セーラー服の歌人鳥居は、精神障害を持っている。
才能と、特異な体験を持っていると言っても、精神障害であると、
苦労は多い。
鳥居は、自立のため、職業訓練に通ったこともある。
しかし、そこでも、精神障害ゆえの苦しみを味わうのである。
精神障害治療のための薬は、副作用を伴うから、
使いすぎないほうが良い、というのは、常識である。
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音もなく涙を流す我がいて授業は進む次は25ページ
障害ゆえ、気分の変動は激しい。
ちょっとしたきっかけでも心が沈むことがある。
その変動は、突然やってくる。
授業は進む。
しかし、障害は、鳥居に突然昔の悲しみを思い出させる。
自らの涙と
淡々と進む授業。
そこには、埋めるべからざる断絶があるのである。
……
セパゾンの袋をコートに隠しつつ「不安時」の印見られぬように
鳥居は、クラスメートに、自分が精神障害であることを隠している。
偏見のため、やむを得ないのだ。
セパゾンは、抗精神病薬で、不安や緊張を抑える。
普段飲んでいる薬では不安が和らがないとき、
「不安時」の頓服が処方され、
患者は、自分の判断で飲むのである。
しかし、クラスメートに見せるわけにはいけない。
学校に知られると就職に響く。
現在では偏見はおさまってきた。
求人には「障害者枠」というのもある。
だが、社会は、人情味豊かな人ばかりで構成されているわけではない。
……
強すぎる薬で狂う頭持ち上げて前見る授業を受ける
ときに、症状の重さの故、
大量の薬を服用することを強いられる。
頭が重く、淀んだ気分になる。
障害ゆえ、薬を飲まざるを得ない。
それで得られるものは大きい。
しかし、失うものは、これもまた大きい。
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