一度占めた蜜の味は忘れず、忘れようともせず。
一昨年当たりを引いた後、宿題に残したままの木矢谷ヒと立坑の探索が未だに出来てない。
誰も訪れぬ山奥で、ひっそりと妖しく石は輝いてるのだろうか。
入る人が居なければ、石も話も出ないだけだと思いたい。
名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
行こう紀州鉱山へ。

雰囲気の好きな上川からまず歩きだす。
ココを歩くの何度目やろ。
蜜との出会いを思い出しながら今回も探し進む。

左岸側のズリ運搬トロッコ跡から探し始めるが小物ばかりで、持ち帰る石に出会えない。
沢筋に降り、水中で脈状に光る子をやっと1つ見つけ、タバコを一服つける。

タガネを入れると脈状の部分と、層状に生成した閃亜鉛~黄銅鉱の隙間に結晶した蛍石がポツポツと顔を出す。
が、結晶幅は1mm程度。
素直に喜べない。
ズリは大水でも出な難しいか。
上川は昼迄と決め、急ぎ足で奥へ奥へと進む。
汗をかきつつ目を皿にして探すと、視界の端で苔生した石の一部分が蛍光した。
声を上げる程では無いけれど嬉しい。

結晶は小さいながらも形のハッキリした蛍石に出会えた。 安堵だ。
その後は湯の口側に周り、宿題の木矢谷ヒを探索。
1時間弱坂道を登り、谷筋に降り、汗だくで転石を追うが気配が無い。

林道は砂防を巻いて更に標高を上げ尾根筋へ続く。
1時間探し登るも気配無くタイムアップ。
歩くと歩かんでは坊主でも中身が違うやろ。と言い聞かせて帰路に着く。
麗しの君に会う術は。