思いつくまま

思いついたことを書いています。

日野原重明著『働く。-社会で羽ばたくあなたへ-』(冨山房インターナショナル)を読む。

2010年08月09日 00時00分00秒 | 読書
これは、あの『生き方上手』で大ブレークした今年99歳になる(自分の2倍も生きている。)日野原じいさんDr.が20前後の若者に向けて書いた本。

日野原じいさんが19~25歳までの若者7人と「働く」ということをテーマに対話した内容。
日野原じいさんが、この先あなたは何歳まで働いて何歳まで生きるのかと問うたところ、大学1年生の女性が30歳までと答えたのには驚きだった。
先日発表された日本人の平均寿命、女性が86.44歳で世界最高、男性でも79.59歳という時代なのに、若者の答えのほとんどは50~60歳くらいまでと答えていた。まだまだ先が長い若者には「死」ということは意識できないのだろう。
今流行の「うつ病」、飢餓や戦争で生きることだけで必死な時代には、自分の心の中を探っている余裕などないため、ありえへんとのこと、そうだよなぁ。

どんな辛い体験・試練もその体験を自分の一生の中でとらえなおし、時間をかけて学べば、人生にはむだな体験などひとつもないという日野原じいさんの言葉には、経験から裏打ちされた重みを感じた。
日野原じいさん、あんなに長生きしているけど、決して健康そのものというわけではなくて、結核にかかって挫折したり、1970年3月のよど号ハイジャック事件に遭遇したり、いろいろな経験をされていることがよくわかった。
就職にしても結婚にしても、最初から天職、理想の相手がガチガチに決まっているわけではなくて、一刻一刻に現れるハプニングに反応を積み重ねて、年月をかけて徐々に適合させていくものだという考えもよくわかる。
日野原じいさんは、本を読んで感化された(会ったこともない)オスラー医師を師匠と仰いでいたが、普通の人ではなかなか本を読んだだけで自分の人生の師匠と思うような人にめぐり合うことはないのではないか。

夏目漱石が「どんな職業であれ、ただ好きだからやるのではだめだ。人のためにするという公共性をもつべきものが職業である」と言っているらしいが、このじいさんも、趣味の中に生き甲斐を見出すのはむずかしい、好きでやるのは道楽、「働く」というのは自分を他のために寄与すること、人は一生をかけて自分の人生を賭ける価値のある仕事を模索する存在なのだろうとおっしゃっている。
生涯現役で勤められる仕事に就いている人は、こういうことが言えるかもしれないが、自分のように定年が決まっている者にとっては、こういうふうに一生を賭けてというのは無理だし、また、そんなに歳をとってまで働く気持ちもない。

ただ、自分が今就いている職業は、自分が学生時代に思い描いた理想に近いものなので(ただ、自分が60歳になるまで今のように働く姿は全く想像できないが)、あともう少しは頑張ってみようとは思わせる内容の本だった。

このじいさん、「葉っぱのフレディ」のミュージカルをニューヨークでもやっちゃうのかよ。本当に元気いいなぁ。
コメント
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