4月26日(木)ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK交響楽団
《2018年4月Bプロ》 サントリーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/交響曲第8番ヘ長調 Op.93
2.ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調 Op.92
一昨年暮れの第九以来、1年4か月ぶりにブロムシュテットの元気な姿に再会できた。そして演奏も、単に「元気」なんて言葉ではとても済ませられないほどの、エネルギーと生気に満ち溢れ、ベートーヴェンの魂が演奏に乗り移ったようなリアルな体験をした。プログラムはベートーヴェンの8番と7番の2曲というシンプルな構成。
最初にブロムシュテットがステージに姿を現したときから盛大な拍手に加えてブラボーまでかかり、それはちょっと気が早いんじゃないの?と思ったが、8番の最初のたった1拍目の一撃だけで全身に電気が走った。とにかく音が全然違う。何というか、押し寄せてきた大波が砕け散る瞬間を捉えた、あの有名な北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏」のシーンが、画面から飛び出してきたような極限の臨場感。あまりにも音が近くに迫ってきたので、いつもとオケの位置が違うのではと確かめてしまったほど。
新鮮で活きがよく、光に溢れ、今まさに音楽が生まれ出た瞬間に居合わせたような一期一会の感覚。これこそ、僕が最近のN響にずっと求めていたものだ。そんな迸るエネルギーの放出だけでなく、ドイツ語のmusizieren(ムズィツィーレン)という響きと意味にぴったりの、音楽する喜びにも溢れている。ベートーヴェンが200年の歳月を飛び越えて、今を生きる私たちに「現代のベートーヴェン」として強烈なメッセージを届けてくれた演奏。素晴らしすぎる!
休憩を挟んで演奏した7番も、エネルギーに溢れ、臨場感があり、随所でワクワクさせてくれた。フレーズ同士が手を取り合って飛びかかってくるような連帯感から生まれるスケールの大きな躍動感もいい。第2楽章での「語り」の奥深さ、第3楽章の、とりわけトリオの底力と推進力、その勢いをそのままに、エネルギッシュに突き進んだフィナーレの終盤、高揚しても細部までキチンと歯車がかみ合い、抑揚やバランスの取り方の変化が有機的で、心躍らせてくれ、終盤のギアアップではトリハダが収まらなかった。
8番を聴いた衝撃から想像した、極限の興奮状態をもたらす演奏というよりは、響きにも落ち着きが加わり、磨きがかかり、大曲としての風格も具えた演奏で、期待したものとは少し違ったが、老大家と呼ぶにはあまりに若々しい、旬の演奏を届けてくれたブロムシュテットのみなぎる力とN響の実力を堪能した演奏会となった。
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最初にブロムシュテットがステージに姿を現したときから盛大な拍手に加えてブラボーまでかかり、それはちょっと気が早いんじゃないの?と思ったが、8番の最初のたった1拍目の一撃だけで全身に電気が走った。とにかく音が全然違う。何というか、押し寄せてきた大波が砕け散る瞬間を捉えた、あの有名な北斎の浮世絵「神奈川沖浪裏」のシーンが、画面から飛び出してきたような極限の臨場感。あまりにも音が近くに迫ってきたので、いつもとオケの位置が違うのではと確かめてしまったほど。
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8番を聴いた衝撃から想像した、極限の興奮状態をもたらす演奏というよりは、響きにも落ち着きが加わり、磨きがかかり、大曲としての風格も具えた演奏で、期待したものとは少し違ったが、老大家と呼ぶにはあまりに若々しい、旬の演奏を届けてくれたブロムシュテットのみなぎる力とN響の実力を堪能した演奏会となった。
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