岩波の「カラスとネズミ」という本を読んだ。カラスのことは東京の野鳥の会で活動されている方が書いている。カラスがどんな害を加えているか調べている興味深い本だ。たんに鳥類の専門家、行政当局者の目でなく、住民の目線でカラス問題を見つめている。害獣ネズミとともにカラスを「害鳥」とみなし、「カラスと仲良くしよう」なんていうどこかの自治体のような立場はとっていない。ニューヨークやロンドンの公園にもカラスはいるが世界の大都市で東京みたいに街なかに人を恐れず生ゴミを漁っているカラスの姿など見たことがないという。どうも東京的というか日本的な独特な光景らしい。日本も昔は、「権兵衛が種まきゃカラスがほじくる」悪さはしていたが、「かわいい七つの子」は村はずれの山で育てていた。その関係がおかしくなったのは人が山をめくり住宅を開発しだしてからではないか。食い捨て使い捨ての生活習慣もカラスには天国になったのでは。カラス対策はそこらあたりの大本の問題から見直し、同時に現実の被害を防止する方策をちゃんとすることが問われているように思う。しかし著者は、「害鳥」だから駆除せよという方針には異議をとなえている。農作物や園芸品などに実害を加え、目を合わせただけで人を襲うカラスがでているとき、駆除するのは当然の方策ではないか。そこは疑問が残る。
それはともかく、専門家の間では「カラスにかかわると泥沼に嵌る」といわれているそうだが、東京にカラス被害をなくす対策を探求している研究者がいると知ってたいへん心強く思った。1999年1月、立教大学で「とうきょうのカラスをどうすべきか」というシンポジウムを開催したところ、500席の大講義室が満杯になり立ち見もでたそうだ。主催したのは野鳥の会東京支部と立大だったという。その記録もぜひ読みたくなった。
樹には樹の哀しみのありもがり笛 夕爾
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