令和6年10月31日7:02、AERAdot.より配信の「愛子さま振袖姿で2回目の園遊会 皇族方の「並び」を超えてご一家の会話に思いを馳せてしまうワケ」と題する記事がある。
この中に、「象徴天皇制に詳しい」という河西秀哉氏のコメントが掲載されている。
-----引用開始-----
■悠仁さま出席なら愛子さまより前
「天皇陛下と皇后雅子さまの後に、皇位継承順位1位で皇嗣の秋篠宮さまと皇嗣妃の紀子さま、天皇家の内親王である愛子さま、そして皇嗣家の内親王である佳子さまという順番です。これは皇室典範にある“身位(しんい)”通りの並び順です。
ご身位とは、日本の皇族の皇室内部での身分及び地位の差異を示す区分のこと。現代日本の皇室、皇族の身位は、天皇陛下、皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の順です」
秋篠宮家の長男、悠仁さまは、9月6日に18歳の誕生日を迎え、成年に仲間入りされた。今回の園遊会には出席されなかったが、今後、ご出席される場合、このご身位からすると、「秋篠宮さまと紀子さまの間か、秋篠宮ご夫妻の隣か、いずれにしても愛子さまの前になります」と河西氏は付け加える。
-----引用終了-----
河西氏の言っているのがおかしいというのは、以前このブログで「愛子さまの順位についての正しい理解」という記事を書き、そこで示した通りなのだが、実に奇怪な考え方だ。
「これは皇室典範にある“身位(しんい)”通りの並び順です。」とあるのだが、河西氏は身位という言葉をどこから持ってきたのだろう。
皇室典範には「身位」という言葉は出てこない。
皇室典範の第5条には「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。」という規定があり、並べ方としては河西氏の言う「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の順」と合致している。
ただ、これらは「親王」「親王妃」「内親王」などの概念としての並べ方なのであって、具体的な個々の親王、親王妃、内親王の方々の並び順を示すものではない。
そのことは、例えば、歌会始の詠進歌の並び順を見ればよく分かる。
宮内庁のホームページに「お題一覧(昭和22年から)」というページがあり、これでどのような並び順になっているかが分かるのだ。
例えば、平成6年を見ると、当時の天皇の娘である清子「内親王」は、天皇の弟である正仁「親王」よりも先になっている。
個々の方々の並び順がどうなるかについては、皇族身位令という旧制度下の法令で定められており、現在も基本的には踏襲しているのである。
河西氏の謎なところは、「身位」という言葉を持ち出しつつ、どうも皇族身位令を読んでいないらしいところだ。
「皿婆」がどうのといったネット記事を読む前に、「皇族身位令」をまずは読まなくてはいけないのではないか。
皇族身位令については、このブログの「愛子さまの順位についての正しい理解」で紹介したところだが、個々の方々の並び順につき、天皇が最初というのは当然の前提とした上で、以下のように定めている。
皇族身位令(昭和22年5月2日廃止)
第一条 皇族ノ班位ハ左ノ順序ニ依ル
第一 皇后
第二 太皇太后
第三 皇太后
第四 皇太子
第五 皇太子妃
第六 皇太孫
第七 皇太孫妃
第八 親王親王妃内親王王王妃女王
第二条 親王王ノ班位ハ皇位継承ノ順序ニ従フ内親王女王ノ班位亦之ニ準ス
前項ノ規定ニ依リ同順位ニ在ル者ハ男ヲ先ニシ女ヲ後ニス
第三条 親王妃王妃ノ班位ハ夫ニ次ク内親王女王ニシテ親王妃王妃タル者亦同シ
他の条文もあるのだが、天皇御一家と秋篠宮家の関係であれば、この3つの条文で十分だろう。
第一条で「第八 親王親王妃内親王王王妃女王」とあるが、これだけでは個々の「親王」「親王妃」「内親王」の並び順が分からないので、それを説明したのが第二条と第三条である。
第二条で「親王」「王」は皇位継承の順序、「内親王」「女王」については皇位継承資格はないが皇位継承の順序に「準ス」(長系長子だが姉より弟が先)こととし、第三条で「妃」は夫の次という基本ルールが定められている。
これを踏まえて、天皇御一家、秋篠宮家(悠仁親王殿下を含む)の並び順を示すと以下のようになる。
天皇陛下
皇后陛下
愛子内親王殿下
秋篠宮殿下
秋篠宮妃殿下
悠仁親王殿下
佳子内親王殿下
これが皇室の伝統を踏まえた並び順として、本来の姿なのである。
自ずと家族単位となるのだ。
ただ、ややこしいのが秋篠宮殿下の扱いだ。
単なる皇嗣であれば上記のとおりなのだが、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行法」が影響してくる。
同法第5条で「皇太子の例による」と定められ、令和2年11月には立皇嗣の礼が行われた。
このことを踏まえ、秋篠宮殿下の配置を皇太子と同様にすることとした場合は、以下のようになる。
これが現在の並び順ということなのだろう(悠仁親王殿下については未実施)。
天皇陛下
皇后陛下
秋篠宮殿下(皇嗣)
秋篠宮妃殿下(皇嗣妃)
愛子内親王殿下
悠仁親王殿下
佳子内親王殿下
これは皇族身位令第一条で、「皇太子」「皇太子妃」の位置づけが「第八 親王親王妃内親王王王妃女王」グループとは別枠の先順位になっていることによる。
家族単位の並び順ではなくなってしまったが、それは、愛子内親王殿下が秋篠宮家の並びに入り込んだのではなく、秋篠宮殿下と秋篠宮妃殿下が天皇御一家の並びに入り込んだというのが実態である。
河西氏にしても家族単位の並びの方が望ましいという考え方のようだが、それを阻む原因は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行法第5条と立皇嗣の礼なのであり、秋篠宮殿下と秋篠宮妃殿下の配置の異例さにあるのである。
河西氏は悠仁親王殿下につき「秋篠宮さまと紀子さまの間か、秋篠宮ご夫妻の隣か、いずれにしても愛子さまの前になります」と述べているが、まったく頓珍漢な話だ。
どこをどう解釈しても、そんな風にはならない。
並び順については、筆者としても、最終的にはその都度の儀式や行事に相応しいように決定すればいいと思うが、伝統を踏まえるということからは、天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行法あるいは立皇嗣の礼を加味したとしても、令和の御代において、天皇陛下の子である愛子内親王殿下が秋篠宮家の悠仁親王殿下の後ろになるということはあり得ない。
読者もほとんどいなくなってしまったこのブログでいくら言っても仕方のないことだが、専門家を名乗るのであればいいかげん恥を知りなさい。
それにしても、河西氏は悠仁親王殿下の配置につき「秋篠宮さまと紀子さまの間か」とも述べているが、どこからそんな発想が出てくるのか全く不思議である。
個人的には、なんだか面白そうなので、これについてはやれるものならやってもらいたいところだ。
この中に、「象徴天皇制に詳しい」という河西秀哉氏のコメントが掲載されている。
-----引用開始-----
■悠仁さま出席なら愛子さまより前
「天皇陛下と皇后雅子さまの後に、皇位継承順位1位で皇嗣の秋篠宮さまと皇嗣妃の紀子さま、天皇家の内親王である愛子さま、そして皇嗣家の内親王である佳子さまという順番です。これは皇室典範にある“身位(しんい)”通りの並び順です。
ご身位とは、日本の皇族の皇室内部での身分及び地位の差異を示す区分のこと。現代日本の皇室、皇族の身位は、天皇陛下、皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の順です」
秋篠宮家の長男、悠仁さまは、9月6日に18歳の誕生日を迎え、成年に仲間入りされた。今回の園遊会には出席されなかったが、今後、ご出席される場合、このご身位からすると、「秋篠宮さまと紀子さまの間か、秋篠宮ご夫妻の隣か、いずれにしても愛子さまの前になります」と河西氏は付け加える。
-----引用終了-----
河西氏の言っているのがおかしいというのは、以前このブログで「愛子さまの順位についての正しい理解」という記事を書き、そこで示した通りなのだが、実に奇怪な考え方だ。
「これは皇室典範にある“身位(しんい)”通りの並び順です。」とあるのだが、河西氏は身位という言葉をどこから持ってきたのだろう。
皇室典範には「身位」という言葉は出てこない。
皇室典範の第5条には「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃及び女王を皇族とする。」という規定があり、並べ方としては河西氏の言う「皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の順」と合致している。
ただ、これらは「親王」「親王妃」「内親王」などの概念としての並べ方なのであって、具体的な個々の親王、親王妃、内親王の方々の並び順を示すものではない。
そのことは、例えば、歌会始の詠進歌の並び順を見ればよく分かる。
宮内庁のホームページに「お題一覧(昭和22年から)」というページがあり、これでどのような並び順になっているかが分かるのだ。
例えば、平成6年を見ると、当時の天皇の娘である清子「内親王」は、天皇の弟である正仁「親王」よりも先になっている。
個々の方々の並び順がどうなるかについては、皇族身位令という旧制度下の法令で定められており、現在も基本的には踏襲しているのである。
河西氏の謎なところは、「身位」という言葉を持ち出しつつ、どうも皇族身位令を読んでいないらしいところだ。
「皿婆」がどうのといったネット記事を読む前に、「皇族身位令」をまずは読まなくてはいけないのではないか。
皇族身位令については、このブログの「愛子さまの順位についての正しい理解」で紹介したところだが、個々の方々の並び順につき、天皇が最初というのは当然の前提とした上で、以下のように定めている。
皇族身位令(昭和22年5月2日廃止)
第一条 皇族ノ班位ハ左ノ順序ニ依ル
第一 皇后
第二 太皇太后
第三 皇太后
第四 皇太子
第五 皇太子妃
第六 皇太孫
第七 皇太孫妃
第八 親王親王妃内親王王王妃女王
第二条 親王王ノ班位ハ皇位継承ノ順序ニ従フ内親王女王ノ班位亦之ニ準ス
前項ノ規定ニ依リ同順位ニ在ル者ハ男ヲ先ニシ女ヲ後ニス
第三条 親王妃王妃ノ班位ハ夫ニ次ク内親王女王ニシテ親王妃王妃タル者亦同シ
他の条文もあるのだが、天皇御一家と秋篠宮家の関係であれば、この3つの条文で十分だろう。
第一条で「第八 親王親王妃内親王王王妃女王」とあるが、これだけでは個々の「親王」「親王妃」「内親王」の並び順が分からないので、それを説明したのが第二条と第三条である。
第二条で「親王」「王」は皇位継承の順序、「内親王」「女王」については皇位継承資格はないが皇位継承の順序に「準ス」(長系長子だが姉より弟が先)こととし、第三条で「妃」は夫の次という基本ルールが定められている。
これを踏まえて、天皇御一家、秋篠宮家(悠仁親王殿下を含む)の並び順を示すと以下のようになる。
天皇陛下
皇后陛下
愛子内親王殿下
秋篠宮殿下
秋篠宮妃殿下
悠仁親王殿下
佳子内親王殿下
これが皇室の伝統を踏まえた並び順として、本来の姿なのである。
自ずと家族単位となるのだ。
ただ、ややこしいのが秋篠宮殿下の扱いだ。
単なる皇嗣であれば上記のとおりなのだが、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行法」が影響してくる。
同法第5条で「皇太子の例による」と定められ、令和2年11月には立皇嗣の礼が行われた。
このことを踏まえ、秋篠宮殿下の配置を皇太子と同様にすることとした場合は、以下のようになる。
これが現在の並び順ということなのだろう(悠仁親王殿下については未実施)。
天皇陛下
皇后陛下
秋篠宮殿下(皇嗣)
秋篠宮妃殿下(皇嗣妃)
愛子内親王殿下
悠仁親王殿下
佳子内親王殿下
これは皇族身位令第一条で、「皇太子」「皇太子妃」の位置づけが「第八 親王親王妃内親王王王妃女王」グループとは別枠の先順位になっていることによる。
家族単位の並び順ではなくなってしまったが、それは、愛子内親王殿下が秋篠宮家の並びに入り込んだのではなく、秋篠宮殿下と秋篠宮妃殿下が天皇御一家の並びに入り込んだというのが実態である。
河西氏にしても家族単位の並びの方が望ましいという考え方のようだが、それを阻む原因は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行法第5条と立皇嗣の礼なのであり、秋篠宮殿下と秋篠宮妃殿下の配置の異例さにあるのである。
河西氏は悠仁親王殿下につき「秋篠宮さまと紀子さまの間か、秋篠宮ご夫妻の隣か、いずれにしても愛子さまの前になります」と述べているが、まったく頓珍漢な話だ。
どこをどう解釈しても、そんな風にはならない。
並び順については、筆者としても、最終的にはその都度の儀式や行事に相応しいように決定すればいいと思うが、伝統を踏まえるということからは、天皇の退位等に関する皇室典範特例法施行法あるいは立皇嗣の礼を加味したとしても、令和の御代において、天皇陛下の子である愛子内親王殿下が秋篠宮家の悠仁親王殿下の後ろになるということはあり得ない。
読者もほとんどいなくなってしまったこのブログでいくら言っても仕方のないことだが、専門家を名乗るのであればいいかげん恥を知りなさい。
それにしても、河西氏は悠仁親王殿下の配置につき「秋篠宮さまと紀子さまの間か」とも述べているが、どこからそんな発想が出てくるのか全く不思議である。
個人的には、なんだか面白そうなので、これについてはやれるものならやってもらいたいところだ。