午後4時、緑のRX-7が寮の前に横付けされた。僕は、ゆっくりと助手席に乗り込んだ。頬に唇が触れる。「Y、ごめん。急に呼び出して」みーちゃんが言う。「何処へ向かう?」「人目に付かないところよ。とにかく、一緒に来て!」みーちゃんは車を発進させた。隼人町を抜けてから、車は鹿児島空港を目指して山道を駆け登る。滑走路脇の小道へ車を乗り入れると、みーちゃんは車を停めて「Y、期限が来たら帰っちゃうの?」と言った。「帰る気は更々無いよ!“転属”を目指して、鋭意運動中だよ!」と返すと「勝算はどれくらいありそう?」と聞かれる。「今は、5分5分だよ。O工場も必死だから、先は読み切れてない。ただ、“安さん”は、僕を“転属”させるつもりで居る。これは、間違いないよ」「それなら、あたしも安心していられるわ!あなたを引き留める“重石”にはなれるわね!」みーちゃんは、不安げな顔から晴れやかな顔に変わった。「ここから、あなたを見送るなんて、あたしには出来ないの!多分、強引に“付いて行く”って言うと思うの。自らの全てを捧げるつもりで。仕事も故郷も捨ててもいい!あなたの傍に居られればね!ねえ、抱いてよ。抱きしめてよ!あたしを置いて行かないでよ!」みーちゃんの頬に一筋の涙が伝う。狭い後部席へ潜り込むと、しっかりと抱いてやる。「お願いだから、触って!ずっと、1人で慰めてたの。もう、限界なの!」みーちゃんは、ロングスートをめくり出した。ピンクのパンティは既に湿り気を帯びていた。「指を・・・下さい」みーちゃんは、身体をくねらせるとパンティを片足に残して剥ぎ取った。熱く濡れたホールへ指を2本入れてやると、みーちゃんは喜びの声を上げて「かき回して下さい」とねだった。たちまち愛液が溢れ出し、腕を伝い出した。「ダメ!イッちゃう!」みーちゃんが言った瞬間、愛液が多量に噴出して、座席と腕を濡らした。「いけない子だね。こんなになるまで我慢してるなんて」僕はティシュで拭きながらキスをして、落ち着かせた。「ホテルに・・・、“誰にも見られない部屋”に連れてって。甘えさせてよ」みーちゃんは、舌をからませながらねだった。「ああ、行こうか」車は僕が運転して、モーテルに乗り付けた。部屋に入ると、ソファーに座り込んで衣服を脱がせて行く。みーちゃんの肌はガラスの様に透き通っている。乳房を掴んで再びホールをかき回してやると、愛液が滴る。「早く・・・、坊やを下さい」みーちゃんは、息子を掴んで離さなかった。背後から猛然と突いてやると、狂ったように声を上げて「もっと・・・、いっぱい・・・突いて!」と言う。みーちゃんは体液を余す事無く吸い取った。そして、ベッドで全裸のまま抱き合って眠った。みーちゃんは、幸せそうな顔をしていた。
みーちゃんを抱いてしばらく眠った後、僕はシャワーを浴びに起き出した。みーちゃんは“女神”の様な表情で眠っていた。“恭子にも言ったが、みーちゃんは中毒症状の1歩手前だ!何か手はないだろうか?”僕は、思いを巡らせた。バスタオルを肩にかけて、ソファーに座った。“ビーナスを傷つける事は、許されない!彼女は、僕の手に余る女神。こんな事をいつまでも続けるのは間違いだ!誰かに託せないだろうか?”だが、その場で考えは浮かばなかった。彼女を起こさない様に、コーヒーを淹れた。「うーん、Y、どこ?」みーちゃんは目を覚まして、周囲を見回した。スラリとした長身のスタイルは“美しい”の一言だ。肌はガラスで出来ている様に錯覚するほど白い。膝に座り込むと「ねえ、あたし綺麗?」と言って唇に吸い付き、舌を絡ませて来る。「言うまでも無いよ」「なら、もっと抱いて頂戴。まだ、元気じゃない」と言って息子を刺激し始める。もう、1試合が望みらしい。満足するまでは、彼女も挑んで来るだろう。抱き上げて、ベッドへ連れて行くと猛然と腰を使う。みーちゃんも快楽の世界に溺れ始めた。体位を入れ替えて下から突き上げてやると、一段と喘ぎ声が高まり、身体は痙攣するかの様にピクピクと震え出した。「中へ・・・、中へ・・・出して!」ありったけの体液を注いでやると、みーちゃんはガックリと倒れて来た。肩で息をしながら「気持ち・・・いい・・・、いっばい出たね」と言った。また、抱き合っていると、「今晩、あたしの部屋に泊まらない?裸で抱き合って眠りたいの」と口にし始める。「どうやら、それが目的?」と言うと、彼女は頷いた。2人でシャワーを浴びて、身支度を整えると、みーちゃんのアパートへ向かう。「お盆休み、一緒に過ごさない?」「みーちゃん、実家に帰らないの?」「うん。見合わせてもいいかな?って思ってるの。Yと暮らして見たいの!ダメかな?」彼女は本気で言っていた。「うーん、どうするかな?ちょっと、考えさせてよ」僕は即答を避けた。アパートの部屋に入ると、みーちゃんはカーテンを閉め切り、鍵を厳重にかけてから、服を脱ぎだした。パンティ1枚になると、膝に座って「Yのために買ったパンティにしようか?」と囁いた。「見せて」と言うと紫のTバックを頭に被せた。「似合うよ!」と彼女は無邪気に笑う。僕はただ笑われているしか無かった。笑顔を消すのが怖かった。“みーちゃんには、心の闇があるのではないだろうか?途轍もなく深い心の闇が・・・”フッと過った不安を打ち消して、僕は、みーちゃんとじゃれあって遊んだ。馬鹿騒ぎではあるが、みーちゃんにとっては“大切な時間”に他ならない。結局は、その夜、みーちゃんを抱いて眠りについた。
日曜日、寮に戻った僕は、恭子を呼び出した。みーちゃんの件を包み隠さずに話して、今後の対応を協議するためだ。「あなた、変わってるわね。普通は、溺れて帰って来なくなるはずなのに、ちゃんと戻って来て“今後の対応をどうする?”って言うなんて、やっぱり普通じゃないわ!」と恭子は笑い転げた。「笑ってる場合か?こっちは、壁にブチ当たってるんだぜ!すすむも引くも不可能になる前に、然るべき手を考えなくてはどうする?」僕は真面目に言う。「ちょっ、ちょっと待ってね。Y、落ち着く時間くれない?」恭子は、コーヒーを飲んでから深呼吸をして、息を整えた。「みーちゃんが、“中毒症状”を起こしているって言ってたわよね?それは、あたしも、ちーも薄々感じてた事なのよ!彼女、中学から女学園でずっと過ごして来てるでしょう?男性に対する“免疫”が不十分なのは確かよ!そして、あなたに出会って目覚めてしまった。一度外れた理性の“タガ”を元に戻すとしたら、容易ではないわ!でも、全くの正反対の道へ行った人も居るから、手が無い事も無いのよね!」「“全くの正反対の道”へ行ったのは誰?」「神崎先輩よ。みーちゃんの2年先輩に当たるの。でもね、それだけじゃないのよ!あの2人に共通する“心の闇”があるのよ!」「それは何だ?」「岡元の“イジメとセクハラ”よ!壮絶なイジメに、執拗なセクハラ!今、思い出しても身の毛がよだつ思いよ!でも、あなたが全てを一新してくれた!神崎先輩もみーちゃんも、どれだけ“安堵”したか分かる?まあ、その反動が“中毒症状”として表面化したなら、まだ救い様はあるわ!そうね。ここから先は、神崎先輩とあたし達に任せてくれない?みーちゃんの心をコントロールして見るわ!“側室”の一員として“大奥”に迎えるとしたら、“節度と自戒”について、掟に従ってもらわなきゃならないから!」恭子は一転して真面目に答えた。1つの答えは示された様だ。「よし、そっちは任せるよ。それと、もう1つ恭子には伝えて置く必要がある案件がある!」「何よ?」「田納取締役が光学機器の事業本部長に就任する!それも、8月1日付でな!」「えっ!本当に?!」「間違いは無いよ。裏ルートで新谷さんから伝えられた情報だ。これから、厄介な事が起きなければいいが、保証も無い。背後には、会長が付いてる!僕もウカウカしては居られないんだよ!」「マジ!今は“平取”でも、来期は“常務”クラスの肩書が付きそうね!Y、戦って勝てるの?」恭子も驚いた話になった。「何処まで“通用するか?”全く分からないんだよ。だが、相手は、まだ隙だらけだ。間隙を縫って地固めに動けば、間に合う可能性はある!向こうの足場が不安定な時期に仕掛けて置けば、互角の戦いに持ち込めるとは見てるが、いずれにしても、簡単な相手じゃない!僕としては、不安定要素を取り除いてから、攻撃を仕掛ける必要があるんだよ!未来がかかっている!負ける訳には行かないんだ!」「そうね。相手は大軍よ!どう戦うか?それを考えるだけでも手一杯になるわね。OK、みーちゃんの事は気にしなくていいわ!あたし達でケリを付ける!Yは、“未来との戦い”に如何にして勝つか?も含めて、仕事の事を優先で考慮しなさい!勿論、あたし達も全力でサポートする!勝ち取りなさい!完膚なきまでに叩いてやりなさい!あなたは“国分に居なくてはならない人”なのよ!勝つまで決して諦めないで!」恭子は直ぐに事の重大性を見抜いた。そして、“支える”と言ってくれた。やはり、“正室”なのだと思い知らされた。「さて、硬い話は終わりにしてもいいかな?折角、Yが呼んでくれたからさ、パーっとお昼でも食べに行かない?」「そろそろ、頃合いだな。行くか!」「行こうよ!」硬軟の使い分け、公私の切り替えの早さ、恭子は、流石に“心得ているな”と思う。ジリジリと照り付ける日差しの中、スカイラインは動き出した。
「ねえ、前のZだけど、裕子(岩元さん)じゃない?」加治木IC方面へ向かう道すがらに恭子が見つけた。「多分、間違い無いだろうよ。チョイと追い抜いて見るか!」スカイラインを加速させると、一気にZを追い抜いてドライバーを確認した。「やっぱり、鎌倉だ!」Zは、パッシングをして答え、停まる様に促した。「この先の駐車帯に入るぞ!」2台は、相次いで停まる。僕がZに歩み寄ると「何だよ!Yか!」と鎌倉が言う。「“正室”の愛車だろう?何処へ行く?」と聞かれるが、行き先を答える前に、恭子が裕子さんと話を付けた。「Y,先導して行くよ!」恭子は、サラリと言う。「話が早いな。ともかく、着いて行くぜ!」「後から煽るなよ!」僕等は、列を組んで西へ向かう。「そこを右へ入って!」恭子のナビゲーションで、2台は小料理屋の駐車場へ入った。「来た事はあるのか?」何気に聞かれるが「いいや、初めてさ。恭子にお任せだ!」僕と鎌倉は、肩を竦めて暖簾を潜った。「こっちよ!」裕子さんと恭子が手招きをしている。「何を頼む?」鎌倉は聞くが「それも、恭子にお任せさ。待ってればいい」と言うと「“正室”の力は偉大だな。出る幕も無いのか?」と言われる。「鎌倉、口出しは無用なんだよ。後は話を聞いてやればいいんだ!」と返す。「ふーん、見事に制御してるのね。恭ちゃん、コツはなに?」と裕子さんが話出す。「それはね、Yだから通用する技なの。他の人だったらこんな風には行かないわ。裕子はどうなのよ?」「どっちかの主張を通すのが、いつものパターンかな?綱引きになる事もあるし」裕子さんが、羨ましそうに言う。「基本、任せるのがルールだからな。“暗黙の了解”だよ」さり気なく言うと「それって、ある意味凄いな!全般に渡っての信頼関係か!」鎌倉が驚く。「仕事でも、頼りにしてるから。恭子に任せれば間違いは無いからな」サラリと言うと、「それが、“信玄”と呼ばれる由縁か?」「らしいな」と話が転がる。「ねえ、恭ちゃんの魅力ってなに?」裕子さんが言い出した。「切れ味鋭い観察力と的確な判断力。そして、男を“操縦”する上手さとスタイルの良さ。意外に甘えん坊なところかな?」「Y!余計な事は言わなくていいの!」恭子が鉄拳を振り下ろす。「あら?あら?恭ちゃんが照れてる!“カミソリお恭”も形無しじゃない!」「昔は、もう封印したの!素直に“この人に着いて行く”って決めただけよ!」恭子は珍しく赤くなっていた。「裕ちゃんだって、“生徒会長”何かやって、風切って闊歩してたじゃない!“親衛隊”だって結成されてたし!」「大昔はね。でも、今は、彼に頼り切りなの。恭ちゃんだって、そうでしょう?」「それは、認めるわ。Yだから素直になれるのは、否定しないわ。ちゃんと答えてくれるもの!」「もし、あたし達が全員、“同期のサクラ”だったら、どうなってたかな?」裕子さんが遠い目をする。「こんな関係には、ならなかったかもね!Yは、“参謀長”でしょう?高校時代の“肩書”」恭子が突っ込む。「ああ、鎌倉は、“電気マスター”だったよな?」「電気関係は、自信あったからな。“新設校の参謀長”に“O工業の電気マスター”。名前は轟いてたが、最初は、半信半疑だったよな!三井さんの事件があるまでは」「事件ってなに?」裕子さんが突っ込んで来る。「確か、研修が寮に移ってからだよな?」鎌倉が思い出す。「ああ、香織ちゃんの部屋に忍び込んだはいいが、有賀と滝沢と西沢に騒がれて、敢え無く逮捕されたヤツだろう?“地雷原に行く様なもんだから、止めとけ!”って言ったのに、突撃しちゃったのは仕方無かったが、メシを抜かれたのが致命傷。空腹感に耐えられなくて、泣き付いて来たのはいいが、出るに出られず立ち往生だったよな?」僕が細目を語る。「オートロックを突破する策をYが捻り出して、脱走してコンビニへ駆け込んで事無きを得たが、あの作戦は“ブッ飛ぶヤツ”だったな!」「“正面突破”の上に、警備システムまで騙したからな。鎌倉の知識と僕の知恵で切り抜けた“代表作”だったよな」「解除コードは、Yが手にしたんだよな?」「ああ、あれは、赤羽根さんの“うっかりミス”から探り当てたヤツだ。センサーを黙らせたのは、鎌倉のリード線とガムの銀紙さ!あれからだよな?お互いに認め合ったのは?」「そうだよ、時間単位での進行と見張りの配置、囮部隊まで動かすシナリオを描いた知恵には、脱帽するしか無かった」「配線から、短絡回路を形作って、センサーを空振りさせたお手並みは、見事だった。“コイツには敵わない”と痛感させられたよ」「それで意気投合ってヤツ?」裕子さんが聞く。「そう、あれ以来、お互いに“一目置く”様になって、何度も組んで切り抜けた」「まさか、ここでも“共同戦線”を張るとは思わなかったが、 何でも言い合える相談出来る貴重な“相棒”さ!」僕と鎌倉は改めて“原点”を話した。「あたしと恭ちゃんと似てる気がしない?」「裕ちゃんも、影で随分庇ってくれたよね!逆に、他校の煩い連中を黙らせたり、影で護衛したりするの大変だったけど、唯一、あたしを理解しようとしてくれた裕ちゃんの気持ちは、忘れていないわ!ちーと裕ちゃんが手を差し伸べてくれなかったら、今のあたしは居ないもの!」恭子が感謝を込めて言う。「恭ちゃんを救い出すのは、大変だった。ちーちゃんと合同で3日がかりだったもの!生活全般と仕事は、ちーちゃんが見てくれたけど、その他諸々は、あたしが手を回して、全部裏工作して整えたのよ。今だから言うけど、勤務成績だって“全部作り変えてる”んですからね!」裕子さんがダメを押す。「そんな事、出来たんですか?」僕が驚いて問いただすと「今は、磁気カードでオンラインだから、誤魔化しは不可能だけど、前はカードの打刻とデーターを照合する作業があったから、通用したのよ。それでも、ボーナスに響かない様に“細工”するは、並大抵じゃなかったわ!」と裕子さんが恭子を見る。「恐れ入りました!」恭子が恭しく頭を下げたところで、ランチが届いた。4人で箸を割って無心に食べ始める。「Yさぁ、“同期のサクラ”で気になった女の子は居なかったの?」恭子がやおら言い出す。「香織ちゃんは居たけど、他は“イモ”ばかりだったから、歯牙にもかける気も起きない!完全に“圏外”だよ!」否定すると「有賀と滝沢は、そうでもないだろう?まあ、完全なる“一方通行”に過ぎんがな」と鎌倉が楔を打つ。「そうなの。Yを付け狙ってる子は居るんだ!用心しなきゃ!」と恭子は勝手に納得する。彼女たちが自動車部品事業部に居る事は、掴んでいるはず。またまた、厳重なる監視網が張り巡らされるだろう。「確かに“イモ”だらけだが、Yの“女の子選考基準”が厳格過ぎる嫌いもあるんじゃないか?」「それは、鎌倉もイコールだろう?“小さい・細い・可愛い”の3点は譲れない一線じゃないか!」「そりゃそうだが、Yは点数が辛いのは事実だろうに!」「それは、否定しないが、今は別世界に居るんだ。“女の子選考基準”は封印してるよ。そうでなくとも、手に余る程居るんだからな」「Y-、“女の子選考基準”について、説明してよ!一応、聞いて置く必要があるから!」と恭子が噛みついて来た。厄介な事になったものだ。「恭子、これは、高校時代に“客観的に判断するために決めた私的基準”に過ぎないからな!その辺は、現在とはズレが生じているのは、承知してくれ。基本方針は、さっきも言った様に“小さい・細い・可愛い”の3点セット。学業の優劣や外見は余り問わない。最も重要なのは“心”だ!“真っすぐに事を見据えて付いて来てくれるか?”これが一番の問題さ。いくら、眉目秀麗でも“心がねじ曲がって”いたら即アウト!付き纏ったり、ベタベタしたがるのもダメ!あくまでも、同じ方向に手を携えて進めるか?否か?と言う話さ。恭子は、何も外れてないから気にする必要すら無いよ!」「おー、結構厳格なのね。外れてたら“口も聞いてもらえない”んでしょう?Yの事だから、そこら辺は徹底してるよね?」「当たり。そこまで見えてるなら、わざわざ聞かなくてもいいだろう?」恭子は勝ち誇った表情を見せた。「鎌倉君も同じく?」裕子さんが突っ込んだ。「えー、Yみたいに厳しくは無いけど、根本的な部分では一致してるかな?俺は男だらけで過ごして来たから、Yみたいに共学じゃないし、付き合いも無かったからな。会社に入ってYと話してから“そうだよな!”って一致した訳。勿論、裕ちゃんは文句のつけようが無いよ!」鎌倉は押されっぱなしだった。「僕等の世代は、大体、共通してますよ。外見には捕らわれずに、心を見る傾向にありますから。鎌倉は、大多数が男子の工業高校出。女生徒との接触自体が少ないですから、妙な“先入観”が無い。だから、僕よりは、心が真っすぐか?は直ぐに見える。裕子さんを選んだのは必然性があるんですよ!」と鉄砲隊を差し向けてやる。鎌倉の冷や汗が少し引いた。「裕ちゃん、いい子捕まえたじゃん!」「恭ちゃんもね!」女性陣は満足げに言って笑っていた。鎌倉は、“悪い、助かった”とサインを出した。その後、2台を連ねてワインディングロードを駆け抜けて、寮に戻った。抜きつ抜かれつのカーバトルは、痛快だった。
「助かったよ!“繋ぎのY”の真骨頂発揮だったな!」鎌倉が部屋で今日を振り返って言う。「そっちは、裕子さんに押されっぱなしだったからな。いつも、あんな感じなのか?」「そう言う事。どうしても、彼女がリードする展開に持て行かれるから、冷や汗の連続さ。Yは、完全に下駄を預けてくつろいでるな。あの余裕は何だ?」「慢性的に女性と顔を突き合わせてるからだろうよ。仕事でもプライベートでも、やる事は変わらん。必要な指示は出すが、後は基本的には、向こうに任せてるからな。自然と信頼関係が出来上がってるのが大きいよ」「故に“信玄”と呼ばれるか?」「最初に言い出したのは“安さん”だが、いつの間にやら広がった。今では、事業部全体に拡散してるよ」「まあ、それでも“信頼されてる証”でもあるだろう?サーディプ事業部は、“信玄で持つ”って噂になってる。巨大な看板じゃないか!」「デカイ“看板”は性に合わないよ。だが、生き残るためには、やむを得ないか!」「そうさ。“看板”になれるか否か?これからの時代を生き抜くには、あらゆる場面で“売れてる”事が問われるだろう?俺達は“否応なしに売れた”口だが、他の連中にしてみれば、羨ましい限りなんだぜ!」確かに、鎌倉の言葉は説得力があった。「鎌倉、お盆休みは?」「帰らないさ!“誘拐”されに行く様なもんじゃないか!危険は冒さずに過ごすのが大前提だろう?田中さんが、ボヤいてたよ。“お前達が反乱を起こすとは”ってな!」「“反乱”は、いずれは起こさなきゃならない。まあ、最初の乱としては最適だろうが、“追討部隊”を送り込まれる危険は、覚悟せにゃならないだろうな!」「まさか、O工場から軍を派遣するか?」「田納さんなら、やらせる可能性はあるぞ!総務から“詰問使”が来る可能性はゼロとは言えない。最も“逆手に取って”国分側にも火を点けるチャンスでもあるがな。そこをどう見極めて来るか?読みは慎重に入れないとヤバイぜ!」僕は先の展望を指摘した。「それはそうと、メシに行かないか?明日からまた“戦争”だろう?」鎌倉が時計を見つつ言う。「そうしますかね。目立たぬようにさっさと行きましょう!」僕等は社食へ出かけた。
日曜日の社食はガラ空きだったが、ヤバイ一群を見つけた。有賀・滝沢・西沢・五味の“阿婆擦れ女軍団”だ!僕等は、隠れる様に席を取った。「危ないなー、付け込まれたらアウトだぜ!」鎌倉と共に肝を冷やしつつ食事を摂った。幸い、向こうは気付かずに出て行ったので事なきを得たが、滝沢にだけは捕まりたくは無かった。「Y、美佐江(滝沢)だけは苦手だろう?お前さんのアキレス腱だよな?」「ああ、唯一の爆弾だよ。だが、ウチの“お姉さま方”が網を張ってるから、少しは危険度は下がってるがな」「“スッポン”とどっちが嫌だ?」「“スッポン”の方が話が通じる分、まだ気を許せるさ。共通の“目的”もあるしな」「アイツら、真っ先に“召喚”されるだろうぜ!一番手っ取り早い人員確保方法だからな!」鎌倉が言った。当たらずとも遠からずで、的を射ているだろう。「自動車部品でも、余り良い評判は聞いて無い。あの4人なら、引き抜かれても然したる影響は受けないだろうよ。問題は、その他の事業部だ。いずれも、生産体制の一翼を担ってる存在だ。順次抜けてくとしたら、減産は避けられない。各事業部がどう出るかな?」鎌倉が懸念を示す。「比較的余裕があるのは、自動車部品と研究所と原材料の3つだ。ここから、補完人員を出すとしても、第2次隊でカードは使い切る形になるだろうな。残り100名分の補完人員の宛は無いに等しい。そうするとだな、1次2次隊の3分の1を残すしか無い様な気がするんだよ。無論、それでも現場に穴は空いちまうが、カードを温存出来るメリットは生まれる。生産を維持しながら、“帰還事業”に答えるとしたら、これしか無い!ただ、O工場の意向もある。“どうしても帰して欲しい人材”と被ったら最悪だよ!」「そうなると、本当に“戦争が勃発する”よな。熾烈な駆け引きに巻き込まれて、右往左往するのは派遣隊のメンバーと総務の連中になる。俺達も無縁では居られなくなるな!」「当然さ。だが、O工場のニーズと国分側のニーズが噛み合えば、最初はすんなりと通る事もあり得るだろう。1次隊は途中で入れ替わってるしな。入れ替わった人材は、任期が伸びてるから、まだ先があるし、9月末で“世界大戦”になる公算は低いだろうよ。問題は、10月末の僕等さ!O工場が“欲しがる人材”がわんさかと居る。“至急戻して下さい”と“まだ時間を要する”の全面対決だ!生産工程の調整もあるし、交代勤務のシフト変更もある。簡単には進まなくなったら、それこそ“争奪戦”に発展する!籍はO工場だが、こっちは現場の事情と生産計画の見直しを盾に戦う覚悟はしてるはず。さて、どう出るかな?」「呑気に構えてる場合か?」「そうさ。そうでもしてなきゃやってられないよ。決定権はO工場と国分工場の両方が握ってる。どっちが先に仕掛けて優位に立てるか?見物してるしか無いんだ。自分の意志は伝えてあるし、事業部と本部長の意向もあるだろう。国分側の意向が色濃く反映されるのを見てるしかあるまいよ」自戒めいた話になったが、僕等は“まな板に載せられた魚”と変わりないのだ。裁くのは、O工場か?国分工場か?当日にならなければ見えない部分も多々あるのだ。僕等にできる事は、“代わりの利かない人材”になるだけだった。僕と鎌倉、“スッポン”こと美登里は、地位を築いているが、大多数の連中はそうでは無い。これから始まる“大戦争”で、明暗はクッキリと別れるのだ。
食事を済ませて、2人で寮へ戻ると、玄関先で美登里が待ち構えていた。「おいおい!またしても厄介事かよ!」と鎌倉は引いたが「Y先輩、ちょっといいですか?」と言う美登里の目的は僕だった。「Y、気を付けろよ!」鎌倉はそう言って先に部屋に昇って行った。「車で出ましょうよ。他の人には聞かれたく無いので」美登里はそう言って車を回して、城山公園へ突っ込んだ。「夜歩きは、危険だぞ。特に、若い女の子はな!」「“女の子”扱いされたの何年ぶりかな?優しいんですね。でも、護衛に先輩が付いてます。心配してませんよ!」美登里はそう言って、国分工場が見渡せる南側へ歩いて行った。デニムのミニスカートに白いノースリーブ。美登里らしくない服装も気になった。普段は、肌の露出を極力しない彼女の心境に何があるのか?まだ、見えては居なかった。「先輩、“残留”出来ますよね?あたしと先輩と鎌倉さん!」「まだ、分からんぞ!これから、紆余曲折が始まるだろう。O工場の意向と国分側の論理が“激突”するんだ!先は不透明感で満ちてるよ」「あたし、岩留さんに“残して下さい”って願い出ました!“その言葉を待っていた!”って受け止めてくれました。“代わりの利かない人材になれ!”先輩はそう言われましたが、その地位も手にしました。O工場に未練の欠片もありません!掛け替えのない仲間と働く場を見つけてしまった。今更、“帰って来い”なんて言われても受け入れられません。あたしも揺るがぬ姿勢を保つつもりです。だから、今更“引き上げる”なんて言わないで下さいよ!」「“我はこの地に根を降ろす”君が来る前に、腹は括ってあるさ。もう、引き返す選択は無い。ならば、剣を手に戦うまでの事!幸い、援軍には事欠かないからな!」「あたしもそのつもり。未来への扉は、自ら切り開く。覚悟は出来てます。後、1つを除いては・・・」「残りは何だ?」「パートナーですよ。共に歩む相手。あたしじゃダメですか?」美登里はそう言うと、腕を絡ませて来た。「“正室”がおられるのは知ってます。だから、愛人でもいいの!抱いてくれませんか?」美登里は真面目に言う。ボーイッシュだった髪は伸びて、セミロングにまでなっている。風になびく美登里の髪は輝いていた。僕は美登里を抱き寄せると、「可愛い後輩に手出しはしない。だが、共に戦う戦士としては頼りにする。自分を安売りするな!相応しい男は山のように居るだろう?」と言い含めた。「どうして、あたしには“権利”が無いんですか?恋愛は自由で本人の意思でしょう?」美登里は、抱き付いて離れない。「恭子に知れたら、事だからな!ウチのレディ達を甘く見るな!日干しにされるだけじゃ済まないぞ!それに、細川が居るだろうに!」O工場の相手の名前を出して、引き剥がしにかかろうとするが「アイツなんてもう過去の人よ!先輩だって切り捨ててるじゃありませんか!」と迫って来るのを止めない。こうなると、驚異の粘りを見せて絶対に離れないだろう。「“主義”に反するが、1度きりなら言う事を聞いてやる!だが、今回限りだぞ!」と言うと彼女は頷いた。車に乗ると直ぐに胸に飛び込んで来て「寂しかった。ずっと待ってたの」と言って唇に吸い付き、舌を絡ませる。小ぶりな乳房をさらけ出し、パンティも剥ぎ取ると、餓えた野獣の様に激しく息子を吸い込んでから「あー・・・、突いて!思いっきり突いて下さい!」美登里は狂った様に腰を使い、執拗に突きをねだった。まるで、鬱憤を全て吐き出す様な勢いだった。絶頂に達すると、1滴も余さずに体液を吸い尽くした。「すごい・・・、気持ち良かった・・・、いっぱい出してくれたね」と言って息子に舌を這わせた。本当に余す事無く吸い尽くしたのだ。「まだ、元気ですね。もう1回出来ます?」美登里は、久々の男性の味に餓えていただけでなく、快楽にも餓えていた。美登里のホールに指を入れてかき回してやると、たちまち声を荒げて快楽の世界に溺れだした。「ダメ!出ちゃう!漏れちゃうよー!」と言い終わらぬ内に、多量の愛液が噴出した。「お願い、もっと突いて下さい」座席を愛液まみれにしながらも、彼女は息子を欲しがった。背後から猛然と腰を入れてやると、たちまち底なし沼に落ちて行った。「中に・・・、中へ出して!」突かれながらも、美登里はねだった。再び体液を注いでやると、ぐったりと崩れ落ちた。「これで、思いは・・・、果たせたわ」彼女はやっと満足感に浸った。女性の身でありながら、男達を相手に日々格闘する美登里も“女”に変わりは無かった。この後、美登里とは営みを持つ事は無かった。1度きりの夢に終わったのは、僥倖だった。次に彼女と手を組むのは、互いに剣を携えて戦う10月以降になった。本当に“乾坤一擲”の勝負を挑む場で、僕等は縦横無尽の戦いを繰り広げた。だが、今は1人の女性として、思いを果たしたに過ぎなかった。間もなく7月が終わる。折り返し点は目の前に迫っていた。
みーちゃんを抱いてしばらく眠った後、僕はシャワーを浴びに起き出した。みーちゃんは“女神”の様な表情で眠っていた。“恭子にも言ったが、みーちゃんは中毒症状の1歩手前だ!何か手はないだろうか?”僕は、思いを巡らせた。バスタオルを肩にかけて、ソファーに座った。“ビーナスを傷つける事は、許されない!彼女は、僕の手に余る女神。こんな事をいつまでも続けるのは間違いだ!誰かに託せないだろうか?”だが、その場で考えは浮かばなかった。彼女を起こさない様に、コーヒーを淹れた。「うーん、Y、どこ?」みーちゃんは目を覚まして、周囲を見回した。スラリとした長身のスタイルは“美しい”の一言だ。肌はガラスで出来ている様に錯覚するほど白い。膝に座り込むと「ねえ、あたし綺麗?」と言って唇に吸い付き、舌を絡ませて来る。「言うまでも無いよ」「なら、もっと抱いて頂戴。まだ、元気じゃない」と言って息子を刺激し始める。もう、1試合が望みらしい。満足するまでは、彼女も挑んで来るだろう。抱き上げて、ベッドへ連れて行くと猛然と腰を使う。みーちゃんも快楽の世界に溺れ始めた。体位を入れ替えて下から突き上げてやると、一段と喘ぎ声が高まり、身体は痙攣するかの様にピクピクと震え出した。「中へ・・・、中へ・・・出して!」ありったけの体液を注いでやると、みーちゃんはガックリと倒れて来た。肩で息をしながら「気持ち・・・いい・・・、いっばい出たね」と言った。また、抱き合っていると、「今晩、あたしの部屋に泊まらない?裸で抱き合って眠りたいの」と口にし始める。「どうやら、それが目的?」と言うと、彼女は頷いた。2人でシャワーを浴びて、身支度を整えると、みーちゃんのアパートへ向かう。「お盆休み、一緒に過ごさない?」「みーちゃん、実家に帰らないの?」「うん。見合わせてもいいかな?って思ってるの。Yと暮らして見たいの!ダメかな?」彼女は本気で言っていた。「うーん、どうするかな?ちょっと、考えさせてよ」僕は即答を避けた。アパートの部屋に入ると、みーちゃんはカーテンを閉め切り、鍵を厳重にかけてから、服を脱ぎだした。パンティ1枚になると、膝に座って「Yのために買ったパンティにしようか?」と囁いた。「見せて」と言うと紫のTバックを頭に被せた。「似合うよ!」と彼女は無邪気に笑う。僕はただ笑われているしか無かった。笑顔を消すのが怖かった。“みーちゃんには、心の闇があるのではないだろうか?途轍もなく深い心の闇が・・・”フッと過った不安を打ち消して、僕は、みーちゃんとじゃれあって遊んだ。馬鹿騒ぎではあるが、みーちゃんにとっては“大切な時間”に他ならない。結局は、その夜、みーちゃんを抱いて眠りについた。
日曜日、寮に戻った僕は、恭子を呼び出した。みーちゃんの件を包み隠さずに話して、今後の対応を協議するためだ。「あなた、変わってるわね。普通は、溺れて帰って来なくなるはずなのに、ちゃんと戻って来て“今後の対応をどうする?”って言うなんて、やっぱり普通じゃないわ!」と恭子は笑い転げた。「笑ってる場合か?こっちは、壁にブチ当たってるんだぜ!すすむも引くも不可能になる前に、然るべき手を考えなくてはどうする?」僕は真面目に言う。「ちょっ、ちょっと待ってね。Y、落ち着く時間くれない?」恭子は、コーヒーを飲んでから深呼吸をして、息を整えた。「みーちゃんが、“中毒症状”を起こしているって言ってたわよね?それは、あたしも、ちーも薄々感じてた事なのよ!彼女、中学から女学園でずっと過ごして来てるでしょう?男性に対する“免疫”が不十分なのは確かよ!そして、あなたに出会って目覚めてしまった。一度外れた理性の“タガ”を元に戻すとしたら、容易ではないわ!でも、全くの正反対の道へ行った人も居るから、手が無い事も無いのよね!」「“全くの正反対の道”へ行ったのは誰?」「神崎先輩よ。みーちゃんの2年先輩に当たるの。でもね、それだけじゃないのよ!あの2人に共通する“心の闇”があるのよ!」「それは何だ?」「岡元の“イジメとセクハラ”よ!壮絶なイジメに、執拗なセクハラ!今、思い出しても身の毛がよだつ思いよ!でも、あなたが全てを一新してくれた!神崎先輩もみーちゃんも、どれだけ“安堵”したか分かる?まあ、その反動が“中毒症状”として表面化したなら、まだ救い様はあるわ!そうね。ここから先は、神崎先輩とあたし達に任せてくれない?みーちゃんの心をコントロールして見るわ!“側室”の一員として“大奥”に迎えるとしたら、“節度と自戒”について、掟に従ってもらわなきゃならないから!」恭子は一転して真面目に答えた。1つの答えは示された様だ。「よし、そっちは任せるよ。それと、もう1つ恭子には伝えて置く必要がある案件がある!」「何よ?」「田納取締役が光学機器の事業本部長に就任する!それも、8月1日付でな!」「えっ!本当に?!」「間違いは無いよ。裏ルートで新谷さんから伝えられた情報だ。これから、厄介な事が起きなければいいが、保証も無い。背後には、会長が付いてる!僕もウカウカしては居られないんだよ!」「マジ!今は“平取”でも、来期は“常務”クラスの肩書が付きそうね!Y、戦って勝てるの?」恭子も驚いた話になった。「何処まで“通用するか?”全く分からないんだよ。だが、相手は、まだ隙だらけだ。間隙を縫って地固めに動けば、間に合う可能性はある!向こうの足場が不安定な時期に仕掛けて置けば、互角の戦いに持ち込めるとは見てるが、いずれにしても、簡単な相手じゃない!僕としては、不安定要素を取り除いてから、攻撃を仕掛ける必要があるんだよ!未来がかかっている!負ける訳には行かないんだ!」「そうね。相手は大軍よ!どう戦うか?それを考えるだけでも手一杯になるわね。OK、みーちゃんの事は気にしなくていいわ!あたし達でケリを付ける!Yは、“未来との戦い”に如何にして勝つか?も含めて、仕事の事を優先で考慮しなさい!勿論、あたし達も全力でサポートする!勝ち取りなさい!完膚なきまでに叩いてやりなさい!あなたは“国分に居なくてはならない人”なのよ!勝つまで決して諦めないで!」恭子は直ぐに事の重大性を見抜いた。そして、“支える”と言ってくれた。やはり、“正室”なのだと思い知らされた。「さて、硬い話は終わりにしてもいいかな?折角、Yが呼んでくれたからさ、パーっとお昼でも食べに行かない?」「そろそろ、頃合いだな。行くか!」「行こうよ!」硬軟の使い分け、公私の切り替えの早さ、恭子は、流石に“心得ているな”と思う。ジリジリと照り付ける日差しの中、スカイラインは動き出した。
「ねえ、前のZだけど、裕子(岩元さん)じゃない?」加治木IC方面へ向かう道すがらに恭子が見つけた。「多分、間違い無いだろうよ。チョイと追い抜いて見るか!」スカイラインを加速させると、一気にZを追い抜いてドライバーを確認した。「やっぱり、鎌倉だ!」Zは、パッシングをして答え、停まる様に促した。「この先の駐車帯に入るぞ!」2台は、相次いで停まる。僕がZに歩み寄ると「何だよ!Yか!」と鎌倉が言う。「“正室”の愛車だろう?何処へ行く?」と聞かれるが、行き先を答える前に、恭子が裕子さんと話を付けた。「Y,先導して行くよ!」恭子は、サラリと言う。「話が早いな。ともかく、着いて行くぜ!」「後から煽るなよ!」僕等は、列を組んで西へ向かう。「そこを右へ入って!」恭子のナビゲーションで、2台は小料理屋の駐車場へ入った。「来た事はあるのか?」何気に聞かれるが「いいや、初めてさ。恭子にお任せだ!」僕と鎌倉は、肩を竦めて暖簾を潜った。「こっちよ!」裕子さんと恭子が手招きをしている。「何を頼む?」鎌倉は聞くが「それも、恭子にお任せさ。待ってればいい」と言うと「“正室”の力は偉大だな。出る幕も無いのか?」と言われる。「鎌倉、口出しは無用なんだよ。後は話を聞いてやればいいんだ!」と返す。「ふーん、見事に制御してるのね。恭ちゃん、コツはなに?」と裕子さんが話出す。「それはね、Yだから通用する技なの。他の人だったらこんな風には行かないわ。裕子はどうなのよ?」「どっちかの主張を通すのが、いつものパターンかな?綱引きになる事もあるし」裕子さんが、羨ましそうに言う。「基本、任せるのがルールだからな。“暗黙の了解”だよ」さり気なく言うと「それって、ある意味凄いな!全般に渡っての信頼関係か!」鎌倉が驚く。「仕事でも、頼りにしてるから。恭子に任せれば間違いは無いからな」サラリと言うと、「それが、“信玄”と呼ばれる由縁か?」「らしいな」と話が転がる。「ねえ、恭ちゃんの魅力ってなに?」裕子さんが言い出した。「切れ味鋭い観察力と的確な判断力。そして、男を“操縦”する上手さとスタイルの良さ。意外に甘えん坊なところかな?」「Y!余計な事は言わなくていいの!」恭子が鉄拳を振り下ろす。「あら?あら?恭ちゃんが照れてる!“カミソリお恭”も形無しじゃない!」「昔は、もう封印したの!素直に“この人に着いて行く”って決めただけよ!」恭子は珍しく赤くなっていた。「裕ちゃんだって、“生徒会長”何かやって、風切って闊歩してたじゃない!“親衛隊”だって結成されてたし!」「大昔はね。でも、今は、彼に頼り切りなの。恭ちゃんだって、そうでしょう?」「それは、認めるわ。Yだから素直になれるのは、否定しないわ。ちゃんと答えてくれるもの!」「もし、あたし達が全員、“同期のサクラ”だったら、どうなってたかな?」裕子さんが遠い目をする。「こんな関係には、ならなかったかもね!Yは、“参謀長”でしょう?高校時代の“肩書”」恭子が突っ込む。「ああ、鎌倉は、“電気マスター”だったよな?」「電気関係は、自信あったからな。“新設校の参謀長”に“O工業の電気マスター”。名前は轟いてたが、最初は、半信半疑だったよな!三井さんの事件があるまでは」「事件ってなに?」裕子さんが突っ込んで来る。「確か、研修が寮に移ってからだよな?」鎌倉が思い出す。「ああ、香織ちゃんの部屋に忍び込んだはいいが、有賀と滝沢と西沢に騒がれて、敢え無く逮捕されたヤツだろう?“地雷原に行く様なもんだから、止めとけ!”って言ったのに、突撃しちゃったのは仕方無かったが、メシを抜かれたのが致命傷。空腹感に耐えられなくて、泣き付いて来たのはいいが、出るに出られず立ち往生だったよな?」僕が細目を語る。「オートロックを突破する策をYが捻り出して、脱走してコンビニへ駆け込んで事無きを得たが、あの作戦は“ブッ飛ぶヤツ”だったな!」「“正面突破”の上に、警備システムまで騙したからな。鎌倉の知識と僕の知恵で切り抜けた“代表作”だったよな」「解除コードは、Yが手にしたんだよな?」「ああ、あれは、赤羽根さんの“うっかりミス”から探り当てたヤツだ。センサーを黙らせたのは、鎌倉のリード線とガムの銀紙さ!あれからだよな?お互いに認め合ったのは?」「そうだよ、時間単位での進行と見張りの配置、囮部隊まで動かすシナリオを描いた知恵には、脱帽するしか無かった」「配線から、短絡回路を形作って、センサーを空振りさせたお手並みは、見事だった。“コイツには敵わない”と痛感させられたよ」「それで意気投合ってヤツ?」裕子さんが聞く。「そう、あれ以来、お互いに“一目置く”様になって、何度も組んで切り抜けた」「まさか、ここでも“共同戦線”を張るとは思わなかったが、 何でも言い合える相談出来る貴重な“相棒”さ!」僕と鎌倉は改めて“原点”を話した。「あたしと恭ちゃんと似てる気がしない?」「裕ちゃんも、影で随分庇ってくれたよね!逆に、他校の煩い連中を黙らせたり、影で護衛したりするの大変だったけど、唯一、あたしを理解しようとしてくれた裕ちゃんの気持ちは、忘れていないわ!ちーと裕ちゃんが手を差し伸べてくれなかったら、今のあたしは居ないもの!」恭子が感謝を込めて言う。「恭ちゃんを救い出すのは、大変だった。ちーちゃんと合同で3日がかりだったもの!生活全般と仕事は、ちーちゃんが見てくれたけど、その他諸々は、あたしが手を回して、全部裏工作して整えたのよ。今だから言うけど、勤務成績だって“全部作り変えてる”んですからね!」裕子さんがダメを押す。「そんな事、出来たんですか?」僕が驚いて問いただすと「今は、磁気カードでオンラインだから、誤魔化しは不可能だけど、前はカードの打刻とデーターを照合する作業があったから、通用したのよ。それでも、ボーナスに響かない様に“細工”するは、並大抵じゃなかったわ!」と裕子さんが恭子を見る。「恐れ入りました!」恭子が恭しく頭を下げたところで、ランチが届いた。4人で箸を割って無心に食べ始める。「Yさぁ、“同期のサクラ”で気になった女の子は居なかったの?」恭子がやおら言い出す。「香織ちゃんは居たけど、他は“イモ”ばかりだったから、歯牙にもかける気も起きない!完全に“圏外”だよ!」否定すると「有賀と滝沢は、そうでもないだろう?まあ、完全なる“一方通行”に過ぎんがな」と鎌倉が楔を打つ。「そうなの。Yを付け狙ってる子は居るんだ!用心しなきゃ!」と恭子は勝手に納得する。彼女たちが自動車部品事業部に居る事は、掴んでいるはず。またまた、厳重なる監視網が張り巡らされるだろう。「確かに“イモ”だらけだが、Yの“女の子選考基準”が厳格過ぎる嫌いもあるんじゃないか?」「それは、鎌倉もイコールだろう?“小さい・細い・可愛い”の3点は譲れない一線じゃないか!」「そりゃそうだが、Yは点数が辛いのは事実だろうに!」「それは、否定しないが、今は別世界に居るんだ。“女の子選考基準”は封印してるよ。そうでなくとも、手に余る程居るんだからな」「Y-、“女の子選考基準”について、説明してよ!一応、聞いて置く必要があるから!」と恭子が噛みついて来た。厄介な事になったものだ。「恭子、これは、高校時代に“客観的に判断するために決めた私的基準”に過ぎないからな!その辺は、現在とはズレが生じているのは、承知してくれ。基本方針は、さっきも言った様に“小さい・細い・可愛い”の3点セット。学業の優劣や外見は余り問わない。最も重要なのは“心”だ!“真っすぐに事を見据えて付いて来てくれるか?”これが一番の問題さ。いくら、眉目秀麗でも“心がねじ曲がって”いたら即アウト!付き纏ったり、ベタベタしたがるのもダメ!あくまでも、同じ方向に手を携えて進めるか?否か?と言う話さ。恭子は、何も外れてないから気にする必要すら無いよ!」「おー、結構厳格なのね。外れてたら“口も聞いてもらえない”んでしょう?Yの事だから、そこら辺は徹底してるよね?」「当たり。そこまで見えてるなら、わざわざ聞かなくてもいいだろう?」恭子は勝ち誇った表情を見せた。「鎌倉君も同じく?」裕子さんが突っ込んだ。「えー、Yみたいに厳しくは無いけど、根本的な部分では一致してるかな?俺は男だらけで過ごして来たから、Yみたいに共学じゃないし、付き合いも無かったからな。会社に入ってYと話してから“そうだよな!”って一致した訳。勿論、裕ちゃんは文句のつけようが無いよ!」鎌倉は押されっぱなしだった。「僕等の世代は、大体、共通してますよ。外見には捕らわれずに、心を見る傾向にありますから。鎌倉は、大多数が男子の工業高校出。女生徒との接触自体が少ないですから、妙な“先入観”が無い。だから、僕よりは、心が真っすぐか?は直ぐに見える。裕子さんを選んだのは必然性があるんですよ!」と鉄砲隊を差し向けてやる。鎌倉の冷や汗が少し引いた。「裕ちゃん、いい子捕まえたじゃん!」「恭ちゃんもね!」女性陣は満足げに言って笑っていた。鎌倉は、“悪い、助かった”とサインを出した。その後、2台を連ねてワインディングロードを駆け抜けて、寮に戻った。抜きつ抜かれつのカーバトルは、痛快だった。
「助かったよ!“繋ぎのY”の真骨頂発揮だったな!」鎌倉が部屋で今日を振り返って言う。「そっちは、裕子さんに押されっぱなしだったからな。いつも、あんな感じなのか?」「そう言う事。どうしても、彼女がリードする展開に持て行かれるから、冷や汗の連続さ。Yは、完全に下駄を預けてくつろいでるな。あの余裕は何だ?」「慢性的に女性と顔を突き合わせてるからだろうよ。仕事でもプライベートでも、やる事は変わらん。必要な指示は出すが、後は基本的には、向こうに任せてるからな。自然と信頼関係が出来上がってるのが大きいよ」「故に“信玄”と呼ばれるか?」「最初に言い出したのは“安さん”だが、いつの間にやら広がった。今では、事業部全体に拡散してるよ」「まあ、それでも“信頼されてる証”でもあるだろう?サーディプ事業部は、“信玄で持つ”って噂になってる。巨大な看板じゃないか!」「デカイ“看板”は性に合わないよ。だが、生き残るためには、やむを得ないか!」「そうさ。“看板”になれるか否か?これからの時代を生き抜くには、あらゆる場面で“売れてる”事が問われるだろう?俺達は“否応なしに売れた”口だが、他の連中にしてみれば、羨ましい限りなんだぜ!」確かに、鎌倉の言葉は説得力があった。「鎌倉、お盆休みは?」「帰らないさ!“誘拐”されに行く様なもんじゃないか!危険は冒さずに過ごすのが大前提だろう?田中さんが、ボヤいてたよ。“お前達が反乱を起こすとは”ってな!」「“反乱”は、いずれは起こさなきゃならない。まあ、最初の乱としては最適だろうが、“追討部隊”を送り込まれる危険は、覚悟せにゃならないだろうな!」「まさか、O工場から軍を派遣するか?」「田納さんなら、やらせる可能性はあるぞ!総務から“詰問使”が来る可能性はゼロとは言えない。最も“逆手に取って”国分側にも火を点けるチャンスでもあるがな。そこをどう見極めて来るか?読みは慎重に入れないとヤバイぜ!」僕は先の展望を指摘した。「それはそうと、メシに行かないか?明日からまた“戦争”だろう?」鎌倉が時計を見つつ言う。「そうしますかね。目立たぬようにさっさと行きましょう!」僕等は社食へ出かけた。
日曜日の社食はガラ空きだったが、ヤバイ一群を見つけた。有賀・滝沢・西沢・五味の“阿婆擦れ女軍団”だ!僕等は、隠れる様に席を取った。「危ないなー、付け込まれたらアウトだぜ!」鎌倉と共に肝を冷やしつつ食事を摂った。幸い、向こうは気付かずに出て行ったので事なきを得たが、滝沢にだけは捕まりたくは無かった。「Y、美佐江(滝沢)だけは苦手だろう?お前さんのアキレス腱だよな?」「ああ、唯一の爆弾だよ。だが、ウチの“お姉さま方”が網を張ってるから、少しは危険度は下がってるがな」「“スッポン”とどっちが嫌だ?」「“スッポン”の方が話が通じる分、まだ気を許せるさ。共通の“目的”もあるしな」「アイツら、真っ先に“召喚”されるだろうぜ!一番手っ取り早い人員確保方法だからな!」鎌倉が言った。当たらずとも遠からずで、的を射ているだろう。「自動車部品でも、余り良い評判は聞いて無い。あの4人なら、引き抜かれても然したる影響は受けないだろうよ。問題は、その他の事業部だ。いずれも、生産体制の一翼を担ってる存在だ。順次抜けてくとしたら、減産は避けられない。各事業部がどう出るかな?」鎌倉が懸念を示す。「比較的余裕があるのは、自動車部品と研究所と原材料の3つだ。ここから、補完人員を出すとしても、第2次隊でカードは使い切る形になるだろうな。残り100名分の補完人員の宛は無いに等しい。そうするとだな、1次2次隊の3分の1を残すしか無い様な気がするんだよ。無論、それでも現場に穴は空いちまうが、カードを温存出来るメリットは生まれる。生産を維持しながら、“帰還事業”に答えるとしたら、これしか無い!ただ、O工場の意向もある。“どうしても帰して欲しい人材”と被ったら最悪だよ!」「そうなると、本当に“戦争が勃発する”よな。熾烈な駆け引きに巻き込まれて、右往左往するのは派遣隊のメンバーと総務の連中になる。俺達も無縁では居られなくなるな!」「当然さ。だが、O工場のニーズと国分側のニーズが噛み合えば、最初はすんなりと通る事もあり得るだろう。1次隊は途中で入れ替わってるしな。入れ替わった人材は、任期が伸びてるから、まだ先があるし、9月末で“世界大戦”になる公算は低いだろうよ。問題は、10月末の僕等さ!O工場が“欲しがる人材”がわんさかと居る。“至急戻して下さい”と“まだ時間を要する”の全面対決だ!生産工程の調整もあるし、交代勤務のシフト変更もある。簡単には進まなくなったら、それこそ“争奪戦”に発展する!籍はO工場だが、こっちは現場の事情と生産計画の見直しを盾に戦う覚悟はしてるはず。さて、どう出るかな?」「呑気に構えてる場合か?」「そうさ。そうでもしてなきゃやってられないよ。決定権はO工場と国分工場の両方が握ってる。どっちが先に仕掛けて優位に立てるか?見物してるしか無いんだ。自分の意志は伝えてあるし、事業部と本部長の意向もあるだろう。国分側の意向が色濃く反映されるのを見てるしかあるまいよ」自戒めいた話になったが、僕等は“まな板に載せられた魚”と変わりないのだ。裁くのは、O工場か?国分工場か?当日にならなければ見えない部分も多々あるのだ。僕等にできる事は、“代わりの利かない人材”になるだけだった。僕と鎌倉、“スッポン”こと美登里は、地位を築いているが、大多数の連中はそうでは無い。これから始まる“大戦争”で、明暗はクッキリと別れるのだ。
食事を済ませて、2人で寮へ戻ると、玄関先で美登里が待ち構えていた。「おいおい!またしても厄介事かよ!」と鎌倉は引いたが「Y先輩、ちょっといいですか?」と言う美登里の目的は僕だった。「Y、気を付けろよ!」鎌倉はそう言って先に部屋に昇って行った。「車で出ましょうよ。他の人には聞かれたく無いので」美登里はそう言って車を回して、城山公園へ突っ込んだ。「夜歩きは、危険だぞ。特に、若い女の子はな!」「“女の子”扱いされたの何年ぶりかな?優しいんですね。でも、護衛に先輩が付いてます。心配してませんよ!」美登里はそう言って、国分工場が見渡せる南側へ歩いて行った。デニムのミニスカートに白いノースリーブ。美登里らしくない服装も気になった。普段は、肌の露出を極力しない彼女の心境に何があるのか?まだ、見えては居なかった。「先輩、“残留”出来ますよね?あたしと先輩と鎌倉さん!」「まだ、分からんぞ!これから、紆余曲折が始まるだろう。O工場の意向と国分側の論理が“激突”するんだ!先は不透明感で満ちてるよ」「あたし、岩留さんに“残して下さい”って願い出ました!“その言葉を待っていた!”って受け止めてくれました。“代わりの利かない人材になれ!”先輩はそう言われましたが、その地位も手にしました。O工場に未練の欠片もありません!掛け替えのない仲間と働く場を見つけてしまった。今更、“帰って来い”なんて言われても受け入れられません。あたしも揺るがぬ姿勢を保つつもりです。だから、今更“引き上げる”なんて言わないで下さいよ!」「“我はこの地に根を降ろす”君が来る前に、腹は括ってあるさ。もう、引き返す選択は無い。ならば、剣を手に戦うまでの事!幸い、援軍には事欠かないからな!」「あたしもそのつもり。未来への扉は、自ら切り開く。覚悟は出来てます。後、1つを除いては・・・」「残りは何だ?」「パートナーですよ。共に歩む相手。あたしじゃダメですか?」美登里はそう言うと、腕を絡ませて来た。「“正室”がおられるのは知ってます。だから、愛人でもいいの!抱いてくれませんか?」美登里は真面目に言う。ボーイッシュだった髪は伸びて、セミロングにまでなっている。風になびく美登里の髪は輝いていた。僕は美登里を抱き寄せると、「可愛い後輩に手出しはしない。だが、共に戦う戦士としては頼りにする。自分を安売りするな!相応しい男は山のように居るだろう?」と言い含めた。「どうして、あたしには“権利”が無いんですか?恋愛は自由で本人の意思でしょう?」美登里は、抱き付いて離れない。「恭子に知れたら、事だからな!ウチのレディ達を甘く見るな!日干しにされるだけじゃ済まないぞ!それに、細川が居るだろうに!」O工場の相手の名前を出して、引き剥がしにかかろうとするが「アイツなんてもう過去の人よ!先輩だって切り捨ててるじゃありませんか!」と迫って来るのを止めない。こうなると、驚異の粘りを見せて絶対に離れないだろう。「“主義”に反するが、1度きりなら言う事を聞いてやる!だが、今回限りだぞ!」と言うと彼女は頷いた。車に乗ると直ぐに胸に飛び込んで来て「寂しかった。ずっと待ってたの」と言って唇に吸い付き、舌を絡ませる。小ぶりな乳房をさらけ出し、パンティも剥ぎ取ると、餓えた野獣の様に激しく息子を吸い込んでから「あー・・・、突いて!思いっきり突いて下さい!」美登里は狂った様に腰を使い、執拗に突きをねだった。まるで、鬱憤を全て吐き出す様な勢いだった。絶頂に達すると、1滴も余さずに体液を吸い尽くした。「すごい・・・、気持ち良かった・・・、いっぱい出してくれたね」と言って息子に舌を這わせた。本当に余す事無く吸い尽くしたのだ。「まだ、元気ですね。もう1回出来ます?」美登里は、久々の男性の味に餓えていただけでなく、快楽にも餓えていた。美登里のホールに指を入れてかき回してやると、たちまち声を荒げて快楽の世界に溺れだした。「ダメ!出ちゃう!漏れちゃうよー!」と言い終わらぬ内に、多量の愛液が噴出した。「お願い、もっと突いて下さい」座席を愛液まみれにしながらも、彼女は息子を欲しがった。背後から猛然と腰を入れてやると、たちまち底なし沼に落ちて行った。「中に・・・、中へ出して!」突かれながらも、美登里はねだった。再び体液を注いでやると、ぐったりと崩れ落ちた。「これで、思いは・・・、果たせたわ」彼女はやっと満足感に浸った。女性の身でありながら、男達を相手に日々格闘する美登里も“女”に変わりは無かった。この後、美登里とは営みを持つ事は無かった。1度きりの夢に終わったのは、僥倖だった。次に彼女と手を組むのは、互いに剣を携えて戦う10月以降になった。本当に“乾坤一擲”の勝負を挑む場で、僕等は縦横無尽の戦いを繰り広げた。だが、今は1人の女性として、思いを果たしたに過ぎなかった。間もなく7月が終わる。折り返し点は目の前に迫っていた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます