映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『ゴーン・ガール ~Gone Girl~』

2015年04月25日 | 映画~か~
2014年 アメリカ映画


毎度の事ならが、というか以前に増して更新スピードが遅くなっているこのブログ。あまりに更新しないからなのか、知らないうちにブログのテンプレートが変わってました。

さて、『ゴーン・ガール』です。
一言で言うと、「なんじゃこりゃーっ!?」でした。良くも悪くも、予想を裏切られました。


一番の驚きは、物語が想像の斜め上を行っていたこと。話の内容はいつものことながらできるだけ耳に入れないようにしていたので、どんな物語かは知りませんでしたが、「どうせありふれた家族愛(夫婦愛)を描いたアメリカお得意のお涙頂戴ものでしょ?」と思っていたのです。予想を裏切られてよかったかどうか…ありがちなベタベタの夫婦愛の物語でなかったのは確かに良かったです。そうでなければ最後までこの映画を見れたかどうかわかりません。ただ、この物語がワタシ好みだったかどうかはまた別の話でして。ショッキングだし、見るものを惹きつけるのは確かなのですが、気持ちのよい話でもなく…。いや、まぁ、観てよかったんですけどね。


どうして観てよかったかというと、一番の理由は主演のロザムンド・パイク。私が住んでいるイギリスでは、この映画結構な注目度でした。彼女がイギリス人であることも理由の一つかもしれません。イギリス映画では結構よく出ていて、しかしいつも優等生的な役柄だったのです。だからこそ、この映画での彼女の役柄、そしてこれまでとのギャップ、はっちゃけぶりは本当に驚きました。私の中で特に印象が強かったのが、好きな映画の一つである『Made in Dagenham(本題:メイド・イン・ダグナム)』で、自動車会社フォードの重役の妻で、オックスフォード大学出身の才女なのに男女平等ではない時代背景から専業主婦をしているという役柄でした。しかもロザムンド・パイク自身も本当にオックスフォードの英文科出身で、映画の中で「私は世界最高峰と言われる大学で、世界の成功者たちの話をいつも読んでいたの(意訳)」という台詞もあり、もう完全に「インテリ」「上流階級」的なイメージが私の中で出来上がってしまったのです。その彼女が、完全にキレまくっている女性(中身が)を演じていて、それが本当に見事で。彼女の演じることのできる役柄の幅広さと演技力の高さを楽しめただけでも、この映画を観た甲斐があったというものです!



そしてもう一つ、観てよかった理由があります。それは、ベン・アフレックの役柄が彼にぴったりだったこと!


個人的には、気になるには気になるのだけど、映画館に行くほどは興味をそそられない…という映画でした。恐らく、というか8割型、どうして興味をそそられなかったのか、というか特に観たいとも思わなかった理由には気づいているのです。それが彼、ベン・アフレックだったのです。


わかってます。彼が才能あふれる業界人であるということは。わかっていますとも。あえて業界人と書いたのは、彼が監督業、脚本家としてものすごく成功しているから。でも俳優としては正直うまいと思ったことがなく、個人的には彼の役柄はいつも彼自身というか彼の通常時のイメージよりも「格好良すぎる」と思っていたのです。やたらできる男だったり、ヒーローだったり、2枚目役だったり…。そこでものすごく演技力が高ければそのギャップも埋められるでしょうし、逆に言えばそのギャップによりより格好良く見えるという相乗効果だって期待できたのでしょうが、私にはそうは映らず(あくまで私個人の感想です!)。彼の俳優としての最高傑作は、いまだに『グッド・ウィル・ハンティング』だと思っています。普通の若者。それ以上でも以下でもない普通の人具合が良かった。

説明が長くなりましたが、この『ゴーンガール』でのニックという役柄は、彼にピッタリ!!!
もうね、全然完璧じゃないんですよ、このニックという男が。若い学生と浮気していたり、失踪した妻を探すためにテレビでアピールするも写真撮影で笑顔を見せてしまったり。ドラッグ容疑で逮捕された後、報道陣の前で思わず癖でアイドルスマイルを見せてしまったのりピーを思い出してしまったほど。なんというかものすごく人間的で不完全で。その洗練されてなさがある意味すごくリアルで、ベンにぴったりだったのです!彼は絶対にダメ男役が合うと思っていたのですが、やっと彼の本領が発揮されたと思っています(褒めてます!)。


ここ10年位でよく思うのが、アメリカ映画のトレンドというか視点が変わってきたなということ。以前は、「アメリカ最高!家族愛、友情は(上辺だけでも)美しい!」と言うのが根底にあって、何がどうしたって私達が正解!という話が多かったと思うのです。それが、アメリカ社会の中の矛盾とか、口には出せないけど心の何処かで感じている上辺だけの美しさや正義への違和感とかを物語の軸にしている作品が多いように感じます。『ゴーンガール』でも、本当に意図してそうしているのか、勝手に私がそう受け取っているのかはわかりませんが、そういうシーンが見受けられたり。例えば行方不明になった娘を探すためにテレビで協力を訴えている両親の姿やその中の彼らの態度だったり言動だったり。これからのアメリカ映画の方向性にはものすごく興味があります。



それでも、映画館で高いお金を払わなくてよかったとの気持ちは変わらず。DVDで十分です。そして、スッキリ、気分爽快映画ではありませんが、ロザムンド・パイクの突き抜けぶりは見る価値があると思います。(ベンのだめ男ぶりも!)




おすすめ度:☆☆☆★


画像はこちらより。
http://www.indiewire.com/article/nyff-made-david-fincher-want-to-puke-and-9-more-things-we-learned-at-gone-girl-event-20141010

『北のカナリアたち』

2013年01月29日 | 映画~か~
2012年 日本映画


飛行機の中で鑑賞しました。ANAのイギリス行きだったのですが、ANAさんの映画の選択のチョイス、とても良かったです!日本行きがルフトハンザで上映作品がすっごく微妙だったので、余計に嬉しかったです!!!


そんなことはどうでもよくて、『北のカナリアたち』です。
東映創立20周年の記念作品だそうで、なるほどキャストがすごいですよね。主演の吉永小百合に、脇を固めるのが皆実力派の若手俳優たち。派手さは無いけど、東映がこの記念作品にかける本気度が伝わってくるキャスティングだなと素人ながらに感心しました。実は、ANAの機内誌を見るまでこの映画のことは全く知らなかったのですが、この「本気の実力勝負」的なところに惹かれ見てみた作品です。


北海道のある離島で小学校の教師をする川島はるは、6人の年齢がバラバラな生徒の担任。小さな教室でも問題はつきものだが、はるは生徒達の歌の才能に気が付き、子どもたちは歌を通して自信をつけ、担任とも強いつながりを築いていく。しかし、ある日おこった事故をきっかけに、歯車が狂い出した。そして20年が経ち、再び生徒たちを対面することになったはるだが…。


この映画を見たのはすでに3週間ほど前なのですが、どの場面がというよりは、それぞれの俳優の場面が同じくらいの強さで思い返されます。これ、私にはすごく珍しいことです。私の場合、通常はインパクトの強い一場面や、映像が鮮烈に脳裏に焼き付くということが多いのです。それ故に、場面や映像を覚えていても、肝心なエンディングを忘れることが多々あるというのは内緒です。


それでもこの豪華な実力派俳優たちの中で、誰が一番印象に残っているかと聞かれれば、主演の吉永小百合ではなく、もうダントツで森山未來です!この人って、「憑依型」なんでしょうね。映画の中では、「森山未來が演じている◯◯」ではなく、その役にしか見えないんです。難しい生い立ち、障害を抱えた鈴木信人の「生きることの苦しさ」が痛々しいくらいに伝わってきます。もちろん森山さんは俳優として鈴木信人を演じているわけですが、もう演じているようには見えないんですよ。

そして、鈴木信人の子供時代を演じた小笠原弘晃をいうお子さんがまた本当に演技がうまくてびっくり。昔の子役って、もっと学芸会っぽくありませんでした?いや~、最近の子役って本気ですね。この子も将来いい作品に巡りあって欲しいなぁ。



さて、実は主演が吉永小百合の映画を観ることは、大げさに聞こえるかもしれませんが私にとってはちょっとした挑戦だったんですよ。というのも、吉永小百合主演の映画って、見た覚えがあるのが『北の零年』しかないのですが…これがいまいちだったんですよ、私にとっては。

私の中では「吉永小百合=メリル・ストリープ説」(!)というのがありまして。メリル・ストリープは多分、顔の作り自体が苦手で、さらにどの映画を見ても私には「メリル・ストリープ」にしか見えないんですよ。メリルって、演技力の高さで知られていますが、うーん、ダメなんですわ。『マンマ・ミーア』を見た時の感想にも書いていますが、どうも「秘めた強さはあるのだけど表には出さず、女性的でどこか自分を押さえ込むような感じ」の役が多いように見えて、それが私の中で彼女のイメージとして固まってしまっているんです。『マンマ・ミーア』で彼女を褒めちぎりましたし、あれをきっかけにメリルへの苦手意識が無くなるかとも思ったのですが、長年かけて作られた苦手意識ってしぶといもんですね。私も妙齢なので、余計に自分の感覚を変えるのが難しいのかもしれませんが(放っておいて)。

それと同じ感覚を、私は吉永小百合さんに感じるんです。そして『北の零年』で「ああ、やっぱり…」と自分のそれまで持っていたイメージ通りの姿(役柄?)があって、そこで完全に固定されてしまったというか。


この映画の中の吉永さんは、よくも悪くもイメージ通りの吉永さんでした。でも、今回の役は、その「いつもの吉永さん」のイメージのままで映画を観ていたからこそ、「ええっ!こんなシーンまで!!!」という驚きも倍増。「吉永さん、体張ってる」ということ。年齢もそうですけど、よくぞ監督も吉永さんにここまでやらせたなぁ、と見ているこっちがドギマギしたり。

しかも旦那の役を柴田恭兵…え?吉永小百合の旦那の役を柴田恭兵がやるの?年齢が離れすぎてない(柴田さんが年下)??と思ったのですが、今調べてみたら6つくらいしか離れていないんですね。どうも私は好き嫌いを超えたレベルで吉永小百合を神格化しているのかも…。

更に言いますと、柴田恭兵の私の中のイメージも「あぶない刑事」の軟派な感じ(と言ってもこのドラマのファンでは全く無いのでほとんど見たことがない。あくまで私の中の勝手なイメージ)で固められているんですよ。この映画の中の柴田さんは全く軟派なイメージなど無く(当たり前なんだけど)、素晴らしい演技だったのだけど、あ~、ほんと難しいわ。一度自分の中で作られてしまったイメージを変えるのって。



最後に、映画の中では端役でしたが、あたくし満島ひかりさんが好きなんです。彼女が配役されていた、というのがこの映画を見てみようと思った理由の一つでもあります。2年ほど前にDVDで『川の底からこんにちは』をみて、んまぁ~びっくりしたんですよ。こんなすごい女優が出てきたのか!と、異国の地(イギリスです)で嬉しくなったほど。その後、彼女が出演していたテレビドラマ『それでも生きてゆく』を観て、どれほど心が揺さぶられたか。今後どんな映画、ドラマに出られるのか、本当に楽しみな女優さんだと思います。



映画の感想というか出演者の感想になってしまいましたが、映画全体としては凄くバランスが良くて、出演者のそれぞれが上手く個性を出し合っている面白い作品でした。湊かなえ原作の映画の『告白』は、なんだか奇抜すぎて全然好きじゃなかったのです(原作は未読)。しかし、ストーリーのインパクトの強さには惹かれるものが有ったので、『北のカナリアたち』の内容にも期待していたのですが、これには大満足。なんといっても『北のカナリアたち』というタイトルが良い!このタイトルを目にしただけでも、本やDVDなら手にとりたくなるレベルですもの。



派手さはないけれど、丁寧に作られた作品だということがひしひしと伝わってきます。話の面白さ、そして俳優たちの演技力の高さが抜群です。北海道の離島の荒々しい風景もぴったりで本当におすすめ。次回はミステリー好きのうちのばあちゃんと一緒にDVDで見たいと思います。




おすすめ度:☆☆☆☆★

「恋するレシピ 理想のオトコの作り方 ~Failure to Launch~」

2008年11月14日 | 映画~か~
2006年 アメリカ映画

35歳になっても両親の家を出て行こうとしない息子のトリップ(マシュー・マコノへー)。それを案じた彼の両親は「プロ」に依頼をすることに。そのプロとは、両親宅に住み続ける男性を自立させるためのプロ。ポーラ(サラ・ジェシカ・パーカー)は、ビジネスとしてこれまで何人もの男性に「恋愛感情」を抱かせ、両親からの自立を成功させてきたが、今回の相手トリップのことを本気で好きになってしまう。


なんで「恋愛感情を抱かせる」ことで両親からの自立を促すことができるのか。この状況、日本と異なるんですな。アメリカやイギリスの場合、20代半ばを過ぎても両親と一緒に生活しているというのはかなり「かっこ悪い」もので、たいていの場合親元を離れて友達とハウスシェアをする、恋人と同棲するというのが一般的。好きになった女性を自分の両親に紹介する時に、「親と同居している」というのは相手にマイナスの印象をもたれてしまうのです。だったらそうなる前に親元から出て行こう・・・という風に仕掛けるのがこのプロの役目ということらしい。本当にこういうビジネスがあるかどうかは知りませんが。

マシュー・マコノへーは、こういうノリの軽い、「いつまでも子供」チックな無邪気さのある役が一番合っているんじゃないかと思います。肉体派(魅せる専門)ではあるけど、仕事ができる男には見えないし、頼りがいもなさそうだし。『10日間で男を上手にフル方法』も面白かったけど、あの時はものすごく自信家でモテる設定だったし。今回の設定の方が好きです。

この映画、2006年のものなので、サラ・ジェシカ・パーカーがおそらく39~40歳の時に撮影されたものだと思うのだけど、魅力的なのよね。個人的には、『SEX and the CITY』のファンでもないし、SJPがきれいだとか美人だとも思ったことはないのだけど、華があるよねあの人。つい先日、新聞のおまけで『ハネムーン・イン・ベガス』のDVDがついてたんだけど、SJPが全然変わってないの。あ、ちなみにニコラス・ケイジ主演の映画ね。最後までは見てないんだけど。SJPは当時からものすごく細くて、今と変わらないの。当時も華やかさがあって。1986年だったと思うけど、20年も前の映画なのに変わらないのよ!?ものすごくお直ししているようにも見えないし。脅威ね。

この映画さ、日本キャストで撮影されるとしたら…とふと考えてみたんだけど、やっぱ無理よね。日本で一般的に女性が「魅力的」とされる年齢って20代、しかも26,27歳くらいまでじゃない?あ、これは一般の男性目線よ。私はそうは思わないけど。で、この「親元からの自立」ビジネスをしようとしたら、やっぱり仕掛ける側はこのくらいの年齢じゃないと成り立たないんじゃないか、と思うのよ。20代後半だと「結婚を焦っているので気をつける」と警戒されるし、30代過ぎると「おばさん」扱いだし。周囲からの見られかたが日本とアメリカ(この映画の場合)では全く違っているのよね。あ、ちなみにあたくし三十路よ。

気楽に楽しめるエンターテイメント映画です。余計な「笑う場面」(ここで笑え!といわんばかりの無理やりなギャグや見せ場)はあるけど、そういうのは無視してください。トリップの友人役の一人(気が強い方、名前忘れた)は、『ウェディング・クラッシャーズ』に出てましたね。ポーラのルームメイトの女性(こちらも名前忘れた)が映画前半はものすごく良い感じの「すれた」キャラで好きなんだけど、後半はなんだかやっつけ度が高くて残念。彼女が銃を購入しに来た場面でのポーラとのやり取りのテンポのよさは抜群です。この彼女、ゾーイ・デシャネルという女優さんで、『ハプニング』でマーク・ウォールバーグの奥さん役だった人なのね。全然気づかなかったわ。全くの別人よ。この人、今後要チェックね。

でも何が一番驚いたかって、サラ・ジェシカ・パーカーの声の高さ、若さ!!!声だけではいくつかわからない。20代前半くらいに聞こえます。声って重要なのね。でもこれ、日本キャストで…(くどい)、日本人女性が同じような若さのある声で話してたら、「腐った松田聖子」(「恋のから騒ぎ」ファンならわかるはず)とかって呼ばれかねないわよね。見た目とキャラと声のバランスは大切ね。あ、でもね、今ウィキペディアでゾーイ・デシャネルのところを読んだんだけど、撮影当時の彼女が26歳くらいなのよ。で、ルームメイトのポーラ(SJP)が当時39でしょ?やっぱり映画的に、SJPは「若い」というイメージを持って作られているようね。もしかしたら年齢ではなく、「イメージ先行」「魅力的な人は歳は関係ない」ということかもしれないけど。でもこの2人のルームメイトぶり、全然不自然じゃないの。良い感じのコンビなのよ。さすがSJP。どこまでも脅威です。



おすすめ度:☆☆☆

「ゲド戦記」

2008年07月28日 | 映画~か~
2006年 日本映画

宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗が監督を務めた長編アニメ。公開当時、酷評でしたよね。やっぱり見る側としては、「スタジオ・ジブリ」作品としてのクオリティーを期待してしまうのは避けられないこと。だって、「スタジオ・ジブリ」の名の下に、コマーシャルだって「宮崎駿の長男」と言うのが大々的に使われていたから。比較しないわけがない。

で、見ました、『ゲド戦記』。方々からの批判を聞いていたので、ジブリの作品としてではなく、ひとつのアニメ映画としてみてみようと肝に銘じての鑑賞。

すべて見終わっての感想はと言うと・・・「悪くはない」。これ、素直な気持ちです。悪くないんです。でもものすごく肯定的な意味かと言うとそうではなく、「よくもない」んです。実は、ものすごく酷評されていたけど、ジブリと言う枠を取り払って作品を見てみたら、「意外によかった!」という感想を持てるかも、という淡い期待を抱いていたんです。でも、着地点は「悪くはない」を超えることはありませんでした。


まずね、キャラクターたちのキャラが立ってない。それぞれの性格や個性、背景がうまく描ききれていないんです。主人公のアレンでさえ。キャラクターたちに魅力がないの。人物たちを描ききれていないから、話に抑揚が生まれない。どんな映画でも、登場人物たちの気持ちの変化とともに、話は進んでいくのだけど、その変化がわかり辛い。映画ってその世界の中にどっぷり浸かって、登場人物たちの気持ちの変化に自分の感情を動かされたりするものだけど、それがない。だから映画を見ていても、なんだか、「電車でたまたま乗り合わせた人の会話を聞いている」ような。ずっと話している内容は耳に入ってくるけど、人物像がつかめないからいまいち面白くないと言うか。『ゲド戦記』の内容として、主人公アレンの心の変化(脳の変化?)は核であるのに、それがよく表現されていないと言うのは致命傷。

そして、話のつじつまがあわないの。いろんなところに「あれ?」っていうのがちりばめられていて、集中できない。さらに、話が途中でブツブツときられているような印象。たとえば主人公アレンは父を殺してしまうのだけど、何で殺したのかさっぱりわからない。ウィキペディア曰く、「社会のみでなくアレンの頭の中もおかしくなってた」=「だから父親殺害にいたった」(2008年7月28日現在)という説明があったのだけど、ウィキペディア見なきゃそんなのわからない。映画を見た印象では、両親とアレンとの間に確執があったようにしか見えないのよ。

映画の中でそれなりにキャラクターが描かれているのは、ハイタカくらい。テルーもまぁそこそこ。これじゃあ映画は楽しめない。

さらに、映像の中に「余韻」がないの。台詞はないけど、映像で空気感が伝わってきたり、登場人物たちの心の動きを表現したりという、文章で言うと「行間」のような部分が、この映画にはないの。一番印象的だったのは、ハイタカがアレンに剣を手渡す時のシーン。アレンはハイエナに襲われ、そこをハイタカに助けられる。目覚めたアレンにハイタカが「これは君の剣だろ?」(こんな感じの台詞)と差し出すんだけどさ、その剣というのはアレンの一族に伝わる剣なわけよ。そん所そこらの物ではないわけ。それをさ、見ず知らずのハイタカが手渡してきたんだから、警戒するとか、逆に「わざわざありがとう」と感謝するとか、感情の動きがあるはずなの。でも、「はい」と渡された直後、画面はすぐに切り替わっちゃうの。もったいないのよ。ここで人物像を描ける、観客にそれを伝え表現できるチャンスなのに。

あ、もしかしたら、アレンはおかしくなってたから、感情が伴わなかった・・・と言うことなのかもしれないけど(皮肉よ、ケケケっ)。


悪役のクモは、唯一キャラ立ちしていたような気がするけど、最後の戦闘シーンのクモは、映画と言うよりタイムスリップして『妖怪人間べム』を見ているような気分になりました。映像を見ていただければ、納得してもらえると思います。クモも途中と最後ではまったく別物になってたしね。

ほかにも、風景や街の様子に統一感がまったくない。ギリシャっぽいなぁと思えばイタリアチックな部分があったり、イギリスっぽかったりモロッコみたいだったり。これがいろんな要素が溶け合ってひとつの空間が作り上げられていればいいのだけど、まったく溶け合ってなくて、「何、この街?」と余計な疑問を増やしてくれます。世界観が完成されてないのよ。


これだけ「よくない」部分の感想が出てきたのに、「悪くない」理由は、話がわかりやすかったから。人物像は描けていないし、話に引き込まれることもなかったけど、無駄に台詞が説明口調なの。みんな話を説明してくれるのよ。だから描ききれてはいなくても、話は理解ができるの。それにこれにも原作である小説が存在しているから、話自体はしっかりしているし。


でも、アレンが「おかしくなる」時の皺っぽい顔がものすごく苦手です。見たことないけど、「デスノート」の黒いやつみたいな顔。だからもう見たくありません。



おすすめ度:☆☆★


「クローバーフィールド~Cloverfield~」

2008年02月07日 | 映画~か~
クローバーフィールド・・・なんて素敵な名前。名前だけ聞いてたら、豊かな緑の草原を舞台にした美しい自然を楽しめる映画なのか、と思ってしまいそうです。しかしこれ、パニック映画です。

ニューヨークはマンハッタン。日本への転勤が決まったロブのサプライズパーティーでにぎわう一室。彼へのプレゼントにと、彼のビデオカメラで参加者たちのコメントを集めている友人。そこへ突然大きな地震が!外に出てみると、近くのビルが爆発!!!いったい何が起っているのだ?

『アイアムレジェンド』を昨年末に観に行ったときにこの映画のトレーラーが上映されていたのですが、「またパニック映画かよ!また何かのウィルスですか??」くらいに思っていたのですが、これがどうしてなかなかよいです。

話の内容は何にも新しいことはないのだけど、映像がすべて素人が(ロブの友人)自分たちのおかれている状況を記憶するという趣で撮影されたものなので、臨場感がものすごいです。ただ、気持ち悪くもなります。手ぶれすごいから。『ブレアウィッチ・プロジェクト』(未見)と同じで、この雑さのある映像だからこそ、更に恐さが増す。パニック映画として、大成功だと思います。

別れた恋人を救うため、自分勝手に動き回るロブ。もちろん仲間、巻き添え。仲間は自分の意思でついていったから仕方ないけど。日本人として驚くのが、これだけ地上がパニック(地響き、銃撃戦、モンスターによる地震)になっているのに、地下鉄に非難すること。地震の時は地下にいてはあかんでしょ?地上に出ないと危険ですやん?いや、まぁ怪獣いるから地上も危険なんだけどさ。地下のほうがそういう意味では安全なんだけどさ。

あと、ヘリコプターで救助されたはいいけど、怪獣に落とされるのよ。墜落です。でもね、操縦士以外みんな生きてるのよ。意外にけろっとしてる。これには驚いた。映画だけどさ。劇場からも「え?生きてるの??」っていう失笑や声が上がってたもん。いいんだけどね、別に。

エンディングに関しては、「残念」とか「中途半端」という意見が多いようだけど、私はよかったと思う。見つけてきた映像を見ている、という感覚は面白いなと思った。それに、あの内容では解決の仕様がないから。『クローバーフィールド』ってこの映像のコードネームなんだってね。今知りました。でも何でだろ。

見ている途中、「あーーー、ゴジラ(見たことないけど)やな、これ。多分何倍も恐いけど」と思っていたら、この作品は『ゴジラ』をリスペクトして作られたとのこと。だからロブの転勤先は日本だったのね。やたら日本びいきな感じだったのよ。それに、映画見てから聞いたんだけど、あの怪物は9.11が原因で生まれたものらしい。ゴジラは原子爆弾だったよね、確か。なるほどーーー。あとね、怪物が宮崎映画に出てきたのに似ているような気がするんだけど、それが何なのか思い出せません。

この映画で一番の活躍は、主人公ロブではなく、ビデオカメラを回し続けた友達(ふとっちょ・名前忘れた)です。よくぞ映像を撮り続けた!



おすすめ度:☆☆☆☆




「狐怪談」

2007年10月06日 | 映画~か~
韓国ホラー、『狐怪談』です。芸術高校の寮にある階段は通常28段。29段目が現れた時に狐に願い事をすると叶う、という噂にまつわる少女達の物語。

正直、「結局何が言いたいの?」という感想。学校に通う少女達の入り組んだ人間関係が物語の鍵になるのだけど・・・いや、鍵というか・・・何なんだろう。
ホラーなので怖がらせることが出来ればそれでもちろんいいのだけど、いったいなんだったんだ?と。

バレエ部のエースを親友に持ったジンソン。演じたい役も、親友ソヒに持って行かれてしまう。美しく屈託の無いソヒを、うらやましさを通り越し疎ましさを感じるようになっていた。それでもソヒはジンソンと仲良くしていたい。


韓国の女の子の人間関係の築き方はよくわかりませんが、この物語で一番怖いのは超常現象でも霊的な力でもなく、女の人間関係です。親友のトウシューズにガラスの破片を仕込んだり。そんなんされても親友でいたいソヒも良くわからん。「私にはあなたしかいない」という台詞がよく出てくるのだけど、ソヒはジンソンに日常生活の上で精神的に依存してる。そらジンソンにしたら、いいとこ全部持っていかれる上に依存されたらたまらんやろ。しかも疎ましく思っているところに、「あなたしかいない」と後ろから抱きつかれたら、誰でも振り払いますがな。…まさか階段から落ちてしまう、そして彼女の人生を終わらせてしまうことになるとは思わないわな。

ダイエットに成功した不思議ちゃん(名前はわかりません)のどこかにいってしまっている演技は、それはそれで恐ろしい。あの不完全さが恐ろしさを煽ります。なんか狐っぽい顔してるし、とり付かれている設定だとしたら彼女の起用は正解。顔が。

ソヒの人生を終わらせてしまったジンソンには、周囲の女子からのいじめが開始される。


とにかくジンソンが強い、精神的に。あんな状況下に置かれたら…というか置かれたというより自分が招いたものだけど…普通の人間なら精神がイカレます。そこがある意味、物語の恐ろしさとか日常を超越した世界さえも超越しているため、多分この映画を見た人のほとんどは内容にのめりこめないと思う。設定が中途半端なんよね。

それから、不思議ちゃんが手を下した女の子についてのエピソードは必要やったんか?カメラのアングルにも「なんで?」というのが多くて謎。こういう点については、文化の違い(美意識の違い)もあるかもしれないけど、私個人にはとにかく謎でした。

理解できない、もしくはしなくてもよいホラー映画という点では、日本の『呪怨』に似てる。更には怖がらせ方も似てる(特に後半)。『呪怨』のほうが、10倍怖いけどね。



お勧め度:☆

「かもめ食堂」

2007年09月29日 | 映画~か~
小林聡美、もたいまさこ主演の日本映画です。

日本人女性がヘルシンキで営む食堂(カフェのが近いかな)に集まる、個性的な人々を描いた物語です。特に大きな物語のうねりがあるわけではなく、穏やかに話は進んでいきます。

どうしてお店をヘルシンキで?

との問いに店主(小林聡美)の返答は「無理があるだろう…」と思ってしまうような、かなりごり押し、無理やりな理論を展開したりもしていますが、多分この映画は物語を楽しむというよりは、映し出される淡々とした日々の生活を楽しむものだと思います。

とにかく出てくるお料理が素晴らしく美味しそうなのです。

この映画を観た翌日、シナモンロールを作ってしまったアタクシ。かもめ食堂の看板メニューはシナモンロールにおにぎり、焼き鮭定食、からあげ…なぜ底にシナモンロール?とここでも疑問に思ったりもしますが、そこに注目しても仕方が無いんです、この映画。そんな疑問は極力持たずに観てください。

印象的なシーンが二つあります。

もたいまさこの荷物が届かず、着替え用の洋服を探しに行きます。新しい洋服を購入しかもめ食堂に帰ってきたもたいまさこは、マリメッコの素敵なコートを着こなしていました。

旦那に家出をされたフィンランド人女性。旦那に未練たっぷりだったのが自分の人生を楽しむようになり、かもめ食堂の3人と一緒にオープンカフェでくつろぐシーン。それまで地味な印象だったのが、4人ともそのときの気分を表すような鮮やかな洋服を着こなし、降り注ぐ太陽を受け、生き生きとした大人の余裕のある表情があります。

小林聡美演じる日本人女性の、芯の通ったブレの無い凛としたたたずまいが素敵です。おにぎりやから揚げ。そんな日本に住んでいたらいつでも食べられるような食事を、今すぐ欲したくなるような。そんな映画です。



お薦め度:★★★☆   無駄の無いキッチンが素敵です。(写真)


「クローサー」

2007年09月20日 | 映画~か~
DVDで『CLOSER』を見ていたのだけど、なんだか私好みの話ではなくて気分が悪かったです。

ジュリア・ロバーツって口でかいなぁ。口といわず、すべてのパーツがでかくてびっくりした。今まであまり気になったことがなかったのだけど。ジュード・ロウも・・・うーーーん・・・最もセクシーな男に選ばれた経歴があるし、確かに雑誌で掲載されている写真はいい感じなんだけど・・・役柄のせいか?

ジュリア・ロバーツの変態恋人役だった人、すでに名前すら覚えてないけど(のちにクライブ・オーウェンと判明)、あのひげの濃さが変態度をさらに強めていて気持ち悪かったなぁ。それに私には宇梶剛士にしか見えなくなってしまって、関係ないのに宇梶さんまで嫌いになりそうです。

クライヴ・オーウェン、他の映画はすごくいいのだけど、この映画に関しては気持ち悪かったわ。いや、気持ち悪い医者の役だから、それでいいのか?演技力のなせる業なのか!?



お薦め度:★

「嫌われ松子の一生」

2007年09月20日 | 映画~か~
2006年6月に見に行きました。
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見てきました。この小説は発売された当時(2002年くらいかな)に読んで、結構衝撃だったのだけどお気に入りの一冊。その映画化だったから、見ようかどうか迷いました。

でも監督が『下妻物語』の人だし、主演が中谷美紀。これなら、たぶん原作とは全く異なる作品として見ることができるかも、と思い劇場へ。原作への忠実性はこの際無視。むしろ全く異なったものの方が受け入れやすいと思って。

この映画も評価がいろいろ分かれているみたいだけど、私はかなり楽しめた。意外にも原作になかなか忠実。でも私が小説で得たイメージとは松子の描き方が全然違ったけど、これはこれで良し、と思う。小説でも何でも、感じ方は人それぞれだから。


すばらしいと思った点はいくつかあるのだけど、まず何をおいても中谷美紀。まえから好きな女優さんだったけど、彼女の実力をまざまざと見せ付けられた。撮影中、監督との軋轢があったとのことだけど、この映画で主演を張るのは相当苦労したと思う。素人目にみても、かなりハードだったのでは?と思い巡らさずにはいられない。でも彼女の体当たりで、しかも繊細で、人生に振り回されながらコロコロとその生き様も雰囲気も変わっていく松子を演じきっていると思った。

中には本人のインパクトが強すぎて、どんな役をやらせても「女優(男優)○○」にしか見えない人が多いのだけど、この人は違ったなぁ。ほめすぎ?


それからキャストもかなり豪華なのだけど、無駄に台詞を与えすぎたり登場させすぎないところが良かった。絶妙!と思ったのは、官藤官九郎が演じた小説家志望のDV男、スカパラ谷中敦の風俗マネージャー。他にも、荒川良良とか土屋あんなとか豪華な面子はたくさんいるのだけど、本当にチョイ役でそれ以上無駄に登場させない。土屋アンナや山田花子なんて画面にいるだけで台詞も一言もなかったし。こういうカメオ的な使い方も面白いな、と思った。

物語を語っていく役柄で松子の甥役の瑛太は、思い描いたとおりのキャスティングでよかったなぁ。


ちょっと演出がファンタジー過ぎるきらいはあったけど、それは監督の好みということで。とにかく中谷美紀に脱帽。他の女優には絶対できない役だと思う。適役、中谷!



お薦め度:★★★★☆

「グラディエーター」

2007年09月18日 | 映画~か~
たった今、『グラディエーター』観終わりました。
見始めた瞬間から、「映画館で見たい…」と永遠に叶わぬ夢を抱いてしまいました。あれは映画館で見る映画だわ。それでも2時間半、家の小さいテレビで見ていましたが、ぐんぐん引き込まれてしまいました。たまに自宅の居間であるという現実に引き戻されたりもしましたが(涙)、それでも楽しめる映画らしい映画です。

ああいう歴史スペクタクル(と言うのでしょうか?)を描かせたら、さすがにアメリカ映画はすごいね。作りこみすぎだろ、と思うシーンでは冷めそうになったりもしたけど、映画館で見てたらどっぷりはまっちゃうんだろうな。


ホアキンとラッセルの戦いは切な過ぎた。「切ない」という言葉では表現しきれない切なさでした。ホアキンの真っ白な衣装が、彼の独裁と同時に孤独を際立たせていたような気がします。陛下の姉役のコニー…なんとかさん(ごめんなさい)もぴったりでした。配役でのミスマッチに気をとられる映画ってたまにありますが、これはそういうのがなかったな。ホアキンに「ラッセルを殺せ」とささやく元老院の人はちょっと胡散臭かったけど。

ホアキン!!!本気で嫌いになりそうなほど憎たらしかった。見事なキャスティング。彼の演技も素晴らしかった。映画全体を彼の存在が締めていて、絶妙だったわ。

『ブラッド・ダイヤモンド』に出てたジャイモン・フンスーの存在感もよかった。この作品でも重要な役どころだったのですな。


ちなみに2年前、旦那にっきーの実家では、『グラディエーター』のサントラがヘビーローテでした。義父さんのお気に入り。

こういう映画らしい映画は、見るのに集中力と体力が必要になるから毎回では辛いけど、1年に1本は出会いたいです。


お薦め度:★★★★ (大画面で観て!)