●15音楽鑑賞に傾倒(その1)洋楽
昭和52年、1977年から3年間の柏崎市立第二中学校時代は、まさに洋楽に目覚め傾倒した年月だった。
小学生時代の娯楽メディアは専らテレビであったが、その頃全盛の音楽番組で流行の歌謡曲などを聞き流していても、浮ついた内容の歌詞や売らんがための旋律が鼻につくようで、何ら琴線に触れるような感じにはならなかった。
高学年になって級友内で深夜ラジオを聴くことが流行り始めると、煌びやかなテレビにはあまり出演しないややマイナーなフォークソングなどを耳にするようになって、歌詞の意味合いの深さやウッドギター一本のシンプルでかつ心に響く音調などに関心を持ち始めていたところだった。
一方で、6歳年上の兄はその頃既に中学生で、当時は大方が通過する"洋楽の洗礼"を受けて感化されており、それら迫力ある楽曲に適したオーディオシステムを、兄弟二人が一部屋の子供部屋に整備したものだから、先に就寝する私は子守唄のように西欧の楽曲を耳にするようになっていた。
ラジオ深夜放送でイヤホンの奥から漏れるように伝わってくる繊細な四畳半的フォークソングと、口径30cmのウーハーを持つスピーカシステムから空気を揺るがすように体に響き渡るブリティッシュまたはアメリカンなロック。この対局のコントラストが私の音楽趣味をレンジが広く豊かなものへと導く基盤を作ったように思う。
そして、私ばかりでなく友人の中においても少なからず、中学生になるというワンステージ上がったところで何故か洋楽に目覚めてしまうものだったのだ。メディアやコンテンツが少なかった昭和時代の倣いだったのかもしれない。
中学一年生の私にとっての最初かつ最大のインパクトは、前年にリリースされてラジオでも聴かれるようになってきていた”イーグルス”のシングル「ホテルカリフォルニア」。言わずと知れた不朽の最高傑作に洋楽ビギナーの段階で接したものだから、日ごろテレビに氾濫するアイドルの歌謡曲などは一気に忘却の彼方へと押しやられた。どの歌手でも同じような編成と音質に聞こえる日本の歌謡曲の伴奏に比べて、なんと想像力を掻き立てる豊かな芸術性だろう、なんと静かなるも激しい血流が感じられる楽曲なのだろう。一撃で心酔したものだ。
兄からは基本的に触るなと言われていたオーディオセットであったのだが、弟というのはそんな忠告など聞きはしないものだ。兄の不在を見計らって、既に買い置かれていたアルバム「ホテルカリフォルニア」のLPレコードをターンテーブルに乗せ、塩ビ盤に傷をつけないよう、細心の注意を払いながらダイヤモンド針を下ろす。部屋を揺らすような大音量にして例のイントロが始まると端から感動を禁じえなかった。
マスターピースと呼べるそれに続く「ニューキッドインタウン」は、表題曲の荘厳ともいえる完ぺきさに比べて拍子抜けする軽さで仲間内ではがっかりという者も居たが、私はその緩急が懐の深さというか大人びて感じられて好きになった。全ての曲が個性を違えつつもれなく名曲かつ傑作であり、思い返せば、多感な洋楽ビギナーがこれほど円熟の極みの様な作品集にほぼリアルタイムで初期に触れられた僥倖とさえいえるのではなかろうか。その以降の審美眼を良い水準にしてくれたと思うのだ。
皮肉なことに”イーグルス”については、この超名作アルバムをピークにして既にバンドとしては終焉に近づいていたようで、中学3年生の時にリリースされた「ザ・ロングラン」を節目に活動休止してしまう。「ホテルカリフォルニア」があまりの素晴らしさだったので、次のこのアルバムには色々な意見や論調があったが、私はそんなことは気にならずに、全く別の舞台を展開してくれたものとして絶賛した。2年経て部活も卒業して少し大人びた私には、シニカルでチョイ悪感が強まった同作は、高校進学のための受験勉強という孤独な闘いに臨む中で日々気合を入れてくれる相棒のようなテイストだったのだ。
かくして”イーグルス”には活動休止直前のいわば終盤の作品から中学生時代に出合ったものだから、高校に入学して一息ついたら直ぐにアルバムを遡って聴くことになる。「ホテルカリフォルニア」の前作「呪われた夜」や「ならず者」に大いに感動させられ、「オンザボーダー」や「ファースト」に広大な大陸の果てしない世界を見出すような気持ちにさせられるのであるが、書けば止まらなくなってしまうし、ここは中学時代の思い出語りの場なので別の機会に触れたい。
更には、中学三年生の時に、同級生の中に洋楽を小学生時代から聴き込むような強者がいて、彼と近い席になったことから膨大な洋楽情報が日々もたらされるようになり、教わった楽曲を聞きかじっていく中で、やはりお約束というか、プログレッシブロックにもハマることになる。とりわけ”ピンクフロイド”だ。
「ダークサイドオブザムーン」「原子心母」「ウイッシュユーアーヒア」などの傑作に大いに精神を揺さぶられることになるのだが、高校に入ってからの「ザ・ウオール」以降や、割と遅れて聴き込み始めた”イエス”なども併せて書き綴りたいので、これも別に改めて洋楽を掘り下げる時に触れることにしたい。
(「柏崎中学生時代15「音楽鑑賞に傾倒(その1・洋楽)」」終わり。「柏崎中学生時代16「音楽鑑賞に傾倒(その2・邦楽)」」に続きます。)
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↓柏崎市立第二中学校時代に聴いた名盤たち。また聴きなおしたい。



