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鈴木雅明 指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団

2019年06月23日 | pocknのコンサート感想録2019
6月21日(金)鈴木雅明 指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団
~第117回定期演奏会~
紀尾井ホール


【曲目】
1.モーツァルト/交響曲第29番イ長調 K.201
2.バルトーク/弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽 Sz.106,BB114
3.ストラヴィンスキー/バレエ音楽「プルチネルラ」(全曲)
S:松井亜希/T:櫻田亮/Bar:与那城敬

「紀尾井シンフォニエッタ東京」が「紀尾井ホール室内管弦楽団」と改称してから聴く初の演奏会。鈴木雅明がモダンオーケストラを指揮するのを聴くのは、昨年の読響定期に続いて2度目。時代も地域も異なる作品が3つ並んだが、古典的な雰囲気を持っている点では共通するだろうか。特にバルトークとストラヴィンスキーは未知の期待で臨んだコンサート。

最初のモーツァルトは鈴木らしい溌剌とした活きのいい演奏。エネルギーに溢れた直球勝負のアプローチは、4月に聴いた「マタイ」の、ストレートに受難の物語を伝える語り口と通じるものを感じた。けれど僕としては、モーツァルトの、特にこのシンフォニーでは優美さや立ち上る色香がほしい。これがいわゆる「正しい」演奏なのかも知れないが、少々肩肘張って気負い過ぎではないかと感じた。

次はバルトーク。これは素晴らしかった!緊張感に満ちた導入のフーガのミステリアスな雰囲気から引きつけられ、終始雄弁な演奏が展開された。感じたのは、厳しさや勢い一辺倒ではない表現の幅広さ。果敢に立ち向かう挑戦がある一方で、柔軟性にも富み、民族的な踊りが目に浮かぶ場面もある。オーケストラ全体が、リアルに動き回る生き物のような一体感を伝えていた。終楽章の血沸き肉躍る乱舞の様子は心の底から共感を覚えてトリハダが立った。バッハのときとは異なる鈴木のまた別の魅力を見た思いがした。

それが更に突き進んだのが「プルチネルラ」。鈴木は、ここで使われているペルゴレージなどのオリジナルの音楽の姿を大切に、キビキビとストイックな演奏を聴かせると思いきや、俗っぽい要素やお色気などもふんだんに聴かせ、メチャメチャ楽しく充実した演奏を聴かせた。最初の序曲が、色つやある魅惑的な響きで始まったときから、その後の展開にワクワクした。そして繰り広げられる演奏は、極彩色のモザイクで描かれた物語を見ているよう。

プレイヤーは伸び伸びと自由に、随所でヴィブラートも思いっきりかけてアピール。いつもは全身全霊の指揮姿が印象的な雅明氏が、木管アンサンブルのヴァリエーションの場面などでは指揮台から下りて、ビッグバンドをフィーチャーするリーダーのようなイケイケムード。プレイヤーが見事なソロを披露すれば、率先してその場で拍手を送る劇中劇的なパフォーマンスが客席からの拍手も呼んだ。

これに色と香りを添えたのが3人の歌い手たち。それぞれカラフルな衣装を身に着け、松井さんの色気たっぷりの演技をはじめ、ジェスチャーを交えて聴かせる歌はチャーミングで妖艶でときにコミカル。ノリノリのエキサイティングで楽しい演奏が終曲で炸裂して大団円を結んだ。全身トリハダもののスゴイ演奏に大喝采とブラボーが飛んだ。イヤーぁ、素晴らしい!

普段は学者然とした雰囲気を醸している雅明氏の変身ぶりもサプライズだったが、雅明氏がBCJで聴かせるバッハだって、ワクワクした喜びや感動を伝えることは少なくない。その演奏を思い出せば、スタイルは変われど、これは音楽の神髄を表現する鈴木雅明の真骨頂と云える。雅明氏の人間としての器の大きさを感じた。

鈴木雅明指揮 読売日本交響楽団&RIAS室内合唱団 2018.10.26 サントリーホール
バッハ/マタイ受難曲(BCJ) 2019.4.19 東京オペラシティ
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
子守歌 ~チェロとピアノのための~
Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美
合唱曲「野ばら」
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

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