エッセイと虚構と+α

日記やエッセイや小説などをたまに更新しています。随時リニューアルしています。拙文ですが暇つぶしになれば幸いです。

散文小説5

2015-06-28 04:53:19 | 小説
レジカウンターに何枚かのDVDが置かれて、ぼくはバーコードリーダーで読み込ませビニールの袋にそれらを入れ、客に渡す。積み上がっている返却されたDVDのケースを元の位置に戻す作業を続けた。道路沿いのレンタルビデオ店は、ほとんどが暇な時間だったからフリーターを名乗るに相応しいアルバイト先な気がしていた。その日の同じシフトには大学生の女性がいてスタッフルームで黙々とDVDの読み込み面を磨く作業をしている。その女性の映画の知識は普段気に入った作品しか観ないぼくを遥かに凌駕していた。洋画コーナーでダイハードをプラスチックのケースに戻すと、レジカウンターで客をひたすらに待った。
「きょう店長来ないって」
「わかりました」
プライベートな取っ掛かりが無いいつも通りの会話のあとぼくは軽く背筋を伸ばした。
午後7時になると「ではお疲れさま」とぼくは薄暗い道を駅まで向かう。さきほどの女性は昼からのシフトだったためまだ作業を続け、ぼくの代わりにはその子と仲が良いと思われる同じく映画好きなフリーターの女性がシフトについていた。歩く道路を照らしていたのは街灯と車のヘッドライトだけで、レンタルビデオ店から所沢駅まではけっこう距離があるのだ。Tシャツにジーパンでひたすらにぼくは帰りを急ぎ、汗をたまに袖で拭いた。無職からフリーターになってからそんなに期間は経っていなかったのにバックれてしまおうかと思うことは多かった。
1人の夜道を恐れることはなかったのに。
所沢駅まで来ると、踏切で信号待ちをした。西武池袋線が何本も通って遮断機が上がり、またぼくは歩きだした。
アパートに帰り、布団に横になりスマートフォンをいじった。そしてシャワーを浴びTVを見てから眠った。

なぜかiPhone5cにアップグレードしてしまった

2014-02-06 03:39:21 | 小説
気付けばiPhone4を契約してから2年7ヶ月が経っていた。ぼくはすっかりくすんでしまった液晶パネルを指で擦りなかなか出てこない文字変換に機種変するしかないと思いたった。つい1ヶ月前の事だ。機種変更といってもiPhoneをアップグレードするだけなのだが。しかし贅沢は足下をすくわれるということの不安要素になりかねない。2年の分割契約をまたしても懲りずに考えていたのはぼくが愚かな男だということの何よりの証拠だ。
ところで、大変だったのは卑猥な画像やらの整理でそれだけに1時間もかかりSoftBankショップへ向かった。かなり決心のいることだった。受付には多分僕よりかは10歳も若い好青年がいてiPhone5SかiPhone5cのどちらかがいいのかな?とのぼくの問いに5cと答えた。Web上では5Sがとにかくいいのだという書き込みが多くぼくの既成概念はすぐさまに打ち崩され混乱の谷底へと突き落とされた。
しかし疲れ果てたポケットの中のiPhone4はぼくに「ちょっとぐらいの誤ちならしょうがないよ。だって最初に契約したときも2年の分割だっただろう。孫正義だって君のように愚かだと自認している男の為に分割払いを様々なサービスで乗り切らせるというくっそ寛大な姿勢を示してくれたじゃないか。たしかに君はお金にルーズだしかも甲斐性もないに等しい。だけどぼくをタッチすることで初めて小説まがいのものが書けたろう。ならそのことに感謝と愚かな自分への諌めとしてiPhoneをアップグレードしたっていいんじゃないか。それでもっと良い小説まがいを書ければいいんだ。それ自体に価値は無くてもより良い小説まがいが書けるようになることは君にとっては人生を少なくとも前に進めることになるはずだ。後退させてしまうということにはならないはずだ。俺を信じろいやスティーブ・ジョブズを信じるんだ。同じく故人のブルース・リーだって言っていた考えるんじゃない感じるんだってさ」とメタリックボディーを震わせながら言ってくれた。
ぼくは手に馴染むiPhone3gsによく似た感触とボリカーボネットの緑のデザインに魅せられiPhone5cにすることにした。恥の上塗り、親不孝もいいとこだ。愚かな男だと開き直るのは正気の沙汰とは思えないほどの蛮行。
追い立てられるように契約してしまったiPhone5cをいまぼくは見つめながらまだ自分に文学にしがみつくだけの気力、体力、精神力があるのかと問いかけている。きっと明日、明後日と喫茶店か自宅の部屋で原稿用紙を広げたときにその正解の無い問いのヒントが掴める筈だ。そう思ってもうyoutubeの面白い動画でも見てから寝るとしよう。

ニューヨーク旅行でしてみたいこと(再up)

2013-07-31 02:35:45 | 小説
マディソンスクウェアガーデンでは、リンプビスキットのフレッドダーストが赤いキャップを被って歌っていた。歌詞の意味は全く分からなかったが、左にいたギターのウェスが珍しく何の被り物もしていなかったので感心してステージを見ていた。テイクアルックアラウンドが終わるとフレッドダーストは赤らんだ顔で「falling away from me」と叫んだ。そしてkornの曲のカバーをし出した。フレッドダーストはその甲高い声を少し抑え気味にジョナサンデービスの唸るような低音をなんとか表現しようとしていたが、あまりうまくいっていないようだった。ウェスは相変わらずに楽しそうにギターのリフを刻んだり、ハイコードからソロまでなんとなしに弾いていた。
やはり僕にはフレッドダーストの発する歌詞の意味は理解できなかった。英語のリスニングもスピーチもとんでもなく苦手なのだから当たり前か。そんな風にぼやけた顔で聴いていたらなんと!後ろからジョナサンデービス登場、フレッドダーストは目を見開いてオーッというようなため息を漏らすと、ジョナサンデービスと一緒に戸惑いながら歌った。僕はマディソンスクウェアガーデンを後にした。

タイムズスクエアを歩いてみるとブロードウェイの看板が大きくてびっくりした。
そして何処を歩いても、マクドナルド、ウォルマート、セブンイレブン、スターバックス、タコベルの金太郎飴状態で目が回った。とりあえずスターバックスでキャラメルマキアートを頼みそれを飲みながらタイムズスクエアを歩いた。そういえば、アリーマイラブでは毎回こんな感じにキャリスタフロックハートがしていたことを思い出した。たいていコーヒーをこぼしたり、こぼされたりで恋が始まったのもなんだかやはりロマンチックなことだったんだなと感慨に浸った。地下鉄に入っていくと、こんなところでエージェントスミスとネオは闘っていたのかという感慨にまた陥ったのだが、マトリックスから戻るための電話ボックスはそこにはなかった。
とりあえず乗り込む。ファイナルディスティネーション3ではここから大変なことが起きてしまうんだよなと不安になったが、ヒロインみたくとんでもない白人の美少女は発見することができなかったから、僕は安心した。地下鉄から地上に出てヤンキースのスタジアムを眺めた。イチローの放ったホームランが場外まで飛んできて僕の足元に転がってきた。たぶんそれは松井秀喜が国民栄誉賞をミスターと同時に受賞することが決まったことで野球の神様がより遠くまで飛ばしたのかと思うと、僕は人目もはばからずにその場で泣き崩れた。

東京に帰ってくるとニューヨークはやはり凄かったと改めて思ったのだった。

※空想なので、ほんとはニューヨークには行った事はありません・・・。
ちょっといろいろとあり再upですm(_ _)m!

新大塚を散歩して落語へ(再up)

2013-07-31 02:34:58 | 小説
まだ新調したばかりのアスファルトには丸く縮まろうとしているミミズが、鉄板の上の肉片のように焼け焦げてしまうのではないかと思った。スズメがそれに近寄るとくちばしで咥えてマッチ棒のような脚で飛び跳ねゆうらん公園の中へと入ってゆく。
新大塚駅からほどなくの距離にあったデニーズの横を通り、くすの木の繁る公園の中へと入る。
風はだいぶおさまり、Tシャツ1枚でも過ごせそうな5月の陽気は、公園の中央で湧き上がる噴水の飛沫に交差して色彩をともらせる。

ゆうらん公園のベンチはランチタイムのOLさん達や、くたびれた背広の中年男性や、子供を連れた母親達の集まりなどで、すっかり埋まっている。
噴水の飛沫越しに見えたベビーカーは、
淡い紺色の一般的によく見られるようなもので、佇む母親と中にいる子供は、楽しそうであった。
さっきのスズメは群れの中に戻っていた。ランチタイムのOL達の前でパン屑をつついている群れの中で、ミミズのしっぽをつつき一匹だけ超然としているようにさえ見える。
私はまだ公園の入口付近に立って、パノラマのように広がるスペクタルにさえ感じる光景を眺めている。
中に入って行くと噴水の横を通って、先の並木道に入っていった。
くすの木に囲まれて、歩いているとマイナスイオンを受けて、新大塚のメトロ構内で閉塞した身体がほぐされていく。チェーン展開しているマッサージ店で2千円弱のお金でかえって凝り固まってしまったフィジカルにダイナミズムな興奮をくれた。
もうアスファルトの道路が先に見えている並木道を私は歩きながらぐるりと見回す。くすの木はやはりさっきの一匹のスズメのように超然としている。アスファルトの上に出ると、右へと進路を変えて、大塚の公民館を目指した。立川談修の落語を聞くためである。

近所のマクドナルドで行われた落語を半年前に聞いて興味を覚えていた。
ほどなくして公民館に着くと、私は3階の多目的ホールへと入り受付に千円札1枚を置いて、70席は並べてあるであろうパイプ椅子に腰かける。舞台袖から立川談修が登場した。埋め尽くされた客席からは、割れんばかりの拍手が起こった。座布団を目指している途中で立川談修は踵を返し、舞台袖にまた引っ込んでしまった。はて!?と私は見ていたのだか、なんでも扇子を忘れて出てきてしまったようで、座布団に鎮座するなり、「扇子をとって来ました」と頭を下げて口上を始めた。プロであってもミスはするのだな~とも思ったのだが、いわゆる予定調和というやつなのかもしれないなとも勘ぐった。
約30分であろうか、あえてなのかわからなかった僅かながらのぎこちない動きはかえって、その飄々とした佇まいと口調と共に落語の面白さに拍車をかけて、客席には私以外は中高年ばかりであったのだが、笑いはときに静かにそしてワッと公民館を揺らすほど沸き起こった。
舞台上の赤い座布団に鎮座した立川談修は後ろを刈り上げたざんばら気味の髪型でとっちゃん坊やのような趣きである。
だんだんと身を乗り出すように噺しがのってゆくのがわかる。古典や現代といった説明を口上に丁寧にしてくれたおかげで私も沸き立つ中高年と一緒になって手を叩いたりしながら、笑った。

5月のまだ午後の日差しを浴びて帰路につき、新大塚駅を目指す。途中にQBカットで私は髪を切って貰い、さっきまでざんばらであったかどを丸めた。

※新大塚駅は実在していますが、他はけっこう空想です。フィクションなので(@_@)!あ、でも立川談修さんという落語家は実在の人物でとても魅力溢れる落語家さんです(@_@)! また落語のことは良くはわからないのでたぶん色々と間違っていますm(._.)m でも実際に立川談修さんの落語を聞いたことはあるのです(@_@)!
ちょっといろいろとあり再upですm(_ _)m!

散文小説4

2013-07-29 01:31:14 | 小説
午後3時ガストでフリーター仲間の女性と向かい合っていた。主に酒を飲んだ。ガストを出ると夕日に僕と女性の並んだ影が伸びていた。結局ワイングラスとビール2杯ぐらいと日本酒などを呑み女性はほろ酔いで千鳥足だったから僕は女性の着ていたカーディガンの袖をつかんで転けないように歩いた。
そのあとも何回かデートをした。

自転車でサイクリングをするために部屋をでた。区民会館のすぐ側に自転車を止めた。ドトールの薄い珈琲を飲み干すと隣町であるこの場所の商店街を歩いたが刺激的な店や事柄は何もなかった。怠けていた身体を戻すために、
サイクリングコースを自転車で駆けた。川越街道のいくつもの坂を上ったり下りした。それだけで、爽やかな存在になれるような感じがした。しかし風と同化することは、すごく難しいことだった。その日はよく眠れた。

コンビニのアルバイトで知り合った彼女と品川のビジネスホテルで一泊した。もうはじめてデートしてから1年以上は経過していた。
彼女はいまは専門職についていて、忙しそうだった。僕は変わらずフリーアルバイターをしていた。行為が終わると、ホテルの部屋でTVを見てから同じベッドで眠りについた。その日もよく眠れた。
次の日、僕は古びたアパートで小説まがいのものをテーブルの上で、せっせと書いていた。原稿用紙はそれなりのペースで文字で埋まっていった。銭湯に行ってアパートに戻ると万年床に横になって電気を消した。その日は、あまりよく眠れなかった。