limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

life 人生雑記帳 - 48

2019年10月06日 10時03分17秒 | 日記
“クーデター未遂事件”の後始末に追われる事1周間。気付けば、夏休みは4日後に迫っていた。この日、僕は松田に呼ばれて、現像室に顔を出していた。天井から吊り下がるフィルムの枝を避けて、松田が座り込んでいる椅子に辿り着くのは、結構難儀だった。小佐野は、この日所要で欠席していた。「参謀長、卒業記念アルバムの集合写真なんだが、この間の話し合いでも決まらなかっただろう?何処でどう言う隊形にするか?お鉢が俺に回って来てるんだ!“一任する”とか言われて困ってるんだが、何か案は無いか?」松田は困惑してため息混じりに言う。「ボディに28ミリを装着しろよ。アングルを探そう!」僕が言うと「35ミリじゃなくて、何故28ミリを選ぶんだ?」と松田が怪訝そうに言う。「24ミリじゃあ広いし、周辺光量が落ちる可能性がある。35ミリじゃあ、寄り集まりにしかならない。そうと来れば28ミリを選ぶしか無い!他のクラスに差を付けたいなら、妥当な選択になるだろう?」と返すと「うーん、言われて見れば確かに一理あるな。参謀長、腹案があるのか?」「まあ、イメージ的にはあるよ。ただ、収まるか否か?の問題なんだよ」僕と松田は、階段を降りて正面玄関から正門を抜けて近道の小道へ向かって歩いた。造成工事の関係で、斜面は階段状になっている。「ここに、1段おきに4~5列に並ぶ!それも男女交互に!校舎を背景に下から見てくれ!」と僕が言うと、松田はカメラを構えて「北にズレられるか?」と聞いて来る。僕は少し北側へ移動した。「うん!意外と面白いな!参謀長、降りて来いよ!」松田に言われるままに、下へ降りるとカメラを構えて見る。「よし、よし、よし、服装は夏仕様で行けばいい。どうせ、他のクラスはブレザーに拘るはずだ!カラスの集団じゃあ面白味か無いからな!ただ、並ぶだけじゃなくて手を繋いだり、ポーズを取るのもありだな。ネクタイをラフに締めてやればどうだ?」「うん、それで行こう!だが、並び順はどうするつもりだ?」「基本“成り行き任せ”さ!心配しなくても女子連が黙っている筈が無い。千里にお任せだ!松田、これで押し切っちまえ!」「ふむ、実際は645で撮影されるが、アングル的には問題は無いだろうな。ここをロケーションに選ぶとは、流石にカメラ屋になるだけの理由があるな!穴場だよ。ここは!」松田は、何度もカメラを構えて構図を確認しながら言った。後日談になるが、僕達のクラスの集合写真が、6クラス中“最も個性的”との評価がなされた。唯一、ブレザーを着なかったり男女が“仲睦まじく”見えたからだ。3年間、共に戦い抜いた戦士達が、それぞれに決めたポーズも“面白味がある”と言われた。インスタントで決めた割には上々の成果が付いたのは嬉しい計算外だったが、実際に配置を決めるまでには、女子達が“すったもんだ”の騒動を繰り広げたのは、言うまでも無い。長官の左右と僕の右側、久保田と今井の左右などは“難関”だった様だ。2学期の初めに行われた撮影日は、快晴に恵まれ最高の1枚にみんなが笑顔で収まった。

夏休み期間に突入すると、僕等はそれぞれの課題に向き合いつつ、3期生強化合宿に手を付ける事になった。石川を筆頭にした6人に加えて、山本と脇坂にもそれぞれ課題を出して引き継ぎに備えた。「あー、分からない!あたしの頭では無理かも」加奈が根を挙げる。「簡単に諦めるな!自身の実にならなきゃ意味が無い!来年は否応なしになるんだ!進路を決める上でもやるしかない!さあ、南宋と金の成立直後の項目から行くぞ!」僕はビシバシと加奈の書き留めた項目に沿って授業を進める。石川は、流石に涼しい顔でノートを取っていた。遠藤、水野、加藤と本橋は、生徒会会則の改正案を練っていたし、山本と脇坂は、“零式戦闘機”と“戦艦武蔵”を読みふけっていた。こちらの6人には、実戦的な指導体制を取った。遠藤達には、秋の“大統領選挙後”を見据えての素早い動きをしやすくするためもあり、1期生が定めた生徒会則を徹底して学ばせ、現行の会則から原田の2文字を削り去り、歪められた箇所や権限の分散化を如何に修整して慎重に進めていくか?の道筋を付ける作業に当たらせ、山本と脇坂には作戦、戦術面を強化するために、あらゆる文献を読破させて過去の失敗からの学びに徹しさせた。基礎は小佐野に叩き込まれていたので、僕が教える事は少なかったが“嗅覚的なモノ”は実際の事例から学ばせなくてはならない。“対菊地戦争”での具体例も彼等には伝えていった。僕等が経験した事をフルコピーするのが、小佐野からの指示だからだった。菊地美夏の様な不穏分子は、3期生や4期生には居なかったが、5期生には“居ないと言う保証”は無かった。そう言う事もあり、山本と脇坂には如何にして相手の策を看破するか?と対策をどう繰り出すか?を重点的に学ばせたのだ。「女子の持っている化粧品から、香水瓶が“フェイク”だと結論付けをするなんて、どうやれば思い付くんです?」山本と脇坂が首を捻る。「観察力の差だな。普段から女子の持ち物や動向を見ていれば容易に察しは付くものだ。女友達を増やせ!そうすれば、嫌でも分かる様になる!」僕がそう言うと「参謀長は、5人の女子と今だに交流と言うかお付き合いがありますが、僕等には皆無に等しい事です!同じ事をやれと言われましても僕等には手も足も出ないんですよ?!」と返して来る。「今からでもまだ間に合う!上田、遠藤、水野、加藤の4人が居るじゃないか!彼女達と交流を深めて置け!そのために、こうして8人を集めたんだ!取っ掛かりとしては最高じゃないか?」と僕が言うと「しかし、共通の話題がありません!何を話せばいいんです?」と山本が食い下がる。「遠藤、山本と脇坂にネックレスをしつらえてやってくれ!見本は私のしているヤツを見ればいい!」僕は遠藤達に指示を出した。「はい、参謀長、失礼します」水野が立ち上がると僕の首に手を回してネックレスを外す。「ダブルチェーンですね。ペンダントは全部で5個ですか。山本君、脇坂君、ちょっとごめんなさい!参謀長閣下のネックレスを参考にすると、長さは同じでOKだから後はペンダントのデザインと数だけね。参謀長、ペンダントはこれで全部ですか?」「いや、全部で15個はあるはずだ。季節毎に入れ替わるからな。入れ替えは任せてある」と言うと「取り敢えず4個を揃えればいいですね?山本君、脇坂君、デザインに“拘り”とかあるの?」と水野が早速突っ込みを入れ出す。「拘りも何も、こう言うモノに興味すら無いから分からないんだ!」「これ、どうやって外すのさ?」山本と脇坂はたちまちタジタジになった。「外せないなら、外してあげるわよ。参謀長の大切なネックレスですからね!」脇坂の首に遠藤が手を回す。至近距離で女子に迫られた事が少ない脇坂は真っ赤になった。女の子の匂いや習慣に慣れていないせいもあるのだろうが、これからは否応なしに慣れなければならない。遠藤、水野、加藤の3人は、山本と脇坂がごちゃごちゃ言い出す前に事を運ぼうと急ピッチで話しを進める。「参謀長のモノを参考にするのが一番ね!」「チェーンは少し黒めのシルバーだね!」「ペンダントは、クロスか花がモチーフのヤツで揃えようよ!色は青かグリーンかな?」女子3人は山本達の意思の有無は確認せずに一気にプランを組み上げた。「山本君、脇坂君、帰りに付き合ってよ!参謀長の直々のご命令なんだからさ!」代表して遠藤が2人にダメを押す。「僕等にも選ぶ権利はあるのかな?」脇坂が恐る恐る聞く。「多少はね。でも、ペンダントのデザインはダメよ!あたし達の“専決事項”ですから!」と水野が止めを刺す。「余り派手なのは勘弁して!」と山本が泣きを入れるが「お店で話し合いましょう!どういうのなら妥協出来るか反論は聞いてあげるから!」と加藤がさらなる追い打ちを掛けた。これで男女5人で話す機会はセッティング完了だ。「参謀長、ネックレスは邪魔に感じた事は無いんですか?」脇坂が青ざめた顔で聞いて来る。「慣れの問題だ!これできっかけは仕掛けてやった。女子トークに付き合って、少しは広い視野を持て!」そう言いながら僕はネックレスを付けた。「指輪に化粧品、ヘアケア用品にネックレスなどの装身具!女子は持ち物が多いからな。まずは、そこら辺から慣れて行け!そうしないと、女子トークに付いて行けないぞ!これからは、否応なしに身に降り掛かるんだ!訓練だと思って付き合ってやれ!」僕は、山本と脇坂に引導を渡した。文字通り否応なしになるのだ。これ位は耐えられなくては、2人の身が持たないだろう。その後も彼等には、遠藤達があれこれと話しを続けていた。「参謀長、あたしもう我慢出来ないー!抱っこちゃんしてー!」と加奈が甘え出す。「課題は解けたのか?」と聞くと「解けなから抱っこちゃん!」と真顔で言う。「この底無し沼が!」と拳を頭に当てると「しばらくして無いから、いいじゃん。図書館で待ってるね!」と小声で囁いた。「小平先生に見つかるなよ」と返すと彼女は指を立てた。「さあ、そろそろ講座の時間だ。一旦解散して午後から再開する。各自、講座へ顔を出せ!」僕が時計を見て講義を打ち切ると、8人は三々五々に講座へ向かった。時間差を置いて僕は図書館の奥へ向かう。本棚の陰で加奈がブラウスのボタンを外して待っていた。唇か重なると同時に左手がスカートの中に引き込まれる。加奈はスキャティを脱いでいた。「早く、掻き回して!」指でホールをイジメると、たちまち腕に熱い雫が伝う。喘ぎ声が出始め、加奈の手は僕のモノを引っ張り出そうとして、ズボンのベルトから下を擦る。「悪い子だな。雫を味わってやる」僕はスカートの中に潜ると加奈の雫を余さずに吸い取り始めた。「あー、ダメぇー!止まらないよー!」加奈は身体をピクピクと震わせながら、雫を滴らせた。「してもいい?したいの!あたし、・・・漏れちゃうー!」と言った次の瞬間、オシッコが噴出した。床に水たまりが出来て、加奈は全身をヒクヒクと痙攣させた。「悪い子には、お仕置きしなきゃ!」僕は加奈を立たせたまま、スカートをめくると背後から猛然と突きを入れた。加奈はホールを締め付けて答えた。「ああ、・・・いい!もっと・・・もっと突いて下さい!最後は中に出して!」加奈の喘ぎ声は徐々に高まり、絡み付く感触に僕は溺れた。ブラのホックを外して、乳房を鷲掴みにして激しく腰を使うと、更に喘ぎ声が高まった。多量の白い体液を注ぐと加奈はゆっくりと床に座り込んだ。余韻に浸りながら、僕の白い体液を味わいつつ「今度は、あたしが上になるから」と言って馬乗になると激しく腰を使う。「いい!・・・加奈の中は・・・気持ちいいでしょう?また、・・・いっぱい出して!」と言って腰の上で目一杯暴れて声を出す。絡み付く感触に耐えかねて体液を注いでやると、身体を密着させて唇を重ねた。「あたし、もっと突いて欲しいの。3回戦出来る?」「この欲張りが!」僕は、加奈を床に押し倒すと、ホールに猛然と突きを入れた。そして、加奈の身体を起こすと片脚を上げさせて、あられもない姿勢で更に突きまくった。「見える!・・・出たり入ったり・・・してるとこ!もっと・・・もっと・・・突いて!いい!・・・もっと!・・・もっと!」加奈は、狂った様に声を出す。「あー!・・・イク!・・・あたし、いっちゃう!」一段と絡み付く感触が強まると、多量の白い体液が加奈の中に注がれた。「気持ち良かった。沢山出たね。妊娠しても、あたし気にしないから」加奈は、荒い息をしながら言った。暑い日の昼下りだった。

「参謀長、少し時間をくれぬか?」午後の講義が一段落した頃、長官が訪ねて来た。「何です?」と僕が聞くと「原田が選挙対策本部を立ち上げた!4期生への切り崩し工作を始めたらしいが、早くも暗雲が立ち込めとるよ。小佐野ルートで“靖国神社”が撹乱工作をしとるし、“陰険禿2匹の乱”の影響で我々に組する者達が、予想以上に多い事が障害になっとる!益田と小池の離反もあって、ヤツの思惑通りに事は進んでおらん!そこで、ヤツはワシ等に眼を付けた!」と言うと1通の封書を差し出した。「対策本部の参謀総長をワシに振って来おった。知らぬは原田だけだが、ヤツの思惑は早くも暗礁に乗り上げているらしいな。お前さんにも馳せ参じろと書いてあるが、のらりくらりと返事は延ばしてある。さて、我々はいつ離反をと言うか、旗色を鮮明に打ち出す?」長官は迷っていた。「出来る限り引き伸ばして下さい!今、こちらも事が露見するのはマズイ!9月まで誤魔化せますか?」「流石にそれは無理がある!かといって原田に協力すれば、4期生に不信感を抱かせる事になるか?」「ええ、折角こちらになびいてくれている者達をみすみす逃すのは、避けなくてはなりません!切り崩しをやっている振りをして、逆に地固めを進めるのはどうです?」「隠れ蓑に使って時期を待ち、告示と同時に“蜂起”するのか?まあ、それが順当な線だろう。益田と小池達は?」「やる事は一緒ですよ。告示日までは、協力する振りをする!告示と同時に“蜂起”して、反原田の狼煙を挙げる!ヤツが挙兵すれば、2期生の半分は追随するはずですから、労せずして過半数は取れますよ!ともかく、告示日までは原田を欺き通さなくてはなりません!長官は微妙な立場に身を置かねばなりませんが、全ては“太祖の世に復する”ため。みんな分かってくれるでしょう」「うむ、ワシが奇妙な行動を取らざるを得ないのは、想定の範囲と理解してもらえるなら、何とかやって見るか?出来る限り、こちらには影響が出ない様にはしよう。だが、限界もあるのは承知して置いてくれ!参謀長、備えを怠るな!まだ“山”は越えておらんのだ。原田の嗅覚を侮るでない!」長官はそう言うと僕の肩を叩いて廊下を歩いて行った。実際問題、原田の嗅覚を欺くには、かなり骨が折れたのは事実だった。4期生の中には、原田と気脈を通じる者も居たし、監視の目はそこら中で光っていた。そんな中での合宿であるが故に、時には脱線をしつつ要点を教えるのは、並大抵では無かった。しかし、僕等は引き返し不可能な地点に達していた。夏期講習の期間を逃せば、教える時間は余り残されては居なかったからだ。それでも、何かと理由付けをしながらも講義は継続的に行われ、政権移行はスムーズに進んだのだから、ある種奇跡的な引き継ぎとなったのは間違い無い。

夏期講習も終わりが見え始めた頃、僕は小佐野に呼び出された。天井から吊り下がるフィルムの枝を避けて、小佐野が現像をしている部屋に悪戦苦闘の末に辿り着くと「おう!小僧達がちったぁ賢くなりやがった!ようやく、“モノの道理ってヤツ”を理解して来た様だな!お前さんにはまだまだ及ばんが、2人セットなら太刀打ち出来そうだ!」とご機嫌が良い。小佐野にしては珍しい事だ。「何を企んでる?それだけで呼んだ訳じゃないだろう?」と返すと「“靖国神社”から、そろそろ“引き時”じゃないか?と言って来た。女は完全にビビってるらしい。最後の仕上げに皇太子の“スキャンダル”をブチ上げて、撹乱工作を完了させたいが時期は大丈夫か?」「そんなネタはあるのか?」と僕が返すと「これを見ろ!“決定的瞬間”だ!」と言って仕上がったばかりのプリントを寄越した。「おい!おい!覗きの常習犯か?」そこにはプールの女子更衣室を覗く皇太子の姿が写っていた!「4期生のヤツに仕込ませたんだ!女も1枚噛んでる!冗談のつもりだったんだろうが、俺様が“決定的瞬間”を逃すと思うか?これをバラ撒けば皇太子のイメージはガタ落ちになるだけで無く、“変質者”のレッテルを貼り付けられるって寸法だ!これで、原田が必死になって挽回を図っても取り返しがつかねぇだけで無く、劣勢に追い詰められる!」小佐野の鼻息は荒かった。「脚が付く様な事は無いよな?」今更ながらに聞くと「俺様がそんな間抜けをやると思うか?!望遠レンズで狙ったんだ!当人達には悟られてねぇよ!さて、100枚ばかり焼き増しをして、2学期の頭にバラ撒いてやるか!時期的にはその辺で差し支えねぇな?」小佐野が不敵な笑みを浮かべる。「ああ、これなら良識を疑うしか無いな。最後の切り札としては申し分無いよ!“靖国神社”には、“引き際を見誤るな!”と言って置いてくれ!」と僕も同意した。「よし、よし、よし、皇太子の机の中には無修正のエロ本を写したヤツも仕込んでやる!これで完璧だ!」小佐野はニヤニヤと笑った。「無修正のエロ本は、何処から手に入れた?」「自販機があるだろう?蛇の道は蛇だよ!」小佐野はこの上ない機嫌だった。「コイツは、五十六氏の防暑服姿だ。恐らく、トラックでの武蔵艦上でのヤツだろう。小僧達にまた教え込んでくれ!」「“白い制服に金のバッチ”か。難しい注文だがやって見るか?」「わりいが尻に火を着けてやれ!ヤツ等に足りないのは、そっち方面だからな!」僕等はニヤリと笑った。現像室を出て裏を見ると、“女の尻を追わせろ”と書かれていた。「当人達がその気になりゃあ簡単なんだが、唐変木では難しいな」と呟きつつ簿は階段を昇った。

案の定、2学期が始まると4期生達の間から皇太子の“疑惑”が聞こえ出した。やがて噂話に尾ひれが付いて、3期生や我々の耳にも聞こえ出した。原田が火消しに躍起になって走り回ったが、1度貼り付いた“レッテルを剥がす”のは容易ては無かった。「覗きだけじゃなくて、無修正のエッチな本も持ってるらしいわよ!」女子の間に話しが広がるのに、左程の時間はかからなかった。「小佐野が本気を見せたな。完全に叩き潰すつもりの様だ!」長官がため息混じりに言った。「その様ですね。久々に本気で潰す勢いですよ。ただ、少々やり過ぎの感はありますね!そろそろ鎮静化させないと、逆に疑われる恐れもありますよ。長官、何かしらの手は考えてみますか?」僕も余りの勢いに慎重論を口にした。「だが、既に尾ひれが付いて“暴走”しておる。今から火消しに回るのもあらぬ疑いを持たれかねん!手出しは、無用だろうな。原田からは、消火チームの“派遣要請”は来ておるが、誰も手を貸す者達はおらんのだ!形勢は完全に傾いた!逆転の兆しすら掴めないだろう」「告示日まで半月余りです。どうやら、“潮時”の様ですね!週が開けたら“蜂起”に向けての行動を開始しますか?まずは、益田と小池達に反旗を翻させましょう!我々から態度を示せば、下級生達も動きやすいでしょうから!」「内諾は得ているな?」「ええ、バルチック艦隊を率いて参戦する予定です。彼等が動けば、芋づる式かつ雪崩を打って2期生の過半数は抑えられます。数の論理からしても、原田の大惨敗は回避不可能でしょう!4期生からも志願者は居ますから丁寧に拾い集めれば、更に優位に立てるのは間違いありません!」「うむ、では、そろそろ始めるか?ワシも適当な理由を付けて、距離を保つ様にする。来週を持って“一斉蜂起”だ!総崩れに持ち込んでくれよう!」長官が断を下した。遂に、原田陣営の“壊滅”に向けた作戦の火蓋が切られるのだ!「まずは、査問委員会で今後の動きを確認して、役割分担を決めねばならん。ワシや伊東や千秋は、表立っては動けんからな。参謀長に“総指揮”を執ってもらうが、構わんな?」「ええ、そのつもりです。石川達には、既に指示は出してありますから。益田と小池にも馳せ参じる様に話は、付いています。問題は“破壊工作”ですね?」「目処は立っておるが、最後の詰めはこれからだ。原田の“私的交際費”などの文書は、残せんからな!焼却処分にするだけでもかなりの量になる。全てを灰燼と化すには、3日はかかるだろうな。悟られる前に片付けなくてはならんが、こちらはその作業で手一杯になる!選挙戦には、余り人手は回せんぞ!」「こちらは、新たな“人海戦術”に打って出ますよ。山本と脇坂にはフル回転してもらう予定です!」「うむ、任せたぞ!査問委員会の連中には、ワシから話をして置く。参謀長、早速動いてくれ!」「では、好きな様にやらせてもらいますよ!」長官の内諾を得た僕は、西岡を呼んだ。「これより、“壊滅作戦”を開始する!手加減は無用!上田達にかねてからの指示通りに行動を開始せよと伝達してくれ!」と伝えた。「いよいよですね!皇太子の“化け皮”も剥がれました。優勢に進みそうですね?」「いや、最後まで分からないと思わなくては勝てないだろう!上田達にも万事気を引き締めて警戒を怠るな!と伝えてくれ!総指揮は、私が執る。異変が察知された場合は、速やかに報告を挙げる様にとも言って置け!」「分かりました!では、早速知らせます!」慌ただしく西岡が走り出した。「“本日、天気晴朗ナレドモ波高シ”丁字戦法が実を結べばいいが・・・」原田が相手である。形勢は有利だが、油断大敵なのに変わりは無い。乾坤一擲の大戦の行方は、まだどちらに転ぶか分からなかった。

さて、時間を少し巻き戻して、丸山恵美子先生の“最後の挨拶”について記して置くべきだろう。1学期の終業式の後、僕は指定された時間に保健室へ向かった。彼女は、すっかり身支度を整えて待っていた。「いよいよ、お別れだね。昨日、開校した感じがするけど、3年近く経ったんだね。まだ、な~んか実感が沸かないのよね!Y,身体を大事にしなさいよ!アンタは丈夫とは言いがたいんだからさ!」と屈託の無い笑顔で言った。「はい、残された時間を大事にしますし、自らの体力を過信はしませんよ」僕も笑顔で言った。「さてと、後任なんだけど、あたしの同期の佐藤先生に決まったわ!美人の上に独身!またまた、Yの趣味に叶うと思うけど。これが彼女の写真よ!」2ショット写真を見ると、丸山先生より小柄だが美貌は抜群だった。「Y,興味深いでしょ?彼女もアンタと対面するのを楽しみにしてるわ!ズバリ、ターゲットは下だからさ!」「またかー、先生の同期って皆さん年下趣味なんですか?」「そうねー、割と多いかも。だけど、養護教諭なんて出合いが少ないから、必然的に生徒に眼が行っちゃうのかもね。安易な発想だけど。佐藤先生は、あたしより積極的だからY,気を付けなさい!そうしないと、こうなるわよ!」と彼女は唇を重ねて来た。「ほら、鏡見てご覧なさい」そこには、口紅の跡がくっきりと見える僕が居た。「その姿で廊下を歩いたら、明らかに“不審者”にされちゃうぞ!佐藤先生は、情け容赦無しだから!」「うーん、それはマズイな。これじゃあ、“マーキング”されたのと同じだ。こうして、生徒を誘惑して行くんだ!狙われない様に警戒しなきゃ!」「無理!無理!基本データは、もう引き継いたの。Yに関しては特に念入りに!」彼女は、あっけらかんと言った。「それじゃあ、逃げられないって事じゃないですか!先生!ハメましたね?」「うん!卒業まで面倒は見てくれる約束よ。特に過労から来る体調不良については、要観察にしといたから。アンタの悪い癖は自らを顧みないで突っ走る事だから、その辺はベッドに縛り着けてでも止めてと申し送ってあるから!」と言うと彼女は僕を抱き寄せた。「Y,たまには、自分に休暇を出しなさい。アンタは常に戦いの最前線で、指揮を執り続けて来た。もう、自分の事を最優先に考えなきゃダメよ!残された学生時代を有意義に使いなさい!アンタの勇姿は、後輩達に受け継がれ、語り継がれるから!次のステージに向けて、力を蓄えて置きなさいよ!卒業式で見送る事は出来ないけど、元気でね!」と言った。彼女の眼からは1筋の涙が伝っていた。「Y,さよならは言わないで。何処かで会ったら、また馬鹿を言ってね!」彼女はそう言ってから、僕の背を叩いた。「さあ、行きなさい!新たな道へ!」彼女は泣きながらも、僕を突き放した。「はい!行って来ます!」僕は精一杯の笑顔を作ると、軽く敬礼してから保健室を出た。

「相手は原田だ。如何に相対的に優位とは言え、1発逆転の奇策を喰らえば、それまでの事!哨戒網を厳重に張り巡らせて、機先を征するしか無い!山本、脇坂、3期生は言うに及ばず4期生にも哨戒隊を貼り付けろ!原田の動きを速やかに捉えて、私に報告してくれ。どちらが制空権を握るか?まずは、これが最初の鍵になる!」「はい、既に各クラスには厳重な哨戒部隊を編成してあります!」「特に、皇太子のクラスには、逐一寸暇を置かずに通報する様に指示を出してあります!」2人はそう言って来た。「慌てず、騒がず、引き締めを怠るな!3期生が揺れなければ、原田はジレンマに陥るしか無いのだ。その上で選挙戦に持ち込む!だが、此処だけの話、皇太子が立候補しない可能性もある!原田が鞍替えを画策する恐れは、否定出来ないのだ。それにヤツは“実弾”を所持している。ポイントを押さえて打ち込まれたら、僅差の戦いに縺れるだろう。まだ、時間は残されているし、益田と小池が“棄権”する事を選択すれば、紙一重の勝負になる。くれぐれも原田陣営の動きから眼を離すなよ!」僕は、山本と脇坂を交互に見ながら釘を刺した。「参謀長、2期生の動向はどうなんです?」脇坂が聞いて来る。「3つの陣営に分裂しているよ。我々に近しい者、原田の岩盤支持者、益田と小池が率いる者達だ。鍵を握っているのは、益田と小池さ。奴らが“反原田”の狼煙を挙げれば、大差で勝てるが“棄権”されたら厳しい戦いになるだろう。お前さん達には、初陣でいきなりの大役になるが、見事に役割を果たしてくれ!原田の事だ。必ず、何らかの動きを見せるはず。見逃すなよ!」「はい!」2人が合唱した。「早速かかれ!連絡は西岡が定期的に巡回するから、メモかレポートを書いて寄越せ。では、頼んだぞ!」「直ちに開始します!」2人は書き消す様に密かに戻って行った。「西岡、益田と小池の動きからも眼を離すな!アイツ等も必ず動くし、“実弾”を撃ち込まれる恐れがある!哨戒網を張り巡らせてくれ!」「了解です。しかし、原田が1発逆転の“奇策”に打って出るでしょうか?」「“皇太子”がスキャンダルまみれの中では、勝てないのは分かり切っているだろう?クリーンなイメージを持った新人を立てて、巻き返しを謀ると見るのが当然になる。そうした動きをいち早く察知して沈めねばならん!容易ではないが、後、半月は時間があるのだ。是が非でも現体制を維持して、野望を果たすためには原田も戦力を整えて出てくるはず!我々も現有戦力の整備と強化を図らなくては、勝利は掴めん!」「分かりました。既に5組には網を張ってありますが、他のクラスも含めて網を強化しましょう!女子のネットワークの恐ろしさを見せつけてやりましょう!」西岡が決然と言った。「では、始めようか!もう、止められんぞ!原田か?我々か?血みどろの戦いに勝つのは、我々だ!」これが“大統領選挙”前の最後の謀議だった。