映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

「ラブリー・ボーン ~The Lovely Bones~」

2010年04月12日 | 映画~ら~
2009年 アメリカ映画

もう数ヶ月前になりますが、映画館で見てきました。前回の予告にも入っていない映画の感想のアップですが、気にしない気にしない。

14歳のスージー(シアーシャ・ローナン)は学校帰りのある日、近所に住むジョージ(スタンリー・トゥッチ)に殺害される。しかし警察の捜査にもかかわらず見つからない犯人。家族は苦悩にさいなまれ、それぞれがストレスを抱えながらの生活を余儀なくされる。スージーは天国への道すがら、自分が亡くなったということを少しずつ受け入れつつ、この世に残された家族や犯人たちの生き様を見つめ続ける。

ベストセラー小説の映画化だそうです。この映画の批評が新聞に載っていたのですが、イギリスでは大方「原作のファンにはがっかりな仕上がり」ということでかなり酷評されておりました。あたくしは原作読んでいませんし(毎度のことですが)、予告編を見たときから面白そうだったので見にいったのでした。

ものすごく独特なつくりの映画です。監督は『ロード・オブ・ザ・リング』(未見です、あたくし。何度かチャレンジしたけど、あたくしにはファンタジー過ぎて)のピーター・ジャクソン。特にスージーが天国?(それとも天国への途中の世界?)にいるシーンは、ファンタジー全開!同じファンタジーと言っても、ティム・バートンよりも毒味がなくて、もう少しガーリーな雰囲気が漂っています。それは14歳のスージーの世界に合わせたつくりなのでしょうが、映画の中のスージーの持つ優しくて、透明感があってかわいらしさを持ち合わせているイメージにぴったりなのです。そのファンタジーの中ではとにかく楽しそうで、むごい殺され方だったのだからせめてあの世ではこのくらい楽しいことが待っていてくれないと、スージーのみならず見ているこっちも救われないわ…とその表現に妙な納得をしてしまったり。

かなりファンタジーの要素が入った映画であると言えると思うのですが、何せ基盤となっているのは14歳の少女の殺害、そして家族の苦しみ。のうのうと生きている犯人の姿。正直かなりキッツいのです。犯人役のスタンリー・トゥッチの憎たらしさ、気持ち悪さといったら!もちろん彼の演技力の高さ、キャラクターデザインやメイクによる功績ですが、本気で胸糞悪くなるくらいこの犯人のキャラクターが立っています。彼のおかげで、2時間の映画、見ているのがかなり辛かったです。苦痛を感じるほど。映画としてよかったと思うのですが、また見たいかといわれたら、無理です。どんなに色合いを明るく、天国の様子を楽しげに描いていても、心躍る物語ではないのです。

主人公スージーを演じるシアーシャ・ローナン、ものすごくよかったです。演技がうまいと言うのはもちろんなのですが、独特の存在感と同時に透明感があり、さらにかわいらしい。容姿もとってもかわいいのだけど、視覚的なかわいさのみならず、内側からにじみ出るかわいらしさがあるのです。彼女が主人公を演じたからこそ、私はこの映画を見るのを苦痛に感じたのかもしれません。もちろん、よい意味で。こんな素敵なスージーが殺されなければならないなんて、という憤りによるものです。調べてみたら、彼女まだ15歳ですが、すでにアカデミー賞助演女優賞にノミネート(『つぐない』にて。当時13歳だったそう!未見)された経験があるのですね。存在感や演技力の高さに納得です。

また、脇を固める俳優陣が個性豊かで、父親にマーク・ウォールバーグ。父親役ができるまでになったのね、マーキー・マークが!母親役がレイチェル・ワイズ。私は彼女がものすごく好きなのですが、実は映画を見ている間ずっと、ローズ・バーン(テレビドラマ『ダメージ』や映画『サンシャイン』に出てた女優)だと思い込んでいました。だって、暗そうな感じが似てたんだもの。祖母役がスーザン・サランドン。スーザンのビッチな派手好きなおばあちゃん役、意外に合っていてびっくり。全く違和感が無い。これまでスーザンのビッチな感じの役ってあまり記憶が無いのですが、さすがです。

ほかにも、スージーが天国で出会う女の子たちがやたら個性的で、あまりの個性の強さに「なぜこの子をキャスティングしたんだろう」と疑問にさえ思ったりもしたのですが、映画のなかである種のアクセントになっていて、見終わってみると「あれも有りだわ」と感じたりもしました。

面白いつくりの映画だったけど、二度と見たくないです。見ているのが辛すぎるんだもの。
でも見ていない方はぜひ。


おすすめ度:☆☆☆☆


「ラーメンガール ~The Ramen Girl~」

2010年01月30日 | 映画~ら~
2008年 アメリカ映画


ブリタニー・マーフィー主演のコメディです。ポーランド人の友人からDVDを借り、鑑賞しました。なぜなぜポーランド人の彼女がこの映画を選んだのかは謎ですが、この映画なかなかよくできていました。


アビー(ブリタニー・マーフィー)は日本で仕事をしている恋人を追って来日するが、あっさり振られてしまう。傷心の彼女を癒したのは、アパート近くにあったラーメン屋さんのラーメン。初めてのラーメンはスープまで飲み干し、翌日から毎日通うように。食べた人が笑顔になるこのラーメンに魅せられ、日本語が全くできないのにそのラーメン屋に弟子入りを志願。ラーメン屋主人のマエズミ(西田敏行)の厳しい修行を受けることになる。

まず感心したのが、スタッフに日本人が大勢いるとはいえ、アメリカ資本でアメリカ人監督の作品であるにもかかわらず、描き方が日本人目線であるということ。アパートから見たラーメン屋の光景は、強風にやたらにごみが舞っていたりして不自然な感じはあるけど、それ以外はほとんど違和感を感じられないほど日本を自然に描いていて驚かされました。ラーメン屋主人が日本料理の料理人並に様々な包丁を持っていて手入れをしているシーンもあったけれど、そのくらい。

タイトルも『ラーメンガール』って、なんのひねりも無くそのままだし、思い切りB級の匂いがするし、どうなのよ…と思っていたのだけど、映画を見てこのひねりの無いタイトルがぴったりだと思いました。だって本当にそのままなんだもん。ストーリー展開も、結構ベタだし。それでもこの映画、ダレてないのよ。コメディー映画として面白いのね。

それはひとえに出演している俳優たちの演技力によるものだと思います。とにかくブリタニー・マーフィーが抜群にかわいい。彼女のイメージというと『8マイル』が一番強いのだけど、コメディーにも強いなぁと感心させられます。これまでも『アップタウン・ガールズ』や『ジャスト・マリッジ』などのコメディにも出演していたけど、彼女の出演しているコメディの中では、この映画がダントツで1番です。アビーの能天気な面、頑固な面、素直な面を一人の人間の様々な魅力としてしっかりと表現していて、さらにちょっとした間のとり方や表情の変化のつけ方にいちいち唸らされます。彼女のほかにも外国人出演者はいるのだけど、(主演女優と比べるのは間違っているけど)根本的な演技力の違いが歴然です。さらに、脇を固めている日本人俳優たちが豪華。西田敏行の頑固親父ぶりは文句なしだし、お店のお客たちの個性的な顔ぶれも抜群。

タバコをすいながらウィスキーを飲み交わすアビーと師匠のエンディング、日本人同士なら絶対にありえないんだろうけど、そこに「異文化」だから許されるというエッセンスが入っていて印象深いです。

ニューヨークでラーメン屋というのも実際にありえる話で(確か一風堂はニューヨークに出店してますよね?)、ラーメンに見せられたアビーが頭にタオルを巻いて起業するのも応援したくなっちゃいます。

この映画の後、確実にラーメン食べたくなります。はあ、インスタントラーメンでも食べようかな…。

ブリタニーといえば、昨年末に32歳で亡くなってしまいましたね。もともと糖尿病を患っていたそうで。個人的に好きな女優さんだったので、本当に残念です。



おすすめ度:☆☆☆☆

ブリタニーが抜群にいい!

「レイチェルの結婚 ~Rachel Getting Married~」

2009年11月07日 | 映画~ら~
2008年  アメリカ映画


アン・ハザウェイ主演のドラマです。主人公キム(アン・ハザウェイ)は、薬物依存のためリハビリ施設に入所しているが、姉のレイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式のために一時帰宅をする。しかし何年もリハビリ施設に入所しているキムと家族との間には溝があり、当然自分が花嫁の介添え人(メイド・オブ・オーナー)に選ばれると思っていたキムだったが、姉のレイチェルは別の友人に頼んでしまう。中毒患者である妹を信用できないのだ。


この映画の予告編を映画館で見たときの衝撃を、今でも忘れられられません。その予告編の中にいたアン・ハザウェイに、私の目は釘付けになりました。私の中のアン・ハザウェイのイメージが一瞬にして崩れ去ったほど。個人的にアン・ハザウェイはあまり好きな女優ではなかったのです。どの映画を見ても華やかで優等生で、何を見てもどんな役柄も同じ。きれいだけどそれだけ。そのうち消えていくだろうと思っていました。『プラダを着た悪魔』でも、頭がいい役のはずなのに、全然賢そうに見えなかったし(映画自体はそれなりにすきなのだけど)、「これは演技力による配役ではないだろう」と。それと前後して彼女の実生活でも彼氏が詐欺行為で逮捕とか、「やっぱり頭悪いんか…」と妙に納得したりして。女優としての奥深さを全く感じなかったのです(ああ、私ボロクソに言ってるわ…でも正直な感想です)。

それが、この『レイチェルの結婚』のなかのアン・ハザウェイはこれまでの役柄とは180度違う。同一人物とは思えないほど全く違う表情の彼女がそこにいました。私の中ではこの役が今までの彼女の映画の中で一番合っていると思います。華やかさの全く無い、むしろ汚れ役。ヤク中でセックス依存症に虚言癖まで併せ持つ最強の汚れ役です。そしてどの映画の中でも、「あたし、きれいでしょ?」とキラキラと輝いていたのに、この映画の中ではそんな星が瞬くようなキラキラ感は皆無。誰も触れられないような深い過去を背負った陰のある役に徹底的に徹していて、彼女のこの役にかける女優魂をまざまざと見せ付けられました。もう、文句のつけようが無い。各映画賞の主演女優賞ノミネート、文句なしです。


話が進むにつれ、キムの薬物中毒だけでは収まりきらない、もっと根深い問題がこの家族には潜んでいることが見えてきます。ヤク中であることが原因で起こしてしまった出来事が家族をどん底へ突き落とし、それから10年経っても彼女はリハビリ施設に入ったまま。自分を責めるけれども、ヤク中を克服することができない自分の弱さへの憤りとそれでもどうにもならないことへの無力感。もしかしたらその出来事を防げたかもしれないと自分を責め、家族から距離を置くようになった母親(デボラ・ウィンカー)。嘘だらけの妹を信用できず、責めたてる姉。それをどうにもできない父親(ビル・アーウィン)。誰もがその出来事に罪悪感と悲しみと、そして表立って触れられない後ろめたさを感じている家族の姿を、本当に丁寧に描いています。

すごく地味な作品で、暗くて、見るタイミングを間違えると落ち込みすぎてしまうんじゃないかと思うほどの作品ですが、とても丁寧に、そして実はなかなか分かち合えないけれど愛に溢れていて、いつまでも心に残る作品です。

この映画を見ながら、『普通の人々』(アメリカ映画1980年)を思い出しました。


とにかく、アン・ハザウェイの演技がすばらしいです。そして脇を固めている俳優たちもすばらしく、すべてがぴったりとパズルのようにはまった配役です。
そしてこの映画の監督はジョナサン・デミ。『羊たちの沈黙』の監督です。この映画の批評で「(監督作品の中で)『羊たちの沈黙』以来の最高傑作」評されたそうなのですが、異議なし!です。



おすすめ度:☆☆☆☆☆    抜群です。『愛を読む人』以来の衝撃です。

「恋愛小説家 ~As Good as It Gets~」

2008年09月11日 | 映画~ら~
1997年 アメリカ映画


偏屈親父が、全うな人間としてなんとか「普通に」暮らせるようになるまでを描いたお話。この映画を見るのは約8年ぶり。こんなに年月が経っているのに、今回見てもあまり感想が変わらなかったという、ある意味稀な映画でした。

偏屈親父は恋愛小説家なのですが、そんなロマンチックな話をこのおっさんが書いているとは到底信じられないほどの奇人変人ぶり。これがジャック・ニコルソン演じるメルヴィンです。もちろん映画なのでジャックは「演じて」いるはずなんですけど、私にはこれはジャックの素なのではないかという気がしてなりません。もちろん私、ジャック・ニコルソンの生い立ちや性格を知っているわけではありませんが、私の勝手なイメージの中のジャック・ニコルソンは、映画のメルヴィンのようにものすごくアクが強い偏屈親父なのです。顔からすでに「奇人オーラ」を出してるでしょ?あ、言っておきますけど、これ批判じゃないですよ。俳優としてのオリジナリティーとしてです。

演技がどうとか話の内容がどうのこうの以前に、この映画を見てジャック自体を嫌いになりそうでしたもの。私のイメージするジャックがそのままの姿で、いやそれ以上の偏屈ぶりで映画の中にいたからです。そしてこの映画の主人公メルヴィンが、まあどうしようもなくひどい男なんです。やさしさはあります。でも近くにいたら、日常生活がストレスにさいなまれそうな嫌な奴加減。わたし、絶対彼と同じアパートには住めませんし、同じレストランやカフェにも近寄れません。そのくらい苦手。

・人の飼い犬をゴミ箱に捨てる。
・行き着けのカフェでは必ず同じテーブルでないと気がすまない(先客がいるときは、彼らを追い出す)。
・お店のカトラリーの清潔性を信用していないのか、フォーク・ナイフは持参したプラスチック製。
・このお店で唯一彼と対等でいられるのはキャロル(ヘレン・ハント)だけ。
・公共の道路では人に触れないようにして歩く。
・道路の継ぎ目は踏まない。

もちろん、皆の鼻つまみ者。当然です。

そんな彼がふとしたことから隣人のゲイでアーティストのサイモン(グレッグ・キニア)の犬を預かることに。いつも潔癖症で他人には全く関心が無く、見事なまでに自分中心だった彼が、犬との生活を始めたことをきっかけに、少しずつ「普通の人の生活」や「ギリギリまかり通るかもしれない一般常識」が持てるようになっていく。


でも正直、犬との生活やカフェのキャロルとのかかわりを通しての彼の変化は、「強引」過ぎるし、稀に見せる「優しさ」は、もともとがマイナススタートなので通常以上に評価されすぎる。その優しさの形も、ものすごく危うくて、相手がキャロルやサイモンだから項を奏しているけど、私だったらそれが「優しさ」とは受け入れられない範囲のもの。とにかくメルヴィンの性格の設定が、常人の範囲を大幅に超えていて受け取りきれないんです。「映画だから」という免罪符が、この映画に関しては私にはあまり通用しない。どんな恋愛映画でも、人が結ばれるまでに「危うい」出来事が起こるけど、ドラマチックな展開で最終的には「地固まる」になるのが常。でもこの映画、「たくさんの危うい状況」(=メルヴィンの言動・行動)はちりばめられているんだけど、「危うい…」と言うよりはその時点で完全に「アウト」なんです。ま、個人の感想なので「いいじゃん。メルヴィン、かわいいじゃん」という人も大勢いるでしょうが。


それでも映画としては楽しめるんですけどね。


この映画の見所は、なんと行ってもヘレン・ハント。とにかく彼女の美しさや魅力が、この映画には凝縮されています。サイモンがキャロル(ヘレン)をスケッチしているシーンなんて、画面の明るさが2段階ほど強まったんじゃないかと思うくらい、本当に輝いていて、見ていてうっとりしてしまうほど。そういえば、この数年後に『ペイ・フォワード』に出ていましたが、それ以降あまり彼女を見ないですね。

そしてメルヴィンの隣人サイモンはグレッグ・キニア。「この人の顔、どっかで見たことあるけど…」と思っていたら、なんと『リトル・ミス・サンシャイン』の9段階成功法を唱えるあのパパでした。 『恋愛小説家』の中では、見事にゲイちっくな雰囲気をかもし出す美青年でしたが、12年後には恰幅のいいパパに。俳優ってすごいわ。どちらもはまり役だもの。

このサイモンの恋人役がキューバ・グッティングJr.だったんだけど、この人ただのマネージャーか何かだと思ってました(ごめんなさい、私の英語力この程度です)。まさか恋人だったとは。なんかちょっと物足りなかったなぁ。

映画全体としては、ヘレン・ハントに引っ張られるようにものすごく良いテンポで話が進むので、飽きずに楽しめる作品。好きな人はものすごく好きな作品よね、これ。


おすすめ度:☆☆★  …それでもやっぱりこの映画の中のメルヴィンがものすごく苦手。

『(原題)Run, Fatboy, Run ラン・ファットボーイ・ラン』

2008年07月22日 | 映画~ら~
2007年 イギリス映画

いやあ、再び久々の更新です。更新のない間、サイトにいらしてくださった皆さん、ありがとうございます。お待たせいたしました。

今回は飛行機の中で見た映画、『Run,Fatboy,Run』です。2007年のイギリス映画ですが、今のところ日本公開もDVD発売の予定もなさそう…でも抜群に面白いです!


妊娠した彼女リジーとの結婚式当日、結婚の決意が固まらないデニス(サイモン・ペグ)はなんと逃走!自分がリジーには不釣合いなのでは…という恐れから、それにしても最低最悪なことをしでかしたデニス。月日は流れ…それでもリジーのことを愛する気持ちは変わらず、5歳になった息子ジェイクのおかげでリジーとは日常的に会うことができたデニスは、5年前の自分の重大な過ちに気づく。何とか彼女とよりを戻そうと考えていたデニスだが、リジーには甘いマスクで金持ちビジネスマンの彼、ウィットが!何をしてもウィットにかなわないデニス。このままではリジーはウィットと結婚してしまうかも。今まで何一つ長続きしたことのないデニスだが、ロンドンマラソンを走りぬき、自分の誠意を証明することに。それからトレーニングの日々が始まるが・・・。


主人公デニスを演じるのは、イギリス映画界では知らない人はいないサイモン・ペッグ。お気に入り映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』(←お気に入り過ぎて感想が書けない)などコメディー映画への出演が多い俳優・コメディアン。たしか『シベリア超特急』の水野晴郎が亡くなる前に見た最後の映画は、彼主演の『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン』だったはず。こちらもものすごくイギリス風味の強いコメディでおすすめ。

映画の中のデニスは、性格は悪くないんだけど、うだつがあがらないというかちょっとダメ…いやかなりダメダメキャラ。息子との関係はとてもほほえましいのだけど、物事が長続きしないし、口も悪いし、仕事もできないし、見た目貧弱だし。リジーの彼のウィットと見事に対照的な人物。ただ、個人的な感想を言わせてもらうと、スーパー・ビジネスマンで非の打ち所のないウィットは「ハンサム」であると言う位置づけなのですが、まったく持って私の好みではありません。誰もそんなこと興味もないし聞きたくもないでしょうが、なんていうの?濃いの、なんか。この間、『ジャンパー』の感想の中で、「ヘイデン・クリステンセン=大沢樹生」説を説いたときにも少し書きましたが、「誰もが認めるいわゆる男前」で「本人もそれを承知している」人がかもし出す雰囲気が非常に苦手なのです。ええ、確かに小学4年生の私は、光ゲンジでは大沢樹生派だったわよ。諸星君は今まで見たことがないほど完璧にかわいくてアイドル顔で驚いたけど、それでもやっぱり大沢派だったの。でもね、人間って年齢とともに好みが変わるじゃない?あんなに好きだった大沢君が、現在では極めて苦手なタイプに。バンジージャンプでプロポーズとか有り得ない訳よ!

あ、何でこんなところで光ゲンジを語っているのかしら。そんなことはどうでもよくて、私にはウィットよりもデニスのほうが、(外見は)好みだと言うことよ。とにかく、サイモン・ペッグが出ていると安心して映画を見ていられるし、期待通り笑わせてくれる貴重な俳優。『アクシデンタル・ハズバンド』のユマ・サーマンのような、妙なそわそわ感を抱く必要もなく、心から素直に笑える貴重な俳優です。あたくし、サイモンをべた褒めですね。

リジー役の女優さん、本当に本当にきれいで、見とれます。確かにデニスにはもったいない。脇を固める俳優陣も、曲者揃いで個性が際立っています。デニスの親友(?)のゴードン役は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』でも共演しているディラン・モーラン。インド系の家主やデニスのマラソンの結果を賭けに使うような友人たちの存在が、映画をただのロマンチック・コメディーで終わらせない、ひねりでありスパイスの役割をしています。

ゴードンの賭け仲間も、「デニスのがんばりに感動して、賭けなんてどうでもよくなっちゃった!」なんてことはなく、最後の最後までかけにはこだわってて、デニスに負けてもらいたい人は頑張れなんていわなくて、へんに感動に持ってこないところが私は好きです。イギリスの映画で描かれる、「ダメなやつ」って、ものすごく親近感を抱いてしまうほど身近で、誰でも「あるある」とうなづいてしまう要素が詰まっているところがいいと思う。「映画=夢の話」でなく、生活に根ざしている(コメディーセンスを含む)映画を作るのがうまいなぁ、と思います。

映画を見ている間、私が小学校低学年のときに土曜日の8時から放送してた『加トちゃん・ケンちゃん、ごきげんテレビ!』とか、中学のときの月9の『ひとつ屋根の下』とか思い出したりして、なんだかちょっと笑えました。これに賛同していただける方がどれほどいらっしゃまったく持って不明ですけど。

太っちょのデニスが走るから「Fatboy」のはずなんだけど、正直デニスは太ってるようには見えません。足も顔も細いから。ただ、おなかはポンポコリンです。おなかを見なかったら、かなりのスマートさんなんです。おなかのポンポコリンだけで「デブ」と言われてしまうのはかなり厳しいですが(何目線?)、いいんです、コメディーだから。

結論から言うと、「おもしろい!!!」です。機会があったら、コメディー好きな人はぜひ。



おすすめ度:☆☆☆☆☆

「ライラの冒険 黄金の羅針盤 ~The Golden Compass~」

2008年05月26日 | 映画~ら~
2007年 アメリカ映画

「ハリー・ポッター」「ナルニア国物語」など、不思議の国で子供が主役の物語、最近ものすごく多いですよね。昨年10月ごろ、日本の映画館で『ライラの冒険』の巨大パネルが飾ってあり、「またかよ・・・」と見る前から脱力感に襲われた記憶があります。見る前、というか見る気はまったく無く、むしろ「3番煎じを誰が見るんだ?」という気持ちを抱いたのを覚えています。そう、まったく見る気も興味も無かった作品。いやー、これがさ、意外に面白かったわ~!

期待してなかったのもよかったんだと思うけど。もともと有名小説だから、原作が悪いということは無いだろうし、ハリーやナルニアの後だから「また?」という気持ちになったんだけど、当然別の話なわけだし。似てるけどね。ファンタジーでなくとも、似てる映画なんていくらでもあるしね。そして実はハリー見てないし(こちらも興味なし)。ナルニアを観たときも、意外に楽しめたんだよね、私。自称・ファンタジーあまり好きではないタイプなんだけど、もしかしたらけっこう嫌いではないのかも、いまさらですが。


物語は、なんかちょっと、細かいところの設定がややこしくて、うまく説明出来ないので省略。

主役のライラ役の女の子、すごく演技うまかったです。この物語の役柄が子供向け映画にありがちな「ものすごくウブ」とか「純真無垢」というタイプではなく、どちらかというと子憎たらしいタイプ。これをうまく演じていたと思います。典型的なタイプでないところも、私には面白かった。

ほかのキャストも豪華で、ライラの叔父のケンブリッジ大学教授にダニエル・クレイグ。大学に顔のきく、謎の権力女がニコール・キッドマン。ダニエル・クレイグの映画って、最近の007を含めて2~3本しか観たことないけど、この役が一番合っているように感じました。ニコールの、華と毒気があって大学関係者たちを手玉に取っているビッチぶりがぴったり!トム・クルーズと結婚してた時のニコールって、美しいけどもう少し自然でやさしさと品のある雰囲気があったと思うのだけど、離婚後・・・というかお直し後?(整形ね)のニコールは自然さとか(いじったから自然であるはずは無いんだけど)品のある美しさは無くなったわよね。でもリフティングで不自然に吊り上げられたしわのない顔は、それまでのニコールには無かった毒気ややや過剰な華々しさが備わって、今回の謎の女(ビッチ)を演じるのにぴったり。大学の講堂を歩く彼女の姿が、まぁ驚くほどアカデミックな場所に似合わない。ものすごく浮いてるの。映画的に抜群の効果。これは演技とかではなく、その人そのものがかもし出してる雰囲気ではないかとおもう。

そしてなんと言う俳優かは知らないけど、何人か気になる人たちが。私は心の中で、「萩原流行」「名古屋章」「緒方拳」とつぶやきながら観てました。日本の俳優がキャスティングされるなら、この3人ははずさないでほしいです。名古屋章は無理だけどね。(今、日本のライラサイトを検索したら、緒方拳は白熊の声を担当しているそうですね。もちろん私が心の中でつぶやいたのは別の役です)

守護霊?守護動物?分身??…うまく説明できないのだけど、一人に1匹(1羽?)ずつ「ダイモン」と呼ばれる動物がついてるの。ちなみにニコール・キッドマンには黄金の毛の、躾のなってないサルね。ライラにはフェレット?でも時々でその姿を変えるから、本来は何の動物なのかわからないけど。

「えーっと、私だったらなにかなぁ?」とついつい考えてしまいます。本当にダイモンがいたらいいなぁ、と本気でうらやむ三十路です。


この映画、ハリーやナルニアと同じく3部作の構成で、これは1作目。続きが楽しみです。


おすすめ度:☆☆☆★


追記:ケンブリッジではなくオックスフォード大学でしたな。失礼失礼。(6月8日)

「リング」

2008年04月07日 | 映画~ら~
1998年 日本映画

久しぶりに見ました。前回見たのは確か2000年くらいだったと思います。テレビでやっていたのを弟と見た記憶が。怖くてギャーギャーいいながら、コタツの布団に隠れながら見ました。公開当時は大ブームでしたね。

もう10年も前になるんですね。ほとんど記憶も無くしかけていたので、新鮮な気持ちで楽しめました。

一番の驚きは、映画の中で一番初めに亡くなる女の子(松島奈々子の姪)が竹内結子、その友達が佐藤仁美だったこと!あの当時、竹内結子さんってまだまだ人気が薄かったんですかね。でも2000年当時(私がテレビで見たとき)は、連ドラに主演で出ていたような気もするので、短期間に人気を確立したということでしょうか。とにかくこの二人が出ていたことが一番驚きでした。

それから松島さんの同僚の「岡崎くん」は、柳ユーレイだったのですね!
「リング」は日本ホラーブームの火付け役ですが、柳ユーレイはその基礎を確立したといわれる伝説の映画「女優霊」の出演者(未見です)。そして「女優霊」の監督が「リング」の監督でもあるわけです。今回知りました。遅いです、私。

謎が謎を呼び、解けたと思ったら振り出しに戻される。

日本のホラー映画って、ただ驚かすだけではなく物語がしっかりしていますよね。そしてよく言われることだけど、心理的な恐怖心をあおる。呪いには理由があるけれども、殺される人たちにはまったく罪がなくて、どうしようもないところがまた怖いんだろうなぁ。

呪いを解く(死から逃れられる)方法である、テープをダビングして誰かに見せるというもの。私が松島さんだったら、間違いなくその方法に気づきません。頭いいわぁ、松島さん。でも、息子を助けるために自分の父親にビデオを見せようとするなんて、ひどすぎます松島さん!

映像は日本独特の、薄暗くて安っぽい(苦笑)感じですが、だからこそ恐怖心をあおられるという副産物(もしかして計算?)つきで結果オーライ!初めて人を念力で殺した貞子ちゃんは、6歳前後かと思われますがすでに容姿が出来上がっているあたり大物の予感でした。お母さん(志津子)の能力をいんちきだと罵った記者が亡くなるシーン、必見です。ミニ・貞子ちゃん。ちょっと笑ってしまいます。



※よい画像が見つからなかったので、今回はイメージ画像なしです。


おすすめ度:☆☆☆★ ホラー映画好きな方は必見。

「ラブソングができるまで~Music&Lyrics~」

2008年03月30日 | 映画~ら~
やっとパソコンが復活しました。イヤーーーー、長かった。
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ヒュー・グラントとドリュー・バリモア共演のコメディー。二人のコメディー慣れしたテンポのよさに乗せられて、楽しめる作品です。

アレックス(ヒューヒュー)は80年代に人気を博したバンド『POP!』の元メンバー。バンド解散後ソロに転向するが、泣かず飛ばず。その彼に、人気絶頂のアイドル・コーラの歌を作ってほしいとの話が舞い込むが、作詞に苦労する。観葉植物の水遣りのバイトに来たソフィーの作詞のセンスに気づいたアレックスは、彼女を巻き込み芸能生活での再起をかけることに。

映画の中ではアレックスが所属していたPOP!のプロモーションビデオが披露されるのだけど、これがよくできてます。あの80年代の無駄に明るく、かわいらしく、どこまでもダサく、本人主演のよくわからないラブストーリー仕立てのミュージックビデオのできばえがすばらしい!

ドリュー・バリモアの、コメディーの間がよくわかっている感じが見ていて安心です。安心して笑える。「ドリューに任しとけば大丈夫だよね」と、きっと製作側も思っていたはず。そして、なによりかわいい。「本当にこの人、むかしヤク中で暴れてたのかしら?」とその過去さえ信じられなくなるほど、チャーミングです。

個人的には脇役たちがものすごくいい味を出していたと思います。一押しは、ドリューのお姉さん。クリステン・ジョンストンという女優さんなのですが、調べてみるとさすがの経歴。http://wwws.warnerbros.co.jp/musicandlyrics/about.html
演技のうまさに納得です。このお姉さんがうまく笑いを作り上げてくれます。もしこの映画が日本で製作されることがあったら、このお姉さんの役はぜひ吉本の海原ともこでお願いしたい!!!映画を見ている最中、お姉さんが海原ともこにみえて仕方なかった。アレックスの大ファンという設定も、日本で80年代に大人気だった男闘呼組の前田向陽を夫に持つ彼女にうってつけ。

そして人気絶頂の歌手・コーラのオーラのなさがまた素敵。ブリトニーとクリスティーナ・アギレラを足したほどのカリスマと人気を持っているはずなのですが、ちょっと笑っちゃうくらい人気絶頂感がなくて、でもそれを許したくなってしまう素敵な作品なのです。


ひゅーひゅーが場末の遊園地の安っい舞台で、おしりを振って歌っているのを見るだけでも、この作品の価値があります。



お勧め度:☆☆☆☆

「ロミーとミッシェルの場合 Romy & Micheles High School Reunion」

2008年01月19日 | 映画~ら~
ミラ・ソルヴィーノと先日観た『P.S.I Love You』にも出演していたリサ・クロドーの主演のコメディー。

1997年の公開で、私がこの映画を初めて観たのはたしか2000年。すでにテレビシリーズ『フレンズ』は日本でも放送されていたのだけど、私は見ていなかったので、この映画で初めてリサ・クロドーを知りました。なんかものすごく個性的な顔だな~、と。

LAで暮らすロミー(ミラ)とミッシェル(リサ)のもとに、高校の同窓会があるとの知らせが。しかし高校ではどうも浮き気味だった二人は、これを機に同級生たちをあっといわせようとビジネスで成功したと嘘をつくことを思いつく。しかし簡単にそんな嘘は見破られ・・・。

スタイルの良いブロンド二人組がすごした、いけてない高校時代の回想シーンはかなり無理があってそこがまた面白い。同窓会でシンディー・ローパーの「Time After Time」をバックに踊ったダンスの素晴らしいこと!中学の体育でやった創作ダンスを思い出したわ。

この映画を楽しむポイントは、二人に共感すること(できるのか?)、そして二人をかわいいと思うこと。ものすごく無理な設定なんだけど、「頑張れ!」といいたくなってしまう二人のキャラがとにかくいい。いじめっ子の女の子がまた、「あーー、こういう奴いるわ~」と心底憎たらしく思えてしまう。

最後はハッピーエンドで終わるのだけど、自身の洋服のお店を持った二人の「Have a Romy and Michele Day!」「それいいわね。」という台詞が頭から離れません。どこまでもマイペースで自分の好きなものに正直な二人の女性を応援したくなる作品。

だからといって女性を応援するような内容では全然なくて、とにかくコメディー。日本では絶対にあたらないような、B級映画です。でもアメリカではファンサイトもあるくらい、そこそこ人気があったよう。そういえば、最近ミラ・ソルヴィーノ見ないなぁ。



おすすめ度:☆☆☆☆ 

「ラベンダーの咲く庭で」

2007年10月06日 | 映画~ら~
イギリスの2大女優とドイツの若手俳優の競演作。(ネタばれあり)

2人静かに暮らす老姉妹が海岸に漂着したポーランド人青年を助けたことから、3人での不思議な共同生活が始まる。老姉妹にとって青年アンドレアは、時に息子、時に恋人。時に孫であったり、手の届かない片思いの相手にもなる。姉妹のほのかな恋心は、月並みな表現だけれど「恋愛に年齢は関係ない」と言いたくなってしまう。そこに美しい若い外国人女性が現れ…。

ポーランド人青年はヴァイオリニスト。去年だったか現地イギリスを始め世界中で騒がれた「ピアノマン」(http://x51.org/x/05/05/1711.php)をそのまま映画にしたような設定です。といってもこの映画、ピアノマンの出現の前年の作品ですが。


物語は、特に目新しい内容であるわけではなく、どちらかというとかなりベタ。それでもこの作品が素晴らしいのは、イギリスの2大女優の演技力に由るもの。妹役ジュディ・デンチ(007シリーズ、恋に落ちたシェイクスピア、ショコラ…)の見事なまでに乙女心を表現した演技は見ごたえ十分。その時々で、年齢も気持ちの揺れも、すべての面において全く表情を変えてみせる表現力には感服。若い青年に恋をする1人の少女であったかと思えば、次の瞬間には年齢差に不安や自分の恋心さえも辛いと感じる老婆に。海岸を2人で歩く時のアーシュラ(ジュディ)の、心の奥からじわじわと幸せな気持ちがにじみ出てくるような少女の表情。若い女性にアンドレアを取られてしまうかもしれない…それでも自分には何も出来ない、という年齢や立場の違いなど不可抗力にも似た苦しみを宿さなくてはならなかった彼女の「初恋」。とにかく彼女の演技力そのものが、映画の流れを完全に作り上げています。

姉役のマギー・スミスの貫禄があり、もう1人の大女優ジュディを包み込めるだけの存在感があるからこそ、「二人姉妹」の絆や暮らしの形がバランスよく描かれることに成功しています。


忘れてならないのが、アンドレア役のダニエル・ブリュール。彼の透明感と同時に芯の強さを感じさせる独特の雰囲気は唯一無二。台詞はものすごく少ないが、彼の演技力であらすじ以上にアンドレアの葛藤、苦しみ、喜び、若者の抱く夢や希望への強い憧れやそれに突き進むパワーがひしひしと伝わってきます。いろんなものをプラスするのではなく、引き算してこそ表現できる心の強さを抑えた演技で見事に観客の心をつかんでいる。彼の映画は『グッパイ・レーニン!』しか観たことが無かったのだけど、今回の映画でも控えめながらその存在感は溢れています。


若いカップルの恋物語なら、描きつくされた面白みも何も無く終わってしまう。しかしこれが女性が高齢であり純粋に彼に恋をしている・・・というだけで、物語は多面性をまし、女性の抱く不安や悩みや、自分の力ではどうすることも出来ない現実、が更に物語に深みを与え、観客に感じてもらいたいポイントを作り出している。カップルの年齢設定を変えるだけで、こんなにも静かだけれども深みが出てくるとは驚き。


恋をする女性としてアンドレアの晴れ舞台を見守るアーシュラの表情は光で満ち溢れ、そして静かな引き際は大人の女性だからこその美学を感じる静かで美しいもの。

だからこそ、アンドレアを成功へ導く(かもしれない)美外国人女性の奔放な強さはアーシュラとは全く対照的で、本気でムカつきます。



お勧め度:★★★★☆