羊と鋼の森 宮下奈都 読みました( 〃▽〃)127
★★★★★ 243頁
調律したての瑞々しいピアノの音が頁の間から立ち上がってきました。
皆さんがこの本を絶讚するのがとても納得できます。
散りばめられた文章の言葉のひとつひとつが絡まり和音となっています。
宮下さんの練り上げられた想いが、
スコーレから一繋がりに底流にあるものが、
この物語にもに繰り返す音楽のモチーフのように納められています。
シリアルキラーも怪奇現象も猫も美味しい料理も出てきません。(笑)
キャッチーでセールスポップに有効なそれらのネタはないのです。
それなのに一人の男子が人生の鍵に出合い成長して行くだけの物語が
読者は実に惹き付けられて、胸を打たれます。
好きであればあるほどに悩み、こだわり、常に問わずにはいられないもの。
向き合うほどに己の技術のいたらなさを思い知るピアノの調律という仕事。
この物語の調律師という仕事は特殊でも、
多くの読者は自分の仕事や家族としての役割という共通の要素を通じて
宮下さんに自分の背中が押されてることを感じるでしょう。
板鳥さんや柳さんのかけてくれる声
「お前はそのままで がんばってゆけばいいんだ。」と。。。
良くできた創作物、映画や舞台、バレエ、絵画といったものが持っている
ある種のマンネリ的でもある定型とでもいうような普遍性さえ持っています。
なんというか完結された美しさとか予定調和のようなものを体現してるんですね。スゴいなあ。流石大賞本。
メディアで評判だけど読むとちょっと違う感じのする売り出しの本や、
表題と作者は知ってるけど読むとこれの何処が名作なの?と首をひねる本。
それらとはほんの僅かだけど、とても重要な一歩が違う本でした。
本の一文一文がまさに自分のためにリアルタイムで語りかけてきている。
そんな読書体験に耽溺させていただきました。ごちそうさまでした。m(_ _)m
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます