チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#25 Pas de Quatre」

2010年09月14日 01時14分48秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[シンデレラ、フォルチュネ王子、青い鳥、フロリヌ王女]

先週の金曜の夜は六本木のあたりがなぜか
リーマン・ショックの前くらいに渋滞した。
リーマンが出てった(なくなった)あとにも、ヒルズには
昨年夏頃から外資系がまたどっさり入居してきた。その
昨年の8月2日の日曜は母の家で煎餅を焼いてた。
今はもう死語かもしれないが、私は
「ながら族」である。何か別のことをしてないと、
メインの作業がはかどらない。年老いた母と
嫁の来手もない風采の上がらない稼ぎの乏しい倅が二人、
リヴィング(ルーム)でわびしくTVをみてた。
「絶景! 大自然に生きる日本の秘境家族」
大都会暮らしが好きな母も私も「大自然」は苦手である。が、
テレ東贔屓なので、その番組をみてたのである。
母は親戚と電話しながら、私はラップトップを打ちながら。
そのとき、外で救急車のサイレンの音がした。思えば、
それが故麗城アゲハ女史に対して呼ばれた救急車だったのである。
上記の番組では十津川村も出てきた。
十津川警部は出てこなかったが。ところで、
押尾学は悪いかといえばそれは悪い。が、
故麗城アゲハ女史の母親が、
「押尾被告は失われそうな命を前にして何を考えていたのですか?
大切な娘の命と秤にかけてまで選んだものは何だったのですか?
詫びてほしいとは言いません。ただ、
娘の人生に残されていたであろう時間と同じくらい
長い長い刑を与えてください。
娘の尊い命と同じくらい重い刑を与えてください」
と、そして父親が、
「最高の罪で香織の死を償ってもらいたい」
と、自分らの娘への躾・教育ぶりは棚に上げてでも訴えるほどには、
押尾学はそれほど悪いだろうか。
保護者遺棄致死のかどで裁判にかけられるほどだろうか。
遺棄ではなくて、ただイキがってただけではないのだろうか。
故麗城アゲハ女史は押尾学に押さえつけられ口をこじあけられて
MDMAの錠剤を強制的に飲み込まされたのだろうか。否。
キメセクをしてた相手がおかしくなっちゃったら、
有名人である押尾学がうろたえるのは当然である。
保身を図ろうとするのは自然である。
よう命は惜しおものにて候ひけり、である。

チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第25曲は、
【a】4人顔見せ=アダージョ、4/4拍子、無調号(ハ長調)
【b】ヴァリアスィョン(1)シンデレラとフォルチュネ王子=アッレーグロ(テンポ・ディ・ヴァルス)、3/4拍子、3♭(ハ長調)
【c】ヴァリアスィョン(2)青い鳥とフロリヌ王女=アンダンティーノ、2/4拍子、1♭(ヘ長調)
【d】コーダ(4人)=プレスト、2/4拍子、1♭(ヘ長調)
という構成になってる。といっても、
初演ですでに振付者マリウス・プティパによって、このナンバーは、
「青い鳥とフロリヌ王女のパ・ドゥ・ドゥ」
とされてしまったらしい。が、
それはチャイコフスキーの作曲過程には無関係である。そんなことはどうでも、
"原曲"の"パ・ドゥ・カトル"は、ふたつ前のナンバー、
#23でも据えられてた。

「#23 Pas de Quatre」
[金の精、銀の精、サファイアの精、ダイアモンドの精]
【a】4精顔見せ=アッレーグロ・ノン・タント(附点4分音符=92)、6/8拍子、2♭(変ロ長調)
【b】ヴァリアスィョン(1)金の精=アッレーグロ(テンポ・ディ・ヴァルス)、3/4拍子、3♭(変ホ長調)
【c】ヴァリアスィョン(2)銀の精=アッレーグロ・ジュスト、2/4拍子、4♭(変イ長調)
【d】ヴァリアスィョン(3)サファイアの精=ヴィヴァチッスィモ、5/4(2/4+3/4)拍子、調号なし(ハ長調)
【e】ヴァリアスィョン(4)ダイアモンドの精=ヴィヴァーチェ、2/4拍子、1♯(ト長調)
【f】コーダ(リステッソ・テンポ=ヴァリ4と同じテンポ、2/4拍子、4♯(ホ長調)
という構成であった。こちらはヴァリアスィヨンが単独で踊られたため、
全部で6つである。いっぽう、
#25のほうは、ヴァリアスィヨンがカップルで踊られるので、
ふたつ少ない4つである。さて、

「#25 Pas de Quatre」の【a】、
[アダージョ、4/4拍子、無調号(ハ長調)]
低弦のピッツィカート、vnセコンドとヴィオーラのスタッカートな16分音符、
ホルンの属音、という伴奏に乗って、
フルート1管が高音で主要主題を吹く。
*****♪ソーーーーー、>ミー│<ラーーー、
    >ソ<ラ>ソ>ミ>ド>ラ・>ソーーーーーーー・・ーーーー●●●●♪
主要主題群は繰り返されるときにはクラリネット1管のカノンを伴う。
いわば中間部は実質ロ短調、
フルート2管+ディーヴィズィされた半分のvnプリーモ、そのオクターヴ下の
オーボエ1管+ディーヴィズィされたもう半分のvnプリーモが、
*****♪ラーーーーー、>♯ソー│<ラーーー>♯ソーーー・<ラーーー、
   >♯ファーーー・・<ラーーー>♯ソーーー・<シーーー、
   >♯ソーーー│<シー>ラー、<シー<ドー・<レー<ミー<ファーー>ミ・ミーーーーー>シー♪
という中間部主題を奏する。これは途中、長化され、
*****♪ドーーーーー、>シー│<ドーーー>シーーー・<ドーーー、
   >ラーーー・・<ドーーー>シーーー・<レーーー、
   >シーーー│<レー>ドー、<レー<ミー・<ファー<ソー<ラーー>ソ・ソーーーーー>レー♪
となる。このときの極大値であるhでは、
フルート1管+ディーヴィズィされた半分のvnプリーモ、そのオクターヴ下の
フルート1管+オーボエ1管+ディーヴィズィされたもう半分のvnプリーモの混合音が、
きわめて素晴らしく響くのである。こういうセンスは、
大作曲家でもチャイコフスキー以外には備わってない。そして、
その長化された中間部主題からハ長調の属7にシフトさせ、
主要主題を再現させるくだりも、じつに感動的である。
主要主題の再現はフルートでなくクラリネット1管が受け持たされる。そして、
フルート1管の高音は今度はカノるほうにされる。これもまた、
チャイコフスキーの音色へのセンスのよさである。
4小節(+1拍)の小さな結尾は、これまた抜群のセンスである。
****♪●ドッ<レッ<ミッ│<ファッ>ミッ>レッ>ドッ・
   ●●●ドッ・・<レッ>ドッ>シッ<ドッ・
   ●●●>♯ファッ│<ラッ>ソッ>♯ファッ<ソッ♪
と弦群が奏する。その合間を木管群が埋める。
終いから2小節めは、
「オネーギン」の第1幕第2場でチチヤーナが乳母に」手紙」を託して
「場」が終わるときに現れる夜明けの音楽、
「交響曲第6番(悲愴交響曲)」の第3楽章で、
この曲で2箇所だけ打たれるffffのふたつめが鳴らされる場面、など
(cf……「チャイコフスキーが執着した和声」……
http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/04a81f9a09e24287a1bb7a5dcb04b838)
チャイコフスキーがしばしば用いる和声で彩られる。さて、
最後の小節はピッコロ+フルート2管+クラリネット1管が、
鳥が枝渡りをするがごとくハ長調主和音を修飾音附きで分散し、
弦群のピッツィカートがハ長調の主和音→ハ音のユンゾンで閉める。

ところで、
このナンバーの主要主題
*****♪【ソーーーーー、>ミー│<ラーーー、
     >ソ(<ラ>ソ>)ミ>ド>ラ・>ソーーーーーーー・・ーーーー】●●●●♪
の音価を統一して骨子を連ねれば、
【ソ>ミ<ラ>ソ<ラ>ソ>ミ>ド>ラ>ソ】
となる。今からちょうど
「100年」前の明治43年に、
「尋常小学読本唱歌」が当時の文部省によって編纂された。
そこに収められた27曲の唱歌のうちのひとつ、
「虫のこゑ」(旧文部省唱歌)。
「あれ松蟲が鳴いてゐる。」
の箇所の節、(4分音符=80)
***♪【ソ>ミ・<ララ│>ソソ・>ミ●│<ドド・>ララ│>ソー】・●●♪
に「伝えられ」た。ときに、
「虫のこゑ」の二番の歌詞は、
「きりきりきりきり、きりぎりす。」
と始められた。が、
<「きりぎりす」は「こおろぎ」を指す古語>
という鬼の首を取ったような理屈で、
昭和7年の「新訂尋常小学唱歌」において
「改変」されたという。
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