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白神典子 ― 4人で奏でるピアノ・コンチェルトの世界

2006年06月17日 | pocknのコンサート感想録2006
6月17日(土)白神典子 ― 4人で奏でるモーツァルトのピアノ・コンチェルトの世界
トッパンホール

【曲目】
1.モーツァルト/ピアノ三重奏曲 変ロ長調 K502 
2. モーツァルト/フンメル編曲/ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466
3. モーツァルト/フンメル編曲/ピアノ協奏曲第25番 K503
【アンコール】
1. モーツァルト/交響曲第40番ト短調~第1楽章
2. モーツァルト/交響曲第40番ト短調~第3楽章
【演 奏】
白神典子(Pf)/ヘンリク・ヴィーゼ(Fl)/ ペーター・クレメント(Vn)/ティボル・ベーニ(Vc)


モーツァルトのピアノコンチェルトを室内楽でやる、という興味深いプログラムに加え、チラシの白神典子のセクシーポーズに惹かれて出かけたコンサート。

最初のオリジナル曲のトリオはおれが今さらっている曲だけにとりわけなじみがある。自然な流れ、「フォルテ」と書いてあるところも無駄な力は入らず、さりげなくその音にちょっぴり重力が加わるような表現に「そうだよなぁ、こういう風に弾かなけりゃモーツァルトの魅力は壊れちゃうなぁ」と自分への反省点をあちこちに聴く。クレメントのヴァイオリンもベーニのチェロも柔らかい音でとてもエレガントに歌う素敵なトリオの演奏。

白神典子って実は初めて聴いたが、チラシのセクシーポーズからひとクセあるようなユニークな演奏をするかも、という予想とは違い、あくまでも自然に、歌を紡いでいく。様式観もしっかりしている。

フルートも加わった続くコンチェルトの室内楽版もそれぞれがいい歌を奏でていた。でもこれらを聴いて浮かんが疑問:

「フンメル編曲のこのコンチェルトって一体なんだろう…」

ピアノは最初から最後まで出ずっぱり、これはこの時代のやり方の踏襲で仕方ない?でも、それがピアノと他の楽器の対比の面白さや楽器固有の魅力を損なってしまう。それに、とって付けたような弦やフルートのパートが面白くない。もっと自由にメロディーを歌わせ、音域も広げてやればいいのに… たまに与えられたヴァイオリンのメロディーには大抵ピアノがユニゾンで重なって来て、ピアノと弦ソロのユニゾンってつまらないと感じる。たまーにヴァイオリンがここぞとばかり歌う部分はやっぱりいい。何で他もみんなこうしないんだろう? ピアノが時々原曲よりも跳躍したり高い音に上ったりしても、ただのアドリブ以上の価値は感じられない。

白神さんはこの編曲版でCDを何枚も出しているが、例えばラヴェル版「展覧会の絵」とかシェーンベルク版「ブラームスのピアノカルテット」とか、ウェーベルン版「バッハのリチェルカーレ」とか、ああいった作曲家の個性が出た名編曲と比べたら所詮面白みのないただの室内楽への書き写しでしかないような気がして仕方ない。原曲にない魅力が少しぐらいあってもいいんじゃないの?フンメルの曲はトランペットコンチェルトぐらいしか聴いたことないけど印象は極めて薄い。

フンメルの編曲に過度の期待をした方が悪かったのな… という気分で帰路についた。

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