新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課26「つばめ産学協創スクエア事業(その2)」編

●つばめ産学協創スクエア事業(その2)

 改築まもない社屋二階の会議室にて待ち受けていた社長は、市の財政担当である私に切り出した。「インターンシップ受入と交流のための施設を、市が危険な空き家を撤去して更地となっている旧燕市の市外地に建設したい。費用は地元産業界の有志で拠出しあう。市には土地の貸与と、取組内容の公益性を踏まえた運営費支援をお願いしたい」。社長は続けて施設の外観や内部部屋割りなどイメージ図を開いてみせてくれた。さすが民間の仕事は早い。概算による建築費や施設整備のランニングコストなども既に整理されていたので驚きだった。
 それにしても建築費用である。資料に記載された概算額は、財政査定を長年担当してきた私としての相場観からも妥当で、むしろ低廉であり、そこが割高になりがちな公費建設と民営との違いをリアルに感じさせた。それにしても、結構な金額である。市に負担は求めないというのだが、それだけの出資が中小企業中心の業界で集まるのか。これは決して老婆心とか興味で聞くだけではない。その先に運営費などで市費を当て込むのであれば、確実に施設が出来るという担保が無いと予算は計上できないのだ。
 社長は、ほぼ目処は付いているというが、私の言う予算措置に向けた確度の必要性を即座に理解して、出資が不足するというイザという事態のときも想定して確実に建築費を用立てできる資金繰りについて明示すると応答してくれた。また、運営費の財政支援のあり方についても市予算を充てる上での条件や範囲、程度などについて、次々と繰り出す私からの意見や助言を良く理解して調整していくこととしてくれた。大変失礼ながら、県庁勤務の中では、この手の話において、ただひたすらに公費をねだるばかりの民間団体等とのやり取りの経験が少なからずあった私は、面談前まではうがった懸念もあった。しかし、地元に根を張る中小企業の社長だからなのか、自律意識というか自己責任意識が強いと感じられた。以前、地元中小企業の経営者と談話した際に「市役所なんて地場産業の俺たちが食わしてやっているようなもんだ」といった趣旨を笑い話として聞かせてもらったことがあった。行政に頼りすぎない矜恃を改めて感じさせて頂いた。
 その後、予定通り産業界の負担によりインターンシップ交流施設は建設され、併せてその運営にあたる機関として、これも産業界主導により「公益法人つばめいと」が設立された。平成29年度スタート直後からの目覚ましい事業実績などはホームページで見て取れるのでここでは記すまでもない。私が燕市の出向を終えてからの平成30年度以降も取組に対して各種表彰を受けたなどといった報道を見聞きすると嬉しく頼もしいかぎりだ。
 インターンシップを切り口として産業振興の取組は、正に市勢の増進に資するものなので、施設の運営への市による財政支援は滞りなく予算措置することができた。時を同じくして制度化された地方創生推進交付金という国費の活用にも適う内容であり、財源確保の面でも適時の取組であった。さて、市の予算措置をするにあたり、今までに無い真新しい事業になるので、事業名称を決めなくてはならない。後に産業振興担当部署に事業は引き継がれるのだが、初度の企画調整を主導してきたとして企画財政課で発案し市長に伺おうということになり、課員と私で色々なバリエーションを考えて市長と協議した。直接的な主人公であり取組の立役者である「産」と「学」の文言を使うことはデフォルトのように決まり、協働して創造していく取組との理念を表す「協創」という文言は課員担当主任のイチ押であった。そして私としては各界関係者の行き交い出会い連携する場のイメージで「スクエア」の単語を独自に発意したつもりでいるのだが…。いずれにしても、市長裁定により「つばめ産学協創スクエア事業」と銘々された取組は、燕市のみならず新潟の県央地域、ひいては県全体に、それに準じた取組も含めて大いに好影響を与え、伸展していくに違いない。

(「燕市企画財政課26「つばめ産学協創スクエア事業(その2)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課27「あっという間の2年間で放置の果てに内示電話(その1)」編」に続きます。)
☆ツイッターで平日ほぼ毎日の昼休みにつぶやき続けてます。
https://twitter.com/rinosahibea

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「回顧録」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事