になりNHKが取材に来た時の返答を考えておかなければいけませんね。

「かーえーこんなのうまれではじめでだどえーいやーたまげだーねーみんなしっくるげっしったーどえーすげーいぎおいでふいだっぺよわれとだんもとばされしってよーわれ、はだげぜんぶいっちゃぐにかぎまーされしったーべよたまげだーねーきもいれだーがらあしでみんなふんじぃでふてしったーどえかっもーすごしでくえだーのによーななしゃぐえんでかったばーしのながぐづもとばされでどっかいっしったーべよおめーらてれびだっぺかづあっけどくーがーれーぞーこでしやしてあっからしとぐじくってみらっせー これうづんのが いづよ わんらーなんちゃんだ?おーせなががかいーこどよちっとせばがばみでくんねーがぼじぼじなってねーが」

アシタバの天ぷらにビール、真夏の夢近し。
ピーマンと唐辛子を同じ場所に抱き合うように実験的に植えたんです。ぴーがらしになるでしょうか。

「泣くかな名取川」

2012-04-17 21:13:31 | 名取川
宮城県名取市のFMラジオ放送局から連絡があり
我らの新曲「泣くかな名取川」がオンエアーされた。
これはうれしいの一言に尽きる。
楽曲が電波で空を飛んで仙台一帯に散りばめられたので
すからね。今年は刺激的なことが数回続いている。
ひとつめは自分で作って自分でギターで歌った歌が
アメリカ在住の作家にボブディラン的だと感想を伝えられたこと。
そしてこのラジオ放送である。
これはきわめて個人的であるが人生上の大きな出来事だ。

今年も我が家の3坪の農園、「老いらくの恋、農場」に
苗を植えた。苗はトーガラシ20本、明日葉10本、そのほかであります。
今年の秋、豊作か凶作か、それは空だけが知っている。
最近、人生のだいご味は熟す前と熟したそのあとだと思います。
どう解釈するはあなた次第ですが。
東北、旅の途中、立ち寄った場末のライブハウスで中年男女が二人で
恋の歌らしきものを歌っていたのを見たけど、誰も聞かず気色悪かった。
男と女のデュオ?ってゆーのか、なんてゆーのかわからないけど
そーゆーのは定年32歳程度がいいですね。
栃木県でそう思いました。

「泣くかな名取川」は来月中旬にYOU TUBEで聞けます、見れます。

電波に乗るのは気持ちのいいことなんです。

十三番台の悪魔

2012-04-05 17:39:54 | オリジナル戯曲
十三番台の悪魔 

 よく晴れた日曜日のことだった、妻が子供を連れて出かけたのをみはからっって、俺は、すかさずいつものパチンコ屋へ出かけた。給料は貰ったばかり、いつもの決まった額の小遣いをもらったばかりなので軍資金は豊富だった。目指すのは数日前に痛い目にあわせられた十三番台だ。俺は開店前から店の前に並び、晴れた空に向かって小さく歌を歌っていた。そして開店と同時に十三番台を目指したのだ。俺が十三番台を見つけ、そこに座ろうとするとその台に向かって煙草の箱をを投げつけたやつがいた。煙草をその台の前に置き、先にその台の権利を取ろうとするやつだったのだ。
「何だ、このやろう!そこは俺の台だぞ!」
俺はそいつの顔をゆっくりと見た。目つきの悪いその男は俺の顔を見てにやりと不敵な笑いを見せつけたのだ。
「けっ、でれでれしてるおめえがわりーんだよ」男はそう言った。
すぐさま俺はその男の下に回りこみ、やつの顎に向けて全身の力をこめて頭突きを見舞ったのだ。男は歯が何本か折れ、「ぐふっ」という変な声を出し、鼻血を出してその場に倒れこんだ。
「俺の唯一の楽しみを邪魔するんじゃねえんだよ」
 まじめな銀行員の俺はパチンコ屋に来ると、家や職場では絶対使わない言葉使いをしたりそんな態度になった。自分でも不思議だった。不況の波に襲われた銀行は例に漏れず、リストラが盛んで、仕事はできるのに運が悪いのか俺自身も確実に窓際に追い込まれていた。自分に気付いてくれない上司に対して俺はストレスに満ち溢れていた。
十三番台を取るのに俺は手段を選ばなかった。一撃必殺だった。俺はすぐさま店員を呼び寄せ、倒れている男を排除させたのだ。

「けっ、おめえ、今日も渋い顔していやがるなあ。そんなに無理して釘、閉めたって、おれの腕じゃそんなもの関係ねーよ」
俺は十三番台に向かってそうつぶやいた。
「バーカ、今日の俺は特別なんだよ。おめーごときに俺から玉、搾り出せるのかよ。てめーの金、全部、俺が飲んでやっからよー。また泣くことになるからな。玉が抜かれるのはてめーの方なんだよ」
 十三番台のスピーカーからそんな声が響いた。
 俺は給料をもらったばかり。いつも以上に金をポケットに詰め込んでいたので気持ちには大いに余裕があった。
「好きなだけほざけ、ばか。おめーのハラんなかの玉、全部、俺が吐き出させてやるわ。おめーも今日でお払い箱ってコト。明日になったら新台に変わってるってのがわかんねーのかね」俺は台をにらめつけながら大いに笑った。
 俺はあらかじめ百円玉に崩しておいた金を台の前に無造作に置き、ハンドルに手をやり銀色の玉を打ち始めた。俺の唯一の生きがいだ。俺はその快感に酔いしれた。そしてしばらくの時間が過ぎた。デジタルの液晶画面は回ることは回るのだが、どんなに金をつぎ込んでも、大当たりは出ないでいた。気がつくと俺の一ヶ月の小遣いは半分になっていた。
「どうなってんだ、このやろう?いい加減にしろよ」
「(笑)だから言っただろ。おめーにおれは倒せねえんだよ。おめーのモチガネ全部とってやっからよ。明日からカップラーメンでもすすってろ。一家心中か?(笑)」
辛抱の時が過ぎていた。そして俺はキレた。こういうことはよくあることなのだが、その日だけはどういうわけだか、俺の怒りは早くも頂点に達していたのだ。
「ざけんじゃねーぞ、俺をなめてんのか、また俺に昼飯抜きにしろっていうのか!このやろう」
「どんなにあがいたって今日のおめーに俺から玉、出せねーよ。なんならもっと釘、閉めてやっか?」
おれはその言葉に逆上し、足で台の下を思いきり蹴飛ばした。
「ぐわっ」
 十三番台からあえぎ声が響いた。
店全体を揺るがすようなその衝撃は、十三番台にも大いに影響を与えたようで、今まで全くそろいもしなかったデジタルの数字がリーチ目を示すようになってきたのだ。
「わかりゃあいいんだよ、わかりゃあ」
最初からそんな態度を見せていれば良かったのだと俺は小さく口元に笑みを浮かべた。その時だ。賑やかに点滅を繰り返していた十三番台の電飾が急に光る事を止め、暗くなったのだ。そしてデジタルの回転をスタートさせる入賞口に全く玉が入らなくなったのだ。台があきらかに釘を閉め始めたのは確実だった。微妙に釘の角度を変えて玉の流れ方を変えてしまっている事は確実だった。俺はさっきよりももっと激しく逆上した。
「おのれ、どういうつもりだ!俺をばかにしてるのか!」
「コレでも食らえ!」
十三番台はそう叫んだ
先制攻撃は十三番台の方からだった。右手で握り締めているハンドルにちくっとした痛みを感じた。俺は必要以上に力がこめられている右手に疲れがたまっているのだろうと思い、一度手を離して休めようとしたのだ。しかし、なんという事だろうかそのハンドルから右手が離せなくなっていたのだ。
「なんだ、手が離れねーぞ?」
その直後だった。十三番台はそのハンドルに三万ボルトの電流を流してきたのだ。高電流は俺の脳髄までしびれさせ、俺は声にならない声を出し、もだえ苦しんだ。
「これで、おめーもおわりだな、大したことのねーやろーだ。おれからドル箱とるなんて百年はええんだよ、おら!」
「ぐわっ、このやろーなにしやがる!ううっ、やめろ、やめてくれ」
このままではやられるなと思った俺は最後の力を振り絞って台の硝子めがけて強烈な頭突きを食らわせたのだ。
「思い知れ!」
三回目の頭突きでその硝子は砕け散り、ハンドルから流れる電流も止まった。同時に俺の額からも少し血が流れ出ていた。そんな事はどうでも良かったのだ。あと数分、電流が俺の体を通りぬけていたら俺の命はなかった。危機一髪だったのだ。しかし痙攣している俺の手はハンドルから離れないままでいた。俺はそれを気にせず、ガラスが無いままに俺は夢中になって球を打ちつづけた。十三番台も観念したらしく、派手な電飾は再び点灯し、デジタルに7が二つ揃い確率変動型のリーチ目に突入したのだ。
「ちくしょうやっと来やがったか、最初からそうしていれば痛い目にあわなくてすむんだよ」
俺は間違いなく大当たりになると確信してそれまで我慢していた煙草に火をつけたのだ。これで7が出れば大当たり、連チャンの期待が多いに高まり、これまでこの台に飲みこまれてきた大金の一部を取り戻す事ができる。しかし右手はいくら踏ん張っても取れないままでいた。
「まあいいか、大当たりが来るまでの辛抱だろ」
右手をあきらめ、俺はゆっくりと左手で煙草をふかし店員にコーヒーを注文して飲んだ。これから充分にこの台から玉を搾り取ってやろうという気分になっていた。一番最後の数字は7を目指してゆっくりと回りそのスピードを落としていった。その動きは百%の確立で訪れる大当たりの合図だった。
 その時だ。台の一番上の四本の釘が、わずかに動いたと思うのも束の間、ビシッと音を立て俺の額めがけて発射されたのだ。
「うわっ!」
よける間もなく四本全ての釘が俺の額に突き刺さった。そしてそこから四本の筋となって血が流れ始めたのだ。俺はうなり声を上げながら一本ずつその釘を抜いた。手についた血を見ていると、そろうべき7はあざ笑うかのようにゆっくりと6で止まった。俺の怒りは再び頂点に達した。
「おめーの腕ではせいぜいそこまでだ。おめーに俺の大事な7が三つ揃えられると思ってのか、甘いんだよおめーは。そこまでよくやったよ。ほめてやりてーぐれーだよ。それよりよ、おめーのくる
「よくもやりやがったな、俺を怒らせたらどうなるかわかってるのか!」
台に唾を吐きかけ、いつも護身用として懐に持っているマイナスドライバーで液晶の画面をめがけて突き刺そうとした。俺がそうする直前になって、今度はその画面から強烈な閃光が発せられたのだ。
「うわっ」
まともにその光を見てしまった俺はあろうことか、一瞬にして網膜を焼かれてしまったのだ。
「な、なんだ、この光は?うわっ、目が、目が見えねー、なにしやがった?」
目の前が真っ白になった。額からあふれ出る大量の血、ほとんど見えなくなってしまった俺の右目、かすかに見える左目、ハンドルにへばりついている俺の右手、俺は相当のダメージをおっていた。しかし、それでも俺の戦闘意欲はまだ萎えてはいなかった。俺の振り上げたままの左手のドライバーを液晶画面の上に鋭く突き刺したのだ。外れた液晶画面はそのまま床に転がり落ち、同時に中の部品がばらばらと落ちてきた。
「どうだ、俺を怒らせるとこうなるんだ、わかったかこのやろう」
 俺ははあはあと肩で息をしながらとどめをさしたと確信した。やつの心臓部を貫いたのだ。勝利を確信し目を閉じて上を向いてその喜びに浸った。その時だ。床に落ちた液晶画面にリーチがかかりこの後に及んで7の数字が3個あっけなくそろったのだ。そして大当たりした時に開く台の下の大きな入賞口がぽっかりとその口を開き、次々と玉がそこに飲みこまれて行き、下の払い出し口に大量の玉が出てきたのだ。いたんだ俺の目から今度は涙が出てきた。俺は勝ったのだ。
「確変だ、連チャンだ」
この勝負に勝ったのだ。それだけで嬉し涙があふれてきていた。うれしさのあまりひるんだその時だ。その大きな入賞口から甘い香りのする白い煙が俺の顔めがけて噴出してきたのだ。
「うわ、毒ガスだ!」
俺はひるんだ。そしてその台からすぐに離れようとしたがへばりついている右手がそうはさせなかったのだ。
いきなりの事だったので俺はその煙をまともに吸い込んでしまった。
「ごほっ、ごほっ、…なにしやがる…なにしやがるんだ…」
おれは意識がもうろうとし、その時になってようやく開放してくれた右手もろとも、ついにその場に倒れこんでしまったのだ。予想もしなかった毒ガス攻撃で俺はくたばったのである。
 俺の負けだった。きょうこそ勝ってやると意気込んでいた俺の完全なる負けだったのだ。
俺は横たわったまま台を見上げた。
「いいか、今日のことは絶対忘れねーからな、おぼえてろよ、ごほっごほっ」     
 俺は体を引きずるようにしてその店から出た。ぼろぼろになった体で店から出た。俺はつぶやいた。「早くこの傷を癒して金を稼いだらもう一度あの台と勝負だな、今度、この店に来て十三番台と勝負をする時は、もっと強力な武器と武装、作戦が必要だな」

独り言を言いながら、十三番台の悪魔に復讐を誓い、家に向かってよたよたと歩いていった。その時だ。俺の背後から轟音が聞こえた。
 俺はふと空を見上げた。するとなんということだろう、よく晴れた空に、北側から飛んできたであろう黒光りの攻撃ミサイルが俺をめがけてまっしぐらに向かってきていた。
「やろう!ついにやりやがったな!!!!」 終

  2002年 茨城県鹿嶋市 初演

戯曲 故郷を想うとき

2012-03-25 15:44:35 | 演劇シナリオ



   故郷を想う時          
      
                                作 水野和彦            


            1


 山形県、新庄市。二月の下旬を迎えているその街は、テレビや新聞で報じられている春の予感を思わせるニュースなどとはうらはらに、厳しい寒さが街を囲む山々から吹き付けている。
新庄の駅から歩いて数分のファミリーレストラン。午後六時を過ぎたその店は家族連れやカップルで賑わっている。先に一人でその店に入っている原田涼子。コーヒーを飲んでいる。左手の逆さ時計を見る涼子。そのまま窓の外を見る。窓は外との激しい温度差で曇っている。外を走っている車のヘッドライトが滲んでいる。再び時計を見る涼子。そのままの視線で店の入り口を見る。
タイミングよく店に入ってくる女性、川瀬里奈。小走りで来た様子で少し肩で息をしている。神妙な面持ちで店内を見回している。そして涼子を見つけ、胸の前で小さく手を振る。涼子、満面の笑顔になる。

里奈    「早かった?」
涼子    「ううん、ついさっき。」

あわただしく手袋とマフラーをはずす里奈。

手を息で温め、大げさに震えるしぐさをする里奈。

里奈    「やっぱ、こっち、寒いわ。」
涼子    「今年は特別よ。雪はあんまり多くないんだけどさあ。」

ウェイトレスがオーダーを取りに来る。外国産のビールを注文する里奈。

涼子    「すっごい久しぶりじゃない?どうしちゃったのよ、急に。」
里奈    「おととしの、母さんの葬式以来かな?」
涼子    「そうだっけか?」
里奈    「確かそうよ。あの時はろくに話も出来なかった。天童のおじさんの所に
       電話したら、全然、知らない親戚だっていう人が来ちゃったりしてさあ。話す暇も       なかった。」
涼子    「ずっと、泣いてたし、そんな雰囲気じゃあなかったもんね」
里奈    「まだ、これからだって思ってたでしょう。て、言うか、まさか、そんなふうになる
       なんて思ってもいなかった。あの時、このまま自分も死んで
       もいいと思ったぐらいだった。」
涼子    「………」
里奈    「でも、もう、二年近くたったから平気になったけどさあ。それはもういいんだ。大       丈夫になった。… ところでさあ、みんなどうしてる?」
涼子    「妙子も智子もみーんな元気。今日は二人とも、話が急だったから都合つかなくて来       れないけど」

愛想のないウェイトレス、ビールを運んでくる。自分でグラスにビールを注いで飲む。

里奈     「忙しいんだ。」里奈、煙草に火をつける。
涼子     「妙子は決算の時期だからどうしても残業なんだって。智子は来週から試験が始ま        るから今回はどうしても無理とかって言ってた。」
里奈     「智子、仙台だっけ?」
涼子     「うん、学生寮に入ってる。」
里奈     「昔から、頭、よかったからなあ、智子は。」
涼子     「薬剤師の資格、取るとかって、こないだ言ってたよ。」
里奈     「ふうん、そうなんだ。で、たまには帰ってくるの?」
涼子     「ほとんど毎週。」
里奈     「毎週。」
涼子     「そうなのよ、やっぱり、こっちがいいんだって。」
里奈     「親離れ、してないんだ。」
涼子     「多分、そう。絶対そう。ところで、どうして急に来るって言ったのよ」
里奈     「暇だったからなんとなく。」
涼子     「本当にそう?それだけ?なんかあった?」
里奈     「別に、何にも。」
涼子     「それならいいんだけどさ。」
里奈     「……」

里奈     「でっもさあ、早いよね、高校、出てからもう三年もたつ。」
涼子     「あっという間だよ。」
里奈     「走ってる?」
涼子     「走ってない。ハラ、出てきたかも(笑)」
里奈     「走れない(笑)」
涼子     「とにかく、あの頃、よく走らされてたもんね。それしかなかった。雪ん中とかさ
        あ。」
里奈     「陸上部の連中、みんな元気なのかな。」
涼子     「すんごい元気よ。」
里奈     「肘折の合宿、覚えてる?」
涼子     「覚えてるに決まってる。忘れるわけない。早く忘れたいんだけど。」
里奈     「部屋で煙草吸って布団焦がしちゃってさあ。」
涼子     「あたしのせいでさあ。」
里奈     「涼子がいきなり煙を深く吸いこんで、むせちゃって、火のついた煙草、布団の上        に放り投げたんだ。」
涼子     「あの時の、塚田先生の顔、マジで怖かったもんね。」
里奈     「でも、あのあと、泣きそうにもなってた。自分の首も危ないと思ったんだよ、あ        ん時。」
涼子     「夜中に山道、三週も走らされた。苦しいのと怖いのでみんな泣きながら走ってた       もんね。」
里奈     「おかげさまであれで足腰が強くなったんだ。」
涼子     「あたしはあれで、一生、煙草は吸わないと思った。」
里奈     「あたしはあれで煙草覚えた。(笑)面白かったよね、あの頃。」

涼子     「東京、どう?」
里奈     「おもしろい。」
涼子     「あたしなんか、東京の生活なんて想像もつかない。わかるのはここよりあったか        いってことぐらい。」 
里奈     「東京、雪ないからなあ、雪なんかうんざりだ。見たくもないよ。雪のか
        わりにそこらじゅうに人が積もってるけどさ。」
涼子     「積もるほど人が多い?」
里奈     「まあ、そういうこと。涼子にはわかんないだろうけど、そんだけ人が多
        い。金曜の夜の歌舞伎町なんて、まっすぐ歩けない。もっともみんな酔っ払って        るから真っ直ぐあるってないんだけどさ。」
涼子     「毎晩、お祭りみたいなもん?」
里奈     「(笑)まあ、早い話がそんなもんだよ。」
涼子     「ふうん、で、みんなどこ行くのよ?」
里奈     「遊びに行くに決まってるじゃん。」
涼子     「どこに?カラオケとかクラブとか?」
里奈     「まあ、そうだけど、ようは酒だよ酒。酔っ払って騒いで男が女追っかけ
        て、女が男をだまして、そんなのが朝まで続く。馬鹿な男があたしみたいなのに        だまされて、そんで気がついてみたら自分がだまされたりしてさ。お酒とお金と        男と女がぐるぐる回ってんだ、東京は。」
涼子     「ん、よくわかんないなあ。あたしにはよくわかんない。それより、男をだまして       んの?」
里奈     「もののたとえだよ。そんな感じってこと。だまされたことはあるかもしれないけ       ど、だましたことはありません。」
涼子     「ならいいけど。それより里奈、そのお化粧ってさあ、向こうじゃみんなそんなな       の?」
里奈    「 あ、これかあ、これは向こうでもちょっと特別かな、まあ、このぐらいなら東京
       にはいくらでもいるけど。」
涼子    「さっきからここ通る人、みんな横目で見てる。このあたりじゃあかなりなもん         よ。」
里奈    「知ってる。だから田舎っていやなんだ。なんか変わったもの見るとすぐ物珍しげに見      る。そんですぐにあれは変わってるとかさあ、どこの誰だとか言ってさ。そんであ       りもしないこと隣近所に言いふらす。だから田舎はいやなんだよな。」
涼子    「気にしなくていいんじゃない。どっちにしてもここには住んでないんだから。そん      なことよりもさ、高校出てからもう三年もたつんだよ。なんかすっごい早い。三年で      そんなに東京になじめるものなの?」
里奈    「一年もいりゃあ充分だよ。すぐなれる。でも最初の一ヶ月は電車の乗り方とか駅の       中とか覚えんの大変だった。酔っ払っても家まで帰れるようになれば立派な都会人       よ。向こうはさ、こっちと違ってなんもかもが変わるのが早い。早すぎる。こっち      は何年たっても変わらないだろう。どこぞのじいちゃんが死んだとか、台風でサクラ      ンボがやられたとか、そんなのしかない。」
涼子    「確かにそうかも。」
里奈    「東京なんかさ、半年もたてば住んでる人間も町も流行の洋服もみんな変わっちゃ
       う。彼氏も彼女もとっかえひっかえだし。でも、ほとんどの人間があたしみたいに      田舎から出てきたもんばっかりなんだ。みんなそれをはずかしいことのように思って      てさあ。ろくに挨拶もしないでアパートの隣の部屋に誰が住んでるかもわからない。      隣の部屋で誰かが死んでてもしばらく誰も気づかない。」
涼子   「なんで誰も気づかない?」
里奈   「一人暮らしだからに決まってるだろ。誰かが気がつかないとわからない。電話かけて      いつも出ないとか、親しい人が不審に思ってたずねてくるとかさ。じゃないと誰もわ      からない。」
涼子   「で、どうなっちゃうの?」
里奈   「死んで腐って臭って警察来て、あ、死んでる、なんてそんな世界。」
涼子   「どうしてそんなところ、住むの?なんかつらい、さびしくない?」
里奈   「確かにね。でも田舎にいるよりはまし。少なくともあたしにとってはね。そんだけだ      よ多分。田舎は面白くない。東京は面白い。そんだけだよ。まじめに考えればさあ東      京でその気になれば、いくらでもお金が稼げるってことかな。涼子はずっとここだか      らそんなのわかんないと思うけど。わかんないほうがいいのかもしれないけどさ。」
涼子   「確かにわかんない。でも、どうやってお金、稼いでんのよ。水商売?」
里奈   「今はキャバクラ。わかる?」
涼子   「そんぐらいはわかる。」
里奈   「これが結構稼げるんだ。頑張れば結構稼げる。でも、出てくお金も多いからほとんど      残らないんだけど。世の中、不景気って言うけど結構みんな持ってる。あたしの客な      んか、お金に糸目つけないってのもいるよ。男ってみんな馬鹿だよ。店に通いつめ       て、結局、最後はあたしの体が目的なんだろうけどね。」
涼子   「まさか、そこまでしちゃってるの?」
里奈   「さすがにそこまで、出来ない。彼氏いるし。お店の子で売っちゃってるのもいるけ      ど。」
涼子   「彼氏、いるんだあ。はあ……。でもこっちでも山形の市内でそんなことしてるのもい     るってうわさを聞くけど。彼氏って何やってる人?」
里奈   「とび、最近、スカイツリーとかやってる」
涼子   「へえーすごーい」
里奈   「そういうご時世なんだよ。こっちも開けてきたってことじゃない。」
涼子   「新幹線がここまで来るようになってからなんか変わった。変になったような気もす       る。かなり無理すれば東京に日帰りで遊びにいける。」
里奈   「近くなったってことかな。でもやっぱりここは遠いけど。」
涼子   「ねえ、さっきから気になってるんだけどさあ…」
里奈   「ああ、これね。こんなの普通よ、いまどき高校生でもやってる。」
涼子   「…刺青…。本物?」
里奈   「うん、あたしは胸だけだけど、肩とか太ももとかいろんなとこに書いてるやついっぱ      いいるよ。
涼子   「……」
里奈   「書きたいんだったらしょうかいするよ。ちょっと痛いけどいい色出すやつ知ってる。
涼子   「いい、いい、そんなのぜったいいい。」
里奈   「(笑)そりゃそうだ。涼子に、こんなの似合うわけない(笑)」
涼子   「なんか話だけ聞いてると東京で何してるんだかわけわかんない。いつも何食べてん
の?」
里奈   「大体、起きるのが夕方だろう。そんでコンビニで買ったもの食べて、店に出たら客が      頼んだもの適当につまんで、そんで、店、跳ねたら、店の子とラーメン屋かなあ、大      体そんな感じ。」
涼子   「だめだあ、そんなのじゃ絶対,体、壊す。」
里奈   「ビタミン剤、いろいろ飲んでるから大丈夫よ。」
涼子   「絶対よくないよ。ビタミン剤が体に悪いとは言わないけど、あんまりいいとも思えな      い。ちゃんとご飯食べなきゃだめよ。」
里奈   「東京のご飯、まずいんだあ。あれってきっと水が悪いからなんだろうな。生水飲む       と、やっばいなってつくづく思う。」
涼子   「こっちで育った人は絶対そう思うよね。」
里奈   「当たり前だよ。」
涼子   「いっそのこと、こっち帰ってきてこっちで仕事見つけて、こっちで暮らせばいいじゃ      ないよ。」
里奈   「帰ってこれるわけがないよ。」
涼子   「どうしてよ。」
里奈   「去年、かあちゃんが死んだでしょ。こっちに親がいるわけでもないし、親戚もいな       い。ずっと借家だったから帰る家もない。場所がない。とおちゃんはあたしがまだち      っちゃいときに女作って家、出ちゃってるしさ。酒田のほうにいるって話をずっと前      に聞いたことあるけどもう関係ない。ずうっとかあちゃんに女手ひとつで育てられて      高校まで出してもらって。だからいつか東京でマンションでも買って、呼んで暮らそ      うと思ってた矢先、かあちゃんが死んじゃって。帰ってきたくても帰る場所がないん      だよ。帰る意味がないんだよ。」
涼子   「でも、里奈の故郷はここだよ。ここしかないんだよ。ここで生まれてここで育ったん      だよ。確かにこの辺、冬は大変かもしれないけど、夏になったら肘折の山のほうなん      かすっごいきれい。いまだにここで生まれてよかったと思うぐらい。わざわざ都会で      そんなにすさんだ生活を我慢して送ることなんかないじゃないよ。」
里奈   「すさんでなんかいない、我慢もしてない!こう見えても東京の生活、楽しんでんの       よ!涼子にはわからないだけ!」
涼子   「……里奈…」

寒冷地の夜の老け込みは早く、店の客退けは早々で、まばらになっている。強力な暖房
がかけられているが寒々しい空気が流れている。


涼子   「帰ってきちゃえばいいでしょう」
里奈   「こっちに帰ってきてコンビニで働いてあんたらとファミレスでお茶飲んで暮らせっ       て?さっきも言ったけどあたしには帰る場所もないし意味もないんだよ。」
涼子   「東京にいるよりはぜんぜん幸せだと思う。」
里奈   「どこが?向こうとこっちじゃ稼げるお金のケタが違うんだよ。時給七百円で、コンビ      ニで弁当、売ってどこが幸せなのよ。」
涼子   「でも、そうやって暮らしてる友達もいる。」
里奈   「あたしにはもうそんなつつましさはないのよ。」
涼子   「そんなことない!あたしの知ってる里奈だったらそれぐらいのこと充分
出来るはずよ。」
里奈   「住むところが変わって時間が過ぎれば人は変わっちゃうものなのよ。」
涼子   「そんなことないよ。そうだ!こっちで暮らしながら、だれかいい人見つけてさあ、結      婚でもしちゃえばいいんだよ。そうだよ、家族を自分で作っちゃえばいいんだ。そう      だよ。」
里奈   「相変わらず涼子は涼子だ。」
涼子   「あたしの言ってること、なんか変?」
里奈   「ぜんぜん変じゃない。でも今ののあたしでは結婚なんて到底無理。」
涼子    「どうして?」
里奈   「それよりもさ、自分のほうはどうなのよ、彼氏とか出来たのか?」
涼子   「い、一応。」
里奈   「へえ、いるんだ。で、なにやってる人?」
涼子   「山形の中央郵便局。」
里奈   「うわ。超堅気じゃん。」
涼子   「でも、外勤だよ。」
里奈   「外勤って?」
涼子   「配達。」
里奈   「べつにそんなのどうだっていいじゃないこの不景気にそんないいとこないって。」
涼子   「いっつもやめたいとか言ってる。」
里奈   「なんで?」
涼子   「仕事、面白くないって。」
里奈   「面白い仕事なんか絶対ありえない。」
涼子   「うん、そう思う。」
里奈   「殴ってでもいいからそこにしがみついてろって言っときなよ。あたしもそう言ってた      って。関係ないけど。」
涼子   「そうだね。」
里奈   「結婚する気あるの?」
涼子   「向こうはあるみたい。でもあたしがまだ踏ん切りがつかない。結婚するって決めたと      してもわくわく出来ない。よくわかんないんだ。」
里奈   「そりゃあ、涼子がまだ遊びたりないからだ。」
涼子   「そんなことない。べつに遊びたいとも思わない。」
里奈   「男、いくつなの?」
涼子   「二十七。」
里奈   「ちょうどいい。」
涼子   「二つ三つ上がいい。」
里奈   「決めちゃいなよ。涼子が、うんって言えばいいだけのことだろう。迷うことなんかな      いよ。」
涼子   「そうなのかなあ。」
里奈   「涼子の場合、特にそう。」
涼子   「どういう意味よそれって。」
里奈   「そういう意味よ。」
涼子   「よくわかんないなあ。そんなことよりもさあ。ねえ、里奈。あたし、思ったんだけ       ど、今夜、家に泊まって。今から駅行けば切符、払い戻しが出来る。なにも明日の朝      に帰ってもいいんでしょう?ねえ、うちに泊まって。」
里奈   「そんなこと出来ないよ。」
涼子   「ねえ、どうして突然、あたしに電話なんか、かけてきて今日帰るなんていったの?し     かも日帰りのとんぼ返りで。どうして?」
里奈   「たまに涼子の顔見とかないと忘れる。あたしの顔も見せておかないと忘れられる。そ      れじゃあ困るからよ。」
涼子   「ねえ、今夜、家に泊まって。ねえ、そうしようよ。」
里奈   「涼子の顔、見ただけで充分だよ。それに…」
涼子   「それに?」
里奈   「涼子のお父さんやお母さんにこの顔、見せらんない。おめえ誰だって言われる。」
涼子   「そんなことない。」
里奈   「今は無理、泊まれない。何時か笑って泊まれる時が来るって思うけど、そう。そうで      も思ってないと東京で生きてらんない。やってらんない。」
涼子   「里奈…」

沈黙の時間、互いにテーブルだけを眺めている。

涼子   「本当に今夜、帰る?」
里奈   「うん。」
涼子   「そろそろ行かないと乗り遅れる。」
里奈   「駅までいい?」
涼子   「うん。今度、いつ来る?
里奈   「・・・・・・」
涼子  「ごめん、そうじゃない、いつ帰れるの?」
里奈   「何とか夏には帰って来たい。来てもいい?」
涼子   「当たり前でしょう。ここ、里奈の故郷なんだから。帰るところはここしかないんだか      ら。」
里奈   「・・・・・・」
涼子  「その前に東京に一回、遊びに行ってもいい?案内とか頼んでもいい?渋谷とか行ってみたい。」
里奈   「いつでもどうぞ。そのかわりおっかないかもよ。」
涼子   「おっかない?襲われる?」
里奈   「うそうそ、ぜんぜん大丈夫。もしもなんかあったら走って逃げればいい。それが一番      いい方法なんだ。」
涼子   「あたしたち、だてに陸上やってたわけじゃあない。」
里奈   「甲州街道突っ走って、奥多摩の山道走ればいい。だれもかなうやついないよきっ        と。」
涼子   「そうだよ、絶対そうだ。」

誰もいなくなったレストラン。窓の外には白い雪が降っている。故郷を昔と同じように寸文の狂いもなく、真っ白に染め上げている。
里奈の乗った東京行きの最終新幹線。まばらな乗客のの新幹線。里奈は座ろうともせずにドアの淵に立つ。ゆっくりと流れている故郷の街の灯り。もう当分、この街にくることもないんだろうと考えている。街並みが途切れ、新幹線はトンネルに入って轟音を上げる。里奈はそれを待っていたかのように声を出して泣き崩れている。

原発運転大賛成

2012-03-22 20:46:36 | ゲンシリョクハツデン
軽なのにこのサイズなのに室内はこの広さ。
軽なのに史上最高の広さ。室内空間。
驚きのスペース。缶ビールだって500ケース、
一部、まやかしがありますが、軽自動車のうたい文句にこんなのがたくさん並んでる。
限られたサイズの中で必要以上に余計なスペース。宣伝は
3.5㎥の中に4.2㎥のスペースがと言っているようだ。これはどー考えても物理的に
無理でしょう。広ければいいって問題ではない気がする。
軽自動車で広さを求めるのなら普通自動車でいいと思う。
孤独を好む人などにとっては狭さも魅力である。この車体サイズながら室内は
この狭小空間。孤独を好むあなたに最高の居場所を。そんな車があったなら
一部でかなり売れるのではあるまいか。省エネ、エコなどと騒ぐが時代は
何かたのしみを奪い去っている気がしてならない。
昭和52年、僕は埼玉県大宮市に本拠を置く暴走族の会員だった。それはそれは
道交法を遵守するときはする優秀な会員だった。その名を埼玉毘沙門天といった。
土曜日の夜8時に秋ヶ瀬公園に集まる。目指すのは晴海埠頭であった。
数百台のひねくれた車が終結する。それはそれでオレにはお祭りだった。
シャコタンはもちろん、高速ウインカー、ドアミラーは速攻検挙、今にしてみれば
信じられない時代だった。そのメンバーの中で親しくしていたタダシという男は
フェンダーミラーがだめでドアミラーが違法改造でケンキョなら、それならばということで
フェンダーミラーの足の部分を塩ビパイプでドア付近まで伸ばした。
警官とのやり取りでこれはフェンダーミラーだ、いや違う、これはドアミラーになる
といったやり取りがおかしくておかしくてオレは笑い転げていた。タダシは
当時マツダサバンナというロータリー高速車に乗っていた。
その車の燃費は800メートル/リットル。恐るべしでありますね。
たとえば銚子で満タンにする。満タンで佐原まで到達できない。小見川あたりが
限界。オレのセリカ1600GTVは3㌔/リッターだった。
しかし、しかしである。そのころ燃費という言葉は存在しなかった。
存在する言葉はハヤサ、モーテル(死語)のような室内の装飾、マフラーから発する
DOHCのエンジン音、カセットテープのオーディオ、そんなことばかりだった。
昭和50年代。そこには明日があった。若者も、年寄りも、犬もネコも、街も車も
牛乳石鹸も表参道も道玄坂も浅草ほうずき市も首都高も目黒エンペラーも成田の抗争も
錦糸町も全てががまぶしく輝いていた。
その時代を生きたことに感謝すべきだろう。そして今になりふと気が付いてこの国を見れば
すっかり荒んで荒廃している。経済問題、年齢構成比、自然災害の脅威、目をそらせながら
生きている。
確実に悪くなる一方の時代を生きていかねばならないことは決定的となった。
少し前までは20代の頃に戻りたいという気持ちがあった。20代の頃から再びい生きなおすのは
とてつもなくめんどくさい。そう思うようになった。
しかし今は違う。早く60代、定年という仕組みを過ぎ、国から月々、年金という小遣いをもらい生きたいという気持ちが強くなってきた。人間とは年齢とともに考え方は劇的に変化するものである。
それはもしかしたら本能的な死への準備ではなかろうか、そう思うのである。
そう今は思っていても明日になるとまた違うことを思っている。その繰り返しで年を重ねている。
昔、子供の頃、親の実家で飼っていた犬が重度の皮膚病に侵され、余命いくばくもなことが明確になった。当時オレの爺さんにあたる人は、このまま最後は土にかえるのだと言い。船で対岸の茨城県の松林の中にその犬を放しにいった。
あれだけ横たわり苦しんでいたその犬はその時、じっとオレの目を見つめていたのを思い出すのだが、その翌朝、干潮の朝、玄関の前でその犬は静かに笑って人間が起きてくるのを待っていたのだ。
犬は干潮を利用して限られた寿命を使い1㌔を超える海峡を泳いでわたってきたのだった。
その夜、その犬は玄関で堂々と死んだ。
死ぬことは怖くないこと、早くその心境に届きたい。そんな気分である。なんだか文章になっていない様な気がする。ま、いいかな。