1月13日(水)クァルテット・エクセルシオ
~Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇~ ~ベートーヴェン生誕250年記念 弦楽四重奏全曲チクルス第3回~
浦安音楽ホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 「ラズモフスキー1番」Op.59-1
2.ベートーヴェン/大フーガ変ロ長調 Op.133
3.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 Op.130
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クァルテット・エクセルシオによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会の3回目。ベートーヴェンのアニヴァーサリーイヤーから年は改まったが、このプロジェクトは元々年を跨いで予定されていた。ベートーヴェンの誕生日は12月だしね。
今夜は異色作の「大フーガ」を据えたプログラム。最初はラズモフスキー第1番。これは去年ウェールズ・カルテットでフェイントをかまされたのが記憶に新しいが、エクは正攻法。冒頭の大友さんのチェロのメロディーも最後まで朗々と聴かせてくれる。やっぱりこれがいい。エクはいつもながら柔らかなハーモニーで滑らかに曲を進める。ただ、いつものエクの演奏で度々感じる「ここ、すごくいい!」と思える場面が少ない。第1楽章に出てくる特徴的な、4人で一つのハーモニーをフワッと投げ上げるところも、期待していた感じにはならない。一番しっくり来たのは第3楽章。エクはこうしたしっとり系の音楽を本当に潤い豊かに、そして自然に聴かせてくれる。
次は「大フーガ」。元々第13番の終楽章として書かれた作品を、エクは13番の前、しかもプログラムの前半に置いて、本体の13番と隔てた。この曲は何度聴いても苦しそうな喘ぎに聴こえてしまうのだが、エクは躍動感のある生きのいい演奏を聴かせた。とりわけ最終盤の、気負うことなく、しかしグイグイと邁進する姿が胸に迫ってきた。その一方で、冒頭や中間部のゆっくりした部分のインパクトは弱かった。それにしてもこの曲はつかみどころがよくわからない。「大フーガ」と呼ばれるほど「フーガの極致!」にも聴こえないし。
これに比べ、最初は「大フーガ」がくっついていた第13番でのベートーヴェンの筆致は実に軽やかで無理がない。そしてエクの演奏は、この音楽が持つそうした天上的な愉悦を存分に味わわせてくれた。4人の感覚がここでは一層鋭敏になり、研ぎ澄まされた感覚で交感し合う。それは子供たちが無邪気に楽しげに鬼ごっこをする様子にも感じられた。捕まりそうな瞬間にスルリとかわしたり、捕まった瞬間にビビッと反応したり、アンサンブルでの身のこなしが自然で鮮やか。
第4楽章は、綿毛でできた毬を宙で受け渡しするように繊細で柔らかく、音が淡い香りを残して弧線を描くよう。これこそエクの真骨頂とも云える演奏。続く第5楽章カヴァティーナは極上の美しさを湛えていたし、フィナーレもエクならではの、余分な力が抜けた軽快で楽し気で、ウキウキとした幸福感に溢れた演奏。ベートーヴェンが周りの助言を受け入れて「大フーガ」の代わりにこの楽章を書いたのはやっぱり大正解だろう。そんなことを心底納得させてくれるような演奏だった。
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第2回 2020.12.16 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ 第37回東京定期演奏会 2019.11.17 東京文化会館小ホール
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2.ベートーヴェン/大フーガ変ロ長調 Op.133
3.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 Op.130
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クァルテット・エクセルシオによるベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏会の3回目。ベートーヴェンのアニヴァーサリーイヤーから年は改まったが、このプロジェクトは元々年を跨いで予定されていた。ベートーヴェンの誕生日は12月だしね。
今夜は異色作の「大フーガ」を据えたプログラム。最初はラズモフスキー第1番。これは去年ウェールズ・カルテットでフェイントをかまされたのが記憶に新しいが、エクは正攻法。冒頭の大友さんのチェロのメロディーも最後まで朗々と聴かせてくれる。やっぱりこれがいい。エクはいつもながら柔らかなハーモニーで滑らかに曲を進める。ただ、いつものエクの演奏で度々感じる「ここ、すごくいい!」と思える場面が少ない。第1楽章に出てくる特徴的な、4人で一つのハーモニーをフワッと投げ上げるところも、期待していた感じにはならない。一番しっくり来たのは第3楽章。エクはこうしたしっとり系の音楽を本当に潤い豊かに、そして自然に聴かせてくれる。
次は「大フーガ」。元々第13番の終楽章として書かれた作品を、エクは13番の前、しかもプログラムの前半に置いて、本体の13番と隔てた。この曲は何度聴いても苦しそうな喘ぎに聴こえてしまうのだが、エクは躍動感のある生きのいい演奏を聴かせた。とりわけ最終盤の、気負うことなく、しかしグイグイと邁進する姿が胸に迫ってきた。その一方で、冒頭や中間部のゆっくりした部分のインパクトは弱かった。それにしてもこの曲はつかみどころがよくわからない。「大フーガ」と呼ばれるほど「フーガの極致!」にも聴こえないし。
これに比べ、最初は「大フーガ」がくっついていた第13番でのベートーヴェンの筆致は実に軽やかで無理がない。そしてエクの演奏は、この音楽が持つそうした天上的な愉悦を存分に味わわせてくれた。4人の感覚がここでは一層鋭敏になり、研ぎ澄まされた感覚で交感し合う。それは子供たちが無邪気に楽しげに鬼ごっこをする様子にも感じられた。捕まりそうな瞬間にスルリとかわしたり、捕まった瞬間にビビッと反応したり、アンサンブルでの身のこなしが自然で鮮やか。
第4楽章は、綿毛でできた毬を宙で受け渡しするように繊細で柔らかく、音が淡い香りを残して弧線を描くよう。これこそエクの真骨頂とも云える演奏。続く第5楽章カヴァティーナは極上の美しさを湛えていたし、フィナーレもエクならではの、余分な力が抜けた軽快で楽し気で、ウキウキとした幸福感に溢れた演奏。ベートーヴェンが周りの助言を受け入れて「大フーガ」の代わりにこの楽章を書いたのはやっぱり大正解だろう。そんなことを心底納得させてくれるような演奏だった。
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