シルバーでフルノーマルのビート。
素敵な写真を拝借することができました。
思えば私の購入時、既にホワイトの在庫はなく赤、黄、銀から選べと言われたのでした。
その年の春先、親父から引き継いだアコードはロシア行きが決まり、わが家はハイラックスサーフだけという久しぶりの1台体制に。
そんな時、超多忙な職場への異動辞令をもらう羽目になりました。
依然、田舎の一軒家に住んでいたので、直近の上司からは「最終バスが8時台じゃ、クルマがないと大変だろう」と脅される始末。
薄給の身とは言え、軽ならば何とかなるべぇとKP61やシビックSiで世話になったホンダの友人に相談してみました。
すると深刻な顔をして、ビートの新車を勧めてきたのです。
二人しか乗られず、ろくにトランクスペースもない軽のスポーツカーなんて、と思ったのですが、車両本体値引きが「おい、大丈夫かよ」と心配したくなるような金額で、さらにはビート専用で他車に流用の利かないオーディオなどは全て半額。
聞くと、メーカーにビートの在庫が大量にあるので、幌を新品に交換の上、何とか売り捌きたいとのこと。
一度ミッドシップに乗ってみようか、なんて軽いノリでオーディオも最高級の組合せを選び、シルバーの1台を注文したのです。
納車前、ボディー左右の車名ステッカーは子どもっぽいので剥がしてもらいました。
何となくブガッティT35のホイールに似た地味なアルミを履かせましたが、リム幅は標準より広く、オフセットが小さめのものにしてちょっぴり逞しさを強調。何となく大人っぽい雰囲気になりました。
一応このクルマ、メカチューンのNAエンジン搭載とあってエンジンサウンドには期待していたにもかかわらず、トゥデイやアクティと変わらぬ安っぽい音に失望。
フロント荷重が小さくてステアリングは軽かったけれど、応答性を意図的に落としているのか、それほどシャープな切れ味ではなかったです。
家族3人で出掛ける際はサーフを使うので片道15kmの通勤だけでは走行距離も伸びず、土日出勤もままある職場のため、たまの休日にはぐったり。峠道を楽しむことは一度もできませんでした。
何というもったいない使い方だったんでしょう。
高回転型エンジンの性格上、仕方ないのでしょうが、とにかくローギアードでエンジンはいつもブンブン回っているし、軽でありながら燃費は郊外路でリッター17〜19キロ程度とよろしくない。
せっかく付けた高価な専用オーディオを楽しむことなんてできやしません。
ただ、各ギアを上手くつなげていくと、140km/hのリミッターに当たるまで何ら痛痒を感じさせない走りは大したものでした。
横風にも強く、空力の良さと相まって、高速道路を一般車に互して走ることのできる、当時としては珍しい軽自動車だったと思います。
もう少し、良い点を書いていきましょうか。
先ほど安っぽいと評したエンジン音ですが、実は幌を下ろして走ると痛快なイイ音に聞こえるんです。特にヒール&トウで空吹かしを入れたり、高回転からのエンジンブレーキの時なんかは最高で、日付が変わる頃まで残業し、眠気覚ましにオープンで家路を急ぐことは密かな楽しみでした。
このクルマ、乗車定員はもちろん2名。でも、まだ1歳だった子どもを女房が助手席で抱いて3人で買い物に行ったことがあるんですよ。
幌を下ろしたところ、子どもは大喜び。
いくら田舎とは言え危険極まりない行為でしたが、運悪くパトカーと遭遇してしまい、捕まるかと思いきや、警官はこっちを見てニコニコしているだけ。
30年近く前のちょっぴり微笑ましい話です。
ビートは冬にスピンしやすいと巷では言われていたけれど、私は幸い一度も経験なし。
ただ、最新のスタッドレスを履かせても凍結路には弱かった。平地で発進不可能なことが何度かありました。今、思い返してみると空気圧を工夫してみれば良かったのかも。
オートバイのような計器類、ゼブラ柄でセンスの悪いシート、食品は入れられないトランク等々も今となっては懐かしい思い出になりました。そういや、シートの幅が左右で違っていたんじゃないかな?
そんなビートとの生活、案外早くに終止符が打たれます。
大家さんが自分の母親を住まわせたいから、どこか他を探してくれないかと。引越し代その他諸々、悪くない条件でしたので、少し街中に近い一軒家へ引っ越すことにしました。
私の実家に近くなるため親からの援助もあり、住宅ローンを組んでマイホームを購入。
最終バスは22時台まであり、本数も多い。
でも、田舎とは違ってクルマの置き場が狭くなりました。
ああ、また1台体制へと逆戻りです…