ヒビが入った砂獣達。ソイツらの内部から新たな何かが出てこようとしてる。ベリベリとヒビを剥がして現れるのは一回り……いや更に二周りは位は大きくなった同型の砂獣だ。
ようはあれは脱皮? だったらしい。けどただ体がおおきくなったわけじゃない。なんか毒々しい色、刺々しい形……フォルムもなんか鋭利になってる。それに今までは目の部分だけが二箇所赤く光ってるって感じだったけど,なんか今や何箇所も赤い点が体中で光ってる。
より黒い色の外殻になって、その中にある隙間が赤く光る事で、なんか恐ろしさをより増してるような……そんな感じだ。
「全員油断するな!」
そんな指揮がドローンから響く。そしてすぐに戦闘は始まった。前の皮を脱ぎ捨てた奴から動き出したのだ。そしてその動きは、これまでのアリの砂獣の数倍速かった。
ガキィィィィィィィン!! キィィィィィィィィィィン!! カァァァァァァァン!!
という硬質な音がそこかしこで響いた。
「そんな!?」
「硬いぞ!!」
今までの砂獣なら新たに得た力……そしてその魔法の武器で一刀に出来てた。けど、脱皮を経た砂獣はどうやら最弱のアリ型の砂獣でさえ、これまでの比じゃないくらいに固くなってしまってるらしい。
そこかしこで、その外皮の硬さによって、兵士たちが腕の痺れに困惑してる。
『一撃じゃな撃退できない? いや、私はそんなヤワな武器を与えた覚えはないわよ』
私は一人、状況を見つつそう呟く。確かに脱皮をした砂獣は強力になってる。それはたしかだ。間違いない。軽くドローンでスキャンした程度でも、その構成密度が様変わりしてるのがわかる。てか分子レベルで構造を変えてきてるんだから驚きである。
でも……それで絶望してもらっては困る。なぜならこちらの兵士たちだって、まだまだ伸びる筈だからだ。確かにこっちの武器は強力になってたし、自己強化もレベルアップした。
みんなはそれを十全に使いこなしてるつもり? 私的に見たら全然だ。でもこれまでの砂獣はそれで簡単に倒せたから良かっただけ。
でもそうでなくなった。なら、もっと出力を上げればいい。みんなはまだまだ新たな武器の力を引き出してる……とは言えないのだ。ただ新しいおもちゃを上機嫌に振ってたのが今までだよ。
これからはそれでは駄目な相手が出てきただけだ。大丈夫、ちゃんと皆の武器なら通用する……
『――と伝えたいけど、やっぱりここは勇者にそれを言ってもらったほうがいいかな?』
私、喋れない設定なんで……
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