1月14日(木)セバスティアン・ヴァイグレ指揮 読売日本交響楽団
~第638回名曲シリーズ~
サントリーホール
【曲目】
1.ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調 Op.30
Pf:藤田真央
2.チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調 Op.36
読響は去年、コンサート中止の嵐が明けたあとの数々の素晴らしい演奏で、僕の中で急速に注目度が上がったオーケストラ。指揮のヴァイグレのことは知らなかったが、その読響の常任指揮者で、読響を振るために隔離覚悟で来日したと知り、これは気合いのこもったいい演奏会になるに違いないとGoToイベントの割引チケットを購入した。サントリーホールはこの状況下で9割に達する入り。
前半はラフマニノフ。人気絶頂の藤田真央のピアノが鳴り始めて真っ先に感じたのは、粒立ちの良さと磨かれた美音。パワーで押しまくるタイプではなく、緻密で繊細な表現を重んじ、丁寧に、しかも音楽を大きく掴んで伸びやかな呼吸で聴かせる。第1楽章のカデンツァも、ガンガン攻めまくるよりも細やかな表情による音楽的な表現が耳を引いた。切れ味も抜群で、オケとの対話を敏捷に交わして楽しんでいる様子。ヴァイグレ指揮の読響は音がリアルに映えて頼もしいが、藤田のピアノは重量感という点ではオケの音圧に敵わない場面もあり、オペラを得意とするヴァイグレなら部分的にさじ加減を調整出来たのでは?それでもフィナーレ終盤での白熱したバトルは十分な聴き応え。
後半はチャイコの4番。これは期待を更に上回る圧倒的な演奏だった。ヴァイグレは読響からスケールが大きく骨太な演奏を引き出した。一方で、冒頭の「運命のファンファーレ」の表現で含みを持たせるなど、攻撃性よりも大きな包容力が全曲から感じられた。大地に根を張る大陸的な逞しさがあり、ギラリと光る渋めの色彩が強いインパクトを与える。第2楽章からは極寒のなかに建つ一軒家の中の暖炉の温もりとか、手にハーっと息を吹きかけたような温もりなども感じた。
筋金入りの弦の強靭な輝きや、管楽器プレイヤーの巧さも耳を引いたし、ティンパニは生き物のように雄弁で、高い実力を示した読響が、ヴァイグレの指揮でロシアのオーケストラのような音を聴かせた。日本でこういうタイプの指揮者にはなかなかお目にかかれないかも。思えば、外国人指揮者の演奏を聴くのは、去年2月のN響(パーヴォ・ヤルヴィ)以来11カ月ぶり。日本人とは異なる「外の風」を久しぶりに感じ、やはり世界中からアーティストを迎えることが、多様な世界を体験するうえで大切だと感じた。
第4楽章は圧倒的な演奏だったが、そのなかでも豊かな抑揚を施して進んだことで、最後に一気呵成してなだれ込んだコーダでの炸裂が効いた。心臓バクバクでトリハダ立ちまくり。一瞬の間をおいて大喝采。ブラボーが飛ばないのが寂しい。「ワオー!」ならOKにしませんか?
オケが退場を始めて拍手のトーンが下がると時差退場の案内アナウンスが始まったが、再び拍手が盛り返してくるとアナウンスも中断。ヴァイグレがステージに再登場するとスタンディングの聴衆からの拍手は大きく盛り返していつまでも続いた。ヴァイグレも感極まった様子。ロックダウンが続くドイツからはるばる来て、満場の熱い喝采を浴びるのはヴァイグレにとっても感慨ひとしおに違いない。コロナに感謝するなんて気持ちは全くないが、コロナのために出会った感動のコンサート、またヴァイグレ/読響を聴きたいと思った。
尾高忠明指揮 読売日本交響楽団/小曽根真(Pf) 2020.9.8 サントリーホール
読響 特別演奏会:コバケンのベト7! 2020.7.21 サントリーホール
読響 特別演奏会:鈴木優人指揮「ジュピター」ほか 2020.7.5 東京芸術劇場
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前半はラフマニノフ。人気絶頂の藤田真央のピアノが鳴り始めて真っ先に感じたのは、粒立ちの良さと磨かれた美音。パワーで押しまくるタイプではなく、緻密で繊細な表現を重んじ、丁寧に、しかも音楽を大きく掴んで伸びやかな呼吸で聴かせる。第1楽章のカデンツァも、ガンガン攻めまくるよりも細やかな表情による音楽的な表現が耳を引いた。切れ味も抜群で、オケとの対話を敏捷に交わして楽しんでいる様子。ヴァイグレ指揮の読響は音がリアルに映えて頼もしいが、藤田のピアノは重量感という点ではオケの音圧に敵わない場面もあり、オペラを得意とするヴァイグレなら部分的にさじ加減を調整出来たのでは?それでもフィナーレ終盤での白熱したバトルは十分な聴き応え。
後半はチャイコの4番。これは期待を更に上回る圧倒的な演奏だった。ヴァイグレは読響からスケールが大きく骨太な演奏を引き出した。一方で、冒頭の「運命のファンファーレ」の表現で含みを持たせるなど、攻撃性よりも大きな包容力が全曲から感じられた。大地に根を張る大陸的な逞しさがあり、ギラリと光る渋めの色彩が強いインパクトを与える。第2楽章からは極寒のなかに建つ一軒家の中の暖炉の温もりとか、手にハーっと息を吹きかけたような温もりなども感じた。
筋金入りの弦の強靭な輝きや、管楽器プレイヤーの巧さも耳を引いたし、ティンパニは生き物のように雄弁で、高い実力を示した読響が、ヴァイグレの指揮でロシアのオーケストラのような音を聴かせた。日本でこういうタイプの指揮者にはなかなかお目にかかれないかも。思えば、外国人指揮者の演奏を聴くのは、去年2月のN響(パーヴォ・ヤルヴィ)以来11カ月ぶり。日本人とは異なる「外の風」を久しぶりに感じ、やはり世界中からアーティストを迎えることが、多様な世界を体験するうえで大切だと感じた。
第4楽章は圧倒的な演奏だったが、そのなかでも豊かな抑揚を施して進んだことで、最後に一気呵成してなだれ込んだコーダでの炸裂が効いた。心臓バクバクでトリハダ立ちまくり。一瞬の間をおいて大喝采。ブラボーが飛ばないのが寂しい。「ワオー!」ならOKにしませんか?
オケが退場を始めて拍手のトーンが下がると時差退場の案内アナウンスが始まったが、再び拍手が盛り返してくるとアナウンスも中断。ヴァイグレがステージに再登場するとスタンディングの聴衆からの拍手は大きく盛り返していつまでも続いた。ヴァイグレも感極まった様子。ロックダウンが続くドイツからはるばる来て、満場の熱い喝采を浴びるのはヴァイグレにとっても感慨ひとしおに違いない。コロナに感謝するなんて気持ちは全くないが、コロナのために出会った感動のコンサート、またヴァイグレ/読響を聴きたいと思った。
尾高忠明指揮 読売日本交響楽団/小曽根真(Pf) 2020.9.8 サントリーホール
読響 特別演奏会:コバケンのベト7! 2020.7.21 サントリーホール
読響 特別演奏会:鈴木優人指揮「ジュピター」ほか 2020.7.5 東京芸術劇場
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