「貴方を捕虜とします。よろしいですね。聖女・ミレナパウス」
「いいえ」
「え?」
ザンサンシャカレの領主である人がミレナパウスさんに声をかけた。ここは「はい」とか低姿勢……とまでは言わないが、それに近い態度を取ると思うだろう。なにせもう彼女の味方はいないのだ。なにせ残ってた奴らも彼女が殺し尽くしたから。
「私はあなた達に捕らえられることはありません」
「何をいっ――ひっ」
ザンサンシャカレの領主さんはミレナパウスさんから放たれる力に気圧されてる。どうやら彼女の中では、今でも彼らはミジンコみたいな価値しか無いと判断されてるみたいだ。
『殺気を放つのはやめてください。こちらの陣営に手を出したら許しませんよ』
「はい、存じております。ただ、私の事を誤解してるようなので教えてあげようと思っただけですの」
「ご……誤解とは一体? 貴方は降伏……したのですよね?」
恐る恐るとザンサンシャカレの領主さんが聞く。すると私の手前……というか私がよこしてるドローンの手前、ミレナパウスさんはさっきの殺気を引っ込めてこういうよ。けど、どこかツンケンとしてる声色だ。
「違います。私はあなた達に降伏したのではありません。私が降ったのはあくまでジイゼロワン様の陣営です」
そう言って彼女は私……いやドローンに向かって手を伸ばしてその体を掴む。そして4つある足? 腕? まあどっちでもいいけど、その一つを取って、口づけしてきた。どうやら忠誠の証? みたいな行為だろう。
けどさ……
(私自身が受け取りたかった……)
――だってミレナパウスさんの唇ってめっちゃきれいなんだよ。顔の半分は隠れてるから、上部分はどうしようもないが、その唇はまさに芸術。それをこんな量産型の機体に奪われるなんて……
「触覚感知の機能をつけておくんだった」
私はそんな後悔を激しくしたよ。だってなかったわけじゃないのだ。その機能。実は有った。けどその時は「は? 触覚? そんなのよりも聴覚とか視覚の方が優先でしょ」――って事で触覚なんていらないと切り捨てたのだ。その次だとしても、触覚はないかな? 嗅覚は微妙ではあるが、それよりも触覚って微妙じゃん。後はセンサー類とかをもっと高性能にするとかになって触覚なんて部分はドローンには不要と切り捨ててた。
でも今私はその選択をとても後悔してる。
「くっそーーー!」
そんな魂を叫びを上げつつ、自分の使ってる水をバシャバシャするくらいには悔しい。