■ 現実的という言葉の ニュアンスは風刺的
昨日はサティシュ・クマールの『今ある未来』を見ました。
特に人間がどのような社会を築いていくべきかという課題に、「自然をガイド(指針)にしよう」という話にはとても共鳴しました。
"Nature is realistic, and I would say that man is the only being who is not," he says.
"Who else goes to bed hungry? Not the snakes or the tigers or any other animal.
Nature does not need 'realistic' Tescos or Monsantos to feed themselves.
Our system of 'realistic' business leadership has totally failed."
(英:ガーディアン誌より引用:http://www.guardian.co.uk/environment/2008/jan/16/activists)
ーーーーーーー試訳ーーーーーーーーーーーー
自然はリアリスティックだ。人だけがリアルじゃない存在だ。
人間以外の一体誰が腹ペコで寝床に入るでしょう?蛇だって、虎だって、他の獣だってそんなことはしません。
自然は食べていくのに、”リアリスティック”なテスコ社やモンサント社になる必要はありません。
”リアリスティック”なビジネスリーダー達が築いた我々のシステムは結局失敗だったのです。
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…リアリスティックのところはそのままにしましました。 というのも、英語のリアリスティックには
一抹の胡散臭さが漂うからです。 クオーテーションで囲むことも、”いわゆる”というお決まりの
しぐさがあるくらいで、言外の意味があることを意味します。
最近読んだ本で出ていた引用句を取っておけばよかったのですが、”When people say 'let's be
realistic', that's when they are trying to sell you something or rip you off.”というのがありました。
著名な作家のセリフでした。要するに「人が現実的になろう、と言っているときはアナタから金銭を得ようと
言う時だ」
現実的=財布の話 カネの話…ということです。"商売っけ"というと早いかもしれません。
要するに、人だけが生きていくのには現実的になる必要があり、その意味するところは、カネが要るという意味であり
現実というのは、収入、カネの話という意味だ、ということです。
クマール氏が言っているのは、実は生きていくのにカネがいるという思想そのものが自然界には存在しない
”非”現実的な妄想なのだ、ということです。
他の動植物は生きていくのにカネなんて要らないじゃないか!という話。
これは、カネが要るのだから自然を破壊するのはやむをえない、という状況に陥ったときにカネを優先しないと
いうことです。あるいはカネにならないことはしない、という発想をやめることです。
すべてに経済を優先しない。カネを世界の、人生のすべてにしてしまわない。
カネに魂を売らない。
■ テスコ&モンサント
それにしても、テスコとモンサントはここでも敵ですね(笑)しかし、何人の日本人がテスコやモンサントを
知っているのでしょうか…?
テスコ。
テスコは日本でいうならセブンアイグループって感じです。モンサントは農業関係の人以外知らないと思いますが
世界最大の種の会社で、F1といわれる一代交配種を世界中に配給している会社です。
この会社などは、市民の無知こそが最大の存在理由と思われるグローバル企業で、世界中の種を席巻しています…。
遺伝子組み換えなどの問題を研究すると出合う会社名ですが一般にほとんど知られること無く、しかし、世界中で
モンサントが作った種から出来た食物を食べていない人はいないのではないかと思われる世界企業です。
世界中の種はモンサント社のものですが、問題はそれらが次世代を生み出す能力が無い=子供ができない、
いわば”不妊野菜”なのに、それと知らされずにみなが種と苗買うことで、モンサント社が儲かり続けるという
構造になっていることです。
一説にTPPを受け入れるとさらに日本の固有の野菜(在来種)は食べられなくなる、と言われています。
■ 2 ≠ 二律背反
クマール氏の話を聞くのは字幕を見るより、目を閉じて英語で聞くのが良いように思いました。
2つに分けて考える思考(…英語でもBlack and White 思考と言って、その弊害は結構有名です)は
背反、あるいは対比する、という思考に陥りやすい。これは2と数字の落とし穴なのです。
2つに分ける。分ける=バラバラになる… でも実は、分けたものは対比ではなく、協調や相互依存の
関係性にあります。
結局、2という数字は、多くの場合、背反するのではなく、組み合う、サポートしあう関係にあるのです。
陰陽のマントラが組み合っているのと同じですね。
例えば、自然と人は背反関係ではなく、自然は人間の内包するもので、人間は自然の一部です。
自然
vs人間ではなく、自然
>人間。
不幸は幸福と対立するものではなく、幸福とは何かを教えるもの。不幸がないと幸福とは何か?が理解できない。
男性と女性は対立するものではなく、互いに支えあうもの。双方ないと子供は出来ない。
仕事と家庭は対立するものではなく、片方があるから片方が成立し支えあうるもの。
私が思うには、二つの協調関係にあるべき概念が、対立構造をとってしまうとき…それは、解決すべき問題が
存在する、ということを意味するのではないか?と思います。
夫婦が喧嘩するとき、仕事と家庭が両立しないとき、自然と人間活動が相反するとき… それは間違った力の働き方
=メカニズムの存在、を教えるもの。
問題の所在は そうならざるを得ない仕組み(メカニズム)、物事の流れにあるのであって、本質ではない。
片方が欠けると片方が存在できないことが、本質は協調であることを示しています。
平たく言うと、「私を取るの?仕事を取るの?」ではなく、「私も仕事も」ってことですね(笑)
■ 3 =構造化することの大切さ
クマール氏の話は非常に分かりやすく、その分かりやすさは、
話が構造化されているということにある、と気がつきました。
例えば、提唱されている3つのSです。 Soil(土),Soul(心), Society(人とのつながり)など。
ビジネスのフレームワーク思考と同じ思考法です。3Cといえば、3Cとは、「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字。 4Pと言えば、Product, Price, Place, Promotion。
これらのフレームワークはなぜ利用されるのか?というと、
・あいまいなまま全体像を捕らえようとしても捕らえきれない。ので部分に分解する。
・重複なく、漏れなく考えるため。(MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)
基本的に”部分は全体の寄せ集めで成り立つ”という還元論をベースにしており、西洋的発想です。
(※ちなみに3Sと言えば愚民思想なのだそうです…(汗)Screen,Sports, Sex つまりスポ日の世界観…)
よく、プレゼンテーションなどでは、上手にプレゼンするには、3、5、7と言われます。
「3つのポイントは…」とまとめる。 これは、基本のキ。というのは、人間が即興的に覚えていられる
理解と記憶力のキャパが7までと言われているからです。
人間は分けて考えないと理解できない動物なんですよね。分かりやすさはこうした人間の脳の事情をベースにして
成り立つ。
提唱されている3Sの中身は
Soil = 土、環境、自然界全体のこと。持続可能な世界を作っていくこと。
Soul = 個人の幸福 本人が満ち足りて幸福でいること。
Society = 社会
この3つでホリスティックな世界を作っていきましょうという話でした。今日はここまで。