幻想小説周辺の 覚書

写真付きで日記や趣味を書く

読書レビュー 川崎秋子 肉弾

2022-07-13 15:37:00 | 書評 読書忘備録
「肉弾」 河崎秋子  256頁
失礼ながら初読みの河崎さん、しかしながら一気読みの自分の心境は極めて満ち足りた満腹感と疲労感であった。まるで超人気の焼肉屋さんで、しかも上ホルモンの大皿をわしわしとお腹はち切れるくらい食べ尽くした時のようである。
野生、というか本能とか欲望といった種火が胃の中に拡がって燃え盛り、真夏のじとじとした大気や汗でさえも心地よく誤感してしまっている。連日の猛暑に倦怠気味の諸氏には激辛香辛料のように効くに違いない。






前半1/3辺りは無気力なニートの男子とその子に反してワイルドで自己中心的な父親の関係性が描写される。建設会社をワンマン経営し、母親が3人も代わりしかもその3人目も家を出てしまっている。長男は高校駅伝で膝を故障して以来、無気力に人間関係にも家庭にも無関心になり引き込もってばかり。
前向きなきっかけに成ればと父親は強引に猟銃免許の取得を長男に勧め、二人で北海道に鹿射ち猟に出掛けた。
淡々、乾々としながら欝屈としたストーリーは途中一気に奈落に突き落とされる。
怠惰な日常から血と泥の非日常へ、
父親の独善的な思い付きから自然保護区の中の人喰い熊を射ちに入り込み、一瞬のうちに二人は熊の襲撃に遭ってしまう。

その先の熊嵐的な野生動物のテラーと主人公のニートからケンシロウへの覚醒も、冷静に思い返せば漫画的、戯作的と気づくものの読んでいる最中は作者の筆力に振り回されっぱなしでそんな暇などありはしない。電車の中であろうが食事中であろうが一気にこの物語世界のゴールまで走り足掻いていただきたい。きっと僕のように無性にホルモン焼が食べたくなっているはずだ。(*・x・)ノ~~~♪(*・x・)ノ~~~♪(*・x・)ノ~~~♪


最新の画像もっと見る

コメントを投稿