面白い展開になってきました。前からお伝えしているように、世界的な米ドル安局面の中でNZドル高が急速に進んでいます。年初のもみ合いを経て、3月以降はまさに右肩上がり、一本調子の上昇で、あらゆる目先のテクニカルラインを突き抜ける、青天井状態に突入しています。今年に入ってからの上昇はたった5ヵ月でな~んと16%!
これは1月1日に100万円持っていた人が、銀行にも入れないでタンス預金していただけで「116万円になってしまった!」というのと理論的には同じこと。これを銀行に預けていれば、さらに利息がついて118万円ぐらいの価値になっていた計算になります。
「そんなことってあっていいのかっ?」
って感じですが、これが外貨の玉手箱…。しかし、開けた箱がパンドラの箱ならば、100万円が84万円に値下がりすることもあるし、金融不安が吹き荒れているアルゼンチンなら年初の100万円はたったの28万円にまで暴落しています。
同じく5ヵ月間で豪ドルは12%高、南アフリカのランドは18%高ですから、やはりラグビーの世界最強リーグ「スーパー12」開催国である、これら南半球3カ国の通貨高は突出しており、「通貨のスーパー12」の強さは圧倒的です。ちなみに今年に入って5月末までの日本円は6%高(それでも日本政府は円高阻止に必死の介入に出ています)、ユーロは5%高止まりです。
世界の主要通貨がこれだけ上がっているということは、米ドルの一人負けということになります。でも、アメリカは世界最大の消費国で米ドルが弱くなると、輸入品が割高に感じられるので、海外からあまり買ってくれなくなります。彼らの財布の紐が固くなることはアメリカを最大の「お得意さん」とする輸出国とっては非常に困ることで、米ドル安・自国通貨高は諸刃の剣なのです。
NZも酪農品など一次産品への輸出依存度が非常に高い国ですから、自国産品が割高になれば輸出が苦しくなってきます。カレン財務相も5月23日の予算案発表後のインタビューで、「NZドルが輸出業者に悪影響を及ぼす水準にまで上昇することは好ましいことではない」と発言し、直後にNZドルどころか豪ドルまでが反射的に売られる局面がありました(笑) 確かにこれだけ急激に上昇すれば怖くもなるし、「少し利食って利益を確定しておきたい」という気にもなるでしょう。
しかし、南半球通貨はこの手の要人発言程度ではよろめかないほど、強い上昇サイクルに乗っています。このメルマガで取り上げただけでも、4月13日の「8ヵ月ぶり高の1NZドル=0.4445米ドル」、5月21日の「22ヵ月ぶり高の1NZドル=0.46米ドル」、そして今回の「2年ぶり高の1NZドル=0.48米ドル」と、まさにあれよあれよという間の上昇です。
しかし、ほんの2年前の2000年には、年初の0.50米ドル台から年末にかけての0.40米ドル割れまで1年以内に最大25%も急落していたこともあるので、今年に入ってから5ヵ月間で16%上がったからと言って、腰を抜かすほどのことではないでしょう。NZドルは2001年には丸々1年かけて0.40米ドル近辺で値固めをし、9月の米国同時多発テロを経ていよいよ底値が固まり、今年3月に「本格的にテイクオフ!」と、なったわけです。
通貨がこんなに上がると輸出にマイナス影響が出てきますが、一方で株高になることが多いのです。株はインフレの匂いに非常に敏感で、新聞に「○○が値上げ」なんて記事が並び始めると金利動向を睨みながらもジワジワ上がってきます。今年に入ってからのNZ株は1月3日の大発会が742、4月30日が739と、全く動かない眠気を誘うような相場でしたが、5月に入ってからは顔つきが変わり、1ヵ月で5%高の775になりました。
「なあ~んだ、5%ぐらい。株だったら10%、20%といかなきゃ!」
と思われるかもしれませんが、この775という水準は2000年以来約2年半ぶりの高値となれば話は別でしょう。しかも外国人投資家は、株の値上がりと保有期間中のNZドル高の双方から値上がり益(含み益であっても)を手にしているはず。NZのような小さい市場に世界各地から資金が集まってくれば、簡単にフワッと持ち上がってしまう可能性もなきにしもあらず・・・。そう思いながら、「ニュージーランド・ヘラルド」のサイトを開いたら、
「6月からビール値上げ!」
とデカデカと出ており、
「おぉぉぉ。来た来た・・」
という感じ。やっぱり株はインフレがお好き♪
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編集後記「マヨネーズ」
昨今の証券会社の株式レポートの下にくっついてくる断り書きからのパクリ。
"このメルマガは投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄選択、投資判断の最終決定は、皆様ご自身のご判断でなさるようにお願いいたします。このメルマガは信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、その正確性に関して責任を負うものではありません。ここに記載された意見は、配信日における判断であり、予告なく変わる場合があります。提供されました情報はご登録者限りでご使用ください。云々くんぬん・・"
まだまだ本当はこの3倍ぐらい長い文章が続きます。要は"投資はご自身のご判断で"ってことです。これは証券会社の訴訟対策への厚いガード以前に、投資の基本でもあります。利益を取りにいくためにリスクも引き受ける覚悟があるかどうか。「ここまでのリスクは取ろう!」と決めたら、あとは情報収集してレッツゴー。相場の前にプロも素人もありません。勝てば官軍。
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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
こんな細かい相場の話を今になって読み返してみても、何がなんだか(笑) でもチャートを紐解いてみると、確かにNZドルは2001年に丸々1年かけて0.40米ドル近辺で値固めをし、その後は本格テイクオフ!以来、NZドルはリーマンショックだろうがなんだろうが、2度と0.40米ドルをつけていません。
その後、多少の高下はあっても2008年第1四半期まで上昇サイクルが続き、倍の0.80米ドルまでいった出発点がまさにこの頃でした。
「来る、来る、来る、来る、絶対来る!」
とせっせとNZドルを買っていた頃です。
これは1月1日に100万円持っていた人が、銀行にも入れないでタンス預金していただけで「116万円になってしまった!」というのと理論的には同じこと。これを銀行に預けていれば、さらに利息がついて118万円ぐらいの価値になっていた計算になります。
「そんなことってあっていいのかっ?」
って感じですが、これが外貨の玉手箱…。しかし、開けた箱がパンドラの箱ならば、100万円が84万円に値下がりすることもあるし、金融不安が吹き荒れているアルゼンチンなら年初の100万円はたったの28万円にまで暴落しています。
同じく5ヵ月間で豪ドルは12%高、南アフリカのランドは18%高ですから、やはりラグビーの世界最強リーグ「スーパー12」開催国である、これら南半球3カ国の通貨高は突出しており、「通貨のスーパー12」の強さは圧倒的です。ちなみに今年に入って5月末までの日本円は6%高(それでも日本政府は円高阻止に必死の介入に出ています)、ユーロは5%高止まりです。
世界の主要通貨がこれだけ上がっているということは、米ドルの一人負けということになります。でも、アメリカは世界最大の消費国で米ドルが弱くなると、輸入品が割高に感じられるので、海外からあまり買ってくれなくなります。彼らの財布の紐が固くなることはアメリカを最大の「お得意さん」とする輸出国とっては非常に困ることで、米ドル安・自国通貨高は諸刃の剣なのです。
NZも酪農品など一次産品への輸出依存度が非常に高い国ですから、自国産品が割高になれば輸出が苦しくなってきます。カレン財務相も5月23日の予算案発表後のインタビューで、「NZドルが輸出業者に悪影響を及ぼす水準にまで上昇することは好ましいことではない」と発言し、直後にNZドルどころか豪ドルまでが反射的に売られる局面がありました(笑) 確かにこれだけ急激に上昇すれば怖くもなるし、「少し利食って利益を確定しておきたい」という気にもなるでしょう。
しかし、南半球通貨はこの手の要人発言程度ではよろめかないほど、強い上昇サイクルに乗っています。このメルマガで取り上げただけでも、4月13日の「8ヵ月ぶり高の1NZドル=0.4445米ドル」、5月21日の「22ヵ月ぶり高の1NZドル=0.46米ドル」、そして今回の「2年ぶり高の1NZドル=0.48米ドル」と、まさにあれよあれよという間の上昇です。
しかし、ほんの2年前の2000年には、年初の0.50米ドル台から年末にかけての0.40米ドル割れまで1年以内に最大25%も急落していたこともあるので、今年に入ってから5ヵ月間で16%上がったからと言って、腰を抜かすほどのことではないでしょう。NZドルは2001年には丸々1年かけて0.40米ドル近辺で値固めをし、9月の米国同時多発テロを経ていよいよ底値が固まり、今年3月に「本格的にテイクオフ!」と、なったわけです。
通貨がこんなに上がると輸出にマイナス影響が出てきますが、一方で株高になることが多いのです。株はインフレの匂いに非常に敏感で、新聞に「○○が値上げ」なんて記事が並び始めると金利動向を睨みながらもジワジワ上がってきます。今年に入ってからのNZ株は1月3日の大発会が742、4月30日が739と、全く動かない眠気を誘うような相場でしたが、5月に入ってからは顔つきが変わり、1ヵ月で5%高の775になりました。
「なあ~んだ、5%ぐらい。株だったら10%、20%といかなきゃ!」
と思われるかもしれませんが、この775という水準は2000年以来約2年半ぶりの高値となれば話は別でしょう。しかも外国人投資家は、株の値上がりと保有期間中のNZドル高の双方から値上がり益(含み益であっても)を手にしているはず。NZのような小さい市場に世界各地から資金が集まってくれば、簡単にフワッと持ち上がってしまう可能性もなきにしもあらず・・・。そう思いながら、「ニュージーランド・ヘラルド」のサイトを開いたら、
「6月からビール値上げ!」
とデカデカと出ており、
「おぉぉぉ。来た来た・・」
という感じ。やっぱり株はインフレがお好き♪
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編集後記「マヨネーズ」
昨今の証券会社の株式レポートの下にくっついてくる断り書きからのパクリ。
"このメルマガは投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄選択、投資判断の最終決定は、皆様ご自身のご判断でなさるようにお願いいたします。このメルマガは信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、その正確性に関して責任を負うものではありません。ここに記載された意見は、配信日における判断であり、予告なく変わる場合があります。提供されました情報はご登録者限りでご使用ください。云々くんぬん・・"
まだまだ本当はこの3倍ぐらい長い文章が続きます。要は"投資はご自身のご判断で"ってことです。これは証券会社の訴訟対策への厚いガード以前に、投資の基本でもあります。利益を取りにいくためにリスクも引き受ける覚悟があるかどうか。「ここまでのリスクは取ろう!」と決めたら、あとは情報収集してレッツゴー。相場の前にプロも素人もありません。勝てば官軍。
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後日談「ふたこと、みこと」(2021年1月):
こんな細かい相場の話を今になって読み返してみても、何がなんだか(笑) でもチャートを紐解いてみると、確かにNZドルは2001年に丸々1年かけて0.40米ドル近辺で値固めをし、その後は本格テイクオフ!以来、NZドルはリーマンショックだろうがなんだろうが、2度と0.40米ドルをつけていません。
その後、多少の高下はあっても2008年第1四半期まで上昇サイクルが続き、倍の0.80米ドルまでいった出発点がまさにこの頃でした。
「来る、来る、来る、来る、絶対来る!」
とせっせとNZドルを買っていた頃です。