「なんで……あれって実体がないんじゃないの?」
そんな風に野々野小頭は、いや彼女だけじゃなく、それを見てた人たちは思ってた筈だ。だってそういう作品は沢山見て来たし、そんな状況というシチュエーションの作品というのは世に溢れてるといっていい。
だからこそ、すぐにそれを理解して桶狭間忠国だって本体……なのかはわからないが、実態がある女性の方へと標準を合わせたんだろう。彼女は確実に実態だ。
そして……桶狭間忠国はきっと気づいてた。あの靄が彼女を守る様にしてるということに。だからこそ彼は女性の方を狙った。きっとあの靄はどうにかするだろうと、そんな思いはあった。
でも実態じゃない物を実態にするとは……だ。けど桶狭間忠国動じてなかった。何かあると思ってた「何か」が起きただけ。靄が実態を持とうと、それはそこまで彼にとっては驚くことなんかじゃない。
だからこそ……だ。彼はその拳を広げて大きな手でその靄を掴む。そしていった。
「今です!! ここを狙ってください!!」
「任せろ!!」
それに反応したのは勿論アンゴラ氏だ。正確に狙うためにも彼は既に指にガムを置いてそして腕を伸ばして照準を定めてた。それは今日出会ったばかりの二人とは思えないほどの連携。
アンゴラ氏は片目をつむって狙う。靄の部分がより濃くなってる、桶狭間忠国が掴んでる場所。それは今までよりもより正確な射撃が求められる。下手したら桶狭間忠国に当たるかもしれない。
なにせ桶狭間忠国はでかいんだ。だからこそ、的としても大きい。狙わないといけない所はそんな桶狭間忠国と比べたらとても小さい。靄自体はもっと大きい。けどきっと他の部分は実体化してるようにはみえなかった。だからこそ、アンゴラ氏が狙えるのはわずかな場所。それこそ桶狭間忠国が掴んでる所を狙うのが確実だろうって思った。
今まではそれこそある程度人一人の大きさを狙ってたわけで、それよりも確実に的は小さい。でも、それでもアンゴラ氏はやってのける。アンゴラ氏が放ったガムが爽やかな香りを周囲にまき散らしながら突き進んだ。鋭く……まっすぐに……だ。
そして確実にその弾丸になったガムが桶狭間忠国が掴んでた部分にぶつかった。その瞬間だ。
「んんんんああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
さっきまでの笑い……それとは違う声。それと同時に周囲にその靄が大きく拡散して、皆の視界を奪った。