鳩退治

会社の備品を壊して鉄くずを売ったり

たった数百円欲しさにゴミ集めしたり

勝手に会社から備品を借りて、借りパクしようとしたり

鳩の悪事はエスカレートしていき

正義感の強いアンガスと話す事で俺の中の正義感もメラメラきちゃって

…

とうとう、鳩のオッサンに話をしました。

アンガスが休みで

38斎君が単独で仕事をして

俺と鳩のオッサンと組んで仕事という場面

その移動の車内で

言うならここしかないなと切り出した






ちょっと申し訳ないけど

朝から少しキツイ事を言います

鳩さん、鉄くず集めたりして売るのは

もう禁止にしましょう。

今まで会社として出てきた不要な金属類は値段にかかわらず売って

そのお金は事務さんに渡してきました。

鳩さんが来てからその仕組みが変になっています。

会社のお金で買った備品が壊れて

それを廃棄の時に売りさばいて自分の金にするのはおかしいです。

会社のお金です。

それ、やめましょう。

あんなにあった鉄パイプを売って鳩さんが自分のお金にしちゃった事は専務に言ってあります

それなりの評価をされてると思います。

だからもうやめましょう。

あと、ヒロルに言って会社に内緒で電気のリールコードを借りて行ってるのも知ってます

会社に返して下さい。







俺が話してる途中で

『それはヒロルさんが売りました』

『ヒロルさんにいいと言われました』

『俺一人でやったわけじゃないです』

『38歳君の了承を得ました』

などと何度か言い訳をされたけど

『言い訳しないでいいから。こっちは知ってて話してるから。』

と言いました。








そして最後に

ちょっとキツイ言い方をしたかもしれないけどごめんなさい。

これからも宜しくお願いします。

…

と、締めくくった。








そのあと、俺が一人で集金に行っている間に

よほど面白くなかったのでしょう

38歳君に、俺からこんな言い方をされた…みたいな事を言ったらしいが

よく言えたものだ。

アホかと。

あとで38歳君から、ちゃーさんキツイ言い方をしたの？

と言われて

最後にキツイ言い方をしたかも知れないけど宜しくお願いしますって言ったよ

と、答えた。

…

38歳君は

アンガスとちゃーさんの2人で組んで

鳩さんを追い込むみたいなやり方はやめようと言われた。

こう言う時だけ彼は正義感をかざす。

陰で一緒に悪口を言っていたくせに。

ここが、俺の38歳君の全てを信用できないポイントに繋がっている。

自分だけ上手く助かるようにスッと逃げるのだ。







とりあえずしばらくは

鳩は手も足も出せないだろう

それくらいの釘は刺した

これでもやるようなら本物のバカだし

警察沙汰にしてもいいと思う。

38歳君が最後にスッと逃げたのは後味がわるかったけれど

思っていた事を感情的にならずに鳩に伝えられてよかった。

今日はお休みのアンガスに

あとで教えなくちゃ。

鳩のオッサンが休みの日に。

以前勤めていた会社にも

『空気を読めない』という人間はいた。

いたけれど、まぁちょっと変わった奴だな…という存在だった。

今の会社に来てから

色んな空気の読めない人間と出会う

本当に空気が読めてない

あんなにハッキリひらがなで大きく書いていたら読めるだろうって思うのに

どうしてこんな事になるんだろうか、








鳩のオッサンはアンガスに嫌われている

それはもう誰が見ても嫌われてるのが分かるほど

ハッキリ、クッキリ、しっかり嫌われているのだ。

デリカシーの無さ

不潔な感じ

スケベな感じ

乞食根性丸出しな所

挙げたらキリがないほどだ

苦手…じゃない。

嫌い…でもない。

拒絶…なのである。

嫌われ界の最高峰のエベレストのやつである。

みんなで倉庫でお昼を食べる時間には

視界の中に鳩のオッサンが入らないように背中を向けて食べる

会話はほぼしない。

仕事の事で聞かれたら最小限に答えるのみ。

この姿を『大人げない』と言うのは簡単だけれど

ここまで拒絶されるものを鳩のオッサンは持っている。

…

アンガスがあんなに態度に出しているのに

鳩のオッサンはお構いなしに話しかける

先日は何を思ったのか急に

『アンガスさんの為に冷風機を持ってこよう』と言いだし

冷風機、冷風機と朝から騒いでいた

そしてアンガスに

『女性の方がこの倉庫で過ごすのは大変だから冷風機持って来ますね。女性は大変だから。アンガスさん専用の冷風機。』

『…』

返事をしないアンガス。

このしつこく、ねばりつくような話し方も大嫌いなのだ。

そして38歳君に断って

『アンガスさん専用の冷風機もってきま～す。ちょっと抜けま～す。』

会社には大きな冷風機と小さいのがあって

実は小さい方の冷風機を鳩のオッサンは壊して、中身の金属を売ってしまった。

そう言う事を平気でやる。

この事もアンガスは知っている。ますます嫌う。

『私に話しかけて来るんじゃねぇよ！！泥棒野郎が！！』と怒りまくっている。

…

程なくして、アンガス専用冷風機を汗だくになって持ってきた。

この角度で置いたら風が足元に行くから涼しいかな…

もう少し近くだとどうかな

遠慮しないで使ってくださいね、アンガスさん専用で持ってきたから。

男の人は使っちゃダメ。あはは。

どう？涼しい？？扇風機の風とは違う感じする？

機械が大きいから音がうるさいけど我慢してね。

…

アンガスの中で

色んな言葉が浮かんで浮かんで浮かんで

そして、こう言った。

『冷たい風を当てると脚の神経痛に障るので止めてください。そして大きすぎて邪魔です。』

！！！！！

アンガスがハッキリと物を申した。

『あはは～そっか～。でもここに置くからどうしても暑い時は使って。』

何故、拒絶されてると思わないのだお前は。

…

こんな風に鳩の休みの日は彼の残念過ぎるエピソードが次々に出て来る。








会社には処分する金属が稀にある

鉄くず集めをして売っている鳩のオッサンはコレが欲しいのだ

そして、これは鉄と違って高く売れる。

高いと言っても先日、鳩のオッサンが隠していたやつを全部売っても数百円にもならない。

これを見つけて誰もが見える場所に置いた。

『作業場にあったから、こっちに持ってきたよ。』と、わざと言ってやった

高く売れるやつと、安くしか売れない鉄くずを隠していたわけだが

何が安くて高いのかも知らない俺とアンガスはそれらをごちゃ混ぜにして会社に持ってきた

顔色が変わって無言になって『…そっか。でもコレはそんなに高く売れないやつだ』とか言い始めた。

高く売れようが安かろうが、お前の物ではない。

これは売ってお金にして

事務員に渡す。

そうするとトイレットペーパーを買うお金になったり

お茶菓子になったりするのだ。

鳩のオッサンが入ってから、アルミ缶もスチール缶も、この処分する金属も

勝手に売って自分の金にしちゃうから

『最近、金属を売ったお金どうしてるの？？』なんて

俺達が怒られていた

…

鳩のオッサンは異常に早く会社に来る

この金属の入った箱を漁る。

そして高く売れそうなものを売っちゃう。

それを阻止するには…とアンガスと知恵を絞った

『すぐ売って来てお金にして事務さんに渡しましょう！』

と、アンガス。

『売って来る労力が勿体ないよ』

と、38歳君

そこで俺のアイデアが採用となった

白い紙にこう書いた

『7月18日、記入済み、担当アンガス』

これをやられたら手も足も出ないだろう

数は数えてない

記入もしていない

でも、この白い紙の効果は絶大だとおもう。

鳩が休みの日に

あの手この手で色々と不正をさせない方法を考えてた

何も知らずに今日は出勤してくる

さて…あの白い紙を見て

どういう反応をするのやら。









って言うか

小学生の小遣い稼ぎみたいな事を

自分のオヤジがやっていると思ったら

悲しいだろうな子供たち。

しかも会社から盗んだもので…。