未来をよむ えびせん塾

理科好きっ子育成の一役を担えたら..。

「エンジンがとれたーっ!」

2005年03月27日 | Weblog
「エンジンがとれたぁーっ!」
 あれは私が幼稚園の頃だっただろうか、家の車のエンジンがとれた! 父親がとってしまったのである。ルノーというフォルクスワーゲン似のカブトムシ型の車の後部のトランクみたいなところに、3本の棒(1本は2.5m程度)を一カ所で束ねて作った三脚が立ててあった。その上部にはカラカラと音のする滑車が取り付けられ、そこにエンジンがぶら下がっていた。この滑車はそれに取り付けてある鎖の輪(輪の直径は1.5~2m)をカラカラと引っ張ることによって、重たい物もつり上げることができるらしい。エンジンがとれてしまってたのである。「パパ、こ、これ取っちゃったら動かなくなっちゃうよー。」と子供ながらにとても心配であった。エンジンのない車は、重荷を下ろしてあげた馬のように、如何にも軽々しく後輪をタイヤハウスからのぞかせ、おしりを高々と上げていた。車から取り出されたエンジンは、ただの黒い鉄のかたまりにしか見えなかった。心臓部を取ったとはこの事だろうか。軽々しい車は幼い私に軽快感を映し出すものの、高台にある、この家の車庫まで上ってくる力強さを失って見えた。
 「何かにおーい。」そう。コンクリートの車庫の地面には車が血を流したかのようにオイルとガソリンが流れていた。「パパ、車が泣いちゃうよ。」幼い子供にこの光景は痛々しく、無惨な車の姿に映ったのでした。
 私の親父は放送局の技術屋。職場には送信設備や訳のわからないモーターや、部屋の壁には「ダンパー」とかかれた黒いノブが沢山あり、どんな機械にでも対処しないといけないといった感じでした。
 親が機械をいじって、今まで目にした事のない光景を見ることは、子供にとって強烈な印象を残します。これらが私の今を作っているのではないかと。

By えびせん