「え? 目覚めたってなに? 私は嫌だからね!!」
「ええー小頭ちゃんも嫉妬? 嫉妬しちゃう?」
「は?」
「ん?」
なんか二人は自分たちの会話がかみ合ってない――という事に気づいた。野々野小頭は草陰草案がもしかしたら百合に目覚めたんじゃないか? と思ったんだ。けどそれに対して拒否反応を示したら、草陰草案はなんか「嫉妬」とかいう言葉をいった。それは単純になんか違うな――って野々野小頭は思った。
だって嫉妬って百合に目覚めた奴に対する拒否反応をみていう言葉としてはおかしいだろう。まだ「なんで?」とか「どうして?」とかならわかる。
受け入れてもらえないからそんな言葉が出るかもしれない。それか「そうだよね」とかやっぱり百合なんて気持ち悪いという事を内心でもわかってて、けど気持ちを抑えられなくて告白しての玉砕とかのシチュエーションならありえるだろう。
でも草陰草案はその野々野小頭の想定とは違った言葉を返した。それは「嫉妬」。もしも百合に目覚めた告白で草陰草案が目覚めた事への嫉妬? 野々野小頭が? それはおかしい。おかしいから、二人は互いの言葉がかみ合ってないと気づいた。
「えっと……私を恋人にしたいとかじゃない?」
「まあ私は小頭ちゃんが彼女になりたいなら受け入れるよ。付き合う?」
「付き合わないよ!」
そういって野々野小頭は草陰草案を押し放した。それで壁ドンだった状況から抜け出す。でもそんな野々野小頭はちょっと顔が赤かった。なにせまさかあんな返しをされるとは思ってなかったからだ。勿論だけど、野々野小頭は普通に男子が好きだ。好きな男子だっていた。いやまだ気になる段階かもしれない。そこら辺の微妙な感情はまだよくわかってない野々野小頭だった。
でもだからって行き成り告白されたら一人の少女としてドキドキして仕方ない……仕方ないと言える。
「それで……じゃあ何なの? 目覚めたって?」
「ふっふっふ、私はただの傍観者だった。でもね……これからは私自身が観測者になれるんだよ」
「どういう事?」
意味の分からないことを言い出すのは草陰草案の日常である。だからそんなに動じない野々野小頭だ。でもそのあとに草陰草案はぽっけからシナシナの花を出してきた。
「なにそれ? そんなのポッケに入れない。汚いでしょ」
「ふふ、見てて」
お母さんみたいな事をいう野々野小頭の事を無視して、草陰草案はそれを見るように指示する。すると……だ。なんか草陰草案の手に乗ってた小さなしおれた花が、なんかその元気を取り戻して、茎はピンと伸びて、葉は緑が濃ゆく……そして花びらはその鮮やかさを取り戻していった。
それはまるで時間を戻してるような……それかその花を回復させてるような……そんな光景だっだ。けど一番可能性の高い事を野々野小頭はいった。
「手品?」
「違うよ! これが私の力なんだよ!!」
必死にそう訴ったえる草陰草案。その姿に野々野小頭は頭を押さえた。その顔はまだ手品だってことを諦めてないって感じの顔してた。