ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

人生の折り返しで選んだ地はニュージーランドでした

哲学する鳥

2002-05-08 | ペット・動植物
今年はウマ年だというのにトリ年かと思うほど、年頭から鳥づいています。まず元旦に「ハリーポッター」を観終わって子どもたちと映画館から出てくると、街路樹の下にうずくまる生き物が・・・。ぱっと見には死んでいるようにも見え、
「何も死んだ生き物を子どもに見せなくても・・・」
とも思いましたが、念のためによく見てみるとスズメに良く似た首の周りにうっすらと模様のある茶色の小鳥でした。

虫の息ですが、生きています。すぐにタオルにくるみましたが、掌でもぐったり。まともに鳥を飼ったことがないので、どうしたらいいのかわかりませんでしたが、すぐに鳥かごとエサを買い、とにかく温かく、暗くしようと、鳥かごをタオルでくるみバスルームのシャワーカーテンのレールに掛けてみました。

翌朝。毎朝6時前には起きる、家族で一番早起きの私はそっと鳥かごを覗いてみました。中はタオルがグチャグチャになりエサも飛び散っています。よく見ると、前日は立つこともできなかった鳥が、止まり木に止まっています。しかも別の止まり木に飛び移ったりしています。

「やったねぇ!」
と声をかけると、
「ピイィ」
とかすかに声が出るほど元気になっていました。ほとんど開かなかった目もぱっちり開いて、そのつぶらで輝くような瞳と目が合いました。
「元気になったら空に返してあげるからね。行ってきます。」
そう言って、陽が入るように南向きの窓を大きく開けて出勤しました。

ところが、その鳥に2度と会うことはありませんでした。1.5cmもない鳥かごの柵の間から逃げ出したのです。しかも家族が起き出してくる前に!何度も脱出を試みたのか、バスルームにはエサがたくさん散らばっていたそうです。幸い羽がなかったので大脱走でも本人は傷つかなかったようで安心しました。きっと窓から差し込む陽光に、居ても立ってもいられなくなったのでしょう。そこまで快復していたのなら、こちらも本望。「元気でね」と祈るばかり。

そして4月。日記やギャラリーにも登場しましたが、今度はマンションの敷地内で羽を大量に散らしたハトに遭遇。前回の経験から「鳥は結構快復が早い」ということがわかっていたものの、
「今回はダメか。」
と思うほど弱っていました。大きいので猫のケージとバスタオルで捕獲しましたが、大きな羽もたくさん落ちていたので、
「助かってももう飛べないかも。」
と心配でした。

マンションの管理人の許可を得て、彼らの目の届く駐車場内にケージを置かせてもらうこと1週間。そのうち立てるようになり、毎日大量のフンをしエサをひっくり返し、ケージの中でドタバタドタバタ。ただし飛べる保証はありません。慎重を期して、安全そうな場所に放してみました。眩しそうにキョトキョトしながらもトコトコ歩くではないですか・・・。フェンスにも飛び乗れたので、木に飛び移ることも難なくできそうです。
「これなら大丈夫だろう。」
とホッとして、2羽目を見送りました。

そして5月。子どもたちがマンションの敷地内で、小スズメを見つけてきました。5歳の次男が手で持ってこられたくらいですから、これもかなり弱っています。大きさから見て巣から落ちた雛でしょう。元旦に買った鳥かごを用意していると、再び次男が、
「ママ~もう一コ!("1羽"だってば) 
今度はつかまれない("捕まえられない"だってば)」
捕獲に行くと、1羽目ときょうだいと思しき同じスズメの雛でした。動かない2羽をタオルにくるんで鳥かごへ。

それから半日。目も開かなかった鳥たちは今、西蘭家のバスルームで、
「ピィーピィーピィーピィーピィーピィーピィーピィー」
と一定のリズムで鋭く高く鳴いています。なんという快復力!野性の逞しさなのか、寿命の短い生き物にとって半日は人間の数日に匹敵するのか?!

あの声は親を呼んでいるのでしょう。「シートン動物記」にかなり詳しくカラスの会話の話がでてきますから、スズメだってこれぐらいの話はできるに違いありません。寒くもないし今日中にも放せるかもしれません。

昨年ニュージーランドを訪れた時、ロトルアへの道すがらダチョウに一目惚れしました。
「なんとキレイな鳥なんだろう!」
まともに見たこともなかった見上げる高さの巨鳥は今まで見たどんな鳥よりも知的に見えました。長く伸びる薄ピンクの首の上に品良く収まる小さな顔。その中の濡れて輝く知的な瞳がこちらをじっと見ています。

まるで哲学者のようです。お互い初めて会う相手と見つめ合いましたが、そのまま言葉を交わせそうでした。拾ってきた鳥たちのつぶらな瞳を見ながら思うことはただ一つ。
「移住したら絶対にダチョウを飼おう。」


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「マヨネーズ」 
ここまで先週の水曜日に書いた時に、さっさとスズメを放すべきでした。ところが、夕方になり少し冷たい風が吹いてきたので様子を見ようと思い、元気な方だけ放して弱っていた方は残しました。次の日にはエサも食べだしたので、
「これは順調。土曜日に子どもたちと一緒に放そう。」
と思った矢先、金曜に突然死んでしまいました。

朝、出勤する前は生きていて静かに座っていました。目もパッチリ開いていたので一声かけて家を出たのですが。本当にかわいそうなことをしました。エサを食べた時点で、放してあげるべきだったのかもしれません。野生の生き物を鳥かごで死なせてしまったのは不憫です。

ちょうど手頃な黒い箱が見つかったので、やわらかい紙とベランダに咲いているピンクの花を敷き詰め、白いリボンをかけて近くの自然公園の植え込みに弔いました。付いて来た子供たちも自然と手を合わせていました。
「早く元気に生まれ変わって、大空を思いっきり飛ぶんだよ。助けてあげられなくてごめんね。」


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2019年5月の後日談:
ダチョウを飼おうだなんて、いったい移住後はどこに住むつもりだったのか(笑)?!
というか、オークランドを何だと思っていたのでしょう(爆)

当時は、
「まずはオークランド。場合によっては、その後どこかへ。」
とのんびり構えていましたが、いざ移住して生活が始まると、子どもの学校だ、スポーツだ、補習校だ、そして仕事だと、あっという間に土着化。

「ここに住みたい・・・・」
という最初の閃きに従って正解でした。

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