世界の果てのこどもたち 中脇初枝 読了です381頁
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途中の場面の敗戦後の満州、中国で日本人達が受ける酷しい運命の仕打ち。
戦争が、とか軍隊が、とか何かに悪いことの根源を預けることが憚られるほど読んでいて辛い。
そしてそれに堪えて読み続けると、苛酷な境遇の中に差す僅かな光明、人間性の辛うじての救済のようなものに励まされます。
中脇さんはたぶんこの本が上手く書けた、とか時分の言いたかったことを全部ここに注げた、とは思ってもいないことだと思います。
読み方によれば先の戦争批判や平和賛美、さらには憲法や自衛隊にまで論議の火種になりかねない内容なのに、そしてこの内容を敢えて書かねばならなかった中脇さんにとっても書くことは辛かったでしょう。
伝え方書き方については「自分はもっと違う形で伝えたかったのに、こんな風にしか表現できないっ」と悶えている作家の姿が読了後の今では見えてきました。
でもだからこそ読者には作者の書きたくて書ききれない想いの断片が物語の小さなエピソードや登場人物達の語る台詞を通じて共感できているような気がします。
反対とか賛成とかを越えたところに存在する何かしらの尊いもの。
辛さや理不尽な不幸が今も世界のどこかに存在していること。
そしてそこに今も現実にいるはずのこの物語に出てきたようなこどもたち。
この物語を通じて彼女達に想いを寄せて欲しい。。。。
それが中脇さんが書ききれずに伝えたかった書題の意味なのだろうと僕は思いました。
多くの大人達とこどもたちに読んで欲しい本です。
ですが、表面的な恣意的な面を捉えて課題図書や教材的にこの本が一部の思想組織の手によりおかしな扱いや道具になることは僕は最も望まないことです。
本当に本の気持ちがわかるひとに真剣に大切に読み継がれていって欲しい、そんな遺すべき一冊になる本だと思いました。
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