故事ことわざに「カラスの請け合い」というのがある。引き受けたことをすぐ忘れてしまうことをいう。カラスは、賢そうに見えるが忘れっぽい鳥という。カラス以上の人もいるから、あまり悪口はいえないがまあ知っておいて良い。「カラスの行水」。これは毎日ぼくが家族に言われていること。余り意味がない。「カラスの頭の白くなるまで」。これはありえないことのたとえで中国の「史記」には、「烏頭(うとう)白くして馬角(つの)を生ず」という奇跡が来た時に使われる故事もある。それほどカラスの黒は変わらない。「烏を鷺」は、黒を白といいくるめるの類。あまりいいようには使われない。「鵜のマネをする烏」は、能力をわきまえず人の真似をすれば失敗するという人への戒め。カラスにそういう癖があるのかどうかはわからないがカラスを馬鹿にしたいい方だ。「烏合の衆」といえば、カラスのように無規律・無統制な人間の集まりをさす。
その習性は―。人家付近を好んで生活し、ゴミ捨て場に食べ物を狙って集まるほか、子豚を取っていったり、集団で犬を襲うこともあるという。食べ物を自分の縄張りに隠す習性もあるらしい。繁殖期には番(つがい)に分かれて3~6個を産卵し、成長するとまた何千羽という大集団を形成するようになる。ねぐらは近くの竹やぶや松の木を使う。カラスが白昼堂々銀座4丁目の電柱や建物に徘徊している光景に接し驚いたのは10年ほど前のことだが、ぼくの子どもの頃はカラスがそんなに人なれすることはなかった。近頃は2~3メートルほどに接近して歩いても平気である。人とカラスの生活の距離、ここらあたりから考え直して見るべき問題があるように思う。
新年の白紙綴じたる句帳かな 子規
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