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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

オーケストラ・プロジェクト 2018

2018年09月07日 | pocknのコンサート感想録2018
9月5日(水)大井剛史 指揮 東京交響楽団
~新たな耳で世界を拓く~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル


【曲目】
1.阿部亮太郎/漆黒の網目
2. 小山和彦/ピアノ協奏曲 第3番
 Pf:西村翔太郎
3. 山内雅弘/SPANDA―ヴィブラフォンとオーケストラのための
 Vib:會田瑞樹
4. 森垣桂一/交響曲(2018)

「オーケストラ作品の創作と発表のための運動を展開するという共通の目的意識をもって集まった作曲家グループ」(演奏会パンフから)、「オーケストラ・プロジェクト」の演奏会を2年ぶりに聴いた。パンフの説明によれば、今回のテーマである「新たな耳で世界を拓く」は、卓越した耳で新しい音の世界を開拓したドビュッシーの生誕百年にちなんだものということで、ドビュッシーの開拓精神を見倣って新作に挑んだという作品が並んだ。聴衆の入りも上々。

阿部氏の「漆黒の網目」は、断片的なモチーフが、広くて静寂な空間にちりばめられるように始まり、気が付くと、それらのモチーフが各々意思を持ち、主張し始めているようにも聴こえた。そして、再び静寂の闇に吸い込まれて行くように終わった。深淵な空間に現れた喧騒が、また深淵の闇に帰って行くような、宇宙を想わせる音楽だと感じた。

続く小山氏のピアノ協奏曲、ピアノのパリッとしたアルペッジョが響いた瞬間から、様式美のある音楽だなと感じた。ロマンチックな歌や、逆に攻撃的なパッセージを含みながらも、全体は古典的とも云える佇まいを具え、最初のピアノに象徴される「パリッ」とした躍動感に貫かれている。ピアノの西村さんは明晰なタッチで音が立っていて、瑞々しい存在感を際立たせていた。

山内氏の「SPANDA」は、今夜の演奏会の白眉を飾った。全身に生命力がみなぎり、鮮烈で、しぶきが迸るように瑞々しい。聴き進むうちにグイグイと音楽と演奏にのめり込んで行き、全身の血が激しく沸き立つような感動を覚えた。ヴィブラフォンという楽器は元々音色的に強いインパクトがあるので、それだけでは騙されないぞと思っていたのだが、様々なマレットを使い分け、幅広いダイナミックレンジと多彩なリズムや音色等、あらゆる手段を総動員して届けてくる強烈なメッセージに圧倒された。オケにも様々な奏法を施してヴィブラフォンを鮮やかに彩り、巨大なエネルギーを孕んだトゥッティからは雄叫びとか、激しい吐息が聴こえてきた。

これには、超絶技巧を駆使してエネルギーの塊のようなソロを聴かせた會田さんの功績も大きい。中央で激しく動き回る姿が音楽の化身のようにも見えた。終演後は大きな拍手にブラボーも入り、中にはスタンディングオベーションで感動を伝える聴衆も複数いた。一昨年の山内さんの曲もそうだったが、独創性とエネルギーに溢れたこの「SPANDA」は、世界に発信すべき傑作ではないだろうか。

プログラムの取りは森垣氏の交響曲。命名からしてきっちりした音楽かと思いきや、全体が柔軟で変化に富んだエモーショナルな作品だった。オケがクラスターで畳みかけ、迫ってくるようなシーンだけなら、どこかで聴いたような… という印象で終わってしまうのだが、これとは対照的な管楽器のソロが豊かな表情で語りかけ、まさに「コンチェルトグロッソ(第3部の名称)」的な音楽を展開するあたりに魅力を覚えた。

大成功の演奏会の功労者として、大井剛史指揮の東京交響楽団の存在も忘れてはならない。高い技術とテンションで、的確に作曲家が伝えようとするメッセージを受けとめて、真摯に表現する姿勢は、ともすればやっつけ仕事的な印象を与えることもある現代音楽の作品発表でのオケ演奏とは対極の高い志が感じられた。

オーケストラ・プロジェクト 2016 2016.9.7 東京オペラシティコンサートホール


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ブログ管理人作曲によるCD
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~(MS:小泉詠子/Pf:田中梢)

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