映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「ドリームガールズ ~Dreamgirls~」

2009年05月18日 | 映画~た~
2006年  アメリカ映画


やっと観ました。劇場で公開されていた時からずっと見たかったのだけど、今まで機会を逃してきたのよね。

モータウン・ミュージックの創成期から音楽のスタイルを少しずつ変えていく時代の流れを、3人の女性歌手を中心にその業界の当時の様子を描いた作品。


登場人物の役柄は、実在のモータウン音楽の歌手やプロデューサーたちがモデルになっているそうで、思い浮かぶ人物像がチラホラ。ミュージカル映画なのだけど、ミュージカル映画が苦手な人でも音楽好きなら楽しめる作品だと思います。そういうあたくしも、実はミュージカル映画苦手。確かにこの映画を見ているときも、「いや、今歌わんでも」と思うところは数箇所あったんだけど、それはしょうがないよね。だってミュージカル映画なんだから。それでも、ケイト・ハドソンやビヨンセ・ノウルズの歌とステージが盛りだくさんで、見ごたえ十分。エディー・マーフィーの器用さには、本当に驚かされます。なんか、この映画の中の役柄、いろんな意味で彼にぴったりで言いキャスティングだなぁと妙に納得です。ほら、メルB(スパイス・ガールズね)との間に子供いるし。


自分たちの成功のために、ケイト演じるエフィーを「あんたが私たちが抱える問題のガンなのよ!」と皆でよってたかって彼女をなじるシーン。ものすごくアメリカだなぁと感心したわ。確かに彼女の意思の強さは誰もが受け入れられるものではなくて、時に反発を招くと言うのもわかるんだけど、より華やかな外見を求めるために切った、歌のうまさよりも誰もが受け入れやすい歌声を、という彼らの「成功」のために理不尽な選択を迫られた彼女の気持ちや、彼女が強い態度を取ってしまう理由は無視。まぁ少しは考えたんだろうけど、彼女を囲んでなじる(しかもべらぼうにうまい歌声で!)のは、うーん、日本人とは違うかも。イギリス人とも違うような気がする。「ショウビズの世界だから」と言われたらそれまでなんだけどさ。

でもただ華やかなだけでこの映画は終わらなくて、映画が進むにつれて登場人物たちの考え方や性格が変わっていく様も描いているところはいいなぁ、と思います。

はじめはただ3人のうちの1人だったビヨンセが、どんどん磨かれて美しくなっていくのね。本当にこの人、美しい!驚きの美しさです。ケイト・ハドソンの歌唱力の高さは、誰もが納得で、そしてこの映画の中の楽曲もすばらしい。ある友達は、この映画を劇場で見た後、その足でサントラを買いに行ったといっていたけど、その気持ち今ならわかります。

ケイトのお兄さんCC役の彼(キース・ロビンソンと言うらしい)、うまかったなぁ。



おすすめ:☆☆☆☆

「アメリカン・ヒストリーX ~American History X」

2009年05月18日 | 映画~あ~
1998年  アメリカ映画


10年位前に見て、今回2度目。とにかくエンディングが衝撃的で、いつかもう一度見てみようと思っていた作品。2回目ということもあって物語の概要は大体覚えていたし、今回は俳優たちの細かな演技を堪能できました。


物語の舞台はアメリカ。高校生だったデレクは、黒人に父親を殺されたことをきっかけに、異常なまでに人種差別主義に傾倒していく。ある日自分の車を盗もうとした黒人を殺害し、刑務所に3年間服役。その間弟のダニーは、デレクが所属していた白人至上主義集団に属し、ヒトラーを敬愛。兄の姿を追い求め、尊敬していたからこそ彼を真似たはずだったが、出所したデレクは全くの別人になっていた。


主演はエドワード・ノートン。弟役にエドワード・ファーロング。エドワード・ノートンを初めて見たのは、リチャード・ギアと共演した『真実の行方』。このときの役も衝撃だったわ。そして抜群に演技がうまくて、役柄の特徴を演じ分けられるのよね。演じられる役柄が幅広いだけでなく、同じ人物の中のいろんな側面を明確に表現できる。調べてみてわかったけど、この『真実の行方』が彼の映画デビュー作で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたそう。あの演技なら、納得よ。演技力の高さから、芸歴長いんだろうなと思っていたけど、映画デビューが1996年。この『アメリカン・ヒストリーX』が1998年だから、デビュー2年目であの存在感と演技力かぁ。あそこまで様々な役を演じきれる俳優って、なかなかいないわ。

彼本人の顔の作りは「優男」だと思うのだけど、それこそ今回のアメリカン・ヒストリーXで演じたDerekのような優男とは正反対の男も演じているし、それに違和感が全く無い。この映画の中だけでも1人の人物の3つの表情を、もう見事としか言いようの無いほどに演じ分けていて、その怪物振りには脱帽です。服役前・出所後、そしてデレクの高校生時代もエドワード・ノートン自身が演じているんだけど、そのシーンを初めて見たときは「似てるけど、いやー、若い俳優を使ってるんだな」と思ったほど。高校生役さえも違和感が無いの。なんかすごすぎて、すごい以外の言葉が出てこないくらい。黒人を殺害した後の彼の瞳孔の開いた「イッちゃってる」表情の恐ろしいこと!!!


そしてエドワード・ファーロング!最近見ないわよね。ターミネーター2で一気に知名度を上げて、当時は日本の女子中高生の間でもアイドルとして大人気だったのを覚えてるわ。彼がカップヌードルだったかインスタント・ラーメンの日本のCM(ホットヌードルでした)に出てたのを覚えてる方、います?それに、日本語でCDなんかも出しちゃったりして。同じクラスの同級生の女の子、買ってたもん。私はなんか恐ろしくて聴けなかったけど。ターミネーター2のあとしばらくして彼の姿を見たのが、今回のこの作品。彼も、ただ見てくれがいいというだけではなくて、演技がうまいし雰囲気があるというのを再確認しました。10代の男の子なんだけど、若さや初々しさではなく何処と無く陰りがあり、それと同時に透明感もある。アイドルはアイドルなんだけど、独特だったなぁと思う。最近は映画に出てるのかしら?最近の彼を見たことがないので今はどうなのかわからないけど、子役として本当にうまかったなぁ、としみじみ思うわ。


この映画を見ながら、思い出した映画が2本。『This is England』そして『クラッシュ』。10代の子供をある種「洗脳する」と言う意味で、ダニーが白人至上主義に傾倒していく様が、『This is…』の少年・・・に。『クラッシュ』はこのブログに感想をあげていないけど、こちらもアメリカの人種差別の負の連鎖を描いた作品です。これもものすごく衝撃的な映画で、私の感想を一言で言うなら「Helpless」。救いようが無い。映画が悪いとかそういうことではなくて、描いている内容がね。映画としてはいい作品です。でも何度も見たくはない。


話を今回の作品に戻して…。デレクがあれほどまでに人種差別主義に傾倒していったきっかけは彼の父親の死なのだけど、そうなっていったのは家族の中で彼だけなのね。そこにはやっぱり理由があるのね。アメリカの人種差別問題の根深さ。映画の中ではさらっと触れられているんだけど、その「さらっ」とほんの短いシーンの中に、その根深さがしっかりと描かれていて印象的です。刑務所の中の人間関係、「ああ、どの世界も一緒なんだ」と妙に納得させられたり。デレクは素直で、利害関係のためにその主義に走ったわけではないからこそ、深く深くそこにはまり込んでしまった。3年間も待っていたデレクの彼女の、彼に対する態度の豹変振り(理由はデレクが変ってしまったからなんだけど)は、その主義を主張する集団の「浅はかさ」がよく表現されているように思います。

そうそう、同じ集団に属しているふとっちょがいるんだけど、彼って『タイタンズを忘れない』に出てた彼かしら?どうやらEthan Suplee(イーサン・サプリー)と言う俳優さんだそう。タイタンズでは黒人差別が当たり前の時代に、誰よりも早く黒人チームメイト(アメフト)と打ち解ける役柄なのよね。間逆の役どころで面白いです。



おすすめ:☆☆☆☆★