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武満徹の音楽 シリーズ第3回 高関健/東フィル

2012年11月24日 | pocknのコンサート感想録2012
11月23日(金)高関 健 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
~武満徹の音楽 第3回 遠い呼び声の彼方へ!~
文京シビックホール


【曲目】
1.武満 徹/弦楽のためのレクイエム(1957)
2.樹の曲(1961)
3.地平線のドーリア(1966)
4.アステリスム(1967)
5.フォー・アウェー(1973)
6.閉じた眼(1979)
7.十一月の霧と菊の彼方から(1983)
8.冬(1971)
9.遠い呼び声の彼方へ!(1980)
【アンコール】
「はなれ瞽女おりん」のテーマ
Pf:高橋悠治(4~7)/Vn:漆原啓子(7,9)

武満徹の曲は演奏会のプログラムに乗ること自体は珍しくないが、プログラム全てが武満作品というのは、存命中は折に触れてあったが今では滅多にない貴重な機会。しかもよく演奏される耳当たりのいい映画音楽ではなく、武満が世に問うた重要な作品をいくつも取り上げたことには、まず主催した文京シビックホールと、演奏した高関さんや東フィルに敬意を表したい。演奏曲目は時系列を追って、武満のオーケストラデビュー作品の「弦楽のためのレクイエム」で始まり、50歳の時に書かれた「遠い呼び声の彼方へ!」まで、9作品が並んだ。これは武満の音楽の変遷をたどる上でも意味深いし興味深い。

ただ、最も印象に残ったのはプログラムの中ほどに置かれた高橋悠治のピアノソロと漆原啓子のヴァイオリンとのデュオだった。高橋悠治がソロで演奏した「フォー・アウェイ」と「閉じた眼」は、長くて柔軟な触手を自由に伸ばして、今この瞬間に音楽が生まれたような即興性の高い拡がりを表現した。漆原さんが弾いた「十一月の霧と菊の彼方から」もよかった。多用されるフラジオレットのデリケートな音色が夢幻の世界へと静かに優しく誘(いざな)ってくれた。

高関健指揮する東フィルは、柔らかく端正な音の運びにエモーショナルな熱気を乗せて、武満ワールドの魅力を伝えてくれたが、特に最初のレクイエムとアンコールでは熱く訴えかけてくるものを感じた。他のオケの作品では、更に細部のそのまた細部までの緻密さや繊細さ、研ぎ澄まされた音色が聴きたかった。虹色の淡い光を放つ独特の武満サウンドや、「闇のなかに気づいたら淡い光が浮かんでいた」みたいな、全ての感覚を研ぎ澄まして感じ取れるような武満の音楽からのメッセージを表現するのは並大抵のことではない、ということを改めて実感することにもなった。

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