映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ ~A Street Cat Named Bob~』

2017年09月05日 | 映画~は~


*画像はこちらから http://variety.com/2016/film/reviews/a-street-cat-named-bob-review-1201906400/

2016年 イギリス映画


ロンドンの『ビッグイシュー』販売員だったジェームズとトラ猫ボブの実話を元にしたお話です。

ジェームズさんが書いた『ボブという名の猫』という本が元になっているのですが、イギリスでは2012年に発売されて以来ベストセラーで、続編や子供向け絵本など関連商品もかなり多く出ています。


簡単にお話の内容を説明しますと、元ホームレスで生活の再起をかけてロンドンの街なかで『ビッグイシュー』という雑誌の販売員をしているジェームズが、ある日怪我をした猫に出会います。彼はなけなしのお金でその猫を介抱しながら飼い主探しをするも、飼い主は現れず。ある日その猫は出勤するジェームズを追ってバスに飛び乗ります。もともと飼うつもりはなかったものの、これをきっかけにお互いがかけがえのない存在に。数々の困難に見舞われますが、ボブの存在はジェームズの再起を後押しします。


映画なんですが、もう本当に本のまま。誇張も省略もなく、そのまま素直に映画になっています。ですから、原作本を読んだ方も、しっかり楽しめます。


…正直に言うと、特にここで付け加えることのない映画でした。


つまらないということではなくて、先程も書きましたが、本のままだから。そこはこれ以上ないほど素直にほんのまま。本当に忠実。ジェームズ役の俳優さんは、本物より若干男前ではありますが(笑)。しかも、ボブ役は本物のボブが演じていますし、これ以上には作りようがない出来ではないでしょうか。


でも、逆にこういう映画って最近珍しいかもしれません。動物を扱った映画ですが、特に子供向けというわけでもなく、ほんとうの意味で年令に関係なく誰もが楽しめる一本。これ、貴重ですよね。


あと、個人的に気になったのは、ベティー役のルタ・ゲドミンタス(多分こんな感じの名前)。この人、イギリスのテレビ番組ではたまに見かけるんですけど、役によって全然雰囲気違う!イギリス人の俳優さんって、あんまり「これが私よ!」という感じの人っていない気がします。どういうことかというと、「普段はけっこう普通」というか。だからこそ、役によって全く別人に見えたり、その振り幅がものすごい人が多い気がします。


それから、映画には全然関係ないんですけど(笑)、『ビッグイシュー』って日本でも販売員の方をよく見かけると思うんですけど、日本での知名度ってどうなんですかね?日本の知り合いには「全然知らない」という人も何人かいてけっこう驚いたんですよ。少なくとも15年前にはビッグイシューって日本に上陸していたし、当時から大きな駅前とかだと販売員の方をよく見かけたので、「皆さん、おなじみの!」くらいの認知度だと思っていたら…地域差もあるのかもしれませんが。


映画に関係ないついでに、ジェームズとボブはイギリスでは本当に誰もが知っている存在です。ふたり(?)は今もホームレス・チャリティー運動に力を入れていて、特に『ビッグイシュー』関連のイベントだとけっこう頻繁に参加していたりします。ちなみに、私も今年の春にあるイベントに参加する予定で、さらにそのお二人が激励にやってくる!という二人に会える絶好のチャンスを目の前にしながら…直前にわたくし発熱でイベント参加できずということがありました。


って、どうでもいいですね。


最後に映画の話に戻りますが、実話であること、そして話もわかりやすいこともあり、本当にどなたにもおすすめです。サラッとも見れるし、しかしイギリス(ロンドン)のホームレスチャリティーや販売員たち、一般の人達の生活の一端も垣間見れますし、さらにロンドンが好きな人にはおなじみの街並みも楽しめます。誰もが素直に楽しめる、実は意外と貴重な作品・・・だと思います!




日本では、2017年8月26日から公開中!




オススメ度:☆☆☆☆


『パシフィック・リム ~Pacific Rim~』

2013年08月08日 | 映画~は~
2013年 アメリカ映画



イギリスでは一足お先に公開された『パシフィック・リム』。普段、SFとかロボット関係の映画は苦手でほとんど見ないのですが、この日はなんだか色々とありまして…気晴らしが必要!しかも純粋に、何の小賢しさなく楽しめるものがいい!と思っていたところ、この映画の公開を思い出したわけです。

御年35歳。一般的日本人として、ロボット漫画や実写に親しみながら大きくなった者として、これらを題材にした映画となれば親しみもわくというもの。というか、深い物語を追う必要はなく、とにかく映像として脳味噌を使わずに楽しめそうというのが、この日は大事だったわけです。さらにいうと、この作品の監督が、パンズ・ラビリンスの監督だったというのも追い風となり、さっそく観に行ってきました。



一言で言いましょう。ロボット漫画や実写で大きくなった人は、間違いなく楽しめます。


そしてもう一言。昔見た実写、アニメ、そのままです。



もうはじめから、ずっと轟音鳴りっぱなし。戦いっぱなし。子供のころに見たあのアニメや実写ってこうだったよね、とちょっと懐かしくなったり。それを心より愛した有名監督が、それなりの予算を使って本気で作るのだから、面白くないわけがないんです。正直、ここまで楽しめるとは思っていませんでした。

あ、面白いと言っても、本当に…深みとか、映画化の意味とか考えないでください。昔のあの懐かしさが現代版になって戻ってきたという面白さです。もう、最初から最後まで、隅から隅まで、懐かしのアニメ・テレビの実写番組のエッセンスが満載!私世代なら、どのロボットや怪獣が、どの漫画や番組から影響を受けて作られたかというのも分かるはず。


ゴジラとかウルトラマンとか、日本にいたらいつでもテレビでやっていて、それが子供番組の基本だと思って当たり前に見ていたから何とも思わないかもしれませんが、こういうものを作り出すことって本当に偉大だ、と映画見ながら感心しました。イギリスに住んでかれこれ6年ですが、こういう子供番組ってイギリス、ヨーロッパにはないんですよ。だからこそ日本の番組がそのまま放送されて、そして日本と同じように子供たちを虜にしているわけです。

一応、一般的な日本人(中年)としてこういうたぐいの番組を見ていたとはいえ、大して詳しいわけでもない私ですが、例えば「このロボット、○○に似てる」、「この怪獣のデザインは、この番組から影響を受けてるようにみえるなぁ」というものが盛りだくさん。鑑賞後に日本で発行されているネットの記事やインタビューを見ていたら、ビンゴ!あのデザイン、監督の大好きな○○から影響を受けているのね~、と一人納得&満足させていただきました。



日本の子供向け番組から影響を受けて作られた映画って沢山ありますよね。『ロボコップ』、『トランスフォーマー』、『インセプション…この中だと、この『パシフィック・リム』はロボット系として『トランスフォーマー』と同じ系列と見ることができるかもしれませんが、私個人的にはもう10倍くらい『パシフィック・リム』の方がお勧め!というのも、この映画、すごく純粋なんです!!!

観客を楽しませるため(と言われている)唐突で意味のないラブシーンとか、本編に関係のない無理やりな色恋沙汰とかが全くもってない。(←これが『トランスフォーマー』嫌いの一因。)

子供向けロボット実写番組を、大人がそれなりの予算を使って本気で作った。日本人にとっては目新しさも驚きも何にもないんです。だっていつもテレビで見ていたものそのままだから。「『へ~んしんっ!』とか言ってないで、その間にさっさと攻撃しなさいよ!!!」といい大人としてはヤキモキしたりするのですが、そういうところもそのまんま。本当にそれ以上でもそれ以下でもないんです。本当に本当にそのまんま。でもそこがいい。すがすがしいほど飾り気なし!!!見ていて気持ちがいい!!!


あえて残念なところを上げるとしたら、菊池凛子さんの髪型(カラー)でしょうか。真黒なおかっぱ頭に青のハイライト…『バベルで女子高生演じた時も、こんな感じの髪型でしたよね。凛子さんは決して悪くはないんです。でも、これってアジア人以外の外国人が考える「日本人のおしゃれ」なんですかね?なんか、「またこれかよ」感を感じてしまいました。まぁ、いいんだけど。


映画の内容とは関係ありませんが、数ヶ月前にヤフージャパン(元はアメリカで発表された記事の翻訳版)に俳優についての考察が掲載されていました。それはここ数年、イギリス人俳優たちの台頭が目覚ましいというもの。アメリカ映画でアメリカ人役なのに、イギリス人俳優がそれを演じているというケースが増えている、というもの。『パシフィック・リム』も例外ではなく、主役ローリーを演じるチャーリー・ハナム、司令官役のイドリス・エルバはイギリス人でした。




『パシフィック・リム』、監督の日本への愛が溢れています!一日本人として、ここまで猛烈で純粋な愛を表現されて、嫌なわけがありません。

クールジャパンって正直どうなの?という声も聞きますが、日本のアニメ、おたく文化は私達が頭で考えている以上に絶大で強烈で、日本が誇るべき文化の一つであることは間違いない!…と外国在住の私は日々感じるのです。


日本では、2013年8月9日(明日)公開です。





おすすめ度:☆☆☆☆


注:子供のころ、戦隊ものや怪獣ものに全く興味がなく、見たこともない、という人には不向きです。

『パリ20区、僕たちのクラス ~The Class~Entre les murs~』

2013年07月08日 | 映画~は~
2008年 フランス



パリ20区にある学校での日常を描いた作品。中学校のあるクラスで、国際色豊かな学生たちと彼らの担任であるフランソワの、毎日の「真っ向勝負」が描かれています。

フランス語(国語)教師のフランソワは、とにかく個性豊かな子どもたちといつも真摯に向き合ってきた。しかし、そこは思春期の子どもたち。どんなに真摯な姿勢を貫こうとしても、なかなか一筋縄ではいかないこともある。さらに生活環境や人種、国籍など様々な要因が入り組んでくるのが、パリ20区という地域の特徴。

この作品、「驚き」や「新しさ」、「斬新さ」を映画に求めている人は、物足りなさを感じるかもしれません。話の流れとしては、「中学での生徒と教師の日常風景」としか説明ができないほど、本当にそれだけ。しかしそのおかげで、概要を表面的になぞりインパクト勝負の作品では表現しきれない深さ、丁寧さが散りばめられています。


映画の中で描かれているエピソードは、基本的にはすごく些細なことで、大人である私たち(注:わたくし、35歳でございます)にしてみれば問題にすらなりようも無いほどのことだったりします。しかし、中学生達にはそうは行かないらしいのです。たいていは感覚の違い、知識の違い、言葉の認識の違い、年齢の違い、思春期ゆえの不安定さから発生するものなのだけど、生徒たちにしてみればきっとこれらの1つ1つが大事件なのでしょう。小さな勘違い、思い違いも、大人同士なら少し話をすれば解決できるものも、中学生相手ではそうはうまくいかない。間違いや勘違いを説明をしようとしても、理論より感情が勝ってしまう。感情的に本編からずれたところに論点を移動させてしまい、結局分かり合えない。例えば、フランソワが例え話のなかで使用したある言葉が、学生たちの反発を招いてしまい、焦点がそもそもの問題から、ある言葉を「言った・言わない」に完全にシフトされてしまったり。


この映画の何が面白いかって、とにかく学生と先生がリアルなんです。この映画のキャスティング担当者、本当にいい仕事してます!一体どこでこの子たちを探してきたの?と聞きたくなるほど。皆が皆、あまりにも上手く個性を表現していて、ドキュメンタリーを見ているような感覚になるのです。実際、出演している子どもたちは演技の経験が全くなく、これが第一作目とのこと。だからこそ「演技」と言うよりも素直な新鮮さが表現できたのかもしれません。

そしてフランソワ役のフランソワ・ベゴドーの熱くて、本当に子どもたちが大好きで、一生懸命、だけどだからこそ反発を招いてしまうという人間味あふれる演技も素晴らしい。このフランソワ役の俳優さんが、この映画の原作を執筆した本人でもあるとのこと。

このフランソワさん、若いなぁと思ったのですが、ウィキペディアを調べてみたら今年42歳(2013)とのこと。と言うことは撮影当時は30歳半ばかぁ。20代後半から30代前半くらいかと思ってました。もしくは、普段イギリス人に囲まれているから、私の年齢の感覚が麻痺していたのかも。うけけ。(注:イギリス人ってどういうわけか、他のヨーロッパ系に比べても年をとって見えるのです。)


中学生の頃の自分を思い返してみると、いつも自分は正しくて、世界のすべてを知った気分になっていたなぁ、と。映画の中の学生たちを見て、「ああ、こんなこの担任になったらきっついなぁ」と思いながらも、自分もこういう部分あったよなと。あの年頃独特の感受性の強さや怖いもの知らずな面、そして自分をコントロールできずに突っ走ってしまうところ。

難しい年頃の子供達の姿を描く映画やドラマってこれまでにもいくらでもあったと思いますが、この映画と他との違いは何か。私の語彙力では的確に表現出来ないのがどうにも悔しいのですが(そんなもの求められてもいないでしょうけど)、やはり「リアルさ」なんだと思います。無理やりドラマ仕立てにするのではなく、本当にそのままを伝えているような。もちろん映画だし原作があるのでドキュメンタリーで無いのは確かなのですが、ドキュメンタリーのような強さを感じます。そして役者、特に子どもたちと教師のたたずまいが、どうにも演技とは思えないのです。むしろ、「このドキュメンタリー、どういうふうに子どもたちにカメラを意識させないように撮ったんだろう?」と考えたほうがしっくり来るほど。

年齢的、ドラマの背景的に見ると、『金八先生』と同系列の作品だと思うのですが、ある意味正反対のベクトルを向いた作品であるように感じます。演技臭さが無いんです。誤解されないように説明を付け加えると、私は『金八先生』は大好きで、「演技合戦」的な暑苦しさ(少なくとも私が感じる)、その強さに引きこまれていくのが魅力だと思っています。逆にこの映画は、ある意味ドライすごくなんです。誰か特定の人物に感情移入するのではなく、第三者としてその光景を見ている。常に登場人物とは一定の距離が保たれているからこそ、どの役柄に対しても平等に冷静でいられる。でも、もしかしたらこの作品を見る年齢によっても感想は変わるのかもしれません。私がフランソワ世代だからこそ、自分たちが中学生として通ってきた道と、教師という仕事の大変さという視点から見ているのであって、仮に私がまだ10代、20代初めの学生なら、映画の中の中学生の怒りや勢い、不安を痛烈に感じるのかもしれません。


大作を好む方には退屈かも知れませんが、ヨーロッパ系のドラマが好きな人にはすごくオススメの作品です。地味で小粒ですが、バランスが良く、それでいて力強さのある作品です。

また、この作品は2008年度カンヌ映画祭のパルムドール(最優秀作品賞)受賞作品だそうです。彼らの演技を見ていたら、文句なし!です。



おすすめ度:☆☆☆☆★

『バグダッド・カフェ ~Bagdad Cafe~』

2012年01月02日 | 映画~は~
1987年 西ドイツ映画


「西ドイツ」映画、かぁ。この時はまだ、東西ドイツが存在していたわけですよね。この映画、多分中学生くらいの時にテレビで見た覚えがあるのですよ。17~18年前のこと。その時にこの映画を楽しめたかと言われると、楽しめたわけがない(!)。難解だったんです。何がなんなのか、中学生の私にはサッパリだったわけですよ。でもその時は、もう少し大人になったらこの良さもわかるのかも、と思っていたわけです。

そしてそれなりにいい大人になった今、もう一回見てみようと観てみたわけです。

が・・・・、


どうやらあたくし、18年経ってもあんまり成長していなかったようで、てんでわかりませんでした!

バグダッド・カフェってこんな話でしたっけ?いや、話っちゅうか、こんなにわけわからん流れでしたっけ?

この映画、インディー系の映画好きの方の中には「大好き(はあと)」という方が大勢いらっしゃるのは存じているのですが、あたくし、全然だめでしたわ。

細かな説明がないのがいいのかもしれないんですけど、私には全然ついていけなかったのですよ。セリフも少ないので、画面を見て何がどうなっているのかを想像しなくてはならない…なんだか一本の映画を創作ダンスで表現しているような。そう、中学生の時、きっとわたくしと同じ年代の女性なら体育の授業でやったはず。あの創作ダンス!


カフェの娘がドイツ人のおばちゃんと仲良くなり始め、彼女のワードローブに着替えるシーン…なんだか胸騒ぎがしたのはあたくしだけでしょうか?それなりの年頃の娘(中学生くらい?)が見知らぬドイツ人女性の前で着替えるんですけど、このドイツ人、せっかちなのかやたら手を出して脱がせにかかるんですよ!

話の内容がよくわからないから、余計にこういう一場面のみ鮮明に、そしてきっと誤解して覚えているんでしょうけど、あたくし。


ちゅうわけで、よくわからなかったので感想も何もございません。そういえばドイツ映画というと、以前飛行機の中で『Cherry Blossom(邦題は「HANAMI」、独原題「Kirschblüten – Hanami」らしいっす)』というドイツ映画を見たのですが、こちらも素晴らしく風変わりな作品でございました。あ、でも映画として楽しめましたけど。ドイツ映画って、結構こういう風変わりな作風があるんですかね。



おすすめ度:★

『ブラックスワン ~Black Swan~』

2011年02月03日 | 映画~は~
2010年  アメリカ映画

皆様。単刀直入に申します。劇場で観てください。レンタルでなんてけちらずに、お金を払って大きなスクリーンで観てください。
もう、アタクシ個人の感想なんて恐れ多くて…と思いますが、それでもやっぱり勝手に書かせていただきます。感想というか、アタクシの衝撃体験といったほうが妥当かもしれません。

映画を見終わった後に衝撃のあまり席を立てない、という事を人生で初めて経験いたしました。そして悲しいわけでもないのに、涙が。あまりに映画が凄すぎて。衝撃に私の意識も体も吹き飛ばされたような感覚です。映画を観ている間に何度鳥肌がたったことか。

とにかくすごかったので、この興奮を早く文章にしたかったのですが、時間がないので感想はまたあとで更新させていただきます。



おすすめ度:☆☆☆☆☆+α



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2011年2月27日
追記:感想でございます。



1月下旬に『ブラックスワン』鑑賞後に、初めて席から立ち上がれなくなったという経験をしたアタクシ。その後2月中旬にも再び劇場に足を運び、2回目の『ブラックスワン』鑑賞。同じ映画を観に劇場に複数回足を運ぶのは、今回が初めてでございます。

もう、何から話したらいいのか…。映画のもつパワーがとにかくすご過ぎるのです。話がショッキングだとか映像がすごいとかそういう表面的なものではなく(いや、話の内容は十分ショッキングなのだけど)、この映画が持つ作品としての力に圧倒されてしまったのです。そして、観終わってエンドロールが流れる中、立ち上がれなくなった客席で、どういうわけか涙が溢れて止まらなくなったほど。こんな経験、初めてでございます。


もう、何を置いてもナタリー・ポートマンでございます。ナタリーの作品って、やっぱり私の中では『Leon』がものすごく印象づよくて、デビュー作とは到底思えない演技力に存在感、そしてまだ12~13歳(撮影当時はもっと若い?)だというのに「これが私よ」という独自の空気を見にまとっていて本当に衝撃だった。でも、その後の作品って実はあまり観ていなくて、『Vフォーヴェンデッタ』とSFが好きでもないのに、どういうわけか劇場で見ることになった『スターウォーズ・エピソード1』、他には『ズーランダー』のカメオとか、個人的には全然楽しめなかった『クローサー』とか、その程度。それでも気になる存在であったのは変りなく、去年11月下旬に初めて『ブラックスワン』の名前を知り、ポスターを見た時の衝撃といったら!話の内容なんか全くもって知りませんでしたが、「このポスターデザインから感じた直感が正しければ、この映画が面白くないはずがない」とある種の確信すら感じたほど。予告編を見ないうちに、こんなに映画の公開を待ち焦がれたことってこれまでに、少なくともここ数年は無かったんじゃないかと思います。

そしてやっとのこと1月下旬に劇場に足を運び、映画開始3分でもう完全にアタクシ、ノックアウトされました。劇場で素晴らしい映画に出会えた興奮。映画好き(映画館で見るのが好きな人)なら分かっていただけるでしょう。

この映画、ナタリーのプロ根性と才能が爆発しています。「バレリーナ役」なんて言葉では失礼に当たるのではと思うほど、彼女の体はまさにアスリート。開始数分で映される彼女の背中、体格、姿勢。もう、女優が演じているという枠を完全に超えております。そしてそれも納得。Bafta(イギリスのアカデミー賞)で主演女優賞を受賞したのですが、その代わりに壇上に現れた映画関係者曰く、撮影前の1年間毎日8時間のトレーニングに励んでいたとのこと。もう、脱帽という言葉以外見つかりません。現に映画の中のバレイシーンの8割はナタリーが自分で演じたとのこと。映画の中のナタリーは、もうナタリーではなく完全に「ニナ」なのです。


とにかく、ナタリーが素晴らしいのです。「うまい」とか「素晴らしい」という言葉では賞賛し切れないほど。バレリーナとしてはもちろん、ニナの気持ちの揺れ、彼女が押し殺してきた恐怖心、トラウマ、葛藤がナタリーの演技から見事なまでに伝わってくるのです。それも見事な塩梅に。

映画を見終わったあと、一緒に観に行った友人と、「主演女優賞のみならず、もうドキュメンタリー賞とか長編アニメとか一切合財を彼女に与えたいくらい!あ、でも主演男優賞はコリンにとってもらいたいし、作品賞は『英国王のスピーチ』に取ってもらいたい気持ちは変わらないんだけど。なんなら今後10年間、この映画の演技で主演女優賞を受賞を約束したいくらいにすごかった!」と興奮冷めやらず映画館の外で30分ほど話し合ったほど(アタクシ達、何様?)。そしてDVDで鑑賞するときは、尊敬と賞賛と敬意を表すためにも、レンタルとか海賊版じゃなくて(当たり前だけど…汗)、正規の値段を支払って購入したい、と二人で固く誓いました。どうでもいいでしょうけど。

映像もうまくCGが使われていて、暗くて恐ろしくて美しいのよ。本当のおとぎ話の世界のような。アタクシのお気に入りはタイトルにもなっている『ブラックスワン』の踊りのシーン。Baftaの授賞式の時の作品紹介でそのシーンが流れたので、テレビの画面で見たのだけど、もう、皆様。絶対に劇場の大きな画面で見てください!もう、ぜっんぜん違いますから!!!

バレイを題材にした映画というと、実はこれまであまり見たことがなくて『センターステージ』くらいかも。この映画の見所はバレイシーンはもちろん、スリラーとしても楽しめるし、そしてナタリーの演技はずば抜けています。

唯一、たったひとつだけ個人的ながっかりはというと、ベス(映画内でのダンサーのひとり、ウィノナ・ライダー!)の髪型。なんでそのカットなんだよ?と。でも、ウィノナが久々に大作に戻ってきたというのも嬉しいです。

日本での公開は2011年5月からだそうです。もう、絶対に映画館で見てください。アタクシ、このままだと映画館で3回目の鑑賞に足を運びそうです。


おすすめ度:☆☆☆☆☆+α(気持ち的には星10個!)

「パブリック・エネミーズ ~Public Enemies~」

2009年08月23日 | 映画~は~
2009年  アメリカ映画


ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル主演のクライム・フィルムです。監督はマイケル・マン。

舞台は1930年代のシカゴ。ジョニー演じるマフィアのボス、ジョン・ディリンジャーとベイル演じるFBI捜査官の攻防を中心に、当時のシカゴで横行していたマフィアによる犯罪、しかし大衆からは支持を得ていたと言う彼らの存在を描いた作品です。ベースになっているのはノンフィクションの書籍。映画の登場人物も実際に存在した人々です。


私の感想を単刀直入に言いますと・・・長い。とにかく、長い。2時間以上の作品なんです。まぁ、面白ければ長さなんか関係なく楽しめるんだけど、正直途中で飽きてしまったのよ。実在の人物の物語を映画化することの難しさは十分承知しているけど(例えば『レイ~Ray』とか)、今回もほかの例に漏れず、でした。

この映画見たのは6月なんですが、もうほとんど内容を覚えてないくらい。そのくらい印象に残ってないんです。Wikipediaで確認するまで、クリスチャン・ベイルが出ていたこと自体もすっかり忘れていましたもの。それにしても最近のクリスチャン・ベイルはよく出てますね。もうすべての映画に出てるんじゃないかと思うほど、「またかよっ!」と突っ込みたくなるくらいに出てる。この前に感想を挙げた『ターミネーター4』にも出てるし。

映画の冒頭から引っかかっていたのだけど、配役もどうなんだろう…と。クリスチャン・ベイルがマフィア役だったらまた違った面白さがあったんじゃないかと思いました。クリスチャン・ベイルってこれまであまり悪役のイメージがないし、禁酒法時代の陰のあるマフィア役なら新鮮なんじゃないかと思う。ただ、確かにジョン・ディリンジャー本人の写真を見てみると、ジョニデが演じた彼と見た目が似ていると言えば似ているんだけどさ。


ジョニー・デップは、どのシーンを見ても「ジョニー・デップ」。マフィアなんだけど、なんだか悪そうにも強そうにも見えなくて、マフィアのボスとしての威圧感や存在感が薄いように感じました。娘が生まれてから『パイレーツ…』のような大作に出るようになったけど、個人的には昔のように小規模な癖のある映画の方がジョニー・デップにはあっているような気がします。彼の個性や存在感って独特で、正直なところなぜ彼が大衆受けするのか私には不思議でしょうがないんです。彼のことが嫌いとかそういうことではなくて、もっとわかりやすい男前とかかっこよさを持った俳優っていっぱいいるのに、なぜ彼がもてはやされるんだろう、と。それこそ好みなんて人それぞれ、と言われればそれまでなんですけど。彼の色を如何なく出せるのは、大衆作品よりも万人受けしそうに無い偏りのあるようなものの法があっているんじゃないかと個人的には思っています。前にジョン・キューザック主演の『1408号室』の感想を書いたとき、この映画はジョニー・デップ主演で見たかったと書いたら、「お前はただのジョニデ好き」という批判コメントが届いたことがあったけど、ああいうちょっとマイナー向けの、ちょっと変わった職業(まぁ、マフィアも十分普通ではないんだけど)や性格の人物を演じるのは抜群にうまいと思うのです。『シザー・ハンズ』や『ギルバート・グレイプ』とか。ここ数年だと、シャーリーズ・セロンと共演した『ノイズ』とか。


と言うことで、あんまり映画の内容には触れて無いので感想にもなっていませんが、私はあまり楽しめなかったと言うことです。会えて印象に残っている点を上げるとするなら、ジョニー・デップの相手役の女性はものすごく美しかったでと言うことでしょうか。ジョニー・デップは現在製作中で、お得意ティム・バートンとコンビを組んでいる『不思議の国のアリス』に期待しています。(『不思議の…』の中のジョニデの特殊メイク見た方いらっしゃいますか?期待が膨らまないわけが無い抜群のメイクで、絶対彼も楽しんでるはず)


パブリック・エネミーズの日本での公開は、2009年12月からだそうです。



おすすめ度:★


追記:2009年8月24日に一部文章を変更

「ヴェラ・ドレイク ~Vera Drake~」

2009年03月11日 | 映画~は~
2005年 イギリス映画


50年代のロンドンが舞台。夫と2人の子供たちと慎ましやかに生活する労働者階級の女性ヴィラ。働き者で穏やかな性格から誰にでも好かれ、信頼される彼女。そんな彼女が突然逮捕される。金儲けでもなんでもなく、ただ困っている若い女性を助けてあげたいがために行っていた中絶行為だが、医師免許を持っているわけでもなく、法に触れたのだ。



公開当時、イギリスで賛否両論を引き起こしたと言うこの映画。被告となったヴィラの有罪が確定したところで映画は終わります。この映画に心が救われるような要素は皆無です。どこまでも暗い。でも闇雲に見ている側を落ち込ませようとしているのではなく、これが当時の労働者階級の人々の生活。わざと明るく描いたり、過剰に暗く描いているのではなく、淡々と、当時の空気や彼らの生活、人生の辛さを描いた作品。…と解説してくれたのは、一緒にこの映画を見ていたイギリス人。私もこの映画を一人で見てたら、「何が言いたいんだ」とその意図を汲み取れずにいたと思います。


中絶を選んだ若い女性たちというのもいろいろで、快楽のためにセックスをし子供を宿して、中絶なんかいとも簡単に考えている中産階級の娘もいれば、生活のための売春が原因だったり、男性に強制されたと言う男尊女卑時代を象徴した背景も。ヴィラは、彼女らから一銭たりともお金を受け取ることなく、ただ「困っている若い女性を助けてあげたい」という一心で、誰もやりたがらないこの「仕事」を始める。


決して裕福ではなく、日々の生活だって余裕があるわけでは全くない。一生懸命働き、その日その日を生きる彼らの生活。息子は仕立て屋として腕が立ち、娘の結婚が決まったところだった。家族がその幸せをかみ締めている最中に、突然警察が現れる。

調べの中で友人だった女性が、彼女が中絶を施した女性やその家族から金銭を受け取っていたことも発覚した。彼女には一銭だって入ってはこなかったのに。押収された証拠品の中には、チーズおろしとピンク色の石鹸(殺菌効果が高いと言われる当時特有のものらしい)。若い女性たちに優しく親身になって行った結果が逮捕、そして有罪。



公開当時の論争の様子を知る由はないが、金儲けでも何かやましい理由があるわけでもなく、ただ女性たちを助けたいと言う思い、そして実際に救われた女性たちが大勢いたこと、それなのに判決は全く容赦のないもので救いようのない話の展開に賛否が分かれたのではないかと思う。


ヴィラを演じた女優(イメルダ・スタウトン)の演技もすばらしく彼女が演じたヴィラの「人柄」が更に見ている側を落ち込ませる。「どうにかしてヴェラを救うことはできないわけっ?」と言葉にできないほどのやきもきとした感情に襲われます。このやるせなさ。救いのなさ。でもこれが、当時の労働者階級の人々の現実。この女優さん、たくさんのイギリス映画に出演している方なのだそうですが名前を知りませんでした。『恋におちたシェイクスピア』に出ていたと聞いて「ああ、あの人っ!」と衝撃です。ほかにも『チキン・ラン』で声優としての出演や、『ハリー・ポッター』とものすごく出演作が多いです。


たった今ウィキペディアを見るまで知りませんでしたが、この映画、マイク・リーの監督作品だったのですね!この映画は、マイク・リーの子供のころの記憶や思い出と結びついているのだそう。実は最近、マイク・リーの作品で気になってるものがあってDVDを買おうかどうか迷っていたところだったのです。彼の作品は『秘密と嘘』しか観たことが無いのですが、何せ中学生、高校生の時だったので楽しめた記憶も物語の内容もさっぱり覚えていません。もう一度観てみたいなぁ。そしてさらに驚いたのが、この映画が日本で公開されていたと言うこと!マイク・リーの作品なら、小さい映画館で上映されていたのでしょうね。たまたまテレビでやっていたので見たのだけど、この映画の名前も全然きいたことありませんでしたわ、あたくし。



見ていて楽しい映画ではないし、見るタイミングを選ばないと気持ちが落ち込んで大変なことになるような作品。それでもこの映画がいいと思うのは、イギリスの社会に生きる人々の生活の一編を、飾り立てることなく正面から見据えた作品であると思うから。私たちが普段テレビで目にする、おしゃれなロンドンの街並み、王室の生活とはかけ離れた、しかしこれも本当のイギリスの一面であることを認識するのに役立つ一本だと思います。



おすすめ度:☆☆☆★


『バベル ~Babel~』

2009年01月25日 | 映画~は~
2006年 アメリカ映画


どこでこの映画の感想を読んだのか聞いたのか、その情報の出所は覚えていないけど、「絶望的な気分になる」と言っていたのがとても印象に残っていた。そういう映画の場合、あくまで私個人の場合だが、「見るタイミング」を誤ると、その後自分が落ち込んでなかなか回復できなくなったり大変なことになる。シリアスな映画や考えさせられる映画の場合、自分がすでにちょっと元気がないときだったりするともう大変。その後の生活に影響を及ぼすほど落ち込んだりする。大袈裟じゃなくて、これ、本当に。

だから、「絶望的な気分になる」という感想を聞いて、「これは気をつけねばいけない作品だ」と警戒していた。世界中で起こった、一見何の関係もないような出来事が、本人たちも気づかぬところで繋がっているという内容の映画。その中で東京も描かれていて、役所こうじと菊池凛子の演技の評判が良いとも聞く。ものすごく見たい。でも結局「うまいタイミング」が見つけられず、映画館には行かなかった。



そして先日、やっといいと思えるタイミングがめぐってきた。2年間蓄積された期待を裏切らないすばらしい映画だった。そして少なくとも「絶望的な気分になる」映画ではなかった。いくつかの物語が同時進行で進められ、皆がどこかで繋がっているという作りは『ラブ・アクチュアリー』『クラッシュ』などと同じ手法なのだけど、『バベル』ではそのつながりをお互いに認識していない。日々のちょっとした出来事が、別の国での大きな出来事に繋がっているのだけど、そのつながりが本人たちには見えていない、と言うのがものすごく皮肉で同時にものすごく現実的。


出演している俳優陣はものすごく豪華で皆主役級なのだけど、話がそれぞれに独立しているからかお互いの個性を殺しあうことなく1つの映画の中で共存しています。やっぱりお気になるのは菊池凛子さん。演じた女の子の役柄の過激さも当然あるのだけど、台詞が少ないのにどんどん彼女の世界に引き込まれていきます。10代の女の子の飾り気の無い素直な感情が、台詞が無くとも表情から存分に伝わってきました。

最近特に、日本が舞台の一つとして描かれる作品が多いですが、この映画は結構うまく描けていたんだじゃないかと思います。ただ、ファーストフード店と思われるお店で、茶碗と箸で食事をしている光景は無理やり日本らしさを埋め込んだ感が強くて「ハリウッドの中の日本」を抜け出せていないように感じましたが。

ウィキペディアでこの映画についての項目(2009年1月25日現在)を読みましたが、菊池凛子さんが聾者を演じたことに関しての反対の動きがあったんですね。ここ読むまで知りませんでした。手話と聾者の認識にマイナスの影響を与えると言う理由だそうですが。確かに凛子さんの演じたチエコはの行動はものすごくショッキングだけど、聾者全員に彼女のイメージを重ね合わせて見るかといわれると、私に関してはそういうことはありません。ただ、そういう障害を持った人が身近にいない人、もしくは少しでも偏見を持っている人にはそういう感覚を持たれる可能性が無いとは言い切れないな、と思いました。少なくとも私はこの記事を読むまで、そこまで想像できませんでしたが。ただ、彼女の演技はすばらしかったことは事実。そしてこの映画に描かれた聾者の女子高生たちの日常を見ることで、今まで考えたことの無い視点だったので考えさせられたし、そういう現状があるということに気づかされよかったと思います。


リチャードがベビーシッターの女性を電話で罵るところとか、スーザンが彼に再び心を開き始めるところとか、孤独な心を抱えた女子高生の葛藤やそれゆえの行動とか。人間の美しさや醜さや、滑稽さ。そういう素直な感情の側面をうまくえがいた作品だと思いました。

リチャードとスーザンの面倒をずっと見てくれたツアーガイドにお金を渡そうとするシーン。結局彼は受け取りませんでした。メキシコ人女性が共に迷子になったアメリカ人の子供たちを懸命に救おうとするシーン。チエコと父親が向き合うシーン。それのシーンを見たとき、確かに暗いし重いし、絶望的な面も描いた映画なのだけど、実はとても前向きなメッセージがふくまれた作品であると感じました。




おすすめ度:☆☆☆☆


「バスキア ~Basquiat~」

2008年12月18日 | 映画~は~
1996年 アメリカ映画

学生のときにDVDでみて、すごく楽しんで心躍った覚えがあるのだけど、久しぶりに見てみたら・・・あれ?全然感覚が違う。ここまで違うのも珍しいくらい。

フランス出身のバスキアはNYでアーティストとして成功しようと夢見る。公園にダンボールを置いてその中で眠り、なじみのカフェではソースをテーブルにぶちまけてスプーンや手を使って絵を描く。そこで出会ったジーナと恋人同士になるが、成功を手に入れていくにつれてジーナとの間に溝ができ(完全にバスキアが悪いんだけど)、自分の作品をめぐって人々が利権を争うようになり、信頼を寄せていたアンディー・ウォーホルが亡くなり、そして自分もオーバードースが原因で早死。

実在の芸術家の自伝映画です。このバスキア役の俳優さん(ジェフリー・ライト)が、抜群なのよ。そのものなの。いや、バスキア本人のことは知りませんけど、「演じている」と言う空気が無いの。この人、先日見た『007 慰めの報酬』に出ているらしいんだけど、いたっけ?・・・いや、いたっけ、というより映画の内容もほとんど覚えていないので思い出しようがないんだけど(殴)。恋人であるジーナ(クレア・フォーラニー)のきれいなこと。当時のNYだって人種差別はあっただろうから、バスキア(黒人)とジーナ(白人)カップルってそれだけで珍しかったんじゃないかと思う。

アーティスティックと言えば聞こえは良いけど、要は変わってるのよ、バスキア。だってテーブルにソースを塗りたくって、そこに指で絵を書くのよ。しかもまだ無名のとき、普通の人に受け入れられるわけが無いでしょ?でもジーナは受け入れてくれるのね。彼女がすごく魅力的なのよ。包み込むような優しさがあって、だからといって母親と息子のような関係ではなく、若いんだけど精神が成熟していると言うか。でもバスキアは自由奔放(+ジャンキー)で、ジーナを傷つけてしまうのね。そら離れていくわよ。


前回見て私がものすごく楽しめたのは、たぶんバソキアが生み出す絵に心うたれたんだと思うのよ。私の中には存在しない絵ばかりで、「こんな才能がいたの!?」と言う衝撃だったんだと思う。だから物語の内容は全然覚えてなかったんだけど(あ、毎度のことですが…)、バソキアのたたずまいとかアートが楽しくて新鮮だったんだと思う。10年後の今見てみると、自分の好きな芸術の傾向が前とは違うのね。それに自分の世界に無いあらゆるもの、例えば薬物だったりモダン・アートが生まれてくると言うその現場だったり、バスキアのむちゃくちゃだけどかわいらしさのある人柄だったり、そういうものを世の中の一部として吸収したかったんじゃないかと思う。それはドラッグを認めるという意味ではなく、「世の中にはそういう人もいる」というケースを自分の中に蓄積していく時期で、知らない世界を知りたくて仕方が無かったんだと思う。『バスキア』は私の知らない世界の話で、どう近所を探してみたって見つからない環境、出来事、状況だったから、学生だった私はそれが楽しかったんじゃないかと。


あらためて作品を見てびっくりしたんだけど、出演者がすごく豪華なの。
アンディー・ウォーホル役がデヴィッド・ボウイ。これがまた胡散臭いのよ。そこがいいんだけど。アンディーのマネージャーがデニス・ホッパー。バスキアのバイトの同僚が、ウィレム・デフォー。この映画の中でウィレム・デフォーに一番びっくりしたかもしれない。『プラトーン』の嫌な奴の役とか、マドンナと共演した『ボディーヒート』という3流映画とか。灰汁が強くてクセのある映画の出演が多いイメージなんだけど(バスキアも十分クセはあると思うけど)、この中のウィレム・デフォーはさわやかなの!たぶん映画の中で誰よりもさわやか。しかもちょっと髪が長めなのね。そしてアーティストの卵だったりするのよ。いやー、驚いたわ。ほかに、親友役にベニチオ・デル・トロ、ゲイリー・オールドマンやコートニー・ラブとか。この人はそのままの役だったけど。


・・・と長々と書きながら、実はちょっと退屈でした。映画の中に入り込むのが難しかったです。でバスキアという芸術家の存在や、現代アートへのとっかかり、それを取り巻く人間模様を知るにはいい映画かとおもいます。


おすすめ度:☆☆★



「フォー・ウェディング ~Four Weddings and a Funeral~」

2008年12月18日 | 映画~は~
1994年 イギリス映画

ヒュー・グラントとアンディー・マクダウェル主演のコメディーです。4つの結婚式と1つのお葬式を経て繰り広げられる、ヒュー演じるイギリス人青年チャールズとアンディー演じるアメリカ人女性キャリーの恋愛模様。日本の題名では『フォー・ウェディング』となっていますよね。英語の題名を知るまで、この「フォー」って数字の4の意味の「Four」ではなく「フォー」だと思っていました。そう、結婚するために、とか結婚に向かって奮闘する物語だと思っていたのよね。実際は4つの結婚式という意味でした。

私はこの映画を今回初めて観たのですが、テンポがよくてイギリス風味の笑いがちりばめられていて面白かったです。イギリス人、特に女性はこの映画が好きという人多いんじゃないかな。


私が初めてイギリスに来たのは2004年なのだけど、アンディーはイギリスのテレビCMによく出演していて、ちょっと驚いた覚えが。最近は彼女が映画に出ているのを全然みないと思ったら、久しぶりに見た彼女は化粧品のCMのなか。そのメーカーのキャラクターのようで、もう出ずっぱり。もちろん2008年現在も彼女のCM続行中。これってやっぱり『フォー・ウェディング』効果だと思うんだけど、実際のところどうなんだろ。


さて映画の内容はと言いますと、シャイなイギリス人青年と、なんだか大胆なアメリカ人女性がいくつかの結婚式(+お葬式)で何度も出会い、月日を経て晴れてカップルになるまでの物語。初対面でお互いに好意を持ち、ベッドイン。初めはお互い遊び。女性もすっきりしたもので後腐れなし。しかし2度、3度と友人の結婚式で再会し、毎回お泊りするにつれて、ヒューは彼女に思いをはせるように。でも彼女はするりと自分の元を離れて、別の男性と結婚。ヒューは元彼女との結婚を決意するのだけど、式の直前に彼女がだんなと別れたことを知る。

映画がコメディーで、アンディーはイギリス人女性とは違った魅力を持つアメリカ女性。確かにすごく輝いているのだけど、冷静に彼女の存在を考えてみるとこれがやな女なのよ。ヒューは完全に都合のいい男。これが男女の立場が逆だったら、映画になり得ないくらい。ヒューのことは完全に遊び。彼が自分に好意を持っていることも絶対わかっているはず。そうじゃなかったら、婚約者がいるのにヒューを誘ったり、ヒューの結婚式直前に「実は別れたの」なんて言わないわよ。魔性の女なのよ。絶対に恋愛においてライバルにはなりたくないタイプ。私個人としては、友達付き合いするのも結構きついわ。友達いるのかしら、この女。


でも映画って怖いわよね。こんなに恐ろしい女なのに、映画の中ではすごく魅力的なのよ。アンディーはこの役を勝ち得て、その後安泰だものね。魔性の女を演じたはずなのに、化粧品会社のキャラクター、ゲット!出演した映画のイメージでその後の仕事がうまくいかなくなることだってあるわけじゃない?ディカプリオはタイタニックのあと、そのイメージを払拭するのに何年もかかって苦労していたし。アンディーの場合は、人々が抱くイメージの上にうまく乗っかったとでも言うのかしら。うまい方法よね。

なんか、映画の感想になってないわね。面白かったわよ。ええ、とっても。主演の二人のみならず、周囲を取り囲む人々も個性豊かで、見ていて飽きない作品。若いヒュー・グラント、必見です。人気出るの、わかるわ。



おすすめ度:☆☆☆


いい画像がみつからなかったので、またのちほど。