10月7日(日)山口徳花(Vc)/守重結加(Pf)
~笠井誠一展記念コンサート~
練馬区立美術館2階ロビー
【曲目】
1. クープラン/チェロとピアノのための演奏会用小品集
2. ドビュッシー/チェロとピアノのためのソナタ ニ短調
3. プーランク/チェロとピアノのためのソナタ FP143
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演奏会で使用されたスクエアピアノ
練馬区立美術館の企画展、笠井誠一展の初日に合わせて行われたロビーコンサートを聴いた。練馬区演奏家協会会員のピアニスト、守重結加さんと、ベルリン芸術大学の留学で知り合ったというチェリストの山口徳花さんとのデュオで、パリで活動した経歴を持つ笠井誠一氏の企画展にちなんで、フランスの作曲家の作品が並んだ。
今年のアニバーサリー作曲家のクープランとドビュッシーを聴けるのも嬉しいが、もう一つの興味は、美術館が所有し、普段からロビーに置かれている1877年米スタインウェイ社製のスクエアピアノの音が聴けること。奏でられた歴史的な楽器は、フォルテピアノのような暖かく柔らかい木の響きがして、チェロとの相性も良いと感じた。
最初に演奏されたクープランの組曲は、典雅な曲調が、吹き抜けで高い天井を持つロビーの空間にマッチして、王宮にいるような気分になった。二人は、ここの独特な響きを大切にしつつ、丁寧に音を空間に解き放ち、その響きを確かめながら音を紡いでいるように聞こえた。匂やかな表情がこの曲に相応しく、スクエアピアノの音が優しくチェロに寄り添っていた。
続くドビュッシーは、クープランで空間に解き放たれた音が、今度は内側に集まり、緊迫した濃い演奏となった。チェロとピアノが複雑に入り組んだこの曲で、両者の歯車ががっちりと噛み合い、更にムーブマンやスピード感も伴って、熱くてテンションが高い一つの塊として聴き手の心に飛び込んできた。
最後はプーランク。プーランクの様々なソナタのなかで、このチェロソナタは馴染みがなかったが、山口さんのMCでの曲紹介がわかりやすくイメージしやすかったこともあって、コンサートで一番のめり込むことができた。プーランクならではの、気まぐれな遊びや大真面目な訴え、宗教的な祈りなどが次々と入れ替わり現れる魅力的な音楽。
守重さんと山口さんは、気分の切り替えやパート間の役割交替も巧みで、次々に登場する様々な「顔」や「表情」を、その時々の役者になり切って表現し、ドラマチックで華やかなデュオを楽しませてくれた。最も印象に残ったのは、第4楽章の最初と最後、山口さんが「大聖堂の荘重な響き」に例えたところ。チェロのフルパワーの訴えが、ダイナミックなだけでなく、切々とした「叫び」として迫ってきた。守重さんが弾くスクェアピアノは、モダン楽器のようにガンガン鳴り響くことはないが、存在感は十分だし、チェロとのバランスもいい。第2楽章の静かな和音進行のフレーズの何とも言えない美しさなど、心に残るシーンが多々あった。
コンサートの前後には、笠井誠一展を鑑賞した。静物画を描き続けている笠井氏の作品は、形、色彩、線、質感といった諸要素が個性を競いつつ、考え抜かれた構図によって空間の中で心地よいハーモニーを奏でていた。11月25日まで。
山口徳花 チェロリサイタル 2018.5.12 サロン・テッセラ
♪山口徳花さん出演のYouTubeを聴く
トリオ「森の詩」(MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美)
拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け
~笠井誠一展記念コンサート~
練馬区立美術館2階ロビー
【曲目】
1. クープラン/チェロとピアノのための演奏会用小品集
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2. ドビュッシー/チェロとピアノのためのソナタ ニ短調
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3. プーランク/チェロとピアノのためのソナタ FP143
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演奏会で使用されたスクエアピアノ
練馬区立美術館の企画展、笠井誠一展の初日に合わせて行われたロビーコンサートを聴いた。練馬区演奏家協会会員のピアニスト、守重結加さんと、ベルリン芸術大学の留学で知り合ったというチェリストの山口徳花さんとのデュオで、パリで活動した経歴を持つ笠井誠一氏の企画展にちなんで、フランスの作曲家の作品が並んだ。
今年のアニバーサリー作曲家のクープランとドビュッシーを聴けるのも嬉しいが、もう一つの興味は、美術館が所有し、普段からロビーに置かれている1877年米スタインウェイ社製のスクエアピアノの音が聴けること。奏でられた歴史的な楽器は、フォルテピアノのような暖かく柔らかい木の響きがして、チェロとの相性も良いと感じた。
最初に演奏されたクープランの組曲は、典雅な曲調が、吹き抜けで高い天井を持つロビーの空間にマッチして、王宮にいるような気分になった。二人は、ここの独特な響きを大切にしつつ、丁寧に音を空間に解き放ち、その響きを確かめながら音を紡いでいるように聞こえた。匂やかな表情がこの曲に相応しく、スクエアピアノの音が優しくチェロに寄り添っていた。
続くドビュッシーは、クープランで空間に解き放たれた音が、今度は内側に集まり、緊迫した濃い演奏となった。チェロとピアノが複雑に入り組んだこの曲で、両者の歯車ががっちりと噛み合い、更にムーブマンやスピード感も伴って、熱くてテンションが高い一つの塊として聴き手の心に飛び込んできた。
最後はプーランク。プーランクの様々なソナタのなかで、このチェロソナタは馴染みがなかったが、山口さんのMCでの曲紹介がわかりやすくイメージしやすかったこともあって、コンサートで一番のめり込むことができた。プーランクならではの、気まぐれな遊びや大真面目な訴え、宗教的な祈りなどが次々と入れ替わり現れる魅力的な音楽。
守重さんと山口さんは、気分の切り替えやパート間の役割交替も巧みで、次々に登場する様々な「顔」や「表情」を、その時々の役者になり切って表現し、ドラマチックで華やかなデュオを楽しませてくれた。最も印象に残ったのは、第4楽章の最初と最後、山口さんが「大聖堂の荘重な響き」に例えたところ。チェロのフルパワーの訴えが、ダイナミックなだけでなく、切々とした「叫び」として迫ってきた。守重さんが弾くスクェアピアノは、モダン楽器のようにガンガン鳴り響くことはないが、存在感は十分だし、チェロとのバランスもいい。第2楽章の静かな和音進行のフレーズの何とも言えない美しさなど、心に残るシーンが多々あった。
コンサートの前後には、笠井誠一展を鑑賞した。静物画を描き続けている笠井氏の作品は、形、色彩、線、質感といった諸要素が個性を競いつつ、考え抜かれた構図によって空間の中で心地よいハーモニーを奏でていた。11月25日まで。
山口徳花 チェロリサイタル 2018.5.12 サロン・テッセラ
♪山口徳花さん出演のYouTubeを聴く
トリオ「森の詩」(MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美)
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