「美ヶ原の山本小屋」でヒントを得た、尾崎喜八は、「孤高(ここう)の心」を持って『雪山の朝』を書きました。
この詩は、富士見へ帰る汽車の中で書き上げたものです。
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第一聯 「きれいな純粋孤独の歌」
第二聯 「空は世界の初めのような・・・」
第三聯 「まるで虹いろの波」
第四聯 「孤高の心」
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【孤高(ここう)】 孤独で超然としていること。
ひとりかけはなれて、高い理想をもつこと。「―を持する」
美ヶ原の山本小屋へは、2014年(平成26年)夏に、「演奏会の後の一人旅」で訪れたことがありますが、冬の時期に訪れたことがないので、「雪山の朝の景色」を残念ながら見たことはありません。ネット検索で引用させていただきました。
富士見駅(JR中央本線:2015年8月29日撮影)
「雪山の朝」 自註 富士見高原詩集(尾崎喜八)より
服装をととのえて 小屋を出て
小屋から遠く 堅い靴で
堅い雪を踏みしめて行った。
クラストした雪面はきしんで鳴り、
強くぱりぱりと放射状に割れるが、
その響きやその呟きが
その皓々(こうこう)たるしじまの中では
きれいな純粋孤独の歌だった。
空は世界の初めのように
まろく 大きく あおあおと、
晴れわたった積雪の高処のながめは
透明に燃えて 結晶して
きびしく寒くよこたわっていた。
薄赤い朝日の流れ、紫の影、
きらきらと木花に重い樅、唐檜、
はるかに向うにも同じ氷雪の山々が
まるで虹いろの波だった。
瞬間の生涯回顧と孤高の心ーーー
パイプを口に、
私は蠟マッチをはげしく擦った。
【自註】
美ヶ原の山本小屋でヒントを得て、富士見へ帰る汽車の中で書き上げた詩である。
今でこそ立派なホテルになっているが、美しの塔で私の詩と背中合わせになっているあのリリーフの肖像は現在のホテルの主人の父親であり、その頃はまだぴんぴんしていた。そして泊まる処と言えば彼の小屋がたった一軒、言わば観光地美ヶ原草分けの人でもあれば宿でもあった。
その雪山の朝の景色は書いたとおりだが、「瞬間の生涯回顧と孤高の心」は、その時の私の心境を煮詰めたようなものである。
外観は平静のようでも内面は波瀾に富んだ過去の思い出と、それを乗り切って孤独に強く生きている現在の自覚。
パリパリに氷った早朝の山の雪の上で、
しっかりと口にくわえたパイプのために、
蠟マッチを「はげしく擦った」私の気持は、
或はわかってもらえるかと思う。
この詩は、富士見へ帰る汽車の中で書き上げたものです。
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第一聯 「きれいな純粋孤独の歌」
第二聯 「空は世界の初めのような・・・」
第三聯 「まるで虹いろの波」
第四聯 「孤高の心」
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【孤高(ここう)】 孤独で超然としていること。
ひとりかけはなれて、高い理想をもつこと。「―を持する」
美ヶ原の山本小屋へは、2014年(平成26年)夏に、「演奏会の後の一人旅」で訪れたことがありますが、冬の時期に訪れたことがないので、「雪山の朝の景色」を残念ながら見たことはありません。ネット検索で引用させていただきました。
富士見駅(JR中央本線:2015年8月29日撮影)
「雪山の朝」 自註 富士見高原詩集(尾崎喜八)より
服装をととのえて 小屋を出て
小屋から遠く 堅い靴で
堅い雪を踏みしめて行った。
クラストした雪面はきしんで鳴り、
強くぱりぱりと放射状に割れるが、
その響きやその呟きが
その皓々(こうこう)たるしじまの中では
きれいな純粋孤独の歌だった。
空は世界の初めのように
まろく 大きく あおあおと、
晴れわたった積雪の高処のながめは
透明に燃えて 結晶して
きびしく寒くよこたわっていた。
薄赤い朝日の流れ、紫の影、
きらきらと木花に重い樅、唐檜、
はるかに向うにも同じ氷雪の山々が
まるで虹いろの波だった。
瞬間の生涯回顧と孤高の心ーーー
パイプを口に、
私は蠟マッチをはげしく擦った。
【自註】
美ヶ原の山本小屋でヒントを得て、富士見へ帰る汽車の中で書き上げた詩である。
今でこそ立派なホテルになっているが、美しの塔で私の詩と背中合わせになっているあのリリーフの肖像は現在のホテルの主人の父親であり、その頃はまだぴんぴんしていた。そして泊まる処と言えば彼の小屋がたった一軒、言わば観光地美ヶ原草分けの人でもあれば宿でもあった。
その雪山の朝の景色は書いたとおりだが、「瞬間の生涯回顧と孤高の心」は、その時の私の心境を煮詰めたようなものである。
外観は平静のようでも内面は波瀾に富んだ過去の思い出と、それを乗り切って孤独に強く生きている現在の自覚。
パリパリに氷った早朝の山の雪の上で、
しっかりと口にくわえたパイプのために、
蠟マッチを「はげしく擦った」私の気持は、
或はわかってもらえるかと思う。