
中城ふみ子は、
三十二歳にして
歌壇に登場し、
その数か月後、
亡くなった。
乳房をがんのために
喪失し、
しかも
離婚歴あり、
ということもあって、
歌集
「乳房喪失」
は、
センセーショナルな
話題となった。
以下に
その歌を挙げるが、
自らの、存在と
出奔した夫、
子を
恋いる歌は、
胸を打つ。
‥‥‥
もゆる限りはひとに與へし乳房なれ癌の組成を何時よりと知らず
冬の皴よせゐる海よ今少し生きて己の無惨を見むか
出奔せし夫が住みゐるてふ四国目とづれば不思議に美しき島よ
頼りなく母を呼ぶ声伝えくる長距離電話は夜のかぜのなか