これも写真がなくて、左ハンドルであることを除くと、色もホイールキャップも同じなので借りました。
さて、ゴルフのシンクロ、女房がとても気に入って乗っていましたが、お世話になっていたヤナセのすぐ近くで若葉マークの学生に追突されたことは書きました。
追突した某ホンダ車は廃車になるほどの壊れ方で、ウチのゴルフは相手方の過失100%での保険修理となり、その間は代車として真っ新なレンタカーのコロナにひと月近く乗ることになりました。
1600cc、4WD、マニュアルミッションでスペック上は1800のゴルフを凌駕する数値なのに、大いなる脱力感に満ち満ちたクルマで、ブン回しても盛り上がらないハイメカツインカム、高いギアでスロットルを開けた時の頼りない反応、柔らかい足回り。
クルマの味付けの問題なのか、当時の私には受け入れ難いものばかり。
直ってきたゴルフは、新品となったリヤライトの一部に電球が入っておらず、私が気付くまでストップランプが点灯していなかったという信じられないミスがあり、追及したところ、下請けに丸投げの修理だったと判明。
とてもイヤな気分でいたところ、中古車展示場に格安のクルマを発見、それは自動車学校で高速教習の専用車として使われていたベンツ190のマニュアル車だったのです。
正規輸入車としてヤナセの黄色いステッカーが貼られていたものの、ディーラーのカタログに載っていない2000の4気筒ディーゼルを4速マニュアルミッションと組み合わせた珍しい仕様。
外装は傷や凹みが一切なく、内装もヘタリは感じられず、クリーニングだけでバリッとなりそう。高速道路ばかり10万キロ走っているエンジンは絶好調で、駆動系と足回りの消耗部品は全て交換済み。
快適装備と呼べるものはマニュアルエアコンとパワーステアリング、セントラルロッキングくらいで、廉価版の190Eアンファングに準じているらしく、前後とも窓の開閉はクランクをクルクル回します。
住宅地とは言えない田舎に住み、除雪に不安がある中、FRのクルマはちょっと危ないかとも考えましたが、修復歴のあるゴルフシンクロを高値で下取る話になり、格安でベンツに乗れるチャンスだとまたもや後先考えずに購入を決めました。
非力な最下位グレードでもリヤのヘッドレストや救急キット、トランクリッド裏の非常停止表示板は標準装備。強固なボディー、マルチリンクのリヤサスや4輪ディスクのブレーキも上級グレードと変わりありません。まさにベンツの良心の塊みたいなクルマでした。
72馬力のディーゼルは確かに非力だけど、始動直後以外では黒煙も吹かず、エンジンルームがカプセル構造となっているおかげで騒音が閉じ込められて静か。
各ギアでのリミットは下から40、80、120km/hとガソリン車とほぼ同じなのはゴルフⅠのディーゼルと一緒でしたが、騒音や振動のレベルは比較になりません。
レブリミットぎりぎりまで使い切れるため、シフトフィールの良くない4速ミッションを駆使すると、峠の登りでもそれほどパワー不足を感じませんでした。
ベンツの特徴である大径のステアリングホイールは、6Jのホイールに組まれたコンチネンタルの185/65R15という細いタイヤを介してドライバーの意思を忠実に路面へと伝え、きれいなラインでコーナリングを楽しめます。
ただ、雪や凍結路にはめっぽう弱く、デフが敏感なのかスパイクタイヤでもすぐに片側の後輪が空転して、坂を登れないのです。
わが家のもう1台がジープで本当に良かったです。そうでないと、出産の時にどうなっていたことか…
気になる燃費は通勤でリッター14キロ、フラットアウトに近い高速で16キロ、一般路の長距離ドライブでの最高は23キロ。軽油が安かったので行動範囲が広がり、お腹の大きくなった女房と泊まりがけで温泉巡りを楽しみました。
印象に残っているのは、ワイパーの複雑な動きがスムーズでモーター音もわずかしか聞こえないこと。これには私も言われて初めて気が付きましたが、ベテラン整備士によると、そこが本物の高級車のポイントのひとつだそうです。
ちなみに、同年式の190では、ディーゼルは5気筒2500ccで左ハンドル、ATの設定のみだったので、同じ仕様の190には一度しか出会ったことがありません。
そして、その一度しか出会わなかった190を置いているお店から、次のクルマを買うことになるのでした。
まさに、一期一会とはこのことでしょうか。