映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「ラブ・アクチュアリー」

2007年10月01日 | 映画~ら~
この映画、大好きなんです!!!

初めてDVDで見た時は「別に…」と思ったのですが、なぜか本当はもっと面白い作品であるような気がして、その後もう一度見直してみたら・・・「面白い!!!!」。

ジャンルとしてはコメディーなのでしょうが、あからさまに爆笑を求めているという作品ではなく、「洒落」の効いた映画です。1本の映画の中にいろいろな物語が同時進行で詰め込まれています。こういう手法、10年位前じからチラホラ見られますね。

とにかく、映画を構成しているすべての物語がなんとも味があって素敵なのです。すべての物語についての素敵な部分を書きつくしたいくらい。(多少ネタばれあり↓)


クリスマスのロンドンで繰り広げられる、ちょっとした日々の出来事。
その出来事に登場する人々は、多分どこにでもいる普通の(見た目はかなり良いけど)人たち。

特に好きなエピソードは、キーラ・ナイトレイの話。彼女の結婚式は思わず拍手を送りたくなるほど幸せで、誰もが笑顔になってしまう。そしてそんな彼女に恋をした男性の愛の告白は、切ないけれども心が温かくなる。

夫の浮気を心配する普通の主婦をエマ・トンプソンが。どこまでも普通の主婦であるからこそ、心配する姿がとにかく淋しい。その女性の心のうちを、台詞はかなり少ないのだけれどさすがエマ。淡々と、それでも確実に心に響いてくる女性の気持ちを表現しています。

ポルトガル人のメイドに恋をしたコリン・ファース。 

クリスマスソングでヒットを狙う元ロックスターとマネージャー。

アメリカ人美人をゲットしようと奔走する若者。


どの物語も、ふと気持ちが温かくなります。どれも派手さは無いけれど、だからこそ心にじんわりとくる。イギリスは、派手な演出やヒーローを作らなくても、人の温かさや人となりが伝わるような映画つくりが本当に上手い。非常にバランスの取れた、何度でも観たくなる映画です。



お勧め度:★★★★★   (でも意外に好き嫌いが分かれる映画です)

「Ray レイ」

2007年09月23日 | 映画~ら~
レイ・チャールズの波乱の生涯を綴った伝記映画。この映画でジェイミー・フォックスはアカデミー主演男優賞を受賞。実際映画を見てみて、彼の受賞は納得。誰も異議申し立てはしないでしょう。

では映画は…といいますと、正直最後まで見るの辛かった。ジェイミーの演技は申し分ない。でも内容がね。
これが伝記映画の難しいところ。人間の一生にはいろんな出来事がある。伝記映画になるくらいの人物なら、相当ドラマチックなのは間違いない。でも普通の映画がテーマにのっとって物語が展開されていくのに対し、伝記映画は映画を面白くするために「展開させる」ことができない。そんなことしたらその人の人生を描くものではなくなってしまうから。むしろある人物の人生をベースにした物語となる。その人自身に興味を持っている人にとっては、この上なく面白い作品だと思うけど、たとえばレイ・チャールズの音楽が好きな人全員がこの映画をすきかといったらそうではない。女たらしのレイをちょっと嫌いになるかもしれない。

でもそれは仕方の無いことよなぁ。だって人間にはいろんな側面があり、いい面もあれば人によっては認めたくない面もある。伝記映画で特定の人物の人生を語るには、その双方を見せなくてはならないし、よいか悪いか、好印象か悪印象かはそれこそ見る人によって違う。別にこの映画だってレイ・チャールズを大好きにさせるために作られたものではないだろうから、誰かがレイを「ちょっとヤダ」と思ったとしてもそれは失敗ではないんだろう。

面白くないとはいえ、まだ人種差別、特にアフリカ系への差別が色濃く残っていた時代(今も酷いけど)に、目が見えないというハンディを背負いながら音楽業界で頂点に上り詰めたレイの世渡り術は必見。特に印象的なのは、映画始まってすぐのバスに乗るシーンと給料をちょろまかされそうになるシーン。どんな時代にも酷いやつはいる。人種差別が法律上まかり通っている時代には、酷い奴等というよりもそれが当たり前なのでさらにどうしようもない。そんな中でもほんの一握り、ほんの一つまみの、社会の基準に惑わされない独自の良識を持ち合わせている人が1人でも身近にいるかいないかで、被差別側の人生は大きく変わるのだろう。

物語として期待するのではなく、レイ・チャールズを知りたい!と言う人にはお薦め。


お薦め度:★★

「ルパン3世 カリオストロの城」

2007年02月16日 | 映画~ら~
ダンナが借りてきたDVDを一緒に観ることに。旦那はイギリス人。日本語も話せますが、映画などは英語のほうがもちろんわかりやすい。今回見た『カリオストロの城』は英語字幕つきでした。

ルパン3世を久しぶりに見ましたが、これはまさにエンターテイメントだね。アニメ映画だし、子供でも楽しめるけど、これは断然大人が楽しむアニメ。最近になって日本政府も麻生外相を中心に、日本のアニメを「商業」として世界にアピールしていくという政策を発表したばかり。本当に「やっと」ですね。この『カリオストロの城』は1968年の作品。

30年も前の日本の作品ですよ。それでもルパンはいつ観ても古さを感じさせない。宮崎作品って、ルパンのみならず『となりのトトロ』も古さを全然感じさせないんだよね。それに、ストーリーが素晴らしい。一応、世の中では一般的でいまだに主流はハリウッドだけど、クオリティーの高さは比にならん。比べては失礼だわ、こりゃ。

旦那の豆知識によると、スティーブン・スピルバーグもこの作品の大ファンで、「世界一のアクション映画だ」と絶賛しているらしい。納得。

ルパンはアニメだけど、今の映像技術を使えばそのまま実写も可能。でも、この作品に匹敵するようなものはいまだに実現していない。スピルバーグの作品って個人的にあまり好きではないのだけど、この人の意見には激しく賛同した。

細かいウィットやディテール、そして何でもかんでも台詞にして話を説明し、わかりやすくさせるような陳腐なつくりではなくて、まさに「行間を読む」ことをさせる作品。想像力、思いやる気持ちを持たないとこれは楽しめない。


ちなみに英語字幕は、明らかに誰もしゃべっていないシーンなのに長々と英文が。アメリカ向けなのでしょうけど、そこまで細かく状況を説明しないとわからんのか?それとも翻訳者が悪かったのか?

宮崎アニメのDVDには結構字幕付が多いのだけど、あの低レベルさには毎回あきれます。


でも、この『カリオストロの城』は最高。
銭形警部が乗っていた日本のパトカー、埼玉ナンバーだった。そこがツボでした。


お薦め度:★★★★

「リトル ミス サンシャイン」

2007年01月20日 | 映画~ら~
CMを見たときから気になっていた映画です。

9ヶ月間も家族と口を聞かない長男
戦争経験のある、ヘロイン中毒のドスケベじいちゃん
一番まともかと思われるワーキング・ヘビースモーカーの母
自己啓発ビジネス書を出版したい、「勝ち組」こだわる父
ミスコン優勝を目標とする幼児体型の妹
自称「プルースト研究の第一人者」でゲイでうつ病持ちのおじ

とにかく曲者ぞろいの家族が、娘がカリフォルニアで行われるミスコンに出場することになりオンボロのフォルクスワーゲンで旅に出る。


始めは、「あーーー、期待しすぎた…」とちょっと自己嫌悪になりかけたけど、ロードムービー要素が強くなってからは面白さが徐々に加速。最後には泣いてしまった。たぶん泣く映画じゃないと思うけど。

とにかく持論の「9ステップの論理」をかざし、社会で成功することが幸せであると解く父親が本当に本当にウザイんだよね。そら長男も口聞かなくなるやろ。お母さんも売れるかどうかわからない啓蒙本を出版しようとし、その思想を家族内でもふりまく夫と一緒に暮らしてたら、タバコもすいたくなりますよ。いや、それよりよく我慢しているわ。じいちゃんはエロイけど、娘には本当にいいおじいちゃん。

私のお気に入りは息子のドウェイン。
見事な根暗チックな容姿で、しかもしゃべらない。でも筆談には応じるのだから、日本の思春期の親としゃべらない子供よりもよっぽどかわいいわ。

好きなシーンが2つ。
1つめは、旅の途中での食事でアイスクリームを注文した娘に、あほな父親が「ミスコンの優勝者はアイスクリームを食べない」と独自の成功理論を元にとくとくと説明し不安にさせるのだけど、テーブルに届けられたアイスクリームを叔父とおじいちゃん、息子のドウェインが「うまいな~、最高だよ!」といいながら食べるシーン。娘の不安を取り除く優しさが溢れてる。

もうひとつは、色盲であることがわかりパイロットの夢が潰えてしまったドウェインを妹がそっと肩を抱くシーン。口で説得するのではなく、ただとなりに座って方を抱くだけ。それでも愛情を伝えられる。しかもそのシーンのカメラ位置が素晴らしく、地面に座り込む兄妹の遠い背景にワゴン車前で待つ家族の姿が映っているの!写真にも載せたけどさ。これは映画館で見たからこその素敵な映像でした。


映画全体にアメリカ文化を皮肉った(アメリカの)自虐ギャグが盛り込まれていて、ブラックだけど面白い。最後は爆笑!「勝ち組」意識の強いお父さんとか、ミスコン審査員とか、まさにアメリカ的。

ミスコンのシーンは、ちょっと目を覆いたくなる。残虐なのではなくて、あれはロリコンを喜ばせるためのものだとつくづく思った。6歳7歳の女の子がプラスチックのバービー人形みたいに、毛穴の全くないようにメイクされて、カクテルドレスやビキニ着て、大人のモデルのように腰を振りながらキャットウォークする。それを見て感嘆のため息や歓声があがったりする。あれは異常。ついつい、10年前のジョンベネちゃん事件を思い出してしまった。

ミスコンは悪いとも思わないし、子供が「セクシー」に憧れる気持ちもわかるけど
あれは親のエゴ。しかも親が子供にそんな格好させて人前に出すんだから意味がわからん。ロリコンの変態を誘っているだけにしか見えない。それが強烈だった。

あれはやめるべきだな。


お薦め度:★★★★