新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課25「つばめ産学協創スクエア事業(その1)」編

●つばめ産学協創スクエア事業(その1)

 燕市役所へ出向した2年間において、企画調整に関わった施策の中で最も印象深く、かつ、自らの知見向上にも大いに役立ったのが「つばめ産学協創スクエア事業」だ。
 この事業は、産業界と教育機関、行政、金融機関等が連携して、ものづくりに関心のある若者を集め、インターンシップなどを通じて市内事業者と交流することで、UIターン就労や創業の促進、人材育成に結びつけ、産業の振興と地域活性化を目指すことを目的とするものだ。
 若者の大企業志向や東京一極集中が強まる中で、新潟の中小企業、とりわけ伝統的な製造業は、なかなか新卒者に目を向けてもらえず、燕市の地場産業においても受注が好調なわりに職員採用に苦戦していたので、インターンシップを通じた大学生などの就労増が喉から手が出るほど欲しいのであった。露骨にそう言ってしまえば、産業界の利益のために偏重するかのような取組ということになる従来型の考え方に陥りがちなのだが、そこはこの企画の中心人物たる市長と商工会議所幹部、新潟大学の工学部教授が、皆が共に柔軟な発想を持つアイデアマンといわれる人たちであったので、狭隘化しないような企画展開が図られた。
 すなわち、目先の採用者確保に資することはもとより、事業展開の行く末として、将来に向けた地域における優秀な人材確保に繋がることや、すぐに就職に直結しなくても燕の産業などを理解した学生が全国に増えていくことで、仕事上の取り引きに限らず、さまざまな形で関わり応援してもらえるなどの波及効果が期待されること、また、インターンシップ受け入れ企業にとっては、学生に説明する立場となる主に若手社員の成長や、商品開発や販路拡大にもつながるかもしれない学生目線による率直な意見を聞ける機会が増えるとともに、大学や学生の情報発信により、学生などからの企業認知度の向上という効果も期待できるとしたのだ。
 企業側も学生都の交流から学び成長したいという学生を主人公とした打ち出しは大学など学会を引きつけ、地場産業全体としての振興に通じる取組は行政や金融機関を引きつける。単に中小企業が寄り集まってインターンシップを充実させようぜ、という企画ではなく、こうした公益性か高く、かつ、地域としての儲けにしっかりと繋げるという強かなコンセプトが、日頃、それぞれで縦割れになりがちな、産業、学術、金融、行政を引きつけ合わせる仕掛けとなったのだ。
 公益性の高い企画ということになれば、行政が税金を投じて場所を用意するというのが、この手の産学官金連携の取組に今までよく見られた構図なり役割分担だったと思う。ただ、今の時代、ソフトが重要であり、それを展開する現場は既存の施設などを活用しようというのがトレンドだ。燕市においては、平成の三市町合併と人口減少を踏まえて、公民館などハコモノ施設は統廃合を考えていかねばならない状況だし、そうした余剰施設を、今時の学生向けに少し小綺麗に改修でもして、対応するくらいに抑えないと。企画財政課長として初めてこの企画を聞いた時には、低成長時代の下で抑制的な市財政の運営が基本としなければならないとの意識もあって、もともとの発案者である産業界の幹部から事業展開のための場造りに市へ相当な予算要求が来るとしたら、その査定調整で結構もめるかもしれないなあ…と先が思いやられたのだ。
 しかし、発案者からは思いがけない話を聞くこととなった。「取組を推進するための施設は産業界の出資のみにより建造する」というのだ。ただ、その施設において展開される取組については内容により市から財政支援を受けたいという。いずれにしても予算調整が関わるので、企画財政課長として発案者である商工会議所幹部が経営する製造業社屋に伺い、詳しくお話を聞くことにした。

(「燕市企画財政課25「つばめ産学協創スクエア事業(その1)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課26「つばめ産学協創スクエア事業(その2)」編」に続きます。)
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